弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 1型糖尿病は遺伝するものなのか?
A. 1型糖尿病は遺伝するものではありません。
目次
糖尿病とは?種類について知りましょう
糖尿病とは、すい臓から作られるインスリンというホルモンが上手に働かなくなってしまい、その結果身体に様々な症状が現れる病気です。
インスリンには、私たちのエネルギー源であるブドウ糖を全身に巡らせコントロールする役割があります。インスリンが正常に働くことよって、元気な身体を保ち、病気なく健やかに生活することができるのです。
しかし糖尿病になりインスリンが上手に働かなくなってしまうと、全身にブドウ糖が行き渡らなくなります。その結果、血液中のブドウ糖(血糖)が高い状態が続いてしまいます。
この血糖が高い状態は糖尿病の代表的な症状です。
また糖尿病にはいくつか種類あります。
1型糖尿病
すい臓からインスリンが分泌されないために血糖値が高くなる
2型糖尿病
インスリンが出にくくなったり、効きにくくなったりするために血糖値が高くなる
妊娠糖尿病
妊娠中のホルモン変化によりインスリンが効きにくくなっている
その他
糖尿病以外の疾患やその治療薬により血糖値が高くなる
これらのうち、日本人の成人がなる糖尿病の95%が2型糖尿病というデータもあり、“生活習慣病”としてもよく知られています。
1型糖尿病と2型糖尿病の違いは?
ここでは1型糖尿病と2型糖尿病の違いについて詳しく説明します。
1型糖尿病について
1型糖尿病は、自分の体内でインスリンを作ることが出来なくなってしまう深刻な病気です。インスリンを作っているすい臓のβ細胞が破壊されてしまうことにより、インスリンを製造できなくなり、その結果、血糖のコントロールが効かなくなります。
この状態を「インスリン依存状態」と言いますが、血糖値の把握とインスリン治療に支配された病気といえます。一度1型糖尿病になってしまうと、生涯に渡って血糖値をインスリン治療でコントロールしながら生活していくことになるからです。
風邪を引いたり、体調が悪かったりした日にインスリン治療による血糖値のコントロールができないと、インスリン不足によるケトーシスやケトアシドーシスに陥るので非常に危険です。
アシドーシスに陥り症状が酷いと意識障害や昏倒が起こることがあり、最悪のケースでは死に至る可能性があります。
生涯に渡って厳しい自己管理が求められる過酷な病気が1型糖尿病だといえます。
2型糖尿病について
次に2型糖尿病ですが、暴飲暴食、運動不足などといった私たちの生活習慣の悪さから発症するのが主なパターンとなります。
2型糖尿病においてはインスリン自体が効きにくくなったり(インスリン抵抗性)インスリンが出にくく(インスリン分泌低下)なったりした結果、血糖値が上がってコントロール不能になってしまうのが特徴となります。
1型糖尿病と2型糖尿病の違い
・発症に関して
1型糖尿病では若年層が発症しやすく、2型糖尿病では中高年層の発症が多いです。
・遺伝性に関して
後述しますが、1型糖尿病は遺伝との関連は極めて少ないと言われているのが現在の医学での見立てとなっています。1型糖尿病の解明は現在でも困難を極めており、その原因と解明が期待されています。2型糖尿病では遺伝要因が確認されており、家族が2型糖尿病であったりすると自分も遺伝要因で発症する恐れがあります。
肥満・症状に関して
症状は同じだが、ある日急に糖尿病の症状が出始めるのが1型糖尿病に多くみられる傾向で、2型糖尿病では初期の自覚症状がほとんどなく、緩やかな進行をすることが多くみられます。
・肥満に関して
1型糖尿病では肥満との関連はありません。
2型糖尿病では肥満との関連があり、肥満になればなるほど発症リスクが高まります。
・治療に関して
1型糖尿病では完全にインスリンが体内で製造できなくなる
ことから、インスリン注射やインスリンポンプ療法というインスリンを外部から体内に注入する方法しかありません。
2型糖尿病では食事療法・運動療法・飲み薬など、インスリン治療に頼らなくても改善の可能性がある治療法が存在します。
1型糖尿病は遺伝するのか?
現在、糖尿病の遺伝性はまだ解明されていません。1型糖尿病にも2型糖尿病にもある程度の遺伝性はありますが、多くの遺伝子が複雑に関係しているために糖尿病との結びつきが強い遺伝子はまだ特定されていません。
生活習慣が引き金となる場合が多いのが2型糖尿病であるために、1型糖尿病の方が遺伝性が強いと思われがちですが、統計としては2型糖尿病の方が親族での発症率が高くなっているのも現状です。逆に遺伝による1型糖尿病の発症は極めて少ないと言われています。
にもかかわらず、1型糖尿病の遺伝性に関して悩む人が後を絶ちません。
- 家族が糖尿病になった
- 自分が糖尿病になった
- 父または母の家系が代々糖尿病になっている
- 自分の子孫にも遺伝するのだろうか?
など、不安になる気持ちはとてもわかります。
1型糖尿病に関する正しい知識を身につけ理解することが、漠然とした不安から逃れる第一歩となります。
型糖尿病の症状
1型糖尿病による高血糖状態は下記のような症状を引き起こします。
- 口、のどが異常に渇く
- 水分の摂取量が異常に増える(多飲)
- 頻尿になり、尿の量も増える
- 疲れやすくなる、倦怠感が続く、集中が続かない
- 体重の減少が激しくなる
- キズの治りが遅くなる
更に高血糖が悪化すると意識障害や昏倒を起こしてしまう危険性があります。
1型糖尿病では、痩せている人も太っている人も関係なく発症する可能性があり、発症する年齢の傾向としては若年層に多く、病状はある日突然あらわれ急激に進んでいきます。
1型糖尿病の原因
1型糖尿病は、インスリンを作るすい臓のβ細胞が壊れてしまった結果発症すします。ウイルスの感染などにより、体内の免疫系が正しく働かなくなって、自己免疫反応がおかしくなり、その結果β細胞を自分で攻撃して壊れてしまうことが原因だと言われています。
1型糖尿病にかかってしまうと、体内でのインスリン分泌は望めなくなってしまうため、継続したインスリン注射による治療が必要となってしまいます。
これ以外にも特定の原因もなく突発的に発症してしまうこともあるようで、現在でも発症の原因と完治方法が解明されていない厄介な病気となります。
1型糖尿病の種類
発症の仕方や進行の度合いにより1型糖尿病は下記3種類のタイプに分類されます。
劇症1型糖尿病(げきしょういちがたとうにょうびょう)
1型糖尿病の中でも最も酷い症状を伴います。健康だった人が急激に(1週間以内に)1型糖尿病を発症してしまうケースがこの劇症1型糖尿病です。
糖尿病による急性の合併症であるケトーシスやケトアシドーシスという症状を引き起こしやすく油断ができない状態になります。
HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)という血糖値の指標となる数値は高血糖が1か月間以上高い状態が続いてから上昇するため、劇症1型糖尿病の場合にはHbA1cが低いまま症状を発症してしまうのも特徴です。
早急な受診が必要と言えるでしょう。
急性発症1型糖尿病(きゅうせいはっしょういちがたとうにょうびょう)
急性発症型では、糖尿病の症状が出始めてから3か月以内にケトーシスやケトアシドーシスに陥り、インスリン治療が必要となります。
この急性発症型が1型糖尿病の典型的なパターンです。
緩徐進行1型糖尿病(かんじょしんこういちがたとうにょうびょう)
SPIDDM(Slowly Progressive Insulin-Dependent Diabetes Mellitus)とも呼ばれるこの1型糖尿病は、とても緩やかに病状が進行していくタイプの1型糖尿病で、発症してからインスリン治療が必要となるまで数年かかるケースもあります。
一見すると2型糖尿病に見えるこの緩徐進行1型糖尿病ですが、時間の経過と共にインスリンを分泌する機能が低下するために1型であると判明します。
発症年齢が若いことが特徴の1型糖尿病でも、この緩徐進行タイプは30~50代での発症が多く、判明するまでに長い時間がかかることが特徴といえるのが1型糖尿病と言えます。
糖尿病だと思ったらどうすれば良い?
何か体に違和感をおぼえたり、自覚できるものがあったりするのならば、すぐにでも最寄りの医療機関へと受診をしてください。
上述したように、糖尿病は自覚症状が出にくく、気付くと重篤化していることが多いため危険です。
糖尿病を早期発見するためにも定期的な健康診断を行い、さらに
- 規則正しい生活と食事
- ストレスをためすぎず、適度な運動をする
- 十分な睡眠を確保する
など、糖尿病にならないように意識して生活をすれば、発症リスクを減らすことは可能だと言えるでしょう。
また、
- 夜勤など勤務時間に変化がある仕事についている
- 仕事の拘束時間が長い
- 外食が多い
- 試食など、食べることが仕事である
これらは糖尿病になりやすい生活パターンですので、十分に気をつけてください。
糖尿病の予防方法
1型糖尿病は予防するのがとても難しい病気です。原因不明かつ突然的な発症にくわえ、急激な進行性を持っています。
しかし、ハーバード公衆衛生大学院(HSPH)の研究では、若年期に十分なビタミンDを摂取することで、成人後に1型糖尿病の発症リスクを最大50%も抑えることができる可能性があることが発表されています。
今まで自己免疫疾患の予防は確立されていませんでしたが、研究が進みビタミンDによる予防が確立されれば、それに勝る喜びはありませんね。
2型糖尿病では、生活習慣を、特に食事を見直すことにより予防できます。
1日の総摂取カロリーを守り、栄養バランスの良い食事をし、食事を朝食晩の3回きちんと食べることが重要となります。
また発症リスクがあがる
- お酒
- タバコ
- お菓子、スイーツ
- 清涼飲料水
などといった嗜好品は特に控えることが大事だと言えるでしょう。
逆に嗜好品のなかでも“緑茶”と“コーヒー”に関しては、適量を摂ることで糖尿病発症のリスクが低下することが実験で判明しています。
緑茶とコーヒーは、糖尿病以外にも大変危険な病気である脳卒中になるリスクを軽減することが期待できるので、大変心強い味方となってくれるでしょう。
1型糖尿病の治療方法
1型糖尿病ではインスリン治療が生命を維持するために絶対に必要となります。
ここではインスリン治療の種類を紹介していきたいと思います。
インスリン注射
インスリン治療のなかでも最もポピュラーなのがインスリン注射となります。
ただしインスリン注射にはいくつか種類があり、糖尿病の進行状況によって様々なインスリン療法がありますのでご紹介します。
超速効型インスリン製剤
食事の直前に自己注射を行い、食後の血糖値が上がりすぎないように抑える役割があります。
注射してから10~20分前後で効き始め、速効性が高いことから多忙な人にも向いているタイプの製剤となっています。
また、約3~5時間の持続作用となっており、一日に複数本打たなければならないという特徴があります。
速効型インスリン製剤
食事の約30分前に自己注射を行い、食後の血糖値が上がりすぎないように抑える役割があります。
注射してから30分~1時間前後で効き始めます。
また、約5~8時間の持続作用となっており、1日に複数本打たなければならないという特徴があります。
中間型インスリン製剤
インスリンの基礎分泌を補う目的で使用される製剤です。
作用が発現するまでの時間は製品にもよりますが、注射してから1~3時間で発現する製品が多いです。
作用が持続する時間は18~24時間となっています。
持効型溶解インスリン製剤
インスリンの基礎分泌を補う目的で使用される製剤で、1日1度の注射で済むのが特徴です。
作用が発現するまでの時間は製品にもよりますが、注射してから1~2時間で発現する製品が多いです。
作用は約24時間持続する製品が最も多いタイプとなっています。
朝食前か就寝前に打つのが一般的で、一度打つ時間を決めたら毎日その時間に注射します。
混合型インスリン製剤
超速効型もしくは速効型と中間型インスリンを、混合してあるインスリン製剤となります。
混合の割合は5:5、3:7、2.5:7.5など製品ごとに違います。
インスリンの基本分泌と追加分泌を同時に行うことが目的で作られた製剤です。
作用の発現までの時間は混合の割合によってバラつきがありますが、だいたい10分~1時間ほどとなります。
朝食前と夕食前の1日2回注射するタイプの製品が多く、作用の持続時間は18~24時間です。
インスリンポンプ療法
インスリンポンプは、1型糖尿病患者の生活の質(QOL)を向上させる目的で作られた療法です。
CSII(Continuous Subcutaneous Insulin Infusion)とも呼ばれ、持続皮下インスリン注入療法とも呼ばれています。
海外ではインスリン療法の選択肢の1つとして広く認知されていますが、日本ではまだ普及しきってはおらず認知度もインスリン注射に比べ低いです。
インスリンポンプの素晴らしいところは、インスリンの基礎量を微調整してより優れた血糖のコントロールが可能となっているところです。
そして最大のメリットは、毎回の注射から解放されること、更には携帯できるため、ライフスタイルの幅が広がるという点において、QOLを高めるという目的を果たしている療法といえるでしょう。
今後日本国内でも広く普及・浸透していくことが期待される療法です。
まとめ
いつ、どういう経路でなるのかがまだ十分に明らかにされておらず、誰しもが発症する可能性を秘めている1型糖尿病。発症してしまってからでは手遅れです。
自分は絶対になるわけがない、と思うかもしれません。
そうならないためにも、糖尿病についての正しい知識を身につけておきましょう。