目次
糖尿病検査に関する基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病の検査にはどのような方法がありますか?
A. 糖尿病の検査には健康診断、病院、自宅で出来る3つの検査方法があります。
自覚症状が少ない糖尿病は早期発見がポイント!
糖尿病は、自覚症状がなく知らない間に進行する病気です。
糖尿病を見つけるための検査は3つの方法がありますので、定期的に状態を把握することが大切です。症状がない糖尿病だからこそ、定期的な検査をして糖尿病の発症を防ぐことがカギといえます。
この記事では、糖尿病と診断されるまでの検査方法と自分で検査するやり方を解説していきます。糖尿病検査にかかる費用・結果が分かるまでの期間についても合わせて確認しておきましょう。
糖尿病の検査は3つの方法がある
現在、日本では10人に1人の割合で、糖尿病の疑いがある患者がいるといわれています。
糖尿病になって手遅れになる前に、定期的に健康診断を受けて自分の健康状態を知ることから始めましょう。
糖尿病検査の代表的なやり方は主に3つの方法があります。
血糖値は食事と関係があり、食事をした後は吸収されたブドウ糖が血液の中に入って血糖値が上がります。健康な人であれば、すぐにインスリンが分泌されて血糖値は自然と下がっていきます。しかし、高い血糖値が続いていれば糖尿病と診断されます。
糖尿病検査は、食事の影響によって変動する血糖値測定のタイミングを3つに分けてチェックします。
①健康診断検査
定期的に健康診断を受けて、糖尿病や糖尿病の予備群を早く見つけることが大切です。
糖尿病の予備群といわれたら生活習慣を見直し、糖尿病と診断されたら、医師の診察を受けた上で治療を受けましょう。
健康診断では、血液の検査でわかる血糖値とHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)が基準値より高いかどうかで診断します。血糖値とは、検査したその時の血糖の濃度を表した数値のことで、HbA1cは過去1、2か月分の血糖値の経過を表します。
糖尿病は、突然血糖値が急上昇するのではなく、徐々に高くなるのが特徴です。
糖尿病になるまでの段階は、血糖値の高さによって、正常型、境界型、糖尿病型と3段階に分類されます。
空腹時の血糖が正常でも食後血糖が高くなる隠れた糖尿病もあるので注意が必要です。
隠れた糖尿病を発見するには、75g経口ブドウ糖負荷試験を行い検査します。
糖尿病の予備群やメタボリックシンドロームについては、早めに気が付いて食事療法や運動療法を行うことが大切です。
②病院での検査
病院での糖尿病検査は、血液検査をして、血液中のブドウ糖がどれくらいあるのかを調べることが可能です。
「75g経口ブドウ糖負荷試験」は空腹時血糖値を調べた後、一定量のブドウ糖を水に溶かしたものを飲み、その後の血糖値がどう変化するかを調べる検査です。
75g経口ブドウ糖負荷試験は、糖尿病になるリスクが高い・可能性がある方に最適な検査方法です。
糖尿病になるリスクが高いと考えられる方
● 空腹時血糖値が110~125mg/dL
● 時間に関係なく測定した血糖値が140~199mg/dL
● HbA1cが6.0~6.4%(口渇、多飲、多尿、体重減少などの糖尿病の症状が存在する場合を除く)
糖尿病になる可能性がある方
● 空腹時血糖値が100から109mg/dL
● HbA1cが5.6~5.9%
● 濃厚な糖尿病の家族歴や肥満が認められる
高血圧・脂質異常症・肥満など動脈硬化のリスクがある場合も、75g経口ブドウ糖負荷試験が推奨されています。
病院での糖尿病検査方法には、食事の時間を考慮せずに測定する「随時血糖検査」もあります。
随時血糖検査とは、食後からの時間を決めずに採血を行い、血糖値を測る検査方法です。
随時血糖値が200mg/dL以上ある場合は、「糖尿病型」と診断されます。
「早朝空腹時血糖検査」は、検査当日の朝食を抜いた空腹の状態で採血し、血糖値を測る検査方法です。早朝空腹時血糖値が126mg/dL以上ある場合は「糖尿病型」と診断されます。
糖尿病検査は何科?
糖尿病専門医には、医療施設の「 糖尿病科」、「糖尿病内科」、「内分泌代謝内科」の3つが挙げられます。
糖尿病(予備軍も含む)、耐糖能異常、多尿、頻尿、口渇、多飲、足がつる、体重が減る、意識障害といった場合は、糖尿病内科が対象となります。
ただし、糖尿病の症状は、初期の段階であれば自覚症状がほとんどなく、気づかない間に糖尿病合併症が進んでしまうリスクがあります。定期的に検査を受けましょう。
糖尿病の合併症には、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症の3つが挙げられます。
症状に気づいた時点ではかなり進行してしまっている場合が多く、完治するのは困難とされています。
自覚症状が何もなくても、健康診断で数値が異常な場合は、糖尿病科を受診して治療を開始しましょう。
③自宅での検査
最近は、自宅でも糖尿病検査ができる検査キットが市販されています。
薬局・ドラッグストア・アマゾンや楽天市場などのオンラインショップで購入でき、価格は2,000円から7,000円程度です。
糖尿病を早期発見するために、自宅でできる検査キットは手軽に利用できるのがポイント。キットに付属している小さな針を使って指先から採血をして、提携の医療機関や検査機関に採取した血液を送ります。
ほとんど痛みを感じることはなく、初めて使う人も簡単に行えます。
採取した血液でHbA1cと血糖値を測定し、糖尿病かどうかを判断してもらいます。
市販の糖尿病検査キットは、精度が高いのか気になるところだと思います。
結論からいえば、家庭用の簡易的なチェックとなっているため、病院に行く前の目安と捉えるとよいでしょう。最終的に糖尿病だと判断する場合は医師による総合的な判断が必要になります。
糖尿病かどうかを判断するためには、市販の検査キットだけでは不十分であり、病院の受診が必要です。しかし、病院で糖尿病の検査を受ける場合は、問診のあと血液検査、尿検査、眼、神経、血圧などさまざまな項目があるため丸一日かかることも。
そのため、病院に行くかどうかの目安として、市販の糖尿病検査キットを使用することをおすすめします。
妊娠糖尿病の検査
「妊娠糖尿病」とは妊娠中に発症した糖尿病ほどではない軽い糖代謝異常です。
「糖尿病合併妊娠」とは、糖尿病の方が妊娠した状態をいいます。
「妊娠中の明らかな糖尿病」は、妊娠前から診断されていない糖尿病があった可能性もある糖代謝異常などが含まれます。
妊娠糖尿病の検査は妊娠初期に随時血糖をはかり、これが高いときにはブドウ糖負荷試験をして診断します。妊娠初期に陰性であっても、妊娠が進むにつれ血糖を下げるインスリンが効きにくくなるため、妊娠中期(24~28週)にもう一度検査をうける必要があります。
妊娠中期の検査は随時血糖法か50gブドウ糖負荷試験で行います。この検査で陽性であった人には75gブドウ糖負荷試験を行い、次の診断基準により診断します。
空腹時血糖値 ≧92mg/dL
1時間値 ≧180mg/dL
2時間値 ≧153mg/dL
上記3項目中、1つ以上満たせば、妊娠糖尿病と診断されます。
糖尿病網膜症の検査方法は?
糖尿病網膜症の検査で最も有効なのが、「眼底検査」です。
眼底検査は、眼底鏡や眼底カメラなどの器具を用いて眼球の奥にある血管・網膜・視神経を調べる検査です。網膜の出血や硬性白斑、軟性白斑なども見つけられます。
また、眼底検査を受けて初めて糖尿病が見つかる場合もあります。
眼底検査以外には、視力、眼圧、細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)検査などがあります。造影剤で血管をより詳細に写るようにしてから写真を撮る蛍光眼底造影検査もあります。
糖尿病網膜症の検査は、散瞳薬を点眼して20分から30分ほど待ち、薬で瞳孔を開いた状態にして行います。検査にかかる時間は30分から60分くらいです。
糖尿病の血液検査はすぐ分かるの?
糖尿病は自覚症状が少なく、職場検診などで指摘されて気付くことが多い病気です。
検診の血液検査で血糖値が高い場合、尿検査で尿糖陽性が出ている場合は、糖尿病の可能性があるため二次検査(精密検査)が必要です。
糖尿病の検査結果に関して、尿検査、血糖値、HbA1cの3つは検査した当日に医師から結果を伝えられることが多いです。
検査項目によっては検査会社に委託しているものもあるため数週間かかることがあります。
糖尿病の検査にかかる費用は?
糖尿病の検査をするには、費用はどのくらいかかるでしょうか?
企業や自治体で行う健康診断の中には、血液検査も含まれているので無料で検査ができます。
その他、薬局で市販されている検査キットは2,000円から7,000円程度です。
病院での検査は保険が適用されるので、血液検査だけの場合は1,000円程度となります。
ただし、初診にて糖尿病が疑われる方は、糖尿病の他にも尿酸値、コレステロール、中性脂肪が高くないか調べられることがあります。会計の際に支払う費用は、3割負担の方で約3,000〜5,000円です。
一般的な糖尿病の検査費用は、検査する項目によって異なるため、詳しくはかかりつけの病院へ相談しましょう。
糖尿病の検査項目について
糖尿病の検査を病院で受ける場合は、問診のあとに血液検査、尿検査、眼の検査、神経の検査、血圧など多くの項目があります。
会社や就職先、学校に提出する健康診断書は、それぞれの組織が希望する検査項目が決まっています。
糖尿病検査は、問診と検査も含めて約1時間から2時間はかかりますが、検査によっては丸一日かかるケースもあります。
病院での糖尿病検査は予約制となるので、かかりつけの病院へ検査項目や所要時間を問い合わせてみてください。
糖尿病と判断される検査値は?
ここからは、糖尿病だと診断される検査値について見ていきましょう。
糖尿病が疑われる場合、糖尿病であるかないかは「75g経口ブドウ糖負荷試験」(75gOGTT)で判断されます。
検査1回目では血液検査、75g経口ブドウ糖負荷試験を行います。
「75g経口ブドウ糖負荷試験」(75gOGTT)
75g経口ブドウ糖負荷試験は、検査当日の朝まで10時間以上絶食した空腹の状態で採血して血糖値を測ります。次に、ブドウ糖75gを水に溶かしたブドウ糖液、またはデンプン分解産物相当量を飲み、ブドウ糖負荷後、30分、1時間、2時間後に採血して血糖値を測ります。
高血糖が考えられる患者さんに75gOGTTを行うと、高血糖を引き起こすリスクがあるため必須ではありません。
判定基準値
- 朝の空腹時血糖値 126mg/dL以上
- 75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値 200mg/dL以上
- 時間に関係なく測定した血糖値 200mg/dL以上
- HbA1C(JDS値)が6.1%以上
(HbA1C(国際標準値)が6.5%以上) - 朝の空腹時血糖値 110mg/dL未満
- 75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値 140mg/dL未満
血糖値とHbA1cのどちらか一方だけが糖尿病型だった場合は、再検査が必要です。
再検査でも糖尿病型だった場合は、糖尿病と診断されます。
初回の検査でも再検査でも、HbA1cだけが糖尿病型だった場合は、「糖尿病の疑い」として、その後の経過観察を行います。
判断基準
● ①~④のいずれかが確認された
→「糖尿病型」と判断
→糖尿病の疑いあり。別の日に再検査する
● ①~③のいずれか、および④が確認された
→「糖尿病」と診断
● ⑤および⑥が確認された
→「正常型」
● 上記いずれにも該当しない
→「境界型」
→糖尿病型・正常型いずれにも属さない
通常であればHbA1cの数値は4.3~5.8%ですが、6.0%以上であれば糖尿病予備軍となります。
6.5%以上になれば糖尿病である可能性が高くなりますので、早急に医療機関を受診しましょう。
75gOGTTで2時間値200mg/dL以上ある場合は「糖尿病型」、また、随時血糖検査・早朝空腹時血糖検査・75g経口ブドウ糖負荷試験の3つの検査のうち、いずれかの血糖値に異常があれば「糖尿病型」と診断されます。
別の日にもう一度検査をし、また血糖値に異常があって糖尿病型と診断された場合は、「糖尿病」と確定診断されるでしょう。
検診の血液検査は通常、空腹時に採血するので、血糖値が110mg/dL未満であれば糖尿病の可能性を否定できる目安となります。
110mg/dL以上であれば糖尿病の可能性が否定できない、126mg/dL以上なら可能性はかなり強いといえます。
まとめ
今回は、糖尿病検査の方法や糖尿病と判断される基準や費用、期間についてご紹介しました。
糖尿病は、一度なると完治するのは難しいといわれており、一生血糖値のコントロールをしながら生活しなければなりません。血糖値のコントロールには、規則正しい食生活をし、さまざまな栄養素を摂取することが必要です。
今までのように自由に飲食できないのはストレスとなり、栄養素の摂取を意識した食生活に変えるのは容易ではないでしょう。
少しでも早く糖尿病予備軍を発見し、健康的に生活するためにも定期的な検査をすることが大切です。ぜひ、ご自身の健康維持のためにも糖尿病検査を忘れずに受けるようにしましょう。