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糖尿病食事療法のレシピと献立について

糖尿病の食事療法に関する基礎知識

弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病レシピや献立ではどんなことに気をつければいいですか?
A. 糖尿病の食事療法では、食品交換表をもとに「栄養バランスのとれた献立」を心がけることが大切です。油や砂糖、みりんなどの調味料を減らし、カロリーの過剰摂取にも注意しましょう。

糖尿病のレシピは食品交換表を参考にしよう

糖尿病と診断されたご本人やそのご家族にとって、毎日の食事レシピを考えることは治療の基本となります。しかし、「糖尿病食事療法の献立をどうしたら良いかわからない」「糖尿病に適したレシピを見つけるのに苦労している」といった方も少なくないでしょう。
そんなときには、日本糖尿病学会が発行している「糖尿病食事療法のための食品交換表」を参考にすることをおすすめします。

「糖尿病食事療法のための食品交換表」をもとにレシピを組み立てると、カロリー摂取目安量のなかで、しっかりと栄養バランスがとれた食事を摂りやすくなります。
この食品交換表では、主に含まれている栄養素によって、表1から表6までの6つのグループに分類されており、そのグループ同士であれば食品を「交換」しても構いません。

食品交換表では、1単位が80kcalで統一されているので、グループ内で違う食品を選んだとしても適切な栄養素やカロリーを摂取できるように組み立てられています。
表1では穀類、表2は果物、表3は魚介、表4は乳製品、表5は油脂、表6は野菜といったように、誰でも一目でわかりやすいように分類されているのも特徴です。

糖尿病治療においては、食事療法と運動療法が大きな柱となりますが、多くの患者さんは「食」に関する知識不足で苦労している傾向があります。
運動療法の場合には、ウォーキングを30分行うなど、毎日同じメニューを繰り返しているだけでも血糖コントロールを良好に保つことができるでしょう。しかし食事に関しては、いくら「糖尿病に良いメニュー」だからといって、毎日同じものを食べ続けるわけにはいきません。
同じ内容の食事を食べ続けていると、栄養バランスの偏りはもちろんのこと、味や食感に飽きてしまったりして「食」を楽しめなくなってしまいます。

私たちが生きていくうえで、食事は「栄養摂取」といった意味でも大きな役割を果たしますが、「生きる楽しみ」のひとつでもあるでしょう。
糖尿病で食事療法をスタートすることになった患者さんやそのご家族は、まず食品が持つカロリーや栄養素をしっかり把握するところから始めて、さまざまな食材を毎日の食事レシピに組み込めるよう工夫してみてください。

 

電子レンジを活用する簡単な糖尿病レシピとは?

糖尿病の食事療法を行うときには、カロリー、脂質、糖質などの過剰摂取に注意しなければなりません。特に、脂質とカロリーはレシピや調理方法によって大きく変化します。
油で炒める料理の場合、カロリーや脂質の摂り過ぎにつながることも多いため、糖尿病患者さんの食事レシピでは、できるだけ避けた方が良いとされています。

余分な脂質やカロリーをカットするためにも、電子レンジを活用した調理法がおすすめです。最近では、美容・健康への意識が高い方を中心に、スチームケースやレンジ専用容器なども人気となっています。
電子レンジ用のスチームケースを使用すれば、野菜や魚、肉などをそのまま容器に入れてレンジで加熱するだけで、糖尿病食事療法に最適なメニューを簡単に作ることが可能です。
素材自体が持つ水分だけで調理するため、カロリーや脂質の摂取量管理が楽になるのも嬉しいポイントでしょう。

電子レンジで作る「糖質オフレシピ」に関する本は、数多く出版されていますが、なかでもおすすめの本は糖尿病専門医である牧田善二医師の著者「ぜんぶレンチン!糖質オフのやせる作りおき」です。
牧田医師のレシピ本は、糖尿病患者さんをはじめ、ダイエットや糖尿病予防を目指している多くの人から人気を集めています。他にも、「糖質オフのやせるスープ」「糖質オフのやせる作りおき」「糖質オフの野菜たっぷりおかず」など、多くのレシピ本を出版しており、食事制限や食事療法を行っている人からは定評があります。

糖尿病を治療していると、毎食のレシピや栄養価を考えるのが負担になってくることもあるでしょう。しかし、専用容器と電子レンジさえあれば、手軽に作り置きおかずを何品も用意できるため、心の余裕も生まれてきます。

特に、牧田善二医師の「ぜんぶレンチン!糖質オフのやせる作りおき」は、糖尿病専門医が監修したメニューしか掲載されていないので、安心して活用することができるのもポイントです。
レンジで調理した後は、そのまま冷蔵・冷凍保存も可能なため、非常に便利でしょう。

糖尿病食事レシピに適した食材

糖尿病を治療しているからといって、「食べてはいけない食品」はありません。しかし、血糖値を急上昇させやすい高糖質な食べ物や、肥満の原因となる高脂質な食品はできるだけ減らす努力をしてください。

糖尿病食事レシピには、食物繊維が豊富でビタミンやミネラルを多く含む食品が適しているといわれています。また、たくさん食べてもカロリーが少なく、低脂質であることも重要です。

きのこ類、野菜、海藻、押し麦やもち麦などは、水溶性食物繊維が多いため「良好な血糖コントロール」を行ううえでも積極的に取り入れたい食材です。
特に、きのこ類と海藻は低カロリー食材の代表格でもあるため、お腹いっぱい食べても肥満につながることはほとんどありません。

糖尿病で食事療法を行っていると「食事で満足感が得られない」「もっとたくさん食べたい」など、ストレスを感じる患者さんも多いでしょう。しかし、食材を工夫すれば満腹感を十分に感じることも可能です。

きのこ類には、β-グルカンと呼ばれる食物繊維の一種が含まれており、免疫力を向上して身体を守る機能を活性化してくれるといわれています。糖尿病患者さんは、高血糖が続くことによって免疫力が低下しがちなので、食事からのケアも欠かすことができません。
また、野菜には脂質や糖質の代謝に必要な「ミネラル」や「ビタミン」が豊富です。ほうれん草などの緑黄色野菜には、糖尿病患者さんの動脈硬化を予防するビタミンC、ビタミンE、β-カロテンも含まれています。

日本人の主食として親しまれている「白米」は、精米されているため食物繊維をほとんど摂取することができません。そのため、糖尿病患者さんの食後血糖値を急激に上昇させてしまうのです。
しかし、主食を全く食べないのも味気ないでしょう。そんなときには、押し麦やもち麦を活用するのがおすすめです。押し麦やもち麦には、100gあたり水溶性食物繊維が6g、不溶性食物繊維が3.6gも含まれています。
押し麦の食物繊維量は、一般的な精白米の20倍もあるといわれており、糖の吸収を穏やかにして血糖値の上昇を抑えてくれるので、糖尿病治療中の患者さんには最適な主食となるでしょう。

糖尿病レシピや献立を工夫するためのポイント

調理をする際にちょっとした工夫をするだけで、糖尿病患者さんに最適な食事レシピや献立に早変わりするポイントが4つあります。
1つ目は、蒸す調理方法を選ぶことです。前述したような「電子レンジ」を使ったレシピをはじめ、油を使用しない調理方法は脂質の摂取量を減らす効果があり、摂取カロリーをコントロールしやすくなるのです。

2つ目は、糖質を多く含んだ調味料をできるだけ控えることです。煮物や照り焼きなどには、みりんや砂糖をたっぷり使う場面も多いでしょう。しかし、調味料に含まれている糖質は、摂取した後に吸収されやすいといった特徴があります。
せっかく糖質の少ない食材を選んでいたとしても、これらの調味料によって一気に糖質量が跳ね上がることも少なくありません。

3つ目は、出汁を利用して薄味に仕上げるという点です。糖尿病患者さんは、高血圧や腎症にも注意しなくてはなりません。塩分過多にならないよう、食材の旨味を引き出す「出汁」を上手に活用して調理しましょう。
また、濃い味のおかずは糖尿病患者さんに限らず、どうしてもご飯が進んでしまうものです。主食の食べ過ぎを予防するためにも、無理なく少しずつ薄味に慣れていくようにしてください。

4つ目は、酸味をきかせた味付けにすることです。減塩を心がけていると、食事の味にメリハリがつきにくくなり、似たような味になってしまいがちです。しかし、酢やかんきつ類を取り入れると、塩を減らしていても物足りなさを感じにくくなります。
かんきつ類は、レモン、かぼす、ゆずなど季節に合わせて選ぶと良いでしょう。また、酢には食後血糖値の上昇を抑制する効果や、脂肪燃焼効果があるといわれているため、糖尿病患者さんには最適な調味料です。

このように、いつもの調理方法を少し変更するだけで「糖尿病レシピ」に早変わりします。糖尿病治療は、毎日のコツコツとした積み重ねが何よりも大切です。
なにも、「特別な糖尿病レシピ」にこだわらなくても、ちょっとした工夫で健康的な食生活を実践できるということを忘れないようにしてください。

糖尿病食事療法の参考になるおすすめのレシピ本は?

糖尿病の食事療法を実践する際には、何冊かレシピ本を持っておくと便利です。糖尿病のレシピ本は、毎年新しいものが出版されています。
糖尿病の食事療法は、これまで「カロリー制限」が主流でした。しかし、近年では糖質制限食が注目されており、糖質オフの献立が掲載されたレシピ本が多く並ぶようになっています。

最近出版された糖尿病レシピ本では、「国立国際医療研究センター病院の一生役立つ糖尿病レシピ410(西東社)」や、「血糖値・ヘモグロビンA1cを下げる時短レシピ(芸文社)」などが、わかりやすくておすすめです。

また、2019年8月に出版の「最新版 順天堂医院が教える毎日おいしい糖尿病レシピ415(学研プラス)」も注目されています。
このレシピ本は、糖尿病治療の権威として広く知られている順天堂大学名誉教授の河盛隆造先生と、食生活改善のスペシャリストとして人気が高い同大学医学部附属浦安病院栄養科の髙橋德江先生が、糖尿病患者さんの良好な血糖コントロールのための食事レシピを解説する一冊です。
これまでの糖尿病食の常識を覆すような「おいしい」「満足」「かんたん」を実現した献立が、415種類も掲載されています。ご飯ものやお肉はもちろんのこと、糖尿病患者さんでも食べられるスイーツなども見逃せません。
「糖尿病レシピは薄味でおいしくない」「お腹いっぱい食べられない」といった不満をお持ちの方は、ぜひ手に取ってみてください。

糖尿病から腎臓病になったら食事レシピは変更するべき?

糖尿病合併症のひとつに「糖尿病腎症」と呼ばれるものがありますが、腎症を発症した場合に「糖尿病食事療法の内容から食事レシピは変更するべきなのか」と、混乱してしまう患者さんも多いでしょう。
糖尿病の食事レシピと腎臓病の食事レシピは全く異なるため、考え方の切り替えが重要です。

糖尿病の食事療法では、適切なカロリー摂取量のなかで糖質や脂質の過剰摂取に注意しながら、バランスよく栄養素を摂ることが重要視されています。三大栄養素のひとつである「たんぱく質」もしっかり摂取するように指導されるのが一般的です。
しかし、腎臓病を発症した患者さんの場合には、たんぱく質の摂取量を制限しなければならなくなります。

これは、余分なたんぱく質が尿素などの老廃物に変わり、腎臓でろ過されて排出されるためです。
健康な人であれば全く問題のない作業ですが、腎臓病などで腎機能が低下している患者さんは、たんぱく質を摂り過ぎると腎臓に大きな負担をかけることになってしまいます。糖尿病治療で続けていたレシピや献立を中止し、低たんぱくの食事内容を目指しましょう。

しかし、たんぱく質は身体の機能を維持するためには欠かすことができない栄養素です。
糖尿病腎症などの腎臓病を発症してしまった患者さんは、腎臓に負担が少ないといわれている「大豆製品」「乳製品」「鶏卵」から、必要最低限のたんぱく質を摂取するようにしてください。
牛肉、豚肉、鶏肉などの動物性たんぱく質は、グリシン、アラニン、アルギニンといったアミノ酸を多く含みます。これらのアミノ酸は、腎臓の血流を促す作用があり、腎機能に多大な負担をかけてしまうといわれているため避けた方が良いでしょう。

また、腎臓病がある糖尿病患者さんの場合には、高血圧にも注意が必要です。食事のレシピや献立を考える際には、塩分控えめの味付けにしてください。
腎症を発症した人は、体内に塩分が蓄積しやすくなっています。身体の塩分濃度が高くなると、同時に血圧も上昇してしまうのです。高血圧は糖尿病患者さんの動脈硬化や心疾患のリスクを高め、腎症も急激に進行させるため減塩を心がけるようにしましょう。

一週間の糖尿病レシピ・献立は病院食を参考にしよう

糖尿病の食事療法を行う際に、「一週間分の献立をまとめて決めてしまいたい」と考える方も珍しくありません。このような場合には、病院食を参考にするのがおすすめです。
糖尿病患者さんが入院したときに出される「病院食」は、専門の栄養士がメニューを組んでいるため、カロリーや栄養バランスがしっかりと管理されています。

JA神奈川県厚生連の伊勢原協同病院では、実際に糖尿病で入院されている方に出している病院食の献立を、一週間どころか「28日分」も公開してくれています。さらに、各食事のレシピ(作り方)もわかりやすく掲載しているので、非常に参考になるでしょう。
伊勢原協同病院の病院食は、1600kcalがベースとなっていますが、1400kcalの患者さんはご飯の量を130gに変更すれば良いだけなので、カロリーも管理しやすいのが特徴です。

この他にも、「糖尿病 病院食 献立」で検索すると、さまざまな病院の糖尿病食を見ることができます。一週間の献立やレシピに迷った際には、ぜひ参考にしてみてください。

まとめ

糖尿病治療において、食事療法は非常に大切な柱となります。どんなに良い薬を飲んでいても、毎日の食事内容がしっかり管理できていなければ、糖尿病は確実に悪化していくでしょう。
しかし、食事レシピや献立を毎日考えることがストレスや負担になってしまう患者さんも少なくありません。まずは、「糖尿病食事療法のための食品交換表」で食品のカロリーや栄養素を学び、レシピ本などを活用しながら上手に工夫していくことが大切です。

糖尿病食事療法のための食品交換表は、あまり知られていませんが実は「応用編」も出版されています。交換表をもとに、具体的なレシピやバリエーションが作成されているため、実際の食事に活かしやすくなっているので、ぜひ毎日の血糖コントロールに役立ててください。

 

この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得している自然療法専門医。
スコッツ先生のプロフィール
https://gluco-help.com/media/lose-weight-diabetes27/

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