目次
糖尿病と尿糖に関する基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 尿検査で尿糖が出たため「糖尿病」と言われました。尿検査だけで糖尿病は判断されますか?
A. 尿糖は確かに「糖尿病の疑いがある」状態です。ですが、特別心配のない腎性糖尿の可能性もあります。詳しく血液検査を行い糖尿病の診断をしますので、尿検査だけでは決定しません。
尿糖が出たら糖尿病なの?尿に糖が検出される理由
健康診断や風邪などで受診した際の尿検査で、尿に糖の陽性反応が出たという方。
時には医師から「糖尿病だ」などと言われて、突然のことにショックを受けてしまうかもしれません。
厳密には、尿検査だけでは糖尿病と判断はされず、もしかしたら糖尿病かもという推測があるだけです。
そして、尿検査は直前の食事などの影響を受けることも多いため、検査するタイミングも関係してきます。
なので、尿検査だけですぐに糖尿病だとは断定できないものなのです。
とはいえ、尿検査は血液検査では発見しにくい「糖尿病予備軍」や「かくれ糖尿病」も見つけることができるため、尿に糖が出ていたら、ちょっと自分の生活や食生活を見直す機会かもしれません。
ここでは、尿検査で糖が出るメカニズムや糖尿病の判断基準、尿糖になりやすい病気などをわかりやすく解説します。
尿検査で「糖尿病です」といわれるのはなぜ?
まず、尿検査で糖が出る状態とは、どのようなことが起こっているのか説明します。
血糖値は、食後上昇し、時間の経過とともに下降するものです。
尿検査は、食前と食後の尿を測りますが、尿に糖が降りるのは血糖値が160~180mg/dL以上になった時といわれています。
糖が腎臓で処理される際、エネルギーに必要な糖は体へ再吸収されますが、過剰すぎる場合は水分と一緒に排出され糖の反応が出ます。
健康な人は、インスリンが十分に作用するので、食後の血糖値が上昇しても180mg/dLを超えることはあまりありません。
尿糖ということは、血液中に糖分が多く出ている状態と想定されます。
そのため「糖尿病」と言われることがあるのです。
ですが、尿を検査したタイミングや糖が降りる量は個人差があるため、血液検査やブドウ糖負荷試験をした結果と合わせて診断するまでは糖尿病と決定しません。
尿糖は泡立ちや甘い香りがする?
尿は粘度が高くなると泡立ちます。また、甘い香りは高血糖で糖が尿へ降りている時やケトン体が多くなっている時もします。
その原因が、糖であれば糖尿病の疑いもありますが、夏場汗をかく量が多い時や乾燥しやすい冬など、病気ではない場合も泡立ちや香りがあるので、検査しなければ判断できません。
ですが、ジュースなど甘いものを飲んだ後や食後の尿に泡立ちがある場合は、受診をおすすめします。
糖尿病はどうなったら「糖尿病」確定?
糖尿病がどのようになったら確定するのでしょうか。
そもそも血糖値は、誰でも食事をすると上昇します。
ですが、インスリンが分泌されて作用できると、すぐに下がっていくのが正常な人の反応です。
血糖値が高いままにあるというのは、インスリンが分泌されていない、または分泌されていても作用がないのが糖尿病の状態。
つまり、食事後インスリンが分泌・作用できているかを血糖値によって測定するのが糖尿病の検査です。
糖尿病の血液検査と判断基準
血糖値の測定方法は以下の4つ。
どれか1つでも血糖値の異常があれば「糖尿病型(糖尿病の疑いあり)」です。
初回検査で基準値を上回る場合は、再検査を行い、それでも異常が出た場合は「糖尿病」確定になります。
例外として、HbA1Cのみが初回と再検査で異常が出た場合は「糖尿病の疑いあり」となり、経過観察します。
【1:随時(ずいじ)血糖検査】
・好きなタイミングで測る
・随時血糖値⇒200mg/dL以上は糖尿病型
【2:早朝空腹時血糖検査】
・検査当日の朝食を抜いて、お腹を空にした状態で測る
・早朝空腹時血糖値⇒126mg/dL以上は糖尿病型
【3:75g経口ブドウ糖負荷試験】
・検査当日の朝までに10時間以上の絶食状態で、お腹を空にして採血する
・ブドウ糖75g(水に溶かしたもの)を飲む
・ブドウ糖摂取後、30分後・1時間後・2時間後に採血して測る
・2時間値⇒200mg/dL以上は糖尿病型
※高血糖な人は、ブドウ糖摂取でさらにリスクを高めるため、自覚症状がある場合などはこの検査はしない可能性もあります。
【4:HbA1C(ヘモグロビンA1c)】
・過去1か月~2か月の平均血糖値を測る
・HbA1C(NGSP値=国際標準値)⇒6.5%以上
※上記のいずれかに異常がある場合は「糖尿病型」ですが、1~3のうちのどれかと、「HbA1C」の異常が重なった場合は『糖尿病』となります。
正常型と境界型
「正常型」の範囲と「境界型」の範囲は以下の通りです。
【正常型】
・早朝空腹時血糖値⇒110mg/dL未満
・75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値⇒140mg/dL未満
【境界型】
糖尿病型と正常型の間を「境界型」といいます。
・早朝空腹時血糖値⇒110mg/dL以上126mg/dL未満
・75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値⇒140mg/dL以上200mg/dL未満
検査で「境界型」と診断されたら、今の生活を続けていると、いずれ「糖尿病型」になるリスクを抱えている状態ということです。
早いうちに生活習慣や食生活を見直し、「正常型」に戻す必要があります。
尿検査は劇症1型糖尿病を見逃しにくくする
糖尿病には、ずっと健康体で、最近健康診断でA判定を受けたばかりの人でも突然起こって急激に合併症を引き起こす「劇症1型糖尿病」という急性のものがあります。
症状は、以下のようです。
- 腹痛風邪っぽくて全身が怠い
- 多飲(何リットルも飲む)
- 多尿
- 咽頭痛
- 発熱
- 腹痛
- 悪心(気持ち悪さ)・嘔吐
- 昏睡
初期症状は風邪に似ていたり、ウイルス感染が引き金になって起こるといわれているため、糖尿病と判断されずに自宅で昏睡状態になり、命の危険につながる場合があります。
劇症1型糖尿病でしたら、血糖値は400~500mg/dLまでにも上昇しているので、初診時に尿検査をしていれば、尿糖になっているはずです。
命を落としかねない劇症1型糖尿病を早期に発見できる検査なので、受診する際は、初診に尿検査をする医療機関を選ぶことをおすすめします。
尿糖は初期の糖尿病を発見できる
糖尿病の診断は、血液検査の結果で判断されますが、初期の糖尿病は見逃しやすいとされています。
さらに、糖尿病は初期症状がない病気です。自覚症状を訴えた時には糖尿病が進行している状態。
そこで、尿糖によって初期の糖尿病を見つけることができます。
厚生労働省が発表した『平成29年(2017)患者調査の概況』では、糖尿病患者数は328万9,000人と過去最高でした。
ですが、実際は糖尿病を患っていても、診断される人は半数ほどといわれています。
それは、「かくれ糖尿病」が見逃されているからです。
かくれ糖尿病とは?
健康診断や医療機関での血液検査は、ほとんど空腹時の血糖値を測ります。
しかし、空腹時の採血で糖尿病と判断されるほどの血糖値は、かなり糖尿病が進行したレベルなのです。
軽度の時点では、食後2時間~3時間の血糖値が上がっていることが多いため、見過ごされてしまっていました。
本当は、極軽度のうちに見つけて、健康体へ引き返せる方が良いはず。
かくれ糖尿病には、「食後高血糖」が潜んでいますので、食後の尿糖が測れる尿検査は、かくれ糖尿病の発見に役立てます。
実際に、東京医科大学第三内科学講座 主任教授 小田原雅人先生が行った検証では、以下のような結果が出ました。
【尿糖陽性者の糖尿病の有無】
・糖尿病と診断されていない人555名を対象
・食後の尿の陰性・陽性か自宅で測定(「尿糖試験紙」を使用)
・陽性の人にブドウ糖負荷試験と空腹時血糖、HbA1Cの検査
【結果】
尿糖陽性者のうち、半数近くが食後高血糖の糖尿病または糖尿病予備軍でした。
そして、健康診断で行われる特定検診「空腹時血糖」「HbA1C」をクリアしている人の約40%が糖尿病・糖尿病予備軍という結果も出ています。
以上から、健康診断で行われる血液検査だけでは、かくれ糖尿病が見つけにくいことが分かり、尿の検査で陽性が出た場合は、糖尿病の疑いを持った方が早期発見につながるといえます。
境界型のリスク管理に向いている
さらに、尿検査は薬を必要としない境界型の、心血管系のリスク管理にも役立てます。
高血糖状態は、血管を損傷し動脈硬化や動脈瘤などの原因のひとつです。
糖尿病になると、健康な人に比べ3倍の心血管病のリスクが高まりますが、糖尿病予備軍でも食後高血糖の場合は、食後の血糖値が高いほど心筋梗塞になる可能性が上がることがわかっています。
ですので、リスク管理に尿検査をすれば、そのリスクを減らすことも可能です。
尿糖が出るのは、血糖値が180mg/dL以上の状態ということ。
日頃から血管を痛めていないか、食生活や生活習慣を見直す指標になるでしょう。
尿糖の検査は、「尿糖試験紙」を使って個人でも調べられます。
ネットやドラッグストアで購入できて、尿を付けるだけで色の変化から簡易的にチェックができます。
尿糖陽性のレベル感
尿糖陽性では(+)と(-)で表示され、数字でレベルを表します。
尿糖試験紙の色の変化でレベルが上がり、おおよその血糖値の高さがわかるものです。
- (-)…検出なし(50mg/dL以下の場合は反応されない)
- (+)…50mg/dL
- (2+)…100mg/dL
- (3+)…300mg/dL
- (4+)…1000mg/dL
(+)の陽性反応が出た場合は、糖尿病の疑いがあると考えます。
とはいえ、結果は汗の量や尿を溜めていた時間、食前・食後、生理的な変動があるためおおまかな目安として考えましょう。
また、尿糖試験紙の中には、糖尿病の管理用として反応がゆるやかなものと、病気を見つけるために微量の糖にも反応するタイプのものもあるので、目的に合わせて選んでください。
尿を溜めた間、どれくらい尿に糖が出ているかを測定するものですので、毎回食前に排尿し膀胱を空にした後、食後2時間後に検査するなど、決まったパターンで測定すると食後高血糖を把握できます。
糖尿病以外の尿糖が陽性になる病気・状態
尿糖が出る病気のひとつに「腎性糖尿」があります。
腎性糖尿とは、血液中の糖の再吸収されるためのポンプ(SGLT)の力が弱い人が起こる症状です。
遺伝的に生まれつき弱いというだけで、血糖値が高い訳ではないので、体への害はなく心配いりません。
ですが、まれに腎臓病が原因となっている場合があるので、むくみや倦怠感を伴っている場合は、腎臓内科で受診してみてください。
その他、尿糖が表れやすい病気をご紹介します。
妊娠糖尿病
妊娠中は、血糖値が高くなる傾向が強くなるため、尿糖になりやすいです。
妊娠糖尿病は、糖尿病まではいかない軽い糖代謝不良な状態。
出産後、血糖値が正常値に安定し、ブドウ糖負荷試験でも異常が表れなければ糖尿病とは決定しません。
ですが、正常値に戻っても20年~30年後糖尿病を発病するケースは半数近くあったと報告されているため、血糖コントロールを心掛けていく必要があるでしょう。
下垂体疾患
脳にある下垂体より分泌されるホルモンが低下したり、出なくなる病気です。
下垂体腫瘍や頭蓋咽頭腫など腫瘍ができやすくなります。
クッシング症候群や先端巨大症などの病気も引き起こす原因です。
甲状腺疾患
甲状腺ホルモンが生成されなかったり、分泌が過剰になる病気です。
90%以上はバセドウ病であることが多く、尿糖が検出されます。
バセドウ病の症状は、以下の通りです。
- 食欲増進
- 食べているのに体重が減る
- 頻脈、動悸、息切れ
- 暑がり手や指のふるえ
- 下痢
- 多感
- 微熱
- 皮膚のふやけ
- 暑がり
- 情緒不安定
- 筋力低下
- 疲れやすい
- 集中力低下
- 爪の変形
血糖値に異常がない場合は、症状により他の病気の疑いがあると、別の検査を行っていきます。
このように、尿糖は、糖尿病以外の深刻な病気の発見にもつながりますので、陽性の場合なにかしらの病気のサインかもしれないのです。
尿糖がでたら、健康に意識を向けるべきタイミングといえますね。
まとめ
とくに糖尿病の症状がなく受けた健康診断や風邪で受診した病院で、突然「糖尿病」といわれたら、信じられないと思います。
でも、尿糖が出たからといって、それだけでは糖尿病確定ではありません。
ですが、糖尿病の疑いがあるのは事実です。
もし、血液検査をしても異常がなかった場合は、また尿糖が出ないように、生活習慣や食生活を見直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか?
そして、採血の必要がない、糖尿病予備軍や軽度の糖尿病の方にも、尿糖チェックは日々の血糖コントロールの目安に有効です。
尿糖チェックを細かく測っている人は、たくさん食べた時は陽性反応が出やすくなる・高くなると把握しています。そんな使い方もできるのですね。
熱心な方だとグラフ化している人もいるのだとか。
それくらい、自分の体に向き合えたら健康を維持していけそうですね。
理想はしっかり健康管理と向き合いたいですが、忙しかったりすると、食生活は途端に乱れがちになります。
そんな時は、サプリメントのサポートも得ながらバランスを保っていきたいものです。
自分にとって相性のよいサプリメント選びにも、尿糖チェックを使ってみるのも良いのではないでしょうか。