目次
糖尿病で太らないための食事療法の基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病で太らないための食事療法はありますか?
A. 食べ方を工夫したり、GI値の低い食べ物を摂ったりすると太りにくくなります。
糖尿病と肥満
糖尿病の原因は、はっきりとわかっているわけではありません。しかし、2型糖尿病になる原因のひとつとして大きいのが、肥満だといわれています。肥満は糖尿病だけではなく、さまざまな病気の原因になることが知られています。糖尿病において肥満による内臓脂肪は、血糖値をあげる原因になるのです。
では、具体的にどういう基準で肥満かそうでないかが決まるのかというと、BMIです。BMIは肥満度を表す指数で、以下の式で求められます。
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
この肥満の基準は日本肥満学会が制定しているもので、BMIが25以上30未満で肥満(1度)、30〜35未満は肥満(2度)、35〜40未満は肥満(3度)、40以上は肥満(4度)となっています。つまり、25以上だと肥満とされ、糖尿病になるリスクが大きくなってくるのです。
これとは逆に、糖尿病になると太るという話をよく聞きますが、それは糖尿病の治療のひとつであるインスリン療法をはじめたことによるものです。この場合はインスリンの量を調整したり、食事療法を行ったりすることによって改善していきます。
それよりも問題なのは、糖尿病になる前の肥満です。肥満は糖尿病の原因となってしまう場合が多いのです。肥満は生活習慣の乱れによるものですので、糖尿病になる前に生活習慣を改善することが大切になってきます。
糖尿病になってから太る原因
インスリンとは、すい臓にあるランゲルハンス島という組織にある「β(ベータ)細胞」から分泌される物質です。インスリンは食事によって血糖値が上がると分泌され、全身の各臓器のためにエネルギーとして利用されます。その結果として血糖値を下げる効果もあります。
糖尿病になってしまう人は、多くの場合インスリンの分泌量や効き目が弱くなっているため、血液中のブドウ糖がエネルギーに利用できず、体に残った状態になってしまいます。細胞に取り込むこともできません。そしてこれが高血糖になってしまう原因なのです。
そのため、経口薬でインスリンのはたらきを改善したり、インスリン注射などでインスリンの分泌量を増やしたり補充したりすることで、血糖値を下げるという治療を行なっていきます。ところが、インスリンの状態が改善することによって、血液中の糖を細胞に取り込めるようになります。こういった作用により、太るのではないかと考えられています。
インスリンによる治療を続けていると太るのは避けられないのかと思ってしまうかもしれませんが、運動療法と食事療法をしっかり行なっていくことで、体重増加を防止することができます。
インスリン療法が必要な人はどんな人?
インスリンの状態がよくない場合、それを改善する薬物療法としては、経口薬による治療法と患者自身がインスリン製剤を注射することによる治療法があります。経口薬で症状が改善する場合は経口薬での治療が行われますが、改善しない場合はインスリン注射に切り替えられることがあります。
経口薬を服用しても症状が改善しない場合、インスリン注射による治療に変えられることがあります。また、インスリンの分泌がほとんどない1型糖尿病患者は、インスリン注射が必須になることもあるため、インスリンが必要な患者は症状がかなり悪いと思われがちですが、必ずしもそういうわけではありません。
確かにインスリン注射が必要だということは、インスリンを自らつくり出す力が弱くなっていることを意味します。しかし、糖尿病治療は血糖値を良い状態に保つことが最大の目的です。血糖値が悪い状態が続いていると、さまざまな合併症を引き起こす原因になってしまいます。ですから、インスリン注射を使って健康な人と同じ生活が送れるのならそれに越したことはありません。
太ったのが原因で糖尿病に
糖尿病で太るのはインスリン治療が原因になることが多いですが、太ったことが原因で糖尿病になることも多く、糖尿病のうち2型糖尿病になる人は、肥満またはそれに近い状態であることが多いです。
インスリン療法をはじめると太ることがありますので、太ったことが原因で糖尿病になった場合は、インスリン療法が必要となったときには処方も考えてする必要があります。それ以上体重を増加させてしまわないように、インスリンの量や頻度を調節するのも大事ですが、食事療法と運動療法を必ず併用しながら行うことが必要になってきます。
インスリンなどの薬物療法をはじめると、比較的簡単に血糖値をコントロールすることができます。しかし、だからといって食事療法や運動療法をおろそかにしていると、いつまでも改善しないばかりか悪化することさえあります。糖尿病の治療はすべての治療法を同時進行でやっていく必要があるのです。
太りにくい食べ方
個人差もありますが、人は加齢とともに代謝が悪くなり、どうしても太りやすくなってきます。これは仕方のないことですが、代謝をよくするための運動やバランスの良い食事を摂ることで太りにくくすることが可能です。運動療法も食事療法も、薬物療法と同時にできることが望ましいですが、なかなか続かないものです。
そこで、簡単にできるものとして、食べ方を工夫するという方法があります。食べ方には実は痩せる食べ方と太る食べ方があり、それに気をつけるだけで体重の増減には大きな違いが出てくるのです。
1.食べる順番を変えてみる
血糖値の上昇を抑える基本的な方法として知られているのは、炭水化物(糖質)などの血糖値を大きく上げる食べ物を最後に食べるようにすることです。一番最初は繊維質の多い野菜が最適で、次は消化に時間がかかる魚や肉などのたんぱく質を摂ります。そして最後に糖質を摂取することで、吸収されるまでに時間がかかり、血糖値の急上昇も抑えることができるのです。
食事療法は、自炊をするほうが血糖コントロールがしやすいので効果的です。しかし、やむを得ず外食になってしまう場合でも、なるべくサラダを注文したり、定食などを選ぶようにしましょう。野菜がない場合でも、たんぱく質だけでも先に摂るようにすれば効果はあります。
2.糖質の摂取量を減らす
糖尿病の食事療法では、糖質制限が有効なことが認められてきています。ただし、糖質制限ダイエットのような厳しい制限を、よくわかっていない状態で行うのはやめたほうがいいでしょう。糖質も人にとって大事なエネルギー源ですので、知識のない状態で過度な制限をすると、体調を悪くすることもあります。
実際はそこまで厳しい制限をしなくても、摂取量を減らすだけでも効果はあります。具体的にはご飯の量を半分にするなどして、糖質を減らしていきます。糖質を減らした分は野菜やたんぱく質を増やします。もちろん、カロリーも考慮して、食べ過ぎないようにすることも大切です。
3.少量に分けて食べるようにする
一度に食べる量が少なければ、血糖値が上がりにくくなり、結果的に太ることを防げます。しかし、単純に量を減らしても空腹に耐えなければならず、なかなか続きません。そこで、1日の食事の摂取量は変えずに、1日3食を1日5食くらいにすると辛くならずに、体重を減らすことができます。さらに糖質の摂取量も減らしている状態なら、もっと効果は高くなります。
逆に、朝食を抜くなど1日の食事回数を減らしてしまうと、次に食事をしたときの血糖値が上がりやすくなります。また、空腹時にいきなり糖質を摂るなどの行為も太る原因になりますので、注意しましょう。
4.食べ合わせを変えてみる
オリーブオイルは食後の血糖値の上昇を抑える効果があり、それは糖質と一緒に摂取した場合でも同じです。例えば、糖質の高いパンをそのまま食べた場合と、オリーブオイルをつけて食べた場合では、後者のほうが血糖値が上がるのが遅くなるのです。また、オリーブオイルほどではありませんが、バターをつけることでも同じような効果が得られます。
ただし、オリーブオイルはエクストラバージンのものでなくては効果がありません。エクストラバージンと記載のあるものでも、実際にはそうではないものもあります。買うときにはしっかりと確認し、正しいものを買うようにしましょう。
5.水を多めに摂取する
糖尿病になった人は通常、血液中の糖の濃度が高くなりますが、水を飲むことで糖の濃度を薄くすることができます。血糖値が上がらなければ痩せやすくなりますので、水を多めに摂取するようにすると体重の減少に効果的です。
食べ方以外にも、食事をした後にすぐ運動することも血糖値を下げる方法として有効なことがわかっています。こういった方法をうまく取り入れて実践することで、できるだけ手間をかけずに治療を続けることができます。
GI値とは?
体重を増やさないため、あるいは血糖値をあげないためには、GI値の低い食品を摂取することも有効です。GIとは「グライセミック・インデックス」の略で、食品に含まれている糖質がどれだけ吸収されやすいかをあらわしたもので、その食品を摂取して2時間までの血液中の糖濃度を測定したものになります。
糖質がどれだけ吸収されやすいかということは、言い換えるなら食品ごとの血糖値の上昇するスピードをあらわしたものということになり、糖尿病とも関係あるといえます。通常、炭水化物は糖質が多く含まれていますので、糖尿病の人からは避けられる食品になります。
数ある炭水化物の中でも、GI値が高いものと低いものがあり、低いものを選ぶことで血糖値の急激な上昇を防ぐことができるのです。例えば、パンや白米はGI値が高くなっており、その次に低いのがパスタやうどんなどの麺類、そして玄米やそば、小麦全粒粉のパンなどもGI値が低くなっています。
炭水化物ほど血糖値をあげる作用のない、乳製品や野菜などもナッツ・ヨーグルト・りんご・きのこ類・ブロッコリーなどのGI値が低いものを意識して優先的に摂取していくことで、全体的な血糖値を下げることができるため、糖尿病治療には有効だといえます。
糖尿病になると痩せてしまう理由
糖尿病が原因で太ってしまう人もいますが、逆に痩せてしまう人もいます。太りすぎも健康によくありませんが、痩せすぎも糖尿病が原因で起こることがあります。何も心当たりがないのに急激に痩せてきたときは糖尿病を疑うことも考えましょう。
不思議なことに、もともと太っていたのに、急激に痩せてしまったという人もいます。そしてそういう人にとっては、太っている人とは逆に、太りたいと思ってしまうものです。糖尿病で痩せてしまう原因とはなんなのでしょうか?
糖尿病のおもな原因となっているのは、インスリンのはたらきが弱くなることによるものです。インスリンは食事から摂取したブドウ糖をエネルギーに変換することで、同時に血糖値を下げています。ですが、インスリンのはたらきが弱くなると、そのエネルギーを使うことができなくなります。
そのため、代わりに体内にある筋肉のたんぱく質や脂肪などをエネルギーとして消費してしまい、その結果としてどんどん痩せていってしまうのです。ひどい人だと、1カ月で10kg以上も痩せる人もいます。
また、太っている人は、そうでない人に比べてインスリンのはたらきが悪くなってしまうことがわかっています。その理由は、蓄積した内臓脂肪がインスリンのはたらきを妨害する物質を分泌しているためだと考えられています。
インスリンのはたらきが妨害されることにより、たんぱく質や脂肪が分解され、これにより、もともと太っていた人が急に痩せていくという減少が起こってしまうのです。
なお、このように糖尿病が原因で痩せてしまう場合は、病状がかなり進行しておりインスリンが極度に不足しているケースが多いです。そのため、急激な体重減少の症状がみられる場合は、早急に病院を受診する必要があります。
まとめ
太るのを防ぐためには、カロリー制限による方法もありますが、カロリーを制限してしまうと食べる量を減らさなくてはならないこともあり、その反動から大食いしてしまうこともあります。その反面、食べ方を工夫したりGI値を意識した食事をすると、食べる量を減らすことなく血糖値の上昇を防ぐことができます。
もちろん、必要以上にカロリーを摂取しないように気をつける必要はあります。糖尿病にとって太ることは大敵です。現在では多くの治療法があり、それらを活用することで治療の負担を軽減することも可能です。そのためにまず知識として知っておき、必要なときに実践できるようにしておきましょう。