目次
糖尿病と膵臓に関する基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 膵臓と糖尿病にはどんな関係がある?
A. 糖尿病は、膵臓でインスリンというホルモンの分泌が滞ることで生じる病気です。同時に、膵臓ガンや切除によって糖尿病を招くケースもあります。
糖尿病と膵臓の関係について
糖尿病と膵臓には密接な関係があり、糖尿病の発症や状態に大きく関わってきます。ここではまず、膵臓という臓器について説明してから、糖尿病との関係性に迫っていきます。
膵臓ってどんな臓器?
膵臓は、胃の後ろ側にある長さが15cmほどの臓器です。主な働きは、消化液とホルモンの分泌です。膵液は十二指腸へ送られ、糖質を分解するアミラーゼや脂肪を分解するリパーゼなどの酵素を含んでいます。
さらに、膵臓にあるランゲルハンス島と呼ばれる細胞では、インスリンやグルカゴンといったホルモンが分泌されています。この中のインスリンは糖をエネルギーに変えるという役割を持っており、糖尿病とも関係していす。
膵臓には食べたものを消化する働きと、糖をエネルギーに変えるという二つの働きがあります。膵臓は、私たちが生きていく上で欠かせない役割を果たしているのです。
糖尿病との関係性
食べ物の消化と糖をエネルギーに変えるという役割を持っている膵臓は、糖尿病とどのような関係があるのでしょうか?膵臓と糖尿病の関係性について考えてみましょう。
現代人の多くが発症している糖尿病は、インスリンの働きが鈍くなることで血液中のブドウ糖が増えてしまう病気です。インスリンは膵臓から分泌されているホルモンであり、血糖値を一定に保つという役割も担っています。
健康であれば、糖を分解する際、インスリンがスムーズに細胞の中へと入らせてくれます。すみやかに細胞の中に入ることができるため、糖が血液中にあふれてしまうことなく血糖値を一定に保つことが可能です。
一方、糖尿病を発症すると、インスリンがうまく働かなくなります。細胞の中に糖を取り込めなくなってしまうからです。糖尿病によって起きるインスリンの機能低下には、インスリン分泌不足とインスリン抵抗性の2種類があります。順に、特徴を紹介しましょう。
インスリン分泌不足・・・膵臓の機能低下によって、インスリンを分泌できなくなっている状態。糖が細胞の中に入り込めず、血液の中にあふれてしまいます。
インスリン抵抗性・・・十分な量のインスリンが分泌されているものの、効果を発揮できない状態。主な原因には、運動不足や肥満が挙げられます。糖尿病は肥満や運動不足が原因といわれることが多いですが、インスリン抵抗性の仕組みを見ると理解できるでしょう。
糖尿病ではなく膵臓ガンの可能性もあるため要注意
糖尿病と膵臓には深い関係があり、インスリンの分泌がきちんと行なわれているかどうかが大きなポイントです。インスリンの分泌という大きな役割を持っている膵臓は、膵臓ガンという病気を招く恐れもあるため、注意しましょう。ここでは、膵臓ガンについて触れていきます。
膵臓ガンの特徴と原因について
膵臓ガンは、50代~70代といった高齢の男性に多いガンです。膵臓はアミラーゼやリパーゼ、インスリンといったさまざまな酵素とホルモンが分泌されている臓器です。膵臓ガンは膵臓細胞から発生するとされており、分泌液が通る膵管にできるガンが増えています。
膵臓ガンは、外分泌系ガンと内分泌系ガンの2種類があります。ほとんどの膵臓ガンが、外分泌系です。発見が遅れると他の臓器に転移する可能性が高まり、いつの間にか進行してしまっている恐れがあります。肝臓やリンパ節に転移しやすいガンでもあります。
高齢者に多い膵臓ガンは、発見が遅れがちな病気です。深刻な状態に陥らないよう、膵臓ガンの原因を知って対策を始めましょう。
- 慢性膵炎や糖尿病を患っていると、膵臓ガンのリスクが高まる
- 血縁に膵臓ガンになった人がいる
- 肥満体型
- 乱れた食生活
- 喫煙
日々の生活習慣や喫煙、肥満体型などが膵臓ガンの原因です。このような特徴は糖尿病を招くリスクもあり、糖尿病を患っていることで膵臓ガンにかかりやすくなるという点も理解しておきましょう。糖尿病でない人と比べると、糖尿病患者の膵臓ガン発症率は2倍にまで高くなっています。はっきりとした関係性は明らかになっていないものの、血糖コントロールが悪化するという例が増えています。糖尿病を発症すると膵臓ガンのリスクも出てくるということを念頭に置いておきましょう。
膵臓ガンによる症状
膵臓ガンは、症状を感じにくいガンとして有名です。初期の段階では症状を感じることがほとんどありません。膵管ガンに関しては、お腹の上の部分に痛みを感じたり、体重の減少、黄疸といった症状があらわれたりします。特に背中に痛みを感じたり、夜中に痛みを感じるケースが多いです。
膵臓ガンでは、体重減少の症状があらわれることが多く、ガン細胞が増殖する関係で栄養不足や衰弱状態に陥ります。この影響は十二指腸にも及び、進行するにつれ食欲の低下や消化酵素の分泌低下の症状を引き起こします。
これらの症状は、膵臓のどこにガンができるかによって異なります。膵臓の上部にできたガンからは黄疸が出やすく、真ん中部分にできたガンでは黄疸と腹痛を感じることが多くあります。膵臓の下部にガンができた場合は、腹痛のみの症状があらわれるという特徴が挙げられます。このように、膵臓ガンはできる箇所によって症状が異なるのです。初期症状がほとんど見られず、気づいたときには症状が進行している恐れもある膵臓ガン、年に一度は健康診断を受けて確認をしておきましょう。
膵臓ガンの検査や治療法とは
初期症状があまり見られず、発見が遅れがちな膵臓ガンは、定期的な健康診断がとても大切です。では、検査や治療ではどのようなことを行うのでしょうか?
膵臓ガンの検査
膵臓ガンが疑われる場合、腹部超音波検査、CT検査、MRI検査を行ないます。この3つの検査を受けてもはっきりとわからない場合は、超音波内視鏡検査やMR胆管膵管撮影、PET検査などを行ない、膵臓ガンかどうかを診断します。
それぞれの検査内容について、特徴を紹介しましょう。
1 腹部超音波検査・・・超音波の機器をお腹に当て、臓器の様子を画像で確認できます。膵臓についてよく調べることができる超音波検査ですが、体型や部位によっては見えにくいというのが難点です。
2 CT検査・・・X線で身体の内部を映し出す検査方法です。膵臓ガンの有無だけでなく、病気の進行具合や転移についても調べることができます。様々な方向から膵臓を観察できる方法を用いることが多く、より詳しく膵臓の状態を確認できます。
3 MRI検査・・・磁気を使って身体の内部を映し出す検査方法です。
4 超音波内視鏡検査・・・超音波の装置がついた内視鏡を口から入れて、膵臓に超音波を当てます。体外からの超音波検査に比べて、より正確に膵臓の状態を捉えることができます。腹部超音波検査で膵管の拡張や膵のう胞が見られた場合、この超音波内視鏡検査に移るケースが多いです。
5 MR胆管膵管撮影・・・MRIを使って、胆管や膵管を調べる検査です。身体への負担が少ない検査方法になり、内視鏡や造影剤を使用せずに済むので安心です。
6 PET検査・・・全身のガン細胞を発見することができる検査方法です。放射性フッ素を配合したブドウ糖液を注射し、全身のどこにガン細胞があるか確認します。このPET検査を行なっても、膵臓ガンを初期で発見するのは難しいとされています。そのため、膵臓ガンの術後の経過を観察するときや、リンパ節などに転移していないか確認する際に行なわれることが多いです。
膵臓ガンの検査には、さまざまな種類があります。状況に応じて異なった検査方法が選ばれ、身体に負担を感じないで済むように考慮されています。
膵臓の切除は糖尿病にどのような影響を与える?
膵臓ガンを発症し手術が必要になった場合、膵臓の一部を切除することになります。どこにガンができているかによって切除する部分は変わってきますが、膵臓の切除は糖尿病に影響を与えるのでしょうか?
膵性糖尿病を発症することがある
膵臓の切除の程度によっては、膵性糖尿病を発症する恐れがあります。一度発症するとインスリンの補充や経口薬が欠かせなくなり、日常生活においても支障が出てくるでしょう。
膵臓を全摘した場合は、手術直後から糖尿病になるためインスリン療法が必須です。グルカゴンの分泌もストップしてしまうため、低血糖を起こしやすくなります。臓器の一部または全摘によって、糖尿病を発症する可能性があります。臓器がなくなることで機能しなくなるため、糖尿病を発症してしまいます。
早めの糖尿病治療で膵臓の機能は回復する
膵臓と糖尿病は、切っても切り離せない関係にあります。膵臓の機能低下によって糖尿病が進行するケースもあれば、糖尿病から膵臓の状態が悪くなることも想定されます。そこで、早めの糖尿病治療を心がけ、膵臓の機能を回復できるようにしましょう。
初期の糖尿病である場合、少しでも早く治療を始めることで膵臓に負担をかけずに済みます。以下のポイントを押さえながら、糖尿病と膵臓機能の改善を図りましょう。
適切な糖尿病治療を早めに受けよう
健康診断を受けて糖尿病予備軍、または初期の糖尿病と診断された場合、生活習慣の改善を図るだけでなく、適切な治療を受け始めましょう。医師に膵臓のことを尋ね、糖尿病という病気について深く知ることが大切です。
糖尿病を患っていても膵臓がしっかり機能するように、早めのインスリン補充がおすすめです。適度にインスリンを補充しておくことで、膵臓の負担を軽減できるからです。その結果、膵臓がしっかりと機能し続けることができます。
早めの治療は、膵臓にだけメリットがあるわけではありません。血糖値を安定させることもできるため、日常生活において支障を感じることが少なくなるでしょう。薬の量も、加減しながら続けることが可能です。早めの対処で、自身の身体に負担をかけずに済みます。早く対策を取ることで糖尿病合併症の予防もできるため、健康的な身体に近づけるでしょう。
日常生活で血糖コントロールを図ろう
適切な糖尿病治療を少しでも早く受けることで、元気な膵臓を維持できます。膵臓に負担をかけないよう治療を始めることが、後に合併症や糖尿病にまつわる不調の改善につながります。そこで、薬を適切に利用しながら、日常生活で血糖コントロールも図ってみましょう。
定期的に血糖値の測定を行うだけでなく、食事や運動も見直してみてください。脂肪分の多い食事を控え、海藻類や野菜を積極的に食べる、ご飯やパン、麺類などの糖質は摂取量に気をつけるなどの対策が重要です。腹八分目でおさえることを心がけ、食べ過ぎは避けましょう。甘いものやスナック菓子、清涼飲料水などの飲み物も注意が必要です。水分補給の際の飲み物は、できる限り水かお茶にしてみましょう。
食事に注意しながら、毎日の生活で実践できる運動も始めるとよりよいです。激しい運動を一日1、2時間行うのではなく、ウォーキングや水泳など、気軽に楽しめる運動を始めましょう。1日30分くらいの運動を心がけると、血糖コントロールも順調に進みます。続けられる運動を決めて、毎日実践してみましょう。
食事と運動に気をつけながら規則正しい生活も心がけると、より糖尿病の改善につながります。早寝早起きを続ける、睡眠時間をしっかり確保するなどの基本的な部分を見直してみましょう。
まとめ
膵臓といえば膵臓ガンが有名ですが、インスリンというホルモンを分泌しているのも膵臓です。ここから、膵臓は糖尿病とも関係があるといえます。膵臓の機能低下によって糖尿病を発症することもあれば、糖尿病から膵臓の不調につながることもあります。
膵臓の機能や特徴を押さえ、日頃から糖尿病を予防していくよう心がけると安心です。基本的な生活習慣の見直しから、適切な糖尿病の治療、健康診断などを受けるようにしましょう。