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糖尿病にナッツ類が良い理由

糖尿病とナッツに関する基礎知識

弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病治療中ですが、ナッツは1日どれくらいの量を食べても良いですか?
A. 1日あたり25~50gを目安にしましょう。ナッツを食べ過ぎると、カロリーや脂質の過剰摂取となり肥満の原因となるため注意してください。

この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得している自然療法専門医。
スコッツ先生のプロフィール
https://gluco-help.com/media/lose-weight-diabetes27/

糖尿病にナッツが良いといわれる理由

糖尿病治療中の患者さんは、カロリー制限や糖質制限を中心とした食事療法を行うのが一般的です。当然、高エネルギーで高脂質の食事や間食もできるだけ控えなければなりません。
そんな中、「ナッツが糖尿病に良い」といった情報を目にすることも増えています。
アンチエイジングをはじめとした美容効果や、ダイエット、健康にも良いとされるナッツですが、カロリーや脂質は高めのイメージを持っている方も少なくないでしょう。

ナッツ類が糖尿病によいといわれている理由は、「血糖値の上昇を抑える」「高血圧を予防する」「心疾患リスクを減らす」など、さまざまです。
最近では、あらゆる研究や調査によって、「ナッツが糖尿病や血糖値に与える影響」が次々と明らかになっており、専門家や医師も推奨するようになっています。

ナッツが糖尿病患者の血糖値を下げるって本当?

ナッツは、血糖値を下げる食品というよりは「血糖値を上げにくい食品」といえるでしょう。
糖尿病を治療している患者さんにとって、一番大切なことは日々の良好な血糖コントロールです。糖尿病になると、膵臓からのインスリン分泌が上手くいかなかったり、インスリンの作用が弱まったりしてしまい、血糖値が下がりにくくなってしまいます。
そのため、食事療法では糖質の高い食品をできるだけ避け、急激な食後血糖値の上昇を抑えることが重要になります。

ナッツには、血糖値の上昇を抑制する効果があるといわれているため、糖尿病患者さんに最適な食品のひとつです。
多くのナッツ類は、カロリーが高い食品ではありますが、糖質量がとても少ないのが特徴です。糖尿病の食事療法においては、カロリーよりも重要視するべきなのは「糖質量」だともいわれています。
ナッツの糖質量は、種類によっても異なりますが約10%程度で、あらゆる食品の中でもかなり低糖質な食べ物に分類されるのです。

白米やパン、麺類をはじめとした「糖質の高いもの」を食べると、食後血糖値は急激に上昇してしまいます。しかし、ナッツは低糖質で食物繊維も豊富なため、血糖値がほとんど上がりません。

さらに、世界糖尿病会議2013では「アーモンドやクルミなどのナッツ類に、糖尿病患者の血糖コントロールを改善する効果が示された」と発表されたのです。
この研究によると、1日56gのナッツを摂取したグループでは、HbA1cと空腹時血糖が明らかに低下したといいます。より多くの研究結果やエビデンスを蓄積するために、現在も調査が進められており、業界内からも注目を集めています。

 

ナッツ類を食べると糖尿病患者の心疾患が減る?

日々の食生活や間食でナッツ類を多く摂取している糖尿病患者は、心血管系疾患や脳卒中のリスクが低下することがわかっています。
この研究は、ハーバード大学の公衆衛生大学院などが行ったもので、米国心臓病学会が発行する医学誌にも発表されました。
1万6,217人の2型糖尿病患者を対象として調査され、ナッツを日常的に摂取する人はナッツをほとんど食べない人と比べて、冠動脈性心疾患が15%減、心血管疾患は11%減となることが明らかとなりました。

ナッツ類には、不飽和脂肪酸が多く含まれており、悪玉コレステロールや中性脂肪を減らします。そのため、糖尿病患者に多い「動脈硬化」を予防する働きがあるといわれているのです。
さらに、血糖や血圧のコントロール、血管機能の改善、脂肪代謝の改善、あらゆる炎症の抑制に効果を発揮するため、糖尿病合併症の予防にも効果的だということがわかっています。

心臓機能への直接的なメカニズムは、正直まだ不明な点も多いといわれてますが、ナッツの摂取により糖尿病患者の心疾患リスクを低下させることができるのは、確かだといえるでしょう。
最近では、コンビニやスーパーでも手軽にナッツを購入することが可能です。心疾患や脳卒中を少しでも防げるのであれば、毎日の食事や間食に取り入れてみるのも良いのではないでしょうか。

ナッツで糖尿病患者の高血圧も予防できる?

糖尿病患者さんのうち、40~60%の方が高血圧を発症しているといわれています。高血圧は、動脈硬化や糖尿病合併症である「糖尿病腎症」「糖尿病網膜症」の発症リスクを高めてしまうため、注意が必要です。

ナッツは、不飽和脂肪酸をはじめ、マグネシウム、カルシウム、カリウム、食物繊維などを多く含む食品なので、高血圧の抑制に効果的であるといわれています。
特に、マグネシウムとカリウムは、体内の塩分を排出するうえで必要不可欠なミネラルです。余分なナトリウムをスムーズに排出することは、高血圧予防に直結します。

また、ナッツに含まれるカルシウムが不足すると、体内でプロビタミンDや副甲状腺ホルモンが分泌されて、血管や心臓を収縮し、血圧が高くなってしまうのです。
糖尿病治療を行っている方は、食事療法で糖質や脂質を減らそうと努力しますが、その結果カルシウム不足になってしまうことも珍しくありません。

ナッツには、カルシウムをはじめ、マグネシウム、カリウムも豊富に含まれているので、糖尿病患者さんが高血圧対策をする際には、最適な食品といえるでしょう。
ただし、食塩で味付けをしているタイプや油で揚げているものは、塩分・カロリー・脂質の過剰摂取にもつながってしまうため、避けるようにしてください。塩分不使用の素焼きナッツがおすすめです。

糖質と一緒にアーモンドを食べる糖尿病食事療法?

ナッツ類のアーモンドには、食後の血糖値上昇を抑える効果があるといわれています。
特に、糖質を含む食事と一緒に摂取するとインスリンの分泌を促し、食後血糖値を低下させる作用が期待できるため、おすすめです。
まだ、マウスでの実験段階ではありますが、実際にアーモンドが食後血糖値を低下させることと、インスリン分泌を促進させることは明らかとなっているのです。

ただし、血糖コントロールを目的としてアーモンドを摂取する際には、注意点があります。
糖尿病食事療法では、食後血糖値の急上昇を予防するために「食前の野菜摂取」を推奨していますが、アーモンドの場合には食前に食べても血糖値を低下させる作用は期待できません。アーモンドは、糖質と同時に摂ることがポイントです。
皮つきのアーモンドでも、皮なしのアーモンドでも血糖上昇を抑制する効果には変わりがないため、どちらでも構いません。

また、アーモンドに含まれる「アーモンドオイル」は、インスリン分泌量に関わらず血糖値を低下させる機能性効果があると考えられています。
そのため、糖尿病でインスリンを自力で分泌できない患者さんにも有効だといった研究が進められているのです。

アーモンドには、食物繊維をはじめ、ビタミンE、マグネシウム、カリウムなどのミネラルが豊富に含まれており、1日の摂取栄養のバランスを整えるためにも役立ちます。
しかし、いくらアーモンド自体が「血糖値を下げる」「栄養価が高い」といっても、食べ過ぎてしまうとカロリーオーバーの心配も出てきます。
糖尿病の食事療法ではどんな食品にもいえることですが、適量を少しずつ取り入れるようにするのが重要なポイントです。

糖尿病の方が知っておきたいナッツのカロリー・糖質量

ナッツが、糖尿病患者さんの血糖値低下や高血圧・動脈硬化・心疾患の予防に効果的だということは前述しましたが、「実際にナッツはどれくらいのカロリーがあるの?」「ナッツの糖質量は?」と、気になっている方も多いでしょう。

糖尿病を治療している方は、食事療法によって良好な血糖コントロールを行う必要があります。また、肥満予防のためにも、カロリーを制限しながら毎日の食事を楽しむことも大切です。
そのため、自分が口にする食品のカロリーや糖質量を把握しておくことも、糖尿病治療の一環といえるため、しっかりチェックしておくようにしてくださいね。

主なナッツのカロリーと糖質量は以下の通りです。

アーモンド1粒(1g)あたりの糖質は約0.053g、カロリーは6kcal
クルミ1粒(4g)あたりの糖質は約0.28g、カロリーは20kcal
マカダミアナッツ1粒(2g)あたりの糖質は約0.1g、カロリーは14kcal
ピスタチオ1粒(0.6g)あたりの糖質は約0.05g、カロリーは3kcal
ヘーゼルナッツ1粒(1.5g)あたりの糖質は約0.1g、カロリーは10kcal
カシューナッツ1粒(1.5g)あたりの糖質は約0.4g、カロリーは9kcal

糖尿病治療中の人におすすめしたいナッツの種類

糖尿病を治療している患者さんには、どんな種類のナッツが適しているのでしょうか。
ここでは「糖尿病におすすめのナッツ」として、アーモンド、クルミ、マカダミアナッツ、ピスタチオの4種類のナッツをご紹介します。

まず、前述した通り「アーモンド」には食後の血糖上昇を抑制する作用が期待されています。食事と一緒に摂取することで膵臓からのインスリン分泌を促進し、糖尿病患者さんの血糖コントロールをサポートしてくれるのです。
また、総コレステロールや中性脂肪、ヘモグロビンA1cの値を大幅に改善するといった報告もあがっているため、見逃せません。

「クルミ」には、最近注目されているオメガ3脂肪酸が豊富に含まれています。コレステロール値や中性脂肪を減少させ、動脈硬化、高血圧、心疾患、肥満、脳卒中などのあらゆる糖尿病合併症を予防する効果が期待されているのです。
さらに、クルミにはビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンE、亜鉛、銅、マグネシウムなどの栄養素やミネラルが多く含まれており、ナッツの中でも高い抗酸化作用があるとされています。
高血圧や肥満症が気になりがちな糖尿病患者さんには、積極的に摂取してほしいナッツのひとつです。

次に、おすすめしたいのが「マカダミアナッツ」です。マカダミアナッツには、食物繊維、ビタミン、ミネラルが豊富ですが、血糖値を急激に上昇させることはありません。
糖質(炭水化物)の多い食事と一緒に摂取すると、血糖インデックス(GI)を下げる効果も期待できます。
動脈硬化や心臓病、高血圧の予防に効果的といわれている「オレイン酸」も多く含まれているため、糖尿病を治療している方にも最適です。

そして「ピスタチオ」には、体内の塩分濃度を調整するために必要不可欠な「カリウム」が豊富です。そのため、糖尿病患者さんに多くみられる高血圧の予防にも適しています。
また、ピスタチオは食後血糖値の低下、血管内皮機能の維持、インスリンの節約効果なども期待されており、糖尿病と上手に付き合っていくためには欠かせないナッツともいえるでしょう。

1日のナッツ摂取量はどれくらいが正解?

糖尿病患者さんがナッツを食生活や間食に取り入れる際は、1日あたり25~50gを目安に摂取するのが良いとされています。
ナッツは、脂質やカロリーが高いため「毎日食べていると太ってしまうのでは?」「脂質の過剰摂取にならないの?」と心配される方も多いものです。

しかし、ナッツに含まれる脂質は不飽和脂肪酸やオレイン酸、リノール酸などが中心となっているので、動脈硬化の予防にもつながります。肉や乳製品に含有される「飽和脂肪酸」を摂るより、はるかに身体に良いといわれているので安心してくださいね。

また、ナッツには糖質がほとんど含まれていないため、血糖値の上昇がごくわずかです。そのため、糖尿病治療を行っている方の間食にも最適な食品といわれています。
ナッツをおやつとして食べていると、昼食や夕食後に血糖値が急上昇するのも抑えてくれるという嬉しい効果まで期待できるのです。
1日の食事から摂取するカロリーや栄養素とのバランスをみながら、上手にナッツを取り入れるのが良いでしょう。

糖尿病に限らずナッツ類の食べ過ぎには注意しよう

ここまで、糖尿病を治療中の方にとって嬉しいナッツの効果や特徴について、ひとつずつご紹介してきました。しかし、いくら身体にいいからといって食べ過ぎてしまうと逆効果になる場合もあるため、注意が必要です。
前述した通り、1日の摂取目安量は25~50gまでを守り、全体の食事バランスをとりながらナッツをプラスするのがベストです。

ナッツを食べ過ぎると、糖尿病の方に限らずさまざまな身体のトラブルが発生します。
一番心配されるのが、カロリーと脂質の摂り過ぎによる肥満です。コンビニやスーパーで購入できるナッツは1袋に80~200g程度入っているものが多いですが、一度に全部食べることのないよう注意しましょう。

1回分をお皿に出してから食べるようにすると「一気食い」を防ぐことができるので、ぜひ実践してみてくださいね。また、10g程度が小分け包装になっているものを選ぶのも、カロリーや量を把握しやすいため、おすすめです。
繰り返しになりますが、糖尿病患者さんは必ず「塩分不使用」の素焼きナッツを選ぶようにしてください。お酒のおつまみコーナーなどに並んでいるナッツは、ほとんどが塩で味付けされたものです。
塩分の摂り過ぎは、高血圧や糖尿病腎症のリスクを高めてしまう可能性もあるため、避けるようにしましょう。

まとめ

糖尿病で食事療法を行っていると、お腹が空いて間食をしたくなってしまうことも多いでしょう。そんなときには、不飽和脂肪酸が豊富なナッツを選ぶのがおすすめです。
糖尿病治療中には食事の内容や量に制限をかけられることもあり、「食べたいものを満足いくまで食べられない」といった精神的なストレスを抱えてしまうケースも珍しくありません。
ナッツは、食物繊維も多く含むため「食べごたえ」があり、咀嚼回数も増加する傾向があります。そのため、少量でも満腹感を得やすいのが特徴です。

アーモンドやクルミ、ピスタチオ、マカダミアナッツなどは糖質が非常に少ないので、間食として摂取しても血糖値を上昇させにくい食品の代表でもあります。
糖尿病の三大合併症である「糖尿病神経障害」「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」を予防するためにも、低糖質なナッツを上手に活用しながら良好な血糖コントロールを実践していきましょう。

 

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