目次
日本糖尿病学会に関する基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 日本糖尿病学会とはどのような組織ですか?
A. 日本糖尿病学会とは、糖尿病の分析と、その予防、及びその予防医学を研究することを目的として設立された一般社団法人です。
日本糖尿病学会とは?
近年の調査では、糖尿病患者数は大幅に増加しており、国民健康・栄養調査では予備群を含めると、2,000万人にものぼるといわれています。もはや糖尿病は日本人にとって重大な疾患となっています。
日本糖尿病学会とは、1957年に糖尿病学の発展と進歩により、予防を目的として設立された一般社団法人です。設立当初は戦後からまだあまり経っておらず、糖尿病という病気もあまり認知されていない状態でした。
日本糖尿病学会は、「糖尿病専門医」を要請しており資格を与えています。糖尿病専門医とは、糖尿病患者が糖尿病の予防から治療まで、安心して病院を受診できるように日本糖尿病医学会が養成・認定している糖尿病治療のエキスパートです。
この資格を得るためには、内科や小児科で規定の研修を終了した後、それぞれの学会の専門医や認定医の資格を持った医師が、さらに糖尿病の専門的な研修を3年間受け、専門医の試験に合格しなければなりません。また、平成12年に「日本糖尿病療養指導士認定機構」も設立されており、今では19,000名以上の日本糖尿病療養指導士が活動しています。
日本糖尿病学会が推奨する食事療法のガイドライン
日本糖尿病学会からは「糖尿病治療ガイド」という書籍が発行されており、糖尿病の治療の基本的な考え方から、最新情報までわかりやすくまとめられています。一部抜粋されたものは公開されていますが、すべてを読むには購入する必要があります。ガイドラインは毎年新しいものが出ており、その度に内容も変わっています。
この本には糖尿病の治療について、とても詳しい内容が書かれていますが、どちらかというと医師や医療スタッフ向けの本ですので、患者が自分で知識を得たり、食事療法などの治療法を実践したりということには向きません。
患者が実践できるもので、日本糖尿病学会の発行している書籍として有名なものに「食品交換表」というものがあります。糖尿病の食事療法は、ほとんど食品交換表が基本となっているといっても過言ではありません。それでは、食品交換表とはどのようなものなのでしょうか?
食品交換表とは?
食品交換表(糖尿病食事療法のための食品交換表)は、糖尿病患者の治療の要である血糖値コントロールをわかりやすく、効果的にするためにつくられたものです。昭和40年に初版が発行され、長年にわたり糖尿病の食事療法に活用されてきました。
基本の食品交換表のほかにも、
・糖尿病腎症の食品交換表
・糖尿病食事療法のための食品交換表 活用編
・カーボカウントの手びき
などがあります。
食品交換表は、食品に含まれている栄養素によって以下のように、6つにグループ分けされています。
・表1…穀物、いもなどの炭水化物の多いもの
・表2…果物類
・表3…魚介類、肉、大豆またはその加工品、卵、チーズなど
・表4…牛乳、チーズ以外の乳製品など
・表5…油脂、脂質の多いナッツ類など
・表6…野菜、きのこ、海藻類など
つまり、表1〜表6のものを満遍なく摂取することで、自然とバランスのとれた食事ができるということになります。また、カロリーの計算も簡単にできるようになっています。例えば、表1では「ごはん50g」表3では「さけ60g」とありますが、これらはすべて1単位80kcalになりますので、この2つを食べた場合は160kcalだと計算できます。
仮に1日の摂取カロリーは1800kcalまでと指導されたなら、80で割って22単位が1日に摂取できる量になりますので、そこから1日のメニューを考えていくことができます。
ところでこの食品交換表は、カロリーのコントロールが主体となっていますが、これは糖尿病の大きな原因が肥満であることに注目して、つくられているためです。要するに日本糖尿病学会の食事制限とは、カロリー制限が基本となっています。
食品交換表には問題点も
一見とても簡単で便利そうに見える食品交換表ですが、実際はそこまで頻繁に利用されているというわけでもありません。食品交換表は確かに糖尿病の治療に有効な表ですが、実際にはこの表は管理栄養士でも使いにくい表ともいわれています。
日本糖尿病学会に所属する管理栄養士にとったアンケートによると、およそ40%の人がこの表をあまり使用していないか、まったく使用していないと回答しています。その理由としては、食事療法を推奨されている患者の90%ほどは「食事は外食やコンビニでの購入がほとんど」「料理ができない」「料理をする時間がない」「そもそも料理をしない」という人たちだからです。
食品交換表はほとんど料理することを前提につくられていますので、料理をせず外食ばかりしている人にとっては、確かに使いにくいものだといえます。そもそも糖尿病は生活習慣のうち、食生活も大きな原因となるため、糖尿病患者がそういった不健康な食生活を行っている可能性はかなり高いのです。
個人で利用するにしても、使いこなすためには食品交換表を覚えることが基本ですので、大変です。また、交換の数字を把握したり計算したりするのも手間に感じますし、それを1日最低3回毎日やらなくてはならないと考えると、気が滅入ってしまいます。
近年人気の糖質制限とは?
食後の血糖値の上昇は、食べたものに大きく影響されますが、そのほとんどは炭水化物(糖質)によるものです。
糖質制限とは、おもに糖質を含む食材の摂取を完全にやめるか、量を極端に制限することです。一般的にはダイエットによく用いられる方法ですので、糖尿病における糖質制限とは若干異なりますが、太らないように糖質を制限するという点は同じです。糖尿病の場合は、血糖値をあげないという目的もありますので、有効な食事療法として知られています。
ある治療法が現れると、必ずその方法を否定する人も現れるもので、糖質制限が糖尿病に悪影響だとする意見もやはり多くあります。例えば、次のようなものです。
糖質制限をすると逆に糖尿病になる?
糖質を制限しても体内から糖がなくなるわけではなく、逆に体内の糖質が不足することにより、血糖値が下げられなくなるという説です。糖質も人にとって重要な栄養ですので、不足すると脳の活動を維持できなくなる可能性があり、とても危険です。そのため、身体はその予防策として「糖新生」という現象で筋肉から糖を生み出します。
過度な糖質制限は、低血糖状態に陥る可能性もあります。低血糖状態になると、コルチゾールというホルモンが筋肉を分解して糖をつくり出し、さらに血糖値が上がった状態を保つために、インスリンの効きを悪くします。その結果、血糖値が下がらなくなってしまい糖尿病になったり、悪化したりする可能性があるということです。
筋肉がもともと衰えている高齢者は、これによりさらに筋肉が衰えてしまい、さらにインスリンの効きが悪くなるため、悪循環で血糖コントロールが難しくなるとされています。
糖質制限でインスリンの分泌が減る?
オーストラリアのメルボルン大学の研究では、マウスに糖質制限食を与え続けた結果、インスリンをつくり出すβ(ベータ)細胞の機能が減少したと報告しています。これはなぜかというと、筋肉を使わないと衰えるのと同じく、糖質制限によりインスリンの分泌が減ったことに伴い、その元であるβ細胞の機能が衰えたというものです。
この状態が長く続いた後だと、糖質を摂取した時にインスリンが正常に分泌できなくなり、高血糖の状態になってしまうとのことです。
このほかにもさまざまな説があり、説得力があるものも多いですが、実際に糖質制限で糖尿病の症状が改善している人がいるのも事実です。
カロリー制限と糖質制限どっちがいい?
しばしば話題になるのは、カロリー制限食と糖質制限食のどっちが糖尿病患者にとっていいのかというところです。アメリカのスタンフォード大学などの研究によると、ダイエットの効果はどちらも同じくらいの結果が得られるとのことです。ですが、結論からいえばどちらがいいとは一概にはいえません。というのも、もっとも効果的な方法は人によって異なるからです。
例えば、日本でも年に一度は何かしらのダイエット方法が人気になります。ですが、それを続けて効果が出る人もいれば、まったく効果が出ない人もいます。この違いは、そのダイエット方法がその人にとって最適だったかどうかということです。万人に効果がないからといってその方法は効果がないというのはおかしな話です。
重要なのは、極端にどちらかに偏りすぎないということです。どちらかに偏りすぎると逆効果になってしまう可能性があります。昔から良い食生活はバランスの良い食事を摂ることだといわれています。カロリーを制限しすぎてもエネルギー不足になる可能性がありますし、糖質を制限しすぎても脳の栄養が不足し不調が現れてきます。
カーボカウントとは?
糖尿病の食事療法の中には「カーボカウント」と呼ばれるものがあります。これは何かというと、まずカーボとは炭水化物(Carbohydrates:カーボハイドレート)のことで、炭水化物をカウント(数える)して計算することで、血糖値の上昇を防ぐという食事療法です。
糖質制限との違いは、カーボカウントが炭水化物を摂取するのに対し、糖質制限は糖質をまったく摂らない、もしくは量を極端に制限する食事療法だということです。カーボカウントには、毎食の炭水化物(糖質)をできるだけ一定にする「基礎カーボカウント」と、炭水化物の量を一定にせずインスリンの量を調整して血糖値を安定させる「応用カーボカウント」があります。どちらを用いるかは、その患者の状態によって変わります。
基礎カーボカウント
糖尿病の患者全員が対象となる、汎用性の高い基礎的なカウント方法です。毎回の食事で炭水化物の摂取量をできるだけ一定にするように保ちます。そうすることで血糖値の大幅な変動を防ぐ効果が期待できます。基礎カーボカウントでは、1日に摂取する栄養のうちの約半分を炭水化物で補いますので、糖質を減らしつつエネルギーの摂取もしっかりするという治療が可能になっています。
応用カーボカウント
応用カーボカウントは、基礎カーボカウントのように炭水化物の量を調整しません。しかしカーボカウントは炭水化物をカウントする食事療法ですので、自分が摂取したものをしっかりカウントし、その量に応じてインスリンの投与量を増やしたり減らしたりすることで、血糖値の安定化をはかります。
対象者は、インスリン療法中の1型糖尿病患者や、インスリンの頻繁な投与を必要としている2型糖尿病患者です。
カーボカウントと食品交換表と同時に利用するとより効果が高くなり、どの食品をどのくらい食べると、血糖値がどのくらい上がるというのが把握しやすくなります。日本糖尿病学会もカーボカウントについての本を出版していますので、興味がある人は医師の相談のもと試してみるのもいいでしょう。
日本糖尿病学会の基準は正しい?
カロリー制限も糖質制限も、極端にならないように注意しましょう。どちらも人間が生きていくために必要なものになりますので、まったく摂取しないというのはおすすめできません。カロリーに関していえば、エネルギーとして消費される以上のカロリーを摂らなければ太ることはありませんし、糖質に関しても1日の推奨量までは問題ないはずですから、神経質に量を減らす必要はありません。
栄養不足で体調不良になってしまっては、健康のためにやっているのに水の泡になってしまいます。ましてや他の病気にかかるなどしてしまったら、元も子もありません。家では食事の量は自分で決めることができますが、医師の指示をしっかり守ることが大事です。
食事療法での注意点
カロリー制限も糖質制限も、極端にならないように注意しましょう。どちらも人間が生きていくために必要なものになりますので、まったく摂取しないというのはおすすめできません。カロリーに関していえば、エネルギーとして消費される以上のカロリーを摂らなければ太ることはありませんし、糖質に関しても1日の推奨量までは問題ないはずですから、神経質に量を減らす必要はありません。
栄養不足で体調不良になってしまっては、健康のためにやっているのに水の泡になってしまいます。ましてや他の病気にかかるなどしてしまったら、元も子もありません。家では食事の量は自分で決めることができますが、医師の指示をしっかり守ることが大事です。
まとめ
糖尿病の食事療法は、カロリー制限にしろ糖質制限にしろ、どちらも食事制限を基本としています。食事制限はその呼び方の示すとおり制限を与えるものですので、その患者にとって今までの食生活より厳しい状態になります。
ですが、考え方を変えるとこれから先も健康的な食生活を続けていくための方法を身につけるための機会ともいえます。食事のメニューを考えるときにはつらく感じない程度のことから始めてみるとな長続きしやすくなります。
近年ではコンビニでも糖質制限用の食品が売られていますので、最初はそういったものも取り入れながら、自分が負担にならない程度の制限からはじめてみましょう。長く続けられるかどうかはとても重要なポイントですので、それを常に念頭に置いて食べるものを考えていく必要があります。