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糖尿病治療における塩分制限の必要性とは

糖尿病と塩分に関する基礎知識

弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病食事療法でも塩分制限をした方がよいのでしょうか?
A. 塩分制限はした方がよいでしょう。糖尿病患者さんの場合には、高血圧から引き起こされる合併症に注意が必要です。高血圧予防するためには、1日あたり6g以下の塩分量が推奨されています。

糖尿病と塩分制限の関係性とは?

一般的に、高血圧や腎臓病がある患者さんの場合には、塩分制限をした「減塩食」が推奨されていますが、塩分制限は糖尿病治療中の人にどのような関係があるのでしょうか。
糖尿病食事療法を実践していくなかで、「塩分摂取にはどれくらい注意するべきなのか」と、悩んでいる患者さんも多いかもしれません。

実際には、血圧が正常値で腎症を発症していない糖尿病患者さんでも、塩分摂取量には注意するべきだと指摘されています。糖尿病では高血圧を合併する例が非常に多く見られ、現在は正常血圧をキープしていても、将来的に血圧が高くなる可能性は否定できません。

その原因としては、高血糖が継続することによって血流量が増加することや、運動不足や肥満から「アンジオテンシノーゲン」と呼ばれる血管収縮作用がある物質が増えることなどが挙げられます。
また、糖尿病腎症などの合併症を発症することによって、さらに血圧が上昇しやすくなるともいわれているのです。

糖尿病患者さんが高血圧を合併すると、さまざまなリスクが伴います。代表的なものは、血管壁の柔軟性が損なわれて血栓ができやすくなる「動脈硬化」です。また、心臓病、腎臓病、脳卒中、虚血性心疾患などの発症リスクも跳ね上がるといわれており、早めの減塩対策が必要となります。

高血圧がない糖尿病患者でも塩分制限が必要?

「自分はまだ高血圧もないし、糖尿病も重度ではないから塩分を気にしなくてもよい」と考える患者さんも少なくありません。
しかし、日本人は世界的な水準からみても、塩分摂取量がかなり多めの傾向があります。

世界保健機関(WHO)が推奨する塩分摂取量は、1日あたり5gですが、厚生労働省の調査によると日本人の平均塩分摂取量は10.4gと、2倍以上にもなっています。
和食に好んで使われる味噌や醤油など、当たり前のように使用している調味料や味付けが「塩分の過剰摂取」に大きく関わっているのです。

また、平成26年に行われた厚生労働省の患者調査によると、日本国内の糖尿病患者さんの人数は316万6,000人にものぼり、そのうちの40~60%が高血圧を合併しているといわれています。糖尿病患者さんと高血圧患者さんの数は年々増加中であることから、決して他人事ではありません。

糖尿病の人が高血圧を合併しやすい理由には、肥満や内臓脂肪を悪化させる「食生活」や「運動習慣」にあるといいます。肥満や内臓脂肪があると、交感神経が緊張状態になりやすく、血圧を上昇させるホルモンが健康な人より多く分泌されてしまうのです。
また、糖尿病を発症している患者さんの場合、膵臓から分泌されるインスリンの効きが悪くなるため、血糖値を下げるためには多くのインスリンを必要とします。

しかし、このインスリンの働きには血糖値を下げるだけでなく、腎臓からのナトリウム排出を抑制する作用もあるといわれ、体内の塩分濃度が高まることで血圧上昇につながるとされています。

最近の糖尿病治療では「糖質制限」の食事療法が注目されていますが、糖尿病合併症を予防するためには糖分だけでなく、塩分(ナトリウム)の摂取量にも注意すべきです。
現在はまだ正常血圧の糖尿病患者さんでも、減塩をすることでさらに血圧を下げることが可能だといわれています。糖尿病の食事療法を開始するタイミングで、塩分制限についても改めて見直していく必要があるでしょう。

糖尿病の心疾患予防に塩分制限が欠かせない理由

糖尿病治療を行っている患者さん向けのガイドラインでは、糖尿病のあらゆる合併症を予防するために「塩分摂取量」を減らすことが推奨されています。その具体的な理由として、糖尿病患者さんの心疾患予防といった目的があります。

日本国内の糖尿病患者さんを対象とした調査では、食事からの塩分摂取量が多くなるにつれて、心筋梗塞、動脈硬化、脳卒中などのリスクが跳ね上がることがわかっています。
2型糖尿病患者さんの場合、塩分摂取量が基準値より多いと「心疾患」を発症する危険性が、なんと2倍以上になるというのです。
さらに、血糖コントロールが悪く、ヘモグロビンA1cが9.0以上の患者さんでは、心疾患のリスクが9.91倍にも高まることも判明しています。

これは、新潟県立大学の人間生活学部によって行われた「日本人の2型糖尿病患者さんを対象としたコホート調査」でわかったものです。糖尿病を発症すると、あらゆる合併症への注意が必要となりますが、心疾患への対策も忘れないようにしましょう。心筋梗塞などの心疾患は、生命に直結する恐ろしい病気です。

日々の血糖コントロールと併せて、食事からの塩分摂取量を管理していくことは、心疾患をはじめさまざまな糖尿病合併症の予防にもつながるため、決して疎かにしてはいけません。

 

糖尿病患者が塩分過多の食事をすると脳卒中になる?

前述した通り、糖尿病治療中の患者さんはさまざまな合併症に注意する必要があります。糖尿病合併症の発症は、高血糖や高血圧によって血管内部が損傷することが主な原因といわれており、糖分や塩分の過剰摂取は厳禁です。

なかでも「脳卒中」は、糖尿病患者さんが気をつけたい病気のひとつです。脳卒中は、運動不足や偏った食生活、喫煙、過度な飲酒などの乱れた生活習慣をはじめ、糖尿病、脂質異常症などが原因となって発症することが少なくありません。さらに、脳卒中を起こす一番大きな原因は、高血圧だとされています。

繰り返しになりますが、糖尿病を治療中の患者さんは健康な人と比べて高血圧になりやすいことが判明しています。糖尿病と高血圧症を同時に発症している人は、半数以上にものぼるといったデータもあるほどです。
特に、最高血圧が130㎜Hg以上、最低血圧が80㎜Hg以上の人は脳卒中などの循環器疾患リスクが上昇します。

糖尿病と診断された方は、高血圧や動脈硬化からの脳卒中リスクを低下させるためにも、食品に含まれている糖質を把握すると同時に、塩分過多の食事にも注意しなければなりません。
血圧を下げるには、塩分過多の食生活を見直して「減塩」を心がけることがベストだといわれています。高血圧や動脈硬化の進行をおさえたい場合、1日の塩分摂取量を10g未満に設定しましょう。

また、カロリーやコレステロールの摂り過ぎにも注意してください。
特に、悪玉コレステロールである「LDLコレステロール」が増加すると、血液自体をドロドロにして血管壁にこびりつきやすい状態へと導いてしまいます。血管の内径を狭めるだけでなく、血栓ができやすくなるため危険です。

もちろん、日頃から糖尿病の食事療法をきちんと実践できていれば、問題はありません。
医師から指導される食事療法は、糖尿病患者さんの血糖コントロールだけでなく、脳卒中、高血圧、心筋梗塞、動脈硬化などの発症を予防する「健康食」です。
「血糖値もヘモグロビンA1cも改善されているから大丈夫」と油断せずに、良好な血糖コントロールを実現した後も、しっかりとバランスのとれた食生活を継続してください。

糖尿病食事療法の塩分量はどれくらいが良いの?

一般的な糖尿病食事療法では、カロリー、糖質、脂質の摂取量に気を配るものですが、高血圧や動脈硬化、脳卒中などの予防をするためには、塩分量にも注意しましょう。

1日の摂取目安塩分量に関しては、「10g以下にするべき」「5g以下を目指そう」などとさまざまな説があるため、混乱してしまう患者さんも多いかもしれません。

日本高血圧学会では、糖尿病患者さんの循環器疾患や腎臓病の予防には、塩分摂取量を「1日6g以下」に設定することを推奨しています。
また、糖尿病ガイドラインにおいても「高血圧がある糖尿病患者の塩分摂取量は6g以下」と明記されているのです。

しかし、「6gの塩分」とは一体どの程度の量なのか、すぐにイメージできる人は少ないでしょう。わかりやすい例を挙げるとするならば、カップラーメン1つで約5~6gの塩分が含まれています。梅干しなら1個あたり2~3g、たくあんは1枚あたり1g程度だといわれており、よほど注意していなければ1日の塩分摂取量は軽く6gを超えてしまうでしょう。

前述した通り、日本人の平均的な塩分摂取量は1日あたり10~14gにものぼります。
これは、漬物や味噌、しょうゆなどの日本特有の食生活が影響していると考えられていて、さらにラーメンやインスタント食品、ファーストフード、ファミレス、コンビニ食によっても塩分過多になりやすいため、できるだけ外食は控えるように心がけてください。

レシピや調理法を工夫して塩分摂取量を減らそう

糖尿病食事療法を行う際には、日本糖尿病学会が発行している「糖尿病食事療法のための食品交換表」を参考にしている患者さんも多いでしょう。
しかし、いくらカロリーや糖質、脂質などに注意しながら食品を選んでいても、レシピや調理方法によっては塩分量が一気に跳ね上がってしまうことがあります。
塩分の摂り過ぎを防ぐためには、食品の調理法を工夫することが何よりも大切です。

新鮮な季節の食材であれば、薄味や減塩、無塩での調理でも素材本来の味を十分に楽しめるでしょう。また、こんぶやわかめ、きのこ類、かつおぶしなど「うまみ成分」の濃い食品を選ぶようにするのもポイントです。塩分控えめでも物足りなさを感じることなく、お料理を堪能することができます。

また、減塩しょうゆや減塩味噌を選ぶようにすることも、糖尿病からの高血圧を予防するためには効果的でしょう。最近では、さまざまなメーカーから減塩シリーズが販売されており、スーパーでも手軽に購入が可能です。

食塩やしょうゆのかわりに、レモン、すだち、かぼす、ゆずなどの柑橘系の酸味や、山椒、大葉、わさび、しょうがなどの薬味で味のアクセントをつける調理法もおすすめです。
さらに、お酢やごま油を上手に活用すると、お料理のバリエーションも豊かになります。
塩気ではなく、香りや風味による味の変化を楽しめるよう、少しずつでもよいので舌を慣らしていくように心がけましょう。

糖尿病の塩分摂取管理に減塩モニタを活用

糖尿病の治療を開始している患者さんは、腎症や高血圧、動脈硬化などの合併症が悪化する前に、しっかりとした塩分摂取管理をする必要があります。
しかし、「自分が摂取している塩分量がよくわからない」「塩分摂取量の把握が難しい」といった方も少なくないでしょう。
このような場合には、塩分摂取量簡易測定器の「減塩モニタ」を活用することをおすすめします。

減塩モニタは、医療機器ではありませんが、自宅で簡易的に塩分摂取量を調べることができる便利なアイテムです。本来であれば、厳密な塩分摂取量の測定には「24時間分の尿」をすべて溜める必要がありますが、減塩モニタなら1回分の尿のみで計測できます。
もちろん、糖尿病の教育入院などでは、1日の尿をすべてためてから検査することがほとんどです。しかし、日常生活を送っているなかでは、仕事や外出などもあるため実行するのは困難でしょう。

そこで開発されたのが、減塩モニタです。横浜市立大学医学部の杤久保修教授によって研究され、早朝尿(夜間尿を含む)だけで摂取塩分量を計測できるようになりました。
使い方は非常に簡単で、早朝尿をカップに全量採取してから「減塩モニタ」のセンサー部分を差し込み、ボタンを押すだけで計測が可能です。グラム単位でデジタル表示をしてくれるので、高齢者でも使いやすく、15秒程度で計測が完了します。
2週間分のデータを保存できるので、継続的な健康管理が手軽に行えるのも特徴のひとつです。

減塩モニタは、糖尿病患者さんの食事療法への活用はもちろんのこと、高血圧、心疾患、脳疾患、腎臓病、妊娠中の女性からも注目されている「塩分摂取量簡易測定器」です。
自分自身が摂取した塩分量が把握しにくいと感じている方は、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。

塩分の摂り過ぎで糖尿病リスクが高まる?

糖尿病といえば「糖分(糖質)が多い食品を避けるべき」といったイメージが浸透しているでしょう。しかし、塩分の摂り過ぎでも糖尿病の発症リスクが高まる可能性があると示されたのです。
この研究は、スウェーデンのカロリンスカ研究所で行われ、第53回欧州糖尿病学会でその結果が報告されました。35歳以上の2型糖尿病を発症しているスウェーデン人1,136人と、1型糖尿病の一種である「成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)」患者355人、糖尿病ではない健康な男女1,379人を対象として、データ解析したものです。

その結果、食塩の摂取量が1日あたり2.5g増加するごとに、2型糖尿病を発症するリスクが65%も上昇することがわかりました。
さらに、1日あたりの塩分摂取量が7.3g以上と多いグループでは、6g未満のグループと比較して2型糖尿病の発症リスクが72%増、成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)を発症するリスクは2倍にもなると判明したのです。

塩分摂取が糖尿病を発症させるメカニズムについては、明らかとなっていませんが、塩分の過剰摂取によってインスリン抵抗性が強く出る可能性が示唆されています。また、「多くの塩分を摂ることで体重増加にもつながっているのではないか」とも考えられているといいます。

まとめ

糖尿病を治療中の患者さんは、日々の良好な血糖コントロールを行うと同時に、糖尿病の合併症である動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞などの予防も意識しなければなりません。
そのためには、あらゆる病気の原因となる「高血圧」に注意する必要があります。
食品自体のカロリーや糖質、脂質はもちろんのこと、食事に含まれている塩分量を減らして、少しでも血圧を下げていく努力を積み重ねていくべきです。

減塩を心がけた薄味のおかずは、炭水化物である白米の食べ過ぎも防止してくれます。5年後、10年後にも健康的な生活を送っていけるように、血糖値だけでなく血圧の管理もしっかりと行って治療をしていきましょう。

この記事の監修ドクター

自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得している自然療法専門医。
スコッツ先生のプロフィール
https://gluco-help.com/media/lose-weight-diabetes27/

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