テーマ:糖尿病

糖尿病の治療薬にはどんなものがある?一覧と副作用

糖尿病の治療薬に関する基礎知識

弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病の治療薬にはどんなものがある?
A. 血糖コントロールのための経口薬や注射薬が主な治療薬です。

この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得している自然療法専門医。
スコッツ先生のプロフィール
https://gluco-help.com/media/lose-weight-diabetes27/

糖尿病の3つの治療方法

糖尿病の治療で基本となっている治療は3つあります。1つは薬を使って血糖値をコントロールする「薬物療法」です。2つ目は食事内容を見直して適切なカロリーや糖質を摂取する「食事療法」。そして最後は運動して血圧や血流を改善する「運動療法」です。今回はその中でも薬物療法に焦点を当てて解説していきます。

糖尿病の治療薬も服用するものから、注射するものまでさまざまな薬があり、商品も多く出ていますので、覚えるのも大変です。使用に注意が必要なものもありますので、薬のことをよく知って正しく使用しましょう。

糖尿病の薬物療法

糖尿病の治療の中でも薬物療法は、もっともよく利用されている治療方法です。これまでさまざまな薬が開発されていますが、大きく分けて、「経口血糖降下薬」による治療と「インスリン注射」による治療方法があります。

インスリンの分泌量が少なかったり、働きが悪かったりするとインスリン注射が必要とされますが、必要なければ経口血糖降下薬が処方されます。また、まれにですがすい臓を休ませるために、短期間注射を行うこともあります。

糖尿病の治療薬は薬によって効能が違い、以下のような種類があります。

・インスリンの作用を高めるもの
インスリンの分泌を増やしたり、抵抗性を減らすことで効き目を高くします。これにより、血糖値を下げる働きを助けます。

・肝臓から出てくる糖をコントロールするもの
肝臓は栄養の貯蔵庫でもありますので、糖も貯蔵しています。何らかの原因で肝臓の機能に障害が出ると、肝臓に蓄えられていた糖が、過剰に血液へと供給されてしまうことがあります。そしてこれにより高血糖になることがあるのです。それを防ぐためにコントロールする薬があります。

・血糖値を上げるホルモンを抑制するもの
血糖値が上がってしまう原因はいくつかありますが、これらの薬の作用は血糖値を上げる作用を持つ特定のホルモンを抑制し、血糖値の上昇を抑えることです。

・インスリンを補充するもの
おもに1型糖尿病患者に対して行われる治療法で、インスリンがほとんど、あるいはまったくない人は血糖値を下げる機能がないため、インスリンを体外から補充することでその機能を維持します。

では、具体的に薬物療法で使われる薬の一覧はどのようなものがあるのでしょうか?

インスリンの分泌を助ける薬

・スルホニル尿素(SU)薬
すい臓の中にあるβ(ベータ)細胞を刺激することで、インスリンの分泌を促します。インスリンが分泌されれば、その作用により血糖値を下げることが可能です。ただし、これはインスリンを分泌する機能が衰えていない人向けの薬です。

・DPP-4阻害薬
この薬は2つの働きを持っており、1つはインクレチンというインスリンの分泌を助けるホルモンの分解を抑えることです。2つ目は血糖値を上昇させる働きのあるグルカゴンというホルモンの分泌を抑えることです。この血糖値を上げる要因になっている2つの働きを阻害することによって、血糖値を低下させるのがこの薬の効力です。

・速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
効果はスルホニル尿素薬とほぼ同じですが、こちらの薬は血中に吸収される時間と消失する時間が速いため、すぐに効果が現れ、しかも持続時間もとても短くなっています。そのため、食後の高血糖を抑えることができます。食事の5〜10分前に飲めばいいので、飲み忘れが減ります。

インスリンの作用を高める薬

・チアジリゾン薬
チアリジゾン薬の特徴は、インスリン抵抗性を改善することですが、もうひとつは1日の全体的な血糖値を下げることで、その点はスルホニル尿素(SU)薬と同じです。ただしこの薬はインスリンの分泌を促すことがありませんので、血糖値が下がりすぎることにより起きる「低血糖状態」に陥ることはほとんどありません。

副作用で体重が増えたりむくみが出ることがあります。そのため、食べすぎないことや塩分の摂りすぎに少し気をつける必要があります。

・ビグアナイド薬
血糖値が上がる原因のひとつに、栄養の貯蔵庫である肝臓が正常に働かず、過剰なブドウ糖が血液へ供給されてしまうことがあります。ビグアナイド薬は肝臓から過剰なブドウ糖が供給されるのを抑える働きがあります。

そのほかには筋肉や脂肪でのインスリン抵抗性を改善し、血糖の取り込みを増やしたり、小腸から糖分が吸収されるのを抑えたりと、血糖値を下げる複数の作用があります。ビグアナイド薬は1日の全体的な血糖値を下げる目的がありますが、チアリゾン薬と同じでインスリンの分泌を促さないため、ほかの薬と併用しない限りは低血糖の心配はほとんどありません。

副作用としては、食欲不振や下痢などがあり、ごくまれに乳酸アシドーシスという非常に危険な症状が出ることがあります。

糖分の排出と吸収を調整する薬

・SGLT2阻害薬
ブドウ糖は人にとって重要なエネルギーですので、普通は体外へ排出されることはありません。ですが、高血糖状態になると血液中の増えすぎたブドウ糖を減らすために、尿に混ざって尿糖として排出されます。血液を必要なものと不要なものに分けているのは腎臓ですが、糖は人の体に必要なものなので、本来なら排出されずに体内へ戻されます。

ですが、高血糖状態では糖分が多すぎて体内へ戻す作用が間に合わず、尿に混ざって排出されてしまうのです。血糖値を下げるにはそのほうがいいのですが、腎臓にあるSGLT2という仕組みがブドウ糖を再吸収しようとしてしまいます。そこでSGLT2の仕組みを阻害することで、尿糖の排出される量を増やそうというのが、SGLT2阻害薬の目的です。

この薬は食前や食後など関係なく、実際に血糖値が高い状態のときに尿糖を増やして血糖値を下げることができます。この薬の副作用はよくわかっていませんが、尿糖が増えるため膀胱の感染症がある可能性があるといわれています。また、ブドウ糖が利用されずに体外へ排出されてしまうため、体重が減る作用があります。

・α(アルファ)-グルコシダーゼ(α-GI)阻害薬
血糖値は1日の中で何度も変動していますが、食後に高くなりしばらくすると下降するという性質を持っています。糖尿病の治療では血糖値を下げることが第一ですので、理想的なのは血糖値が高いときに下げる作用が強くなり、低いときは作用を弱めることができるのがベストです。そういう作用を持った薬がα-グルコシダーゼ阻害薬です。

α-グルコシダーゼ阻害薬は、食事が消化されるスピードを抑えることで血糖値の上昇も緩やかにするという特徴を持っています。α-グルコシダーゼというのはそもそも小腸に存在する酵素で、食事により摂取された糖質をさまざまな糖に分解する役割を持っています。

その分解された糖が体内に吸収されて血糖が増えますので、α-グルコシダーゼの働きを阻害して糖の吸収を抑えようというのがこの薬の目的です。これにより、血糖値の急上昇を防ぐことができますので、この薬は1日3回食前に服用することになっています。食後に服用しても効果は得られません。

糖質の消化吸収を抑えているため、おなかが張る、下痢、便秘、おならが増えるなどの副作用があります。インスリンの分泌には関係がないため、ほかの薬と併用しない限り低血糖の心配はほとんどありません。

注射による薬物療法

・インスリン注射
インスリンの分泌には2種類あります。それは、1日を通して一定量分泌される「基礎分泌」と、食後に上昇した血糖値に応じて分泌される「追加分泌」です。1型糖尿病は基礎分泌も追加分泌もほぼゼロになりますので、血糖値を下げることができなくなり大変危険です。そこで、インスリン療法により、外部からインスリンを補うことで血糖値を改善していきます。

2型糖尿病の場合は、経口血糖降下薬などを使用しても血糖コントロールが改善されなくなってきた場合に、基礎分泌を増やすか追加分泌を助ける形で少しずつ補充していきます。基礎分泌を補うインスリン製剤を「持効型溶解インスリン」と呼び、血糖値を下げる作用がほぼ一定して長時間つづきます。

追加分泌を目的として使うインスリンは「速効型インスリン」や「超速効型インスリン」です。注射をしてすぐに血糖値の降下が起き、短時間で効果はなくなります。特に超速効型はその特徴が強くなっています。また、持効型と速効型の間の「中間型インスリン」や、1回の注射で基礎分泌と追加分泌の両方の効果がある「配合製剤」もあります。

注射の種類のほかにも、注射器の形もいくつか種類があり、痛みがないものもありますので、患者はそこまで負担を感じずに毎日使用することができます。

・GLP-1受容体作動薬
人が食事をすると、小腸や十二指腸から分泌されるホルモンに「インクレチン」というものがあります。インクレチンにはすい臓のインスリン分泌を促し、血糖値を上げる作用のあるグルカゴンの分泌を抑える働きがあります。

しかも、インクレチンが働くのは高血糖のときだけですので、インクレチンを増やすことは、低血糖のリスクなく血糖値を下げることができる効果的な方法だといえます。その働きに注目して作られたのが、GLP-1受容体作動薬です。インクレチンの中でもGLP-1というタイプは血糖コントロールだけでなく、体重増加を抑える効果もあります。

GLP-1はDPP-4という酵素に短時間で分解されてしまうのが問題で薬にするのが困難でしたが、GLP-1に手を加えてDPP-4に分解されないように作られました。GLP-1受容体作動薬は高血糖のときのみ作用するので、食後の高血糖はもちろん食後以外でも高血糖のときがあれば、それを下げることができます。

この作用はDPP-4阻害薬とほぼ同じですが、GLP-1受容体作動薬のほうが血糖値を下げる作用も、体重低下の作用も強くなっています。

GLP-1受容体作動薬もインスリン製剤と同じく、患者自身が注射することで使用します。副作用として現れる可能性のあるのは、下痢や吐き気です。高血糖の場合のみ作用するため、ほかの薬と併用していない限りは低血糖の心配は、ほとんどありません。

糖尿病治療薬の副作用と低血糖

糖尿病の薬には副作用をもたらすものや、低血糖状態を引き起こすものがありますので、自分が使用する薬の特性をよく知っておく必要があります。副作用については、ビグアナイド薬以外はそこまでひどいものはありません。また、人によって出たり出なかったりするため、気になる場合は医師に相談して処方を変更してもらうなどして対処しましょう。

低血糖については、薬の副作用というよりは患者の血糖状態と薬の作用が噛み合わなかったときに起こることがほとんどです。ですから使い方やタイミングを間違えなければ防ぐことができます。

使用方法については、医師から説明がありますので、その説明をしっかり守って正しく使用しましょう。また、万が一低血糖になってもブドウ糖などの糖分をすぐに摂取すれば、回復することができます。

まとめ

薬物療法は1型糖尿病の患者にとってはなくてはならないものですし、2型糖尿病の患者にとっても助かるものです。基本的にはすべての治療が同時進行で行われるため、薬はほとんどの患者に処方されます。

糖尿病の薬は飲むだけ、あるいは注射をするだけで高い効果が得られます。ですから確かに便利ですが、薬ばかりに頼っていてはなかなかよくなりません。薬物療法だけで食事療法も運動療法もしていない状態だと、血糖値が下がるのは最初だけであとは停滞するか、再び元に戻るでしょう。つまり薬で血糖値を抑えているだけで、病気そのものは治っていない状態になるのです。

薬物療法、食事療法、運動療法はどれも効果的な治療法ですが、どれかひとつをやればいいというわけではなく、すべてをバランスよく実践していくことで、最大限の効果を得ることができます。糖尿病の治療でなかなか改善しない人に見られるのは、どれかの治療に偏ることです。

薬物療法に比べると、食事療法と運動療法は実践が難しい治療法になります。薬は摂取するだけで特別な努力を必要としませんが、ほかの2つはほぼ毎日続けていくことです。特に運動は日ごろしていない人にとっては、いきなり始めるのは難しいところがあります。ですから、少しずつはじめて徐々に習慣にしていきましょう

薬物療法も大事な治療ですが、ほかの食事療法や運動療法もしっかり実践して、はじめて意味が出てきます。すべてを上手に実践して血糖コントロールしていきましょう。

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