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血糖値を下げる薬(飲み薬)
食事療法と運動療法で血糖値が下がらない場合、血糖値を下げる薬が処方されます。薬物療法の開始です。
糖尿病の薬は飲み薬と注射薬に大別されます。ここでは経口血糖降下薬の種類や飲み方、注意点などをお伝えしたいと思います。
血糖値を下げる薬を処方される時
糖尿病の治療は「食事療法・運動療法・薬物療法」の3種類があります。糖尿病になってもすぐに薬が処方されるわけではなく、一般的に薬を使わない治療からスタートします。
血糖値の悩みがある場合に気になるのは、どんな状態になったら担当医から「薬物療法を始めましょう」と切り出されるかでしょう。
血糖値を下げる薬が処方されるタイミング
すぐに薬物治療が始まる1型糖尿病とは異なり、2型の場合はよほど高血糖にならないと薬物治療は行われません。最初は食事療法と運動療法で血糖値をコントロールするよう指導されます。
血糖値が下がらなければ、合併症のリスクの心配があるため、食事療法と運動療法に加えて薬物治療も始めなければなりません。
食事制限の失敗や運動不足など血糖コントロールがうまく行かない理由は色々あります。血糖値が高い状態が長時間続くのはマイナスの影響しかありません。
血管もどんどんボロボロになり、動脈硬化のリスクが増え、その他の病気を発病するリスクも上昇します。薬を使って強制的に血糖値を下げなくてはならない状況です。
糖尿病になる方は、インスリンの働き、分泌量に問題が生じています。体内では血糖値を一定に保つため、膵臓から常にインスリンが分泌されています。
空腹時に分泌される「基礎分泌」と食後の「追加分泌」、この2パターンで24時間数値が安定する仕組みです。何らかの理由でインスリンの分泌量が不足したり、働きが悪くなると高血糖になります。分泌量も少なく機能面もダメなケースも珍しくありません。
薬物治療を行う時はインスリンの分泌量や効き目をチェックした上で、必要な薬が処方されます。
糖尿病自体は薬で治らない
糖尿病の薬の目的は血糖値を下げることで、あくまでも対症療法です。多くの種類がある血糖値を下げる薬は、病気そのものを治すための薬ではありません。
対処療法である以上、「薬を飲んでいるから大丈夫」と考えるのは間違いです。食事療法や運動療法をさぼってしまうと、薬の効果も半減し病気も進んでしまいます。
膵臓からインスリンがほとんど出ていない場合、注射療法を始める必要がありますが、ある程度分泌されている場合は飲み薬で対応できるケースが大半です。
注射治療は何かとハードルが高いため、できれば飲み薬で済むよう日々の血糖値コントロールを行いましょう。数値が改善すれば薬なしの治療に戻ることも不可能ではありません。
血糖値を下げる飲み薬は3種類
血糖値を下げる飲み薬は作用によって「インスリンを出しやすくする薬」、「インスリンを効きやすくする薬」、「糖の吸収や排泄を調節する薬」の3種類に大別することができます。
また、複数の薬を組み合わせた配合薬が処方されることもあります。配合薬は飲む薬の数が減るので、服用のストレスが軽減されるメリットがあります。
薬の種類によって作用や飲み方や注意事項が異なります。処方された薬の特徴を把握しておきましょう。
インスリンを出しやすくする飲み薬
インスリンの分泌量が足りないと診断された患者さんには、膵臓に働きかけてインスリンの分泌量を増やす薬が処方されます。
メジャーな薬は「スルホニル尿素薬(エスユー薬)」、「速攻型インスリン分泌促進薬」、「DPP-4(ディー・ピー・ピー・フォー)阻害薬」の3タイプになります。
スルホニル尿素薬(SU薬)
一般名(商品名):グリベンクラミド(ダオニール、オイグルコン)、グリクラジド(グリミクロン)。グリメピリド(アマリール)など
膵臓のβ細胞に刺激を与え、インスリンの分泌を促進する飲み薬。インスリン分泌不足によって血糖値が上昇している患者さんが服用することで、インスリンの分泌量を増え、血糖値を下げることができます。
空腹時血糖値を下げるのが得意。食前30分前または食後に服用します。
主な副作用 → 低血糖、体重増加など
※長期間の服用で効果が現れにくくなる
速攻型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
一般名(商品名):ナテグリニド(ファスティック、スターシス)、ミチグリニドカルシウム水和物(グルファスト)、レパグリニド(シュアポスト)など
食事の直前(5~10分前)に服用することで、インスリンの分泌が促進され、血糖値を下げることができます(1日3回服用)。
SU薬よりもスピーディーに吸収されるので、すぐに効きます。血中からの消失も速い特徴があります。食後の高血糖を予防するのに合った飲み薬です。
主な副作用 → 低血糖など
DPP-4阻害薬
一般名(商品名):毎日服用するタイプ/ビルダグリプチン(エクア)、シタグリプチンリン酸塩水和物(ジャヌビア、グラクティブ)、リナグリプチン(トラゼンタ)、サキサグリプチン水和物(オングリザ)週1回服用するタイプ/オマリグリプチン(マリゼブ)、トレラグリプチンコハク酸塩(ザファテック)
膵臓に作用するホルモン「インクレチン」の働きを強化することで、血糖値を下げることができます。
同時に血糖値を上げるホルモン「グルカゴン」の分泌もセーブするので、2つの作用によって血糖値の上昇が食い止められます。
体重が増加する副作用が少なく、単独で使用する分には低血糖の発作が起きにくいタイプ。飲み方は毎日服用するタイプと週に1回服用するタイプの2種類あります。
主な副作用 → 低血糖、便秘など
※SU薬やインスリン製剤と併用する時は低血糖に注意
インスリンを効きやすくする飲み薬
インスリンが分泌されていても、しっかり機能していない状態のことを「インスリン抵抗性」と呼びます。インスリン抵抗性の問題を抱えている場合、インスリンを効きやすくする薬を飲んで働きを改善し、血糖値の上昇を抑えます。
インスリンの効き目を底上げする薬は「ビグアナイド薬」と「チアゾリジン薬」の2つのタイプがあります。
ビグアナイド薬
一般名(商品名):メトホルミン塩酸塩(グリコラン、メトグルコ)、ブホルミン塩酸塩(ジベトス)など
食後に服用すると肝臓が糖を作るのを抑える作用、消化管から糖が吸収されるのを抑える作用を発揮します。筋肉でインスリンに対する身体の感受性を高める効果もあります。
高齢者や他の疾患を抱えていると、副作用が強く出ることもありますが、単独の使用では低血糖の発作が起きる確率が少なく、薬の影響で体重が増えることもほとんどありません。
主な副作用 → 胃腸障害による食欲不振や吐き気、下痢や便秘、乳酸アシドーシス(乳酸が蓄積して生じる病態で致死率が50%と高い)など
※造影剤を使う検査を受ける前は一時的に服用を中止すること
※飲酒量が多い患者さんは使用不可
チアゾリジン薬(インスリン抵抗性改善薬)
一般名(商品名):ピオグリタゾン塩酸塩(アクトス)
食後に服用することで脂肪組織や筋肉、肝臓などに作用します。インスリンに対する身体の感受性を高め、血糖値を下げてくれる薬です。単独で服用する分には低血糖のリスクは少ないものの、太りやすくむくみやすい副作用を伴います。
主な副作用 → むくみ、急激な体重増加など
糖の吸収や排泄を調整する飲み薬
食べ物の糖の吸収スピードを遅くすることで血糖値の急上昇を抑えてくれる薬。身体に取り込まれた糖を尿中に出させることで血糖値が上がりすぎるのを防ぎます。
「α-グルコシダーゼ阻害薬」、「SGLT2(エス・ジー・エル・ティー・ツー)阻害薬」の2タイプがあります。
α-グルコシダーゼ阻害薬
一般名(商品名):ミグリトール(セイブル)、アカルボース(グルコバイ)、ボグリボース(ベイスン)など
食事の直前(5~10分)に服用すると、糖分が小腸から吸収&消化されるスピードが緩くなります。食後高血糖を抑制し、血糖値を下げてくれる薬です。
体重が増えにくく、単独で服用する分には低血糖になりにくい特徴があります。ただし服用中は糖の吸収が抑制されているため、万が一低血糖が起きた場合、砂糖などの二糖類ではなく、ブドウ糖を飲んで対応する必要があります。
主な副作用 → お腹の張り、下痢、おならの回数の増加など
SGLT2阻害薬
一般名(商品名):カナグリフロジン水和物(カナグル)、イプラグリフロジンL-プロリン(スーグラ)、トホグリフロジン水和物(アプルウェイ、デベルザ)
一般的には糖は尿をつくる過程で一旦尿中に放出されたあと、再び血液中に戻されます。この薬を服用していると血液中にブドウ糖が再び取り込まれにくくなります。その結果血糖値が低下します。
インスリンの分泌に直接作用するわけではないので、単独で服用する分には低血糖が起きる確率は高くありません。1日1回朝食前又は朝食後に服用します。
主な副作用 → 低血糖、頻尿、脱水、皮膚症状、尿路感染、性器感染など
血糖値を下げる薬は飲みたくない
実際に薬物療法がスタートすると大半の患者さんが「薬はもう飲みたくない」と不満を感じるようです。
低血糖などの副作用の他、通院回数が増えるので通うのも大変になります。薬を処方される分医療費も高くなります。約20%の患者さんは勝手に薬の服用を中断してしまいますが、自己判断は禁物です。
血糖値を下げる薬にダイエット効果?
肥満は血糖値が上昇する要因のひとつですから、「血糖値を下げる薬で自然に痩せる?」のではと考える方がいらっしゃいます。
薬の影響で体重が落ちるケースもありますが、体重が増える副作用を伴う薬も多いため、逆に太ってしまうケースもあります。
メジャーなスルホニル尿素薬も、体重が増えやすくなる副作用があります。また、インスリン抵抗性を改善するビグアナイドは比較的体重が増えにくい特徴があるものの、便秘を起こす副作用を伴うため、腸内環境の悪化で太る可能性もあります。
血糖値を下げる薬と市販薬を同時に飲めない?
血糖値を下げる薬は、他の薬の相互作用を受けることがあるため、服用中は市販薬を飲むことができません。
例えば総合胃腸薬や消化薬に入っている炭水化物消化酵素(ジアスターゼ)も、要注意成分のひとつ。α-グルコシダーゼ阻害薬と一緒に飲むと作用が打ち消しあい、血糖値を下げる効果が弱くなります。
また、アスピリンも血糖値を下げる作用とインスリン作用を強める働きがあるので、併用すると低血糖の発作が出やすくなります。
他にも、血糖値に影響する市販薬はいくつかあるので、注意が必要です。まったく飲めないということではありませんが、担当医や薬剤師さんに毎回確認する必要があります。
50%の患者が血糖値を下げる薬を飲み忘れる
血糖値を下げる薬の大半は1日3回飲む必要があります。面倒と感じる患者さんもいたり、病気のことを周りに知られたくないと考える人も、「薬を飲むタイミングを逃して結局飲めなかった」ということも実際に起こっています。
事実、生活習慣病の薬物治療を受けている患者さんの約50%は薬を飲み忘れた経験がある、と製薬会社のアンケートでも答えています。
また、糖尿病になると認知症のリスクも上昇するため、認知症の症状で飲み忘れが増えるケースもあります。
過去に深刻な副作用を起こした経験を思い出し、薬の服用に積極的になれないこともあるかも知れません。
血糖値の薬には限りませんが、薬を飲み忘れても副作用が起きやすくなるため、まとめて飲むわけにはいきません。
飲み忘れにすぐに気づいた場合、決められた量の半分だけ飲む方法もありますが、2時間以上経過してしまった場合は次の服用時間が迫っているので1回分は飛ばした方が安心です。
血糖値を下げる薬の副作用で怖いのは低血糖
血糖値を下げる薬を服用中に、特に注意が必要なのが低血糖の発作です。血糖値が一気に低くなると最悪の場合、意識を失うこともあるので、車を運転中の大事故に繋がる恐れがあります。早い段階で自己測定を始め、血糖コントロールに役立てましょう。
血糖値を下げる薬の誤飲で重症低血糖に
血糖値を下げる薬を飲むと血糖値が下がりやすくなるので、血糖値の自己測定を行い低血糖の発作を抑える必要があります。
薬の誤飲で重度低血糖が起こるケースも多く、年間2,000人以上が重症低血糖の症状で病院に運び込まれ、約半分の患者さんがそのまま入院しています(日本糖尿病学会調べ)。
また、繰り返し低血糖の発作を起こしていると自覚症状が乏しくなる無自覚性低血糖に進展する可能性もあります。無自覚性低血糖が判明した患者さんは、運転免許の取得、更新ができなくなることもあるので、お仕事によっては死活問題になりかねません。
血糖値は多少変動しても自覚症状が出ないため、副作用を事前に察知するためにも測定器でこまめに測る対策が有効です。
飲み薬で治療している段階では病院から強制されることはありませんが、自発的に自己測定を始めることが、後々の健康寿命を延ばすことなります。
血糖値の自己測定で飲み薬の効果が倍増
血糖値の変動情報を担当医にフィードバックすることで、よりジャストフィットする薬の種類、量を見極めて貰えます。薬の効き目を数値で実感しやすくなるのもメリットのひとつになります。薬を飲み続けるモチベーションの維持にも繋がります。
保険適用前に自己測定を始めるなら
自己測定は「保険が効く注射治療が始まってから」と考えていますか?自己測定はなるべく早い段階で始めた方がメリットも多くなります。
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飲み薬で治療している段階で自己測定を始め、治療が次のステージ(注射治療)に進むのを予防しましょう。最近は食事療法、運動療法の段階で自己測定を始めて血糖コントロールに成功し、飲み薬を処方されるのを免れている患者さんも増えています。