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糖尿病による足のむくみ、しびれが出たらどうすればよい?

糖尿病とむくみに関する基礎知識

弊社の商品開発チームの医師監修
Q. よく足がむくむのは糖尿病のサイン?
A. 足のむくみは一時的なものが多いが、なかなか治らない場合は糖尿病の症状かも。むくみの原因から対処法まで解説します。

この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得している自然療法専門医。
スコッツ先生のプロフィール
https://gluco-help.com/media/lose-weight-diabetes27/

足のむくみの原因は糖尿病?

足のむくみの原因は、大きく2種類あります。
まずひとつは、一時的な原因によるむくみです。デスクワークなど長時間同じ姿勢を続けたことで血液の流れが悪くなったり、水分が溜まったりすることでむくみが起ります。また、年齢を重ねるごとに体のポンプ機能を果たす筋肉量が低下し、血液の循環が悪くなるので、高齢者は特にむくみが出やすくなります。このような原因の場合、一晩寝ると治るものがほとんどです。

一方、なかなか治らないむくみは何らかの病気が原因だと考えられます。
例えば、不要な水分を体から排出する役割を持つ腎臓の機能が低下して、体内に水分が溜まりやすくなり、むくみを引き起こすことがあります。また、足のむくみに加えて次のような症状がみられる場合、糖尿病である可能性が考えられます。

  • ひどくのどが渇く
  • トイレの回数が増える(頻尿)
  • 尿が泡立っている
  • 食べても体重が減る、理由もなく痩せる
  • 体が疲れやすい
  • 太る
  • 視力が落ちた
  • 手や足にタコやイボがよくできる

実は、糖尿病には特有の自覚症状というものがないため、気が付かずに進行していることも多いです。むくみ以外にも上記のような症状が出ているときは糖尿病が関係している可能性があります。

 

糖尿病が手足に引き起こす症状の種類

手足がしびれる

糖尿病自体には自覚症状がなく、検査をしないと気付かないまま病気が進行してしまいます。病気が進行すると全身の臓器に不調をもたらし、さまざまな合併症を引き起します。

手足のしびれを感じた場合、糖尿病の3大合併症のひとつである「糖尿病性神経障害」の症状である可能性があります。これは糖尿病患者の中で最も発症する人が多く、早期から起こりやすい合併症状です。
糖尿病性神経障害によるしびれは、両手両足の左右対称部分に現れるという特徴があります。病気の初期段階では足の指や足の裏にしびれやピリピリとした痛みを感じ、進行すると手の指にも症状が現れるようになります。
ただのしびれといって放っておくと、病気の進行が進んでしまうだけでなく、強い痛みを伴う場合もあり非常に危険です。さらに神経障害が進むと、逆に感覚が鈍くなって痛みを感じにくくなります。そうすると傷などの足の変化に気づきにくく、知らないうちに足潰瘍(あしかいよう)や壊疽(えそ)といった足の切断につながる深刻な病気にまで発展します。

手足がむくむ

手足がむくむという症状もまた、糖尿病が原因として発症する3大合併症のひとつ、「糖尿病性腎症」の症状です。糖尿病によって腎機能が低下した結果、体内の不要な水分や老廃物が排出できなくなり、むくみを引き起こします。

手足のしびれの場合は糖尿病神経障害の初期症状でしたが、糖尿病性腎症によるむくみは初期段階では現れず、かなり進行した状態になってようやく症状が現れることが特徴です。
糖尿病性腎症は病気の進行段階によって第1期~第5期まで分かれており、むくみの症状が現れるのは第3期です。第3期に至るまでは10〜20年と長く、特有の症状がありません。しかし、3期以降の進行はきわめて速く、むくみの症状が出てから2〜5年の間に進行し、5期に至ると透析治療が必要となります。
このようにむくみ以外に自覚症状が少ないことや進行するスピードが急速なことなどから、糖尿病性腎症が原因で透析治療を開始する患者数は非常に多くなっています。
一晩寝て治るようなむくみなら心配する必要はありませんが、すでに糖尿病と診断されているような場合、それは糖尿病性腎症の症状かもしれないのできちんと医師に相談して迅速に適切な治療を行う必要があります。

手足のむくみはなぜ起きる?

手足がむくむのは、体内の水分のバランスが崩れてしまうためです。
人間の体のおよそ60%は水分で成り立っており、その3分の2は細胞内にとどまっています。残りの3分の1は細胞外にあり、細胞と血管の間で酸素や栄養などを受け渡す役割を担っています。このバランスは基本的に一定に保たれていますが、場合によって血液中の水分が必要以上にしみ出したり、一度細胞へと移った水分が血管内に戻りにくくなったりして、細胞と細胞の間を埋めている水分が異常に多くなってしまうことがあります。この状態がむくみです。

体内の水分バランスが崩れてしまう要因はさまざまです。
デスクワークや飛行機での長時間の移動などで同じ姿勢をとりつづけると、血液の循環が悪くなり、水分バランスが乱れてむくみが発生します。立ち仕事もまた、重力の影響を受けて足に血液が滞り、むくみを起こします。アルコールの摂取、水分や塩分を摂り過ぎる、精神的なストレスなどもむくみの原因となります。女性においては、ホルモンバランスが変化する生理前や妊娠中、更年期といった時期は自律神経の乱れにより血行が悪くなるため、むくみを感じる人も多いでしょう。
このほか、薬の副作用や病気が原因で起こる場合もあります。

糖尿病とむくみの関係性

糖尿病が原因のむくみの場合、腎臓の機能が正常に働いていないために起こります。
血糖値が高い状態が続くと血管が狭くなったり詰まりやすくなったりして、血液の流れを止めてしまうことがあります。これを動脈硬化と言います。血液が十分に流れないと、全身への適切な栄養や酸素の供給が上手く行われないため、臓器に障害が起こってしまいます。
腎臓内には毛細血管が毛糸玉のように集まった糸球体と呼ばれるものが約100万個存在します。心臓から送られてきた血液が糸球体のなかでろ過され、老廃物や塩分などの不要な物質を尿として体外に排出します。そうして私たちは体内の血液をきれいに保っています。
しかし、糖尿病の影響で糸球体の中の毛細血管内で動脈硬化が起こると、ろ過機能が正常に働きません。その結果、体内に不要物や水分が溜まってしまい、むくみとなって体に現れるのです。

糖尿病で怖いのは合併症を引き起こすこと

尿病と診断される患者の多くは、飲酒、喫煙、運動不足、ストレスなどの生活習慣が原因であることがほとんどです。糖尿病自体に痛みなど自覚症状はなく、医師の指示に従ってきちんと治療を行えば日常生活に問題はありません。

しかし、糖尿病の本当の怖さは「合併症」です。
糖尿病の治療が十分でなかったり、気付かないうちに病気が進行していたりすると、体のさまざまな部分に悪影響を与え、合併症を引き起こします。糖尿病の合併症は失明や腎不全を引き起こしたり、心臓病や脳卒中などの死のリスクが高い病気につながったりと深刻なものが多く、気を付けなければいけません。
このような合併症を発症しないためにも、まずは飲酒や喫煙などの体に悪い生活習慣を改善すること。さらに、糖尿病の治療の基本である「食事療法」「運動療法」をきちんと実施しながら、血糖値を上手くコントロールをしていくことが大切です。

糖尿病による合併症の種類

糖尿病にはさまざまな合併症がありますが、中でも代表的なものが「糖尿病性網膜症」「糖尿病性腎症」「糖尿病性神経障害」です。これらを糖尿病3大合併症と呼びます。
糖尿病3大合併症は主に細かい血管が集まっているところに障害が起きることから「細小血管障害」とも呼ばれます。また、大きな血管に障害が起こることを「大血管障害」と呼び、動脈硬化などがあります。

糖尿病性網膜症

糖尿病性網膜症は、成人後の失明原因第1位の病気です。毎年3000人以上が糖尿病を原因として失明しているというデータもあります。
血糖値が高い状態が続くことで網膜にある細かい血管が詰まったりもろくなったりして、血液が十分に流れず障害が起こります。自覚症状がほとんどなく、知らず知らずのうちに失明寸前まで進行していたというケースもあります。早期発見・早期治療のためには、内科だけでなく眼科でも定期的に検診することが大切です。

糖尿病性腎症

糖尿病性腎症は、上記でもお伝えしたとおり、腎臓内の血管に障害が起こって腎臓の機能が悪くなる病気です。代表的な自覚症状としてむくみが挙げられますが、むくみが現れた時点では病気はかなり進行している状態です。さらに病気が悪化すると、自力で血液を浄化できないため、透析療法が必要となります。
糖尿病性腎症の進行を防ぐためには、タンパク質の過剰な摂取と激しい運動は控えなければなりません。

糖尿病性神経障害

糖尿病性神経障害は、全身をめぐる神経に障害が及ぶため、さまざまな症状を引き起こします。特に多いのが手足のしびれや痛みです。きちんと治療を行えば症状は緩和されますが、治療を怠ると強い痛みがあらわれたり、逆に感覚が鈍くなってしまい気付かないうちにけがをしてしまうなどの危険があります。神経障害が起こる原因としては、糖尿病によって「ソルビトール」と呼ばれる障害を起こす物質が神経細胞に蓄積することや、動脈硬化の影響で血流が悪化し酸素や栄養が不足することなどが考えられますが、はっきりとした原因はまだわかっていません。
糖尿病性神経障害はしびれ以外にも下痢や吐き気、胃もたれなどその症状は全身に及びますが、きちんと治療を続けると症状は緩和されます。

動脈硬化(脳卒中・心臓病)

糖尿病、つまり血糖値が高い状態が続くと、血管に大きなダメージを与えます。特に細い血管が集まる目や腎臓で合併症がおこるように、太い血管でも怖い合併症を引き起こします。それが動脈硬化です。
動脈硬化になると、血管の内側にさまざまな物質が蓄積した結果、血管が厚く硬くなるだけでなく、プラークと呼ばれる隆起を作ってしまいます。このプラークが剥がれて血管に詰まってしまうと、脳卒中や心筋梗塞を引き起こすのです。
動脈硬化は糖尿病だけでなく、高血圧や喫煙なども原因のひとつとされています。

手足のむくみがひどい時の対処法

一時的なむくみの場合、マッサージやストレッチなどで体をほぐし、血流を促してあげると良いでしょう。冬場の寒い時期や室内の空調による冷えもまた血流を悪化させ、むくみの原因となるので、入浴などで体をあたためるのもおすすめです。
利尿作用のある食べ物を食べることもむくみの解消に効果的であるとされています。具体的には、「きゅうり、すいか、りんご、バナナ、昆布、小豆、豆腐、豚肉、かぼちゃ」などがあります。

一方で糖尿病が原因でむくんでいる場合は、血液中の糖分をコントロールする治療が必要です。バランスのよい食事をとること、適度に運動をすること、禁煙、アルコールを控える等生活習慣を改善します。さらに血糖値の状態によっては、これら食事・運動療法に加えて内服薬やインスリン注射などの薬物治療を行います。
これら治療を実施しても改善が見られない場合、糖尿病によって途絶えてしまった血流を再び開かせる「血行再建術」という手術を行う選択肢もあります。

痛みを伴うときの対処法

むくみがひどくて痛い、歩けないという状態が繰り返し起こる場合、それは「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」とよばれる症状の可能性があります。
間歇性跛行は血管の病気である動脈硬化が原因で発症するものなので、マッサージや湿布を貼っても治りません。痛みが出ても休むと治まるために一時的なものと思いがちですが、動脈硬化は足だけでなく脳や心臓の血管にも及んでいることがあります。つまり、そのまま放置してしまうと脳卒中や心筋梗塞を引き起こす可能性があるのです。
このように重大な病気にならないためにも、間歇性跛行が見られる場合はすぐに病院で受診しましょう。

糖尿病患者に向けた専用の靴下がある

高血糖の状態が長く続き、糖尿病が進行すると足に異常が出やすくなります。
これは、動脈硬化によって足のキズが治りにくくなる上に、高血糖の状態は体の抵抗力が弱まっているため細菌に感染する恐れが高くなっています。さらに、糖尿病性網膜症も併発していた場合、視力が低下しているので足の異常に気付かないまま深刻な状態に至っていることも。最悪の場合、足を切断しなければなりません。

そうならないために大切なのがフットケアです。
フットケアとは、大切な足を守るために清潔に保ったり、足を観察してケガがないかこまめに確認したりすることで病気の悪化を防ぐ方法です。このフットケアの一環として、糖尿病患者に向けた専用の靴下もあります。
靴下の選び方としては、吸湿性の良い綿素材のもの、特に5本指靴下がおすすめです。靴下の重ね履きやサイズがきつめのものを履くと、逆に血行を悪くしてしまうので注意しましょう。

糖尿病の治療方法とは?

糖尿病に一度なってしまうと今の医療では完治は難しく、長い時間をかけて病気と付き合っていかなければいけません。その方法としては、高い血糖値を下げるために血糖を上手くコントロールすることが挙げられます。
血糖をコントロールする方法としては、以下の3つがあります。

食事療法

朝食、昼食、夕食の3食を規則正しくバランスよく食べること。食べてはいけない食べ物はありませんが、塩分の摂りすぎは禁物です。

運動療法

運動することによって血流がよくなるとインスリンの効果が高まり、血糖値が下がります。運動によって筋肉量が増えることも、血糖値を下げる効果があります。ただし、どんな運動でも良いわけではなく、ウォーキングやジョギング、水泳などの「有酸素運動」が最適です。

薬物療法

糖尿病の薬は大きく分けて、飲み薬と注射薬があります。薬を投与することによって、血糖値を下げる働きであるインスリンの分泌を促進したり、糖の吸収を抑えたりする効果があります。

糖尿病の治療の基本は、上記の食事療法と運動療法です。そして、血糖値の状態やその人の体質などにあわせて薬物療法が行われます。

まとめ

立仕事や長時間での移動など、一時的に血流が悪くなって起こるむくみであればそれほど心配する必要はありませんが、頻繁に繰り返すむくみは病気のサインかもしれません。特に糖尿病が原因の場合、そのまま放置すると失明や足の切断などにつながりかねない深刻な合併症を引き起こす恐れがあります。
生活スタイルが多様化している中で、生活習慣が原因で発症する糖尿病の患者数は年々増加していると言われます。知らず知らずのうちに糖尿病が悪化していることを防ぐために、むくみ以外に体の不調がみられる場合は早めに病院を受診することをおすすめします。

 

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