目次
糖尿病患者数に関する基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
増加の一途を辿る糖尿病患者数
日本国内では1000万人突破!予防と改善のための対策とは
増え続ける糖尿病患者数
糖尿病は大きく1型糖尿病と2型糖尿病に分けられます。
1型糖尿病
インスリン欠乏による糖尿病。すい臓でインスリンがほとんど、もしくは全く生成されないためにインスリンを注射しなければ生命維持ができない。正確な原因は解明されていないが、他の疾患など何らかの原因によりすい臓の細胞が破壊されてしまうことが1型糖尿病が引き起こす理由だと考えられている。1型糖尿病の発症数は糖尿病全体の発症数の5%ほどに留まり、年齢に関係なく発症が見られる。
2型糖尿病
インスリン分泌不全とインスリン抵抗性による糖尿病。40歳以上の中高年で発症リスクが高く、もともとの体質と生活習慣を原因にすると考えられている。インスリンが働きにくくはなるものの必ずしもインスリンの注射が必要になるわけではなく、食事制限と運動療法で血糖をコントロールすることができる場合が多い。
現在、糖尿病、特に2型糖尿病の症例数が増加しています。糖尿病は一度発症すると完治が難しく、また症状の進行により致死性の高い合併症を発症する可能性もあり、糖尿病の患者数は日本に限らず世界で問題視されています。
この記事では世界や日本で糖尿病が増加している背景やそのデータ、現在国が取り組んでいる糖尿病への対策、個人でできる糖尿病予防・改善策を紹介していきます。
糖尿病患者数増加の背景
現在、世界の糖尿病患者数は4億2500万人を突破し、現在も増加し続けています。このまま対策を講じなければ、2045年には7億人弱にまで到達するといわれています。
増加の一途を辿る糖尿病は、日本でも決して例外ではありません。日本での糖尿病患者数は、2016年の調査によると、1,000万人を突破。13人に1人は糖尿病患者ということになります。
要因として考えられることは
- 高齢者の増加
- 生活水準の向上、食生活の欧米化に伴う肥満の増加
- 交通網の発展による運動量の低下
といった点です。
経済発展、それに伴う生活水準の向上自体は望ましいものではありながら、伴う肥満の増加は健康に対して深刻な被害をもたらしかねません。
世界の糖尿病患者数
国際糖尿病連合(IDF: International Diabetes Federation)は2017年の世界糖尿病デー(11月14日)に世界全体の糖尿病患者数は4億2500万人であると発表しています。この数字は世界の20~79歳の成人の人口と比較すると、11人に1人は糖尿病を発症していることになります。
国際糖尿病連合はこのまま対策を講じなければ2045年には7億人にまで到達し、実に10人に1人は糖尿病患者になるという統計予測を立てています。
国別のランキングで見た時、圧倒的に多いのが中国での糖尿病患者数でした。中国の糖尿病疾病率は、1980年代には1%以下、2000年では5.5%程度であったのが2017年には10%近い数字であり、かなりのペースで増加していることは間違いありません。途上国の中で比較的早期に経済成長を遂げてきた中国で起きている現象については、これから後発で発展してくる途上国各国でも、見られる可能性が高い現象といえます。
糖尿病になると、定期的な薬物・インスリンの摂取や通院で時間的、金銭的コストがかかります。合併症がある場合には就業に制限を受けることすらあります。発症者一人ひとりの苦労も底知れないものではありますが、これだけの規模ともなってくると経済的な損失も決して無視できるものではありません。早期に発見し、適切にケアしていけばコントロールが効きやすくなりますが、世界の糖尿病患者のうち、およそ半分は糖尿病の診断を受けておらず自身が糖尿病であることに気付いていない可能性が高いのが現状です。
今後、糖尿病患者の著しい増加が見込まれるのは、途上国から経済成長しつつある、東南アジア、中南米といった国々ですが、これらの国では定期的な健康診断などの習慣が薄く、早い段階からの啓蒙活動といった取り組みも、重要になってくるかもしれません。
日本の糖尿病患者数
日本の糖尿病患者数は、厚生労働省が推計しています。患者数は年々増加を続け、2016年の調査の段階で1000万人を突破しました。要因として挙げられることは
- 肥満の増加
- 高齢者人口の増加
の2点が挙げられます。
肥満などの生活習慣を要因とした糖尿病2型の発症については、世界各国の共通の要素として挙げられます。ただ、早い段階から先進国であった日本にとっては、近年急激に成長してきた国家と比較すると、肥満は増加の要素としては薄いことが推測できます。日本においてはもう一方の「高齢化」による糖尿病患者の増加が無視できない水準にまで昇っていることが伺えます。
一方で、この患者数の増加が喜ばしい結果をも表していることは、糖尿病患者の平均寿命の伸びを見るとわかります。糖尿病患者の生存率、生存年数が上がれば、必然的にそれは患者数の「増加」に反映されるため、患者数の増加が必ずしも一概にマイナスの側面だけを映し出しているわけではありません。
糖尿病患者の平均寿命は1970年代と2000年代を比較すると、男女平均で10歳前後の伸びがあり、女性75.1歳、男性71.4歳となっています。この間、日本全体の平均寿命の伸びは8歳程度なので、単に平均寿命の押上げの恩恵を受けているわけではなく、改善傾向にあると言えるのではないでしょうか?
糖尿病は直ちに死に至るような病ではなく、適切なケアで血糖値をコントロールしていれば天寿を全うすることも不可能ではありません。高い医療水準を持つ先進国でありながら、「課題先進国」でもある日本の糖尿病ケアの取り組みの成否は、中国をはじめ、今後同じような課題に直面するであろう国々のケアにも直結していくかもしれません。
都道府県別糖尿病患者数
糖尿病に関して比較的適切な知識のもとに必要なケアが行われている印象のつよい日本ですが、その現状やケア状況については地域ごとに大きなばらつきがあります。
2016年に厚生労働省から発表された、都道府県別の「人口10万人あたりの糖尿病死亡率」によると、全国平均は「10.8人」であるのに対して、結果が良好であった県は
1位 愛知県 7.7人/10万人
2位 神奈川 7.8人/10万人
3位 滋賀 8.0人/10万人
4位 千葉 8.6人/10万人
5位 岐阜 8.0人/10万人
といった結果になりました。最も比率を抑えられている愛知県では早い段階から県が糖尿病予防の啓蒙活動を行うと同時に、地域医療機関との連携を進め、早期発見・ケアの体制を築いている結果が表れていると言われています。
2位~5位について特定の地域的な偏りはなく、都道府県ごとの取り組みがそれぞれ成果に表れていると言えるでしょう。
一方で、ワースト5は以下のような顔ぶれでした。
43位 鳥取 14.7人/10万人
44位 富山 14.7人/10万人
45位 福島 16.3人/10万人
46位 秋田 16.9人/10万人
47位 青森 17.0人/10万人
とりわけ、ワースト3位には東北地方が並ぶ形になりました。(なお、東北地方の中で岩手は37位と比較的下位に位置していますが、山形は18位、宮城に至っては10位とむしろ良好な結果を記録しています。)
並べてみると、最上位の県と最下位の県では、倍以上の差が開いている結果となりました。下位の県の特性としては、飲酒量が多い、塩分摂取量が多い、喫煙者が多い、雪国で運動量が少ないなどといった東北地方の地域性、食文化を色濃く反映する結果となりました。富山、鳥取も、日本海側に位置し、寒冷な気候、車社会、日本酒の名産地であることなど、類似した要素を持っています。
地域ごとにも糖尿病に対する認識を持ち、ひとつのコミュニティとして予防、ケアに向けた取り組みを積極的に主導していく必要がありそうです。
糖尿病患者数を減らす取り組み
健康な国民が糖尿病を発症することは国にとっても機会損失が大きく、厚生労働省を中心に、「予防」、「早期発見」、そして「合併症の予防」のそれぞれのステージにおけるガイドラインを定めています。
一次予防: 予防
予防に向けては、加齢や遺伝的な要素など本人にとって変更不能な部分があることを認識した上でにはなりますが、生活習慣の改善については変更可能な要素であるとし、厚生労働省も注意喚起を促しています。
また、適度な運動(ウォーキング)の目安として、男性では9,200歩/日、女性では8,300歩/日という目標値を定めています。
食生活についても、抽象的ではありますが、過食や脂肪の過剰摂取を抑え、量・質ともにバランスの取れた食事をこころがけることが重要、とコメントしています。
二次予防: 早期発見
厚生労働省は二次予防の位置づけとして、早期発見の必要性と重要性についてコメントし、具体的には下記を行っています。
- 検診受診率の向上
- 要生活指導者への対応(事後指導の強化等)
- 三次予防機関(医療機関)へのスムーズな引継ぎと治療の継続
- 高血圧、高脂血症などで通院中の糖尿病ハイリスク患者へのアプローチ
発症していた場合、もしくは、発症リスクの高い「予備群」と診断された場合に、早期に生活指導も受けながら対応していくことで、発症を抑えられる可能性が高まっていきます。
三次予防: 合併症の予防
糖尿病は下記のような合併症を引き起こすことが多いことで知られています。
- 網膜症
- 神経障害
- 腎症
- 脳卒中
- 虚血性心疾患
これらの合併症は患者の生活の質を著しく低下させるにもかかわらず、糖尿病が強く疑われる患者のうち実際に治療を受けているのは45%と半分以下となっています。そのため糖尿病腎症による透析治療導入は年間1万人以上に上り、また糖尿病網膜症による視覚障害の件数も年間約3,000人となっています。決して少なくない数の糖尿病患者が合併症により生活の質を損なっていることが問題視されています。
日本糖尿病学会は三次予防対策として平成11年に「糖尿病治療ガイド」を作成し糖尿病患者の合併症予防対策のガイドラインを講じています。
糖尿病の予防と改善のために個人でできること
前述した通り、日本では厚生労働省を中心に国や地域が糖尿病患者数を減らす取り組みを行っています。しかしながら、実際には二次予防までは個人での取り組みが中心となり、対策の効果を見込むことはできません。前項で定められたガイドラインを参考に生活習慣を改善し、年に1回の定期検診を欠かさないことが重要になってきます。
また、糖尿病を発症してしまっている場合は症状の深刻化や合併症の発症を防ぐ上で自己の血糖値を把握することは大変重要となっています。近年では家庭で使用できる血糖値測定器なども個人で購入できます。それらを活用して自己に効果的でかつ継続できる食事・運動療法を決定することもできるようになりました。
個人としての糖尿病対策は糖尿病の予防と改善の基盤となり、これがしっかりと行われていれば生活の質を保ちながら糖尿病をコントロールすることも難しくはありません。
まとめ
現在、日本でも世界でも増加の傾向にある、糖尿病。とりわけ、発症者の多い2型は生活水準の向上とともに爆発的に増加することも予測されます。
糖尿病は現行の医療では完治は難しく、放置しておくと死に至るような合併症を併発する可能性もあるため、発症した際には早期発見および適切なケアが不可欠です。今後発展するであろう国々においても、その点の認識を強く持つことが求められます。
一方で、糖尿病は適切にコントロールしていけば、致死性の高い病気ではありません。少子高齢化の課題先進国でもある日本でも糖尿病患者は増加傾向にあるもの、発症者の平均寿命も高くなっています。まだまだ十分な水準とは言えませんが、適切なケアを行う土台は比較的整っており、今後糖尿病ケアにおける先進的な立ち位置になることが期待されるかもしれません。