目次
糖尿病に関する基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 子供も糖尿病になりますか?
A. はい、子供も発症し、時には命に関わります!
糖尿病には種類がある!?
糖尿病とは、インスリンがうまく働かなくなることで慢性的に高血糖になる病気の総称です。インスリンは、細胞が必要とするエネルギー源の糖を血管内から細胞内に取り込むことができる唯一のホルモンです。このインスリンがうまく働かなくなると、体中にある細胞に糖が届けられなくなり、重要な栄養素である糖をエネルギーとして利用できなくなってしまいます。
一口に糖尿病といっても病気になる仕組みによって4種類に分けられています。
種類 | 病気のしくみ | 特徴 | 発症年齢 |
---|---|---|---|
1型 | 膵臓にあるインスリンを出す細胞が壊れてしまう | ・自分の細胞を壊してしまう抗体ができる | 小児から思春期に多い |
2型 | 膵臓の細胞からインスリンが出にくくなったり、インスリン自体の働きが悪くなったりする | ・家系に2型糖尿病の人がいるとなりやすい
・食べ過ぎや運動不足が引き金になる |
40歳以上に多いが、近年は肥満児が増えて子供にも増えている |
他の病気によるもの | 慢性膵炎や甲状腺機能亢進症などの他の病気によって糖尿病が引きこされる | ・慢性膵炎ではインスリンが作られなくなってしまう
・甲状腺機能亢進症では血糖値が上がりやすくなり、相対的にインスリンが不足する |
原因となる病気によるが、遺伝性の病気では子供にも発症する |
妊娠糖尿病 | 妊娠によりインスリンの働きが悪くなるため、血糖値が高くなる | ・妊娠前は糖尿病ではなかった人が高血糖になる
・出産後は血糖値が正常に戻ることが多い |
妊娠中の女性 |
子供の糖尿病の特徴とは
糖尿病は大人だけではなく、子供もかかる病気です。では、大人の糖尿病と子供の糖尿病ではどのような違いがあるのでしょうか。
子供子供の糖尿病の特徴として、大人に比べて1型糖尿病になる割合が高いことが挙げられます。日本では10万人に1.5~2人の子供が1型糖尿病を発症するといわれています。
もちろん、子供のころに1型糖尿病になった人が大人になりますので、大人でも1型糖尿病の人はいます。ただ、大人になってから1型糖尿病を発症する人はまれです。
近年は子供の糖尿病の特徴が変化しています。それは、高カロリーな食事や運動不足などの悪い生活習慣によって2型糖尿病になる子供が増えていることです。日本の小学生では10万人に1人弱、中学生では10万人に4~7人が2型糖尿病を発症しています。
糖尿病の診断方法
糖尿病かどうかを診断するには、日本糖尿病学会が定めた基準が用いられており、糖尿病の種類や年齢に関わらず同じものが使われています。
糖尿病かどうかを調べるためには採血をして、血液中の血糖値とHbA1cを調べます。
項目 | 読み方 | 何が分かるか |
---|---|---|
血糖値 | けっとうち | 採血時の血液中にブドウ糖がどのくらい含まれているか |
HbA1c | ヘモグロビンエーワンシー | 過去1~2か月の血糖の状態 |
血糖値は検査直前に食べたもの影響を受けるため、例えば検査の直前に食生活を改めると低い値が出てしまいます。しかし、HbA1cは検査直前の食生活を改めるだけでは数値が下がらないため、たまたま血糖値が低くても糖尿病を見逃さないために併せて調べられています。
これらの血液検査の結果や糖尿病に特徴的な症状と併せて以下の場合には糖尿病と診断されます。
下記のいずれかがあてはまり、
- 空腹時血糖※126mg/dL以上
- 随時血糖※200mg/dL以上
- 75gOGTT※32時間値200mg/d
さらにHbA1c 6.5%以上ある場合。
- 症状
- のどが渇く
- たくさん飲む
- 尿が多い
- 体重が減ってきた
※1 空腹時血糖とは、一晩絶食(夜9時以降絶食のことが多い)した翌朝に調べた血糖値
※2 随時血糖とは、食事制限をしないで調べた血糖値
※3 75gOGTTとは、空腹時に75gのブドウ糖を含む炭酸水を飲んでもらい、血糖値やインスリンの値の変化をみる検査で、ブドウ糖を飲んでから2時間後の値が使われる。
このように、糖尿病と診断されるためには血糖値が基準値よりも高いことが絶対条件です。しかし、先ほど述べたように血糖値は直前の食事に左右されてしまいます。そこで、HbA1cが登場します。
HbA1cが高いにも関わらず血糖値が低い場合には再検査をします。再検査では、1回目と同じような検査が行われる場合もありますが、多くの場合、75gOGTT(図の※3参照)という方法がとられ、図に当てはまるような結果になるかを確認します。
また、血糖値が高いにも関わらず、HbA1cが低く、糖尿病に特徴的な症状もない場合にも同様の再検査を行い、確認します。
つまり、初回の検査であっても再検査であっても上記の図の条件に当てはまった場合には、糖尿病と診断されることになります。
なお、1型糖尿病か2型糖尿病かを区別するためには、自分自身の細胞を攻撃する抗体が血液中にあるかどうかを調べることで診断しています。
1型糖尿病と2型糖尿病の症状に違いはあるか?
小児に多い1型糖尿病と2型糖尿病の症状について紹介します。
糖尿病の症状は、1型であっても2型であっても共通です。
初期の症状 | のどが渇く、たくさん飲む、尿が多い、体重が減ってくる、感染症にかかりやすくなる |
---|---|
血糖値が高すぎると出る症状(急性症状) | 意識を失う、昏睡、甘酸っぱい口臭 |
血糖値が長期間高いと出る症状(慢性症状) | 目が見えなくなる、尿が出なくなる、立ちくらみがする、痛みを感じなくなる、足が腐る |
では、1型糖尿病と2型糖尿病の症状では何が違うのでしょうか。それは、症状の出やすさです。
1型糖尿病では、自分自身の細胞を攻撃する『抗体』によってインスリン自体が全く出なくなってしまうため、急激に症状が出て、しかも急激に悪くなります。
一方2型糖尿病では、遺伝や生活習慣によって徐々にインスリンの働きが悪くなるため、初めは自覚症状がなく、徐々に症状が出てきます。
このため、1型糖尿病は初期の症状がみられた時点ですぐに受診しないと、意識を失ったり眠り込んだりしてしまうため、とても危険です。1型糖尿病の三大症状といわれている多飲、多尿、体重減少が現れたら、すぐに小児科を受診しましょう。
この他に、1型糖尿病では、糖をエネルギーとして使うことができないため、体に蓄えてある脂肪を使ってエネルギーを作ろうとします。この時、『ケトン体』という物質が作られるのですが、ケトン体には独特のにおいがあり、大量に作られると独特の口臭がします。そのにおいは、「リンゴが腐ったようなにおい」などと表現される甘酸っぱいにおいです。このようなにおいが口からしている場合には、糖尿病ケトアシドーシスという重大な合併症を起こしている可能性が高いため、早急な手当てが必要となります。
1型糖尿病に比べて症状を自覚しにくい2型糖尿病では、症状が出るよりも先に、学校の健康診断(尿検査)で見つかることが多くあります。2型糖尿病では、1型糖尿病ほど急激に症状は出ませんが、放っておくと1型糖尿病と同じような症状が出てきます。特に子供の場合には先が長いため、放置すれば高血糖にさらされる期間も長くなり、将来、失明したり、足を切断したりしなければならなくなる可能性が高くなります。尿検査で異常が見つかった場合には、小児科で再度、検査をしてもらいましょう。
子供の糖尿病は予防できるか?
遺伝的な体質に生活習慣が重なった結果、糖尿病になってしまう2型糖尿病は予防することができます。子供が2型糖尿病になることを防ぐには、肥満を避け、適度な運動をさせることが一番です。しかし、大人の場合と異なり、子供は成長するため、成長に合わせた栄養やカロリーの摂取が必要です。このため、無理なダイエットをするより、体重が増えないように管理し、身長が伸びた時に適正体重になるように食事と運動を調整していく方法が取られます。
一方、原因が良く分かっておらず、突然発症する1型糖尿病では、予防方法も分かっていません。このため、現時点では予防できない病気です。
どうしたら子供が2型糖尿病になることを予防できるか?
子供が2型糖尿病にならないためにできる生活習慣はどのようなものでしょうか。もし、以下のような生活習慣がある場合には要注意です。改善策を参考に生活習慣を改善しましょう。なお、これらの改善策は、2型糖尿病になってしまった後でも参考になります。
スナック菓子やチョコレート菓子など高カロリーのおやつを食べる
(理由)スナック菓子などには油や塩分、炭水化物や砂糖など2型糖尿病の原因となるものが多く含まれています。
(改善策)おやつは、さつまいやヨーグルトなど血糖値が上がりにくいものを選びましょう。また、どうしてもスナック菓子などが食べたい場合には、たくさん食べてしまわないよう少量をお皿に取り分けてから食べ、毎日は食べないようにしましょう。
市販の甘い飲み物(炭酸ジュース、ミルクティなど)を飲む
(理由)炭酸ジュースでは角砂糖15~17個分、スポーツドリンクでも9個分に相当する砂糖が含まれているため、血糖値が上がりやすく、カロリーも取り過ぎてしまいます。
(改善策)甘い飲み物が飲みたい場合には、100%果汁ジュースや紅茶に少し砂糖を入れて飲むなど自分で作ると砂糖の量が減らせます。ただし、果物には果糖が含まれているため飲み過ぎには注意が必要です。
濃い味付けのものが好き
(理由)味の濃さは生活習慣の中でも自覚しにくいものです。外食をしても「しょっぱい」と感じない人は普段から味付けが濃いと考えてほぼ間違いありません。味付けが濃いと食欲がわき、食べ過ぎの原因になります。
(改善策)ダシや香辛料、レモンや酢などの酸味をうまく利用して、塩、しょうゆ、味噌など塩分の多い調味料の使用を減らしましょう。
食べるのが早い
(理由)食べるのが早いと急激に血糖値が上がり、2型糖尿病になるリスクが上がります。また、お腹がいっぱいだと脳が感じる前に食べ物を胃の中に入れてしまうため、食べ過ぎの原因になります。
(改善策)食べることに集中しないよう、テレビを見ながら食べたり、本を読みながら食べたりするとゆっくり食べられます。
食事の時間が決まっていない、だらだらと食べてしまう
(理由)インスリンは食事に合わせて出るため、インスリンを出す膵臓の細胞が疲れてしまい、2型糖尿病になりやすくなります。
(改善策)食事は1日3回、決まった時間に食べましょう。
食事が炭水化物に偏っている
(理由)ごはん、パン、麺類などの炭水化物の食べ過ぎは血糖値を上昇させ、2型糖尿病の原因になります。
(改善策)野菜や魚、お肉なども食べ、バランスの良い食事を心がけましょう。炭水化物は食事の半分くらいが良いとされています。
運動をしない
(理由)運動をしないとインスリンの働きが悪くなります。
(改善策)現代は、子供も忙しい時代です。外で遊んだり運動部に入ったりすることができれば理想的ですが、それが難しければ、早歩きで通学したり、昼休みに友達と校庭で遊ぶなど、改めて運動をする時間を作らなくても体が動かせるように工夫しましょう。
子供の糖尿病は治るか?
糖尿病は、大人であっても子供であっても、一度かかってしまうと治らない病気です。
しかし、子供の2型糖尿病の場合には、薬を飲まなくても、生活習慣に気を付けるだけで血糖値をコントロールできる場合もあります。この場合にも、治っているわけではないため、生活習慣が乱れると、また血糖値が上昇し、さまざまな合併症のリスクが出てきてしまいます。
1型糖尿病では、インスリンを作る細胞が壊されてしまうため、生活習慣の改善だけでは血糖値をコントロールすることはできず、症状を抑えることもできません。このため、インスリンを注射で補う必要があり、一生付き合っていかなければならない病気です。
1型糖尿病になってしまったら
1型糖尿病では、体の中でインスリンを作ることができなくなってしまうため、体の外からインスリンを補う必要があります。インスリンを補う方法は、注射です。
インスリンの注射は、皮下(皮下脂肪)に打ちます。多くの場合、注射は自分で打つことができるように工夫されたペン型の物を用いるため、小学校高学年以上であれば自分でインスリンを打つことができます。
1型糖尿病では、インスリンを打つことで血糖値をコントロールし、健康な子供と同じような生活を送れることが最大の目標となります。つまり、インスリンを打つこと以外は、健康な子供と同じ生活を送ることができるようにするということです。そのためには、親と子供が1型糖尿病を受入れ、医師と協力して治療に取り組む必要があります。
インスリンを打つことが絶対に必要ですので、学校でもインスリンを打つ必要があります。もし、1型糖尿病であるにも関わらずインスリンを打たなかった場合には、死亡してしまうこともあります。このため、学校の協力は不可欠ですので、学校の先生に1型糖尿病であることを話し、協力を依頼する必要があります。
インスリンの打ち方
インスリンの自己注射にはペン型注射器が使われています。ペン型注射器の打ち方は以下の通りです。
- 濁っているインスリンは液全体が乳白色になるまで手のひらで転がして混ぜます。
- 針をペン型注射器に取り付けます。
- 針にインスリンをしっかりと満たすため、2単位分の空うちをします。
- 医師に指示された単位にペン型注射器のダイアルを合わせます。
- 注射を打つ場所の皮膚をつまみ、針を刺します。
- 注入ボタンを最後まで完全に押し、10秒数えます。
- 注入ボタンを押したまま、針を抜きます。
- ペン型注射器から針を外し、ペン型注射器のキャップを閉めて終了です。
(注意)
- ペン型注射器は、開封前は冷蔵庫、開封後は常温で保管します。開封後のインスリンを冷蔵庫に入れると、結露によってペン型注射器が故障することがあります。また、開封前のペン型注射器は凍らないよう、冷蔵庫のドアポケットなどに保管しましょう。
- 針をペン型注射器に取り付けるときは、ペン型注射器のゴム部分にまっすぐに(垂直に)刺しましょう。斜めに刺すと針が曲がり、正確にインスリンを打つことができなくなります。
- 注射はお腹、おしり、太もも、二の腕など皮下脂肪の多い場所に打ちます。いつも同じ場所に打ってしまうと、皮膚の一部にしこりができたり、ブヨブヨとしたふくらみができたりしてしまうため、打つ場所を少しずつずらします。
- 針を抜くときに注入ボタンを押したまま抜くことで、インスリンや体液の逆流を防ぎ、ペン型注射器を清潔に保つことができます。
- 使い終わった針はペットボトルなどにためておき、通院している病院にもっていきます。また、使い終わったペン型注射器も同様に病院へ持っていきます。
1型糖尿病で注意しなければならないこと
2型糖尿病とは異なり、1型糖尿病ではインスリンによって血糖値がしっかりとコントロールされていれば、食事の制限や無理な運動は必要ありません。むしろ、食事を十分に取らなかったり、過度な運動を行ったりすると、低血糖となり、高血糖よりも危険な状態になることがあります。低血糖については、「低血糖の症状と対策」で述べますが、命に関わることもあるため、インスリンを打っている人が最も気を付けなければならない合併症です。
しかし、低血糖を恐れてインスリンを打たないということは危険です。医師は子供の生活状況を聞き取り、病状と併せてインスリンを打つ量やタイミングを決定しています。インスリンは医師の指示通りに打ち、万が一、低血糖を起こした時のために対応方法を確認しておきましょう。
低血糖の症状と対策
血糖値が低い場合には以下の症状が出ます。症状の出やすさやどの症状が出るかは、子供によって異なります。
血糖値(mg/dL) | 主な症状 |
---|---|
70以下 | お腹がすく、吐き気、あくび、脈が遅くなる、血圧が少し下がる |
60以下 | 眠気、だるい、話さなくなる、計算力の低下 |
40以下 | 血圧が高くなる、脈が速くなる、過呼吸、大量に汗をかく |
20以下 | 昏睡、けいれん |
このような症状が出た場合には、低血糖を疑い、血糖値を測定します。血糖値が低かった場合には、すぐにブドウ糖をなめさせる必要がありますので、インスリンを打っている場合には、低血糖になることを想定して常にブドウ糖を持ち歩かせる必要があります。
また、低血糖の症状があった場合には、我慢してはいけないことを子供に教え、学校にも協力してもらえるよう伝えておく必要があります。
低血糖を起こしやすいのはどのようなときか?
以下の場合には、低血糖を起こしやすいため注意が必要です。
- インスリンを打った後の食事量が少なかったとき
- インスリンを打ってから食事を取るまでに時間が空いてしまったとき
- 運動をしたとき
もし、運動をして低血糖を起こしたことがある場合には、運動の前にクッキーなど少し血糖値が上がるものを食べてから運動するようにします。体育の前などは学校に協力してもらい、間食ができるようにしておきましょう。
風邪やその他の病気にかかったら
糖尿病にかかっている人が風邪やその他の病気になって体調が悪い時のことを『シックデイ』といいます。最も大切なことは、シックデイであってもインスリンの投与は中断しないことです。
シックデイで問題となるのは、食欲不振や嘔吐がある場合です。なぜなら、インスリンを打っているにも関わらず食べることができなければ、低血糖になりやすいためです。食べることができない場合には、入院が必要なこともありますので、すぐ医師に連絡しましょう。
シックデイでは、血糖値を4~6時間ごとにチェックします。また、尿中に糖やケトン体が出ていないかを確認する場合もあります。これらの検査により、医師がインスリンの量を調整します。インスリンは少量の変化が体に大きく影響するため、自己判断でインスリンの量を変えることは大変危険です。絶対にやめましょう。
シックデイの対応方法については、事前に医師に相談しておくと安心です。一般的な対応方法は以下のとおりです。
- 1日1.5~2リットルの水分を取る(水、お茶、ジュース何でもよい)
- 吐き気がある場合は少量ずつ頻回に飲む
- 吐き気がない場合は、水分だけでなく、おかゆ、おじや、うどんなど消化によいものを食べる
- 安静を保つ
糖尿病の子供のために家族ができること
子供が糖尿病になるのは親のせいではありません。しかし、子供が一生、この病気と付き合っていかなければならないと思うと、親は責任を感じ、とても苦しい思いをされているのではないでしょうか。
子供の負担を少しでも軽くし、健康な子供と同じ成長、同じ生活をするために家族にできることはたくさんあります。
学校や友達に理解を求める
子供にとって自分だけ他の子と違うというのは嫌なものです。しかし、インスリンを打ったり、体育の前にお菓子を食べたりすることを学校のみんなが理解し、受け入れてくれれば、糖尿病の子供の精神的な負担は大きく軽減します。まずは、担任の先生に協力を求め、よい方法を一緒に考えてもらいましょう。もし、学校の先生があまり糖尿病についてご存じない場合には、一度、病院に来てもらい、医師から説明してもらうと効果的です。
本人の苦痛に寄り添う
1型糖尿病の子供は、一生、インスリンを打たなければならず、低血糖に気をつけながら生活しなければなりません。このため、注射の痛み、注射道具を管理するわずらわしさ、注射を自分で打つ怖さ、他の子と違うという恥ずかしさ、などさまざまなストレスを抱えることになります。
また、血糖値がうまくコントロールできているかは定期的に病院で検査するため、血糖値やHbA1cなどの数値が成績表のようになってしまい、親が過剰に検査値を気にすることがあります。すると、子供は親の期待に応えようとプレッシャーを感じてしまうことがあります。
糖尿病の子供にはさまざまなストレスがあることを理解し、その辛さに寄り添うことが大切です。つまり、厳しく管理し、無理に自分でやらせるのではなく、子供のストレスが高まっているときには、親が手伝い、子供が成長とともに自分で治療に取り組めるようゆっくりと自立させましょう。
子供が「自分は不幸だ」と思わないような考え方ができるようにする
子供は親の考え方や感じていることに敏感に反応します。親が、我が子が糖尿病であることを不幸なこと、かわいそうなことだと考えていると、子供自身もそのように考えてしまいます。
そこで、親自身がなるべくポジティブな考え方をしてみましょう。
例えば・・・
- この子はハンディキャップがあっても他の子より成績がいいからすごい
- 他の子が経験できないようなことが経験できている
- 自分自身が病気であることで、弱者の気持ちが分かる優しい子に育っている
- 子供なのに世の中にはいろいろな人がいることを受け入れられるようになった
- 病気になることで、子供自身が病気について詳しくなっている
- 医療に興味を持って将来は医者になるかも
- サマーキャンプに参加する
1型糖尿病をもつ子供を対象にしたサマーキャンプというものがあります。サマーキャンプでは、糖尿病について学んだり、注射の練習をしたりするだけでなく、同じ病気を持つ子供同士が交流することで、自信をつけたり、悩みを相談したりできます。いつも「みんなと違う」と感じていた子供が、同じ病気の仲間に出会うことは大きな心の支えになりますのでおすすめです。
まとめ
糖尿病は4種類に分類されており、子供がなりやすいものはインスリンが全く出なくなってしまう1型糖尿病です。しかし、近年は生活習慣の変化からインスリンの働きが悪くなる2型糖尿病が増えています。
1型糖尿病は、2型糖尿病に比べて急激に病気が進み、症状が出やすい特徴があります。よくある症状は、多飲、多尿、体重減少です。これらの症状がある場合には、インスリンの投与を行わないと命に関わりますので、すぐに小児科を受診してください。
2型糖尿病は遺伝的な体質や家系と生活習慣が重なって発症すると言われているため、生活習慣を見直すことで予防が可能です。一方、1型糖尿病は原因が分かっていないため、残念ながら予防方法がありません。
1型糖尿病になってしまったら、一生、インスリンの注射をする必要があります。しかし、インスリンの注射を打ち、血糖値をコントロールできれば、健康な子供と同じような生活を送ることができます。インスリンは小学校高学年以上であれば、自分で注射することができますので、学校に協力してもらい、子供自身で血糖値のコントロールができるよう環境を整えましょう。
1型糖尿病で最も注意が必要なことは低血糖です。低血糖の予防としては、インスリンを打つ時間と食事を取る時間を守ること、運動前には軽い間食をとることが挙げられます。それでも低血糖の症状が出てしまった場合には、すぐにブドウ糖をなめさせる必要があるため、子供には常にブドウ糖を持ち歩かせ、低血糖症状が出た場合には、先生やお友達に協力してもらい、ブドウ糖がなめられるようにしておきましょう。
糖尿病になった子供は、ストレスを抱えやすい生活をしています。家族が子供の苦痛に寄り添い、学校や友達に協力してもらえるよう環境を整えることは、糖尿病になった子供のストレスを和らげる効果があります。また、家族自身が、子供が糖尿病であることをポジティブにとらえ、サマーキャンプなど同じ病気を持つ仲間と交流させることで、子供も前向きになれると考えられます。