目次
糖尿病の自己管理に関する基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病の自己管理とは何をすることですか?
A. 糖尿病の自己管理は血糖値のコントロールを意味します。糖尿病は自覚症状がないこともあるため、血糖値を安定させることの重要性を知っていることが自己管理の成功につながります。
糖尿病に関する検査
糖尿病は何で評価するのか?
糖尿病とは、インスリンがうまく働かなくなることで慢性的に高血糖になる病気のことです。つまり、血液中の糖の濃度が重要であるため、糖尿病の診断と治療効果は血液検査で調べます。
では、病名が糖尿病なのに尿検査は使われないのでしょうか。糖尿病と聞くと尿検査のイメージがあるかもしれませんが、現在では、尿検査は参考程度にしか使われません。もちろん、血糖値が高いと尿に含まれる糖の量も多くなるため、尿糖は検出されますが、尿糖は直前に甘いものを飲んだ場合や腎機能の個人差によっても出ることがあるため、尿検査だけで糖尿病の診断や治療効果を評価することはできません。しかし、尿検査は体に負担のない検査であるため、健康診断など糖尿病を疑うための検査にはよく用いられています。
血糖値の評価
糖尿病の検査の基本となるものが、血糖値です。血糖値が高いままでいると、さまざまな合併症が生じます。合併症の例としては、目が見えにくくなる、尿が出なくなる、痛みや感覚が分からなくなってケガをしやすくなる、などがあります。これらの合併症を防ぐためには、血糖値を基準値内にコントロールすることが大切です。
しかし、血糖値は検査の直前に食生活や運動習慣を改善するだけで下がってしまいます。このように一時的に下がった血糖値は、その人の血糖値のコントロール状態を表しているとはいえないため、診断や治療効果の評価を誤ってしまう可能性があります。
そこで登場するのがHbA1cです。HbA1cは過去1~2か月間の血糖の状態を表すため、直前に生活習慣を改めるだけでは下がりません。1~2か月間に渡り、血糖値がコントロールされた状態であった場合にのみ基準値を満たすことができます。このため、血糖値とHbA1cをあわせて糖尿病は評価されています。
インスリン分泌能の評価
糖尿病の原因は、膵臓から出されるインスリンというホルモンがうまく働かないことです。インスリンがうまく働かない原因の一つとして、膵臓から出るインスリンの量が減っていることがあります。これを調べるのが、『インスリン分泌能の評価』です。
インスリン分泌能を調べる代表的な検査は、75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)です。これは、空腹時に75gのブドウ糖を含む炭酸水(ブドウ糖液)を飲んでもらい、ブドウ糖液を飲む前、飲んだ30分後、60分後、90分後、120分後の計5回採血をし、血糖値やインスリンの値の変化をみる検査です。
健康な人では、ブドウ糖液を飲むと血糖値も血液中のインスリンの量もすぐに増えますが、糖尿病の人では、血糖値が上がっても血液中のインスリンの量が増えるのに時間がかかってしまいます。
インスリン抵抗性の評価
膵臓からインスリンが十分に出ているにもかかわらず、インスリンの働きを邪魔する要因があるためにインスリンがうまく働かないことがあります。これを調べるのが、『インスリン抵抗性の評価』です。
例えば、肥満の人は、インスリンの働きを邪魔する物質が脂肪から出ています。肥満の人が2型糖尿病になりやすい、あるいは、2型糖尿病の人が肥満に注意する必要があるのはこのためです。
インスリン抵抗性を評価する代表的な指標がHOMA-IR指数というものです。これは、空腹時の血糖値と空腹時のインスリンの量から計算されるもので、値が大きいほどインスリンの働きが落ちていることを示しています。
1型糖尿病に関連した検査
1型糖尿病は、何らかの原因で自分自身の細胞を攻撃する抗体(自己抗体)が作られることによって、膵臓からインスリンが全く出なくなってしまう病気です。このため、生活習慣を改善するだけでは良くなることはありません。
1型糖尿病の診断には、血液中に自己抗体があるかどうかを調べます。しかし、この自己抗体は、発症時には見つかりやすいのですが、発症から時間が経つと見つからなくなることが多くなります。しかし、自己抗体が見られなくなっても、1型糖尿病が治るわけではないため注意が必要です。
この他にも、1型糖尿病は、『ケトアシドーシス』という状態になりやすいといわれています。これは、糖をエネルギーとして使えないために、体に蓄えてある脂肪をエネルギーに使うことで『ケトン体』という酸性物質が血液中にあふれる状態で、この状態が長く続くと昏睡状態になることがあり、とても危険です。
また、ケトアシドーシスになると、独特の口臭がします。それは、「リンゴが腐ったようなにおい」などと表現される甘酸っぱいにおいです。1型糖尿病やケトアシドーシスが疑われる場合には血液検査や尿検査でケトン体の濃度が高くなっていないかを調べます。
糖尿病に関する検査値
糖尿病に関する血液検査の値にはさまざまなものがあります。その中から代表的なものを紹介します。
検査項目 | 糖尿病の基準値 | 何を調べているのか | 影響 |
空腹時血糖値 | 126mg/dL以上 | 絶食時の血液に含まれるブドウ糖の濃度(食事の影響を除外) | 高値:多飲、多尿、心筋梗塞、脳梗塞、視力障害、腎障害、神経障害など
低値:だるさ、冷や汗、ふるえ、昏睡など |
随時血糖値 | 200mg/dL以上 | 通常の食事を取った時の血液に含まれるブドウ糖の濃度(食事の影響は計算で考慮) | |
75gOGTT 2時間値 | 200mg/dL以上 | 絶食時にブドウ糖溶液を飲み、血糖値の上がり具合と高値の持続時間 | |
HbA1c | 6.5%以上 | 過去1~2か月の血糖コントロール状況 | (血糖値の補足) 高値:血糖コントロールが不十分 |
GA(グリコアルブミン) | 16%以上 | 過去1~2週間の血糖コントロール状況 | (血糖値の補足)高値:血糖コントロールが不十分 |
総ケトン体(尿中ケトン体) | 120μmol/L以上 | 飢餓状態により脂肪の分解が進んでいるか | 高値:甘酸っぱい口臭、嘔吐、腹痛、脱水、低血圧、頻脈、早く深い呼吸、昏睡など |
インスリン値 | 5μU/mL未満 | 膵臓からのインスリン分泌量 | 高値:低血糖 低値:高血糖 |
血糖値コントロールの重要性
糖尿病の治療では、なぜ、血糖値をコントロールすることが重要だといわれるのでしょうか。それは、血糖値が高いままでいるとさまざまな合併症が出てきて、生活の質(QOL)を落としてしまうからです。
血糖値が高くなると、のどが渇いてたくさん飲む、おしっこがたくさん出る、体重が減ってくる、風邪などの感染症にかかりやすくなるなどの初期症状が出てきます。この時点で病院へ行き、2型糖尿病によって血糖値が高いということが分かれば、食事や運動などの生活習慣を改めるだけで血糖値をコントロールすることも可能です。一方、同じような症状だとしても、1型糖尿病の場合には、インスリンの注射が絶対に必要となります。
もし、これらの初期症状を見逃し、血糖値の高い状態が長く続いてしまったら、大変なことになります。それは、以下のような重大な合併症を引き起こしてしまうからです。
- 失明する(糖尿病網膜症)
- おしっこが出なくなり透析が必要になる(糖尿病腎症)
- 足がしびれる、めまい、下痢、便秘(糖尿病神経障害)
- 痛みが分からなくなってケガに気が付かず、足の小さな傷から菌が入って足が腐る(糖尿病足病変)
- 高血糖により動脈が硬くなり、心筋梗塞や脳梗塞になる(大血管障害)
このような合併症を防いで、少しでも質の高い生活を維持するために血糖値コントロールが重要なのです。
血糖値をコントロールする方法
では、血糖値をコントロールするにはどのようにすればいいのでしょうか。その方法は、1型糖尿病と2型糖尿病で異なります。
糖尿病の種類 | 血糖値のコントロール方法 |
1型 | ・インスリンの注射が基本 ・食事制限や運動制限はほとんどない ・低血糖に注意 |
2型 | バランスの良い食事と運動の継続が基本 ・飲み薬で補助 ・悪化した場合にはインスリンの注射 ・飲み薬や注射をしている場合には低血糖に注意 |
糖尿病の治療では、血糖値のコントロールが中心となります。このため、自分の血糖値を知っていることが治療のカギとなります。
血糖値の自己管理に役立つ測定器
血糖値の測定は医療機関で採血して調べたものが最も正確な血糖値です。しかし、日々の血糖値を把握し、コントロールするためには、病院での定期検査だけでなく、自分でも血糖値を測定することが効果的です。以下、自己管理に役立つ血糖値測定器について紹介します。
種類 | 特徴 | 必要な道具 | 値段 |
簡易血糖値測定器 | ・血糖値自己管理の基本 ・正式に認められた測定方法 ・毎回、針を刺さなければならない ・日本ではセンサーが調剤薬局でしか買えない |
本体 センサー 穿刺針 アルコール綿 |
本体4,000円~20,000円+針など消耗品 |
持続血糖値測定器 | ・ピンポイントではなく、2週間程度の長期に渡り計測できる ・正式な測定方法として認められていない(血液ではなく、間質液を測定) ・血糖測定と血糖測定の間の値を補助的にみるもの |
本体(リーダー) アプリケーター(センサー付きの針) |
本体10,000円前後+アプリケーター |
クリップ式血糖値測定器 (針なし血糖値測定器) |
・針を刺さないので痛みがない ・本体以外の消耗品が不要 ・正式な測定方法として認められていない |
本体 | 未定 |
パッチ式血糖値測定器 (針なし血糖値測定器) |
・10~15分おきに計測できる ・針を刺さないので痛みがない ・パッチ以外の消耗品が不要 ・正式な測定方法として認められていない |
パッチ スマートフォン等 |
未定 |
簡易血糖値測定器が健康保険の適応(保険診療)になるとき
血糖値測定の正式な測定方法として認められている簡易血糖値測定器は、健康保険が使えることがあります。それは、1型糖尿病や飲み薬でコントロールできない2型糖尿病の場合にインスリンの自己注射をしている方です。なぜなら、インスリンの自己注射を行っている方は、低血糖を起こしやすいため、血糖値を自分で把握したうえでインスリンを投与する必要があるからです。
病院で処方される場合には、簡易血糖値測定器の本体やセンサー、針など自己血糖値測定に必要なものが健康保険の適応となるため、安く手に入ります。自己負担の割合は、年齢や年収によって1~3割です。この負担割合は、病院で診察を受けるときに負担している割合と同じです。
インスリンを注射していない人(飲み薬だけの人、食事療法と運動療法のみの人)は健康保険の適応とならないため、自己血糖値測定を行いたい場合には、全額自己負担となります。
また、病院が独自に簡易血糖値測定器の貸出をしている場合があります。多くは、インスリンの自己注射をしている方に向けてのサービスですが、病院によっては内服治療をしている方であっても無料で借りられることがありますので、問い合わせてみましょう。
本体を病院から無料で借りられる場合でも、針やセンサーなどの消耗品は有料です。この場合、インスリンの自己注射をしている方は、医師が指示した測定回数分に使用する消耗品は処方されるため健康保険の適応となります。一方、インスリンの自己注射をしていない方の消耗品代は全額自己負担となります。
簡易血糖値測定器の使い方
- (手順)
- 測定に必要な道具をそろえます。
- 簡易血糖値測定器、センサー、穿刺針、アルコール綿(クロルヘキシジン綿)、記録用紙、使用済みの針を入れるケース(無ければペットボトルなど)
- 水道水で両手をよく洗い、清潔なタオルで拭きます。
- 簡易血糖値測定器にセンサーをセットします。
- 針をすぐ刺せるように準備します。
- アルコール綿で指先(針で刺す場所)を消毒し、しっかりと乾燥するまで待ちます。
針を刺します。 - 簡易血糖値測定器に取り付けたセンサーに血液を吸わせます。
- 5で使用したアルコール綿で針を刺した部分を軽く押さえて止血します。
- 簡易血糖値測定器に表示された結果を記録用紙に記入します。
- 使用済みのセンサーと穿刺針を廃棄用のケースに入れます。
- (注意点)
- 穿刺針の使用は1回限りです。使いまわしはできません。
- 通常、使用済みのセンサーと穿刺針は安全なケースに入れて病院に持っていき、病院で医療廃棄物として処理します。ただし、自治体によっては地域で捨てられることもありますので、お住いの市町村に確認してください。
- 自己血糖値測定に使用する針は細く、毛細血管に刺さるだけなので、血液をサラサラにする薬(ワルファリン)などを飲んでいても血が止まらなくなることはありませんが、測定後は針を刺した部分をしっかりと押さえ、血液が止まったことを確認しましょう。
- 血糖値の自己管理に最適な測定回数は、糖尿病の状態やその他の条件によって異なります。このため、どのくらいの頻度で測定すればよいのかは医師に相談しましょう。
以下は、あくまでも参考です。
<血糖測定の例>
●血糖値コントロールができていない場合
毎食前+毎食2時間後+就寝前の7回測定
●血糖値が安定している場合
毎食前のみの3回測定
1日1回のみ測定
1週間に1回のみ測定
※測定回数を徐々に減らしていくことが多い
おすすめの測定器
血糖値の自己測定には、最も正確で医療としても正式に認められている簡易血糖値測定器がおすすめです。
ACON社 血糖値測定器本体セット
ACON社 (エイコン) は高品質ながらランニングコストが抑えられるアメリカで人気の血糖値測定器のメーカーです。『糖尿病お助け隊』では、現在、キャンペーン中につき、血糖値測定器の本体が無料です。また、当社はアメリカ法人であるため、センサーを含む消耗品もまとめて購入することができます。この機会に血糖値の自己測定を始めましょう。
まとめ
糖尿病の治療目的は、血糖値をコントロールし、合併症を引き起こさないことです。なぜなら、糖尿病の合併症には、失明や足の切断が必要になるなど生活の質を落としてしまう重大なものが多くあるからです。このため、自分の血糖値を把握し、自分自身で血糖値をコントロールしていくことが必要です。
血糖値の自己管理に役立つ測定器にはさまざまな種類があります。しかし、自己血糖値測定の正式な方法として日本で認められているものは、簡易血糖値測定器のみです。簡易血糖値測定器は簡単な操作で血糖値が測定できるため、糖尿病の管理に利用し、合併症の予防に努めましょう。