目次
糖尿病と壊疽に関する基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病による壊疽とは?
A. 神経障害によって引き起こされる壊疽、足の細胞が腐って切断を余儀なくされることがあるため、予防と早期発見が大切です。
糖尿病で恐ろしい壊疽とは?メカニズムについて
糖尿病においては、合併症のリスクについて重要視されることが多いです。糖尿病による合併症は一つに留まらず、神経障害や腎症、網膜症などがあげられます。その一つである神経障害の影響によって、壊疽(えそ)という恐ろしい状態を招くこともあるのです。
全身に張り巡らされている細い血管は、障害が起きることで血行不良を起こします。血行不良が起きると、神経細胞にも血液をきちんと送り届けることが困難になってしまいます。その結果、自律神経に支障が生じ、立ちくらみや発汗異常、便通や膀胱などにも異変が生じるのです。このとき、身体は痛みを感じにくい状態に陥っています。足にできた小さな傷や怪我などに気づかず放置してしまう恐れもあり、最悪の場合壊疽という足が腐ってしまう状態を招くのです。
このような糖尿病による足の異変を糖尿病足病変ともいい、糖尿病を患っている人は常に気をつけておきたい点になります。糖尿病による壊疽を起こした足は状態が悪化したものも多く、写真で見ると驚いてしまうでしょう。
壊疽による症状
糖尿病において恐ろしい壊疽は、糖尿病足病変の症状の一つです。足のトラブルを抱えることが多くなり、水虫や細菌の感染、タコや足の変形なども糖尿病足病変に含まれます。その中でも危険とされ、足の切断を余儀なくされる恐れがあるのが壊疽です。痛みに気づきにくくなることから悪化する可能性が高い壊疽、早期発見が重要となります。そこで、壊疽による初期症状などを紹介しましょう。
壊疽を未然に防ぐために気をつけたい症状一覧
- 足の形が変形してきて、タコや水虫ができている
- 巻き爪や爪が白く濁っている
- かかとが乾燥し、ひび割れている
- 足のむくみや腫れが気になる
- 足の一部が冷たいまたは熱を持っている
- 足から悪臭がする
- 痛みやしびれを感じる度合いが少なくなり、感覚を感じない箇所もある
足の細胞が腐ってしまう壊疽は、ひどい状態になる前にさまざまな症状が現れるケースが多いです。足に異常を感じたら、すぐに病院で診てもらいましょう。日頃から自分の足に注目し、異変が起きていないか確認することで壊疽を防ぐことができます。
また、壊疽を未然に防ぐために気をつけたい症状と合わせて、以下のような症状・状態が現れていないかも確認しておくと安心です。
- 糖尿病歴15年以上になる
- 視力がメガネをかけた状態でも0.5以下である
- ひとり暮らしをしている
- 腎臓が悪く、治療中である
- 長靴などを履いて立ち仕事をしていることが多い
糖尿病全般に関する症状になりますが、壊疽を招かないためにもチェックしておきましょう。
糖尿病による壊疽の治療とは?
糖尿病により起きることのある足病変は、恐ろしい病気です。壊疽を引き起こすと足の切断を余儀なくされることがありますが、一般的にはどのような治療が行われるのでしょうか?ここでは、壊疽の治療法について詳しく見ていきましょう。
下半身の血行を改善する
壊疽にもいくつかの原因があり、下半身の血行不良によって生じている場合は血行を改善していくという治療法が用いられます。バイパス手術や薬物療法、血管内治療などを行い、血行不良の改善を図ります。壊疽を起こした部分へしっかりと血液を送るためには多くの血液が必要となることから、バイパス手術が有効という判断をする医師も多いです。
壊疽を起こしている部分の処置を行う
血行改善を図りながら次に行うのが、壊疽を起こしている部分の処置です。適切な処置を行うことで、足の切断をせずに済むこともあります。壊疽を起こしている部分の消毒をしっかりと行い、壊死した部分を切除していきます。
壊死した部分を除去していくには、外科的に壊死した部分を切除する方法と、軟膏によって徐々に取り除いていく方法とがあります。ひどく壊死した部分だけをうまく取り除くことが大切です。
組織の増生を促す
壊疽を起こしている部分を切除した場合、新たに組織の増生を促すことが必要です。感染症のリスクやむくみを予防しつつ、治療用のスポンジを使用して組織の増生を促します。
同時に、薬物療法によって少しでも早く組織が完成するのを促し、効率よく壊疽部分が回復していくようにします。
壊疽は切断が必須なのか?余命は?
壊疽は足の切断を余儀なくされる恐れもあるため、非常に恐ろしい糖尿病の症状の一つです。上記に説明した流れで治療を行うケースが多く、早期の治療が重要であることもよくわかります。壊疽と聞くと、真っ先に思い浮かぶのが足の切断でしょう。では、足の切断は必須なのでしょうか?気になる余命についても、調べてみました。
早期発見、早期治療で足の切断は免れる
糖尿病による壊疽は、早く発見することで治療に取り掛かることができるため治る可能性が高まります。そのため、足の切断をせずに済むケースもあるのです。
壊疽というと足を切断しなければならないのでは?と思ってしまいますが、決してそんなことはありません。足の切断をせずに、無事に回復している人もたくさんいます。日頃から自身の足に注意して過ごすことで、壊疽による足の切断は避けることができるのです。恐ろしい症状を引き起こす壊疽ですが、自身の足としっかり向き合っていると悪化を予防できるでしょう。
壊疽を起こした場合の余命は?
糖尿病は、壊疽をはじめとしたさまざまな合併症のリスクが伴います。壊疽を起こした場合、早く治療を行うことができれば元通りの生活に戻ることが可能です。そのため、壊疽によって寿命が大きく縮むということは少ないでしょう。
ただ、壊疽以外の合併症を発症している場合、寿命にも大きく関係してきます。壊疽を起こさないよう血行改善を図ったり、食生活に気をつけていることで寿命を延ばすこともできるでしょう。発症してしまった糖尿病とうまく付き合っていくことで、余命を気にせず過ごすことができます。
一方、症状がひどく、足を切断した場合は、日常生活に支障を感じることが多くなるでしょう。運動不足に陥ったり、自分で身の回りのことを行うのにも苦労するといった状態に陥ると、気分もふさぎ込んでしまい、寿命を縮めてしまうこともありえます。
切断をせずに壊疽を起こしている部分の治療を行い、糖尿病と上手に向き合っていくことで、余命を気にせずに過ごせるようになるでしょう。
糖尿病による壊疽、初期症状を見逃さないようにしよう
糖尿病により生じる合併症や不調には、さまざまなものがあげられます。その中でも恐ろしい壊疽は、早期発見が何よりも重要です。そこで、初期症状を見逃さないよう、日頃から足の観察をしっかり行いましょう。ここでは、壊疽による初期症状を中心にご紹介します。
壊疽による初期症状一覧
- 靴ズレを起こしやすくなった
- かかとがカサカサと乾燥している
- 足が痺れたり、ピリピリすることがある
- 怪我がなかなか治らない
- ふくらはぎがつったり、こむら返りを起こすことがある
- 歩くとふくらはぎが疲れて痛くなる
一見すると、ただの疲れかな?と思ってしまうこれらの症状ですが、糖尿病による足病変が影響しているかもしれません。上記のような症状を感じたら、毎日こまめに自身の足を観察し、気になる症状を医師に伝えるとよいでしょう。早い段階で足病変を起こしているとわかると、壊疽による足の切断などの心配をせずに済みます。
また、今まで感じたことのない異変に気づいたら、早めに医師に相談すると安心です。足病変が起きていないか、糖尿病の状態はどのようになっているか、診察してくれます。きちんと診察を受けておくと、安心して過ごせるようになるでしょう。
壊疽を予防するためにできること
糖尿病による足病変は、壊疽という恐ろしい状態を引き起こす可能性があります。初期症状に注意しながら、日々フットケアを行い、壊疽の予防を図りましょう。ここでは、壊疽をはじめとした糖尿病足病変を予防するためにできることについて解説します。
毎日足の観察を念入りに
壊疽は、写真を見るだけでも恐ろしいと感じるものです。しかし、糖尿病により高血糖の状態が続くと、足病変になるリスクも高まります。そこで、毎日足の観察を念入りに行いましょう。日頃から足の状態に目を向けていることで、異変にも早く気づくことができます。
お風呂に入って足を洗う際に確認する、靴下の着脱の際にチェックしてみるなど、日常生活で足を意識する瞬間に、しっかり観察することが大切です。変色している部分がある、ウオノメやタコなどができていないかなどの変化も確認しておきましょう。毎日観察を続けていることで、爪や足の形がおかしい、小さな傷があるなどの異変に気づくことができます。
足を清潔に保つことも大切
足の観察をこまめに行いながら、清潔に保つように心がけることも大切です。お風呂では足の指の間や先まで丁寧に洗う、洗い終わったあとはタオルでしっかり水分を拭き取るといったことをはじめ、日々足を清潔にするよう心がけましょう。
足を清潔に保つことで、小さな傷から細菌が入り感染するのを予防できます。また、足を清潔に保つために靴下はきちんと洗濯したものを履く、裸足は避けるなどの対策も実践してみましょう。
爪の切り方にも注意しよう
足病変を予防するため、足を清潔にしておくことが大切です。その上で、爪の切り方にも注意しましょう。爪が伸びていないよう確認すると同時に、爪の先がまっすぐになるように切りましょう。長すぎる爪は厳禁ですが、短すぎて深爪状態でもそこから細菌が入ってしまう恐れがあります。ほどほどの長さを保つよう、丁寧に切っておきましょう。上から見て直線になるよう心がけることも大切です。
足の怪我を防ぐ
足を清潔に保ちつつ、怪我や小さな傷も作らないように気をつけましょう。裸足ではなく靴下を履く、靴の中に石などが入っていないか確認する、自分の足に合った靴を履くなどの注意が必要です。
足の怪我に気づかず放置することで、壊疽を引き起こす可能性が高くなります。恐ろしい状態にならないよう、日頃から足のチェックを行うときに怪我にも注意しておきましょう。
また、暖房器具による低音やけどやお風呂でのやけどなどにも気をつけたいです。神経障害を引き起こしていると、痛みだけでなく熱さにも鈍くなります。そのため、やけどにも細心の注意が必要なのです。
このような点に気をつけながら、足病変を防ぐようにしましょう。
まとめ
糖尿病においては三大合併症といわれる網膜症、神経障害、腎症が危険とされています。足病変は神経障害の一つになり、痛みや熱さに鈍くなることから壊疽を招いてしまいます。日頃から足の状態に敏感になり、壊疽によって足を切断しなければならないという事態を防ぎましょう。
糖尿病の基本的な治療と並行して、毎日足のケアも行うようにしたいです。特に糖尿病歴が長い人は、自身の足に異変が起きていないかこまめにチェックしましょう。糖尿病の症状が長く続くことで、足病変になっている恐れもあります。気づきにくい足の異変、毎日決まったタイミングで観察するよう心がけると安心でしょう。