目次
糖尿病とダイエットに関する基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
Q. ダイエットコーラは糖尿病治療中でも飲んでいいですか?
A. 飲んでも構いません。ダイエットコーラに含まれている甘味成分は、スクラロースやアセスルファムKと呼ばれる「血糖値を上昇させない人工甘味料」が使われています。
ダイエットすれば糖尿病は治せる?
糖尿病は、肥満・内臓脂肪などがある人に多くみられる病気です。もちろん、痩せ型の糖尿病患者さんも一定数は存在しますが、今回のコラムでは「肥満体系でダイエットをしたい」と考えている糖尿病患者さんに向けてお伝えしていきます。
そもそも、ダイエットをすれば糖尿病は治せるのでしょうか。その答えは、イギリスのニューキャッスル大学が行った研究で明らかとなりました。
糖尿病自体は、現在の医療では完治しない病とされていますが、体重を5%以上減らすことができれば、実質的に「糖尿病を発症する前の状態」に戻すことが可能なのです。
この研究は、肥満や内臓脂肪がある糖尿病患者さんを対象として行われ、実際に参加した人が3か月で15kgの減量に成功したといいます。その後、半年経過した頃には6㎏程度のリバウンドがありましたが、それでもヘモグロビンA1cの数値が6%未満になり、飲み薬やインスリン注射を減らすことができました。
また、糖尿病を発症してから4年以上が経っている患者さんでも、適切なダイエットを行って体重を5㎏以上減らした結果、84%もの人が正常な血糖値まで下げることに成功したのです。
ダイエット後に、血糖値やヘモグロビンA1cの数値が下がったからといって「糖尿病が完治した」とは断言できません。しかし、薬を減らしても良好な血糖コントロールができるようになったという事実には、多くの専門家が注目しています。
肝臓や膵臓をはじめ、各内臓に溜まった脂肪は糖尿病患者さんのインスリン抵抗性につながるといわれています。インスリンの効きを悪くし、さらに肝臓が余計な糖を放出するようになってしまうため、慢性的な高血糖を招くのです。
ダイエットで体重を減少させると、これらの内臓脂肪もスムーズに減っていき、インスリン抵抗性の改善によって血糖値が上がりにくくなると考えられています。
糖尿病患者さんが5%以上のダイエットに成功すると、内臓に蓄積された脂肪が30%以上も減少することも少なくありません。
また、中性脂肪が溜まることでその働きを阻害されていた「膵臓」も、減量後には再びインスリン分泌が活発になるケースもあると報告されており、糖尿病治療とダイエットは切っても切り離せないほどの深い関係性があるといえるでしょう。
糖尿病患者の正しいダイエット方法は?
糖尿病治療中の人にとって、内臓脂肪減少や減量などのダイエットが重要になることは、前述した通りです。では、実際にダイエットを行う際にはどのような方法が良いのでしょうか。
糖尿病患者さんのダイエット法については、さまざまな研究が行われています。しかし、糖尿病だからといって特別なダイエット方法が確立されているわけではありません。
ダイエットの基本は、栄養バランスの取れた食生活と適度な運動が基本です。もちろん、「糖質を減らす」「脂質を減らす」といったことも大切ですが、これは通常の糖尿病食事療法となんら変わりがありません。
要は、糖尿病患者さんのための食事療法と運動療法を正しく実践していれば、おのずと脂肪が減少してダイエットにつながるということです。
「糖尿病の治療を継続しながら、ダイエットまで努力しなければならないなんて大変すぎる」と嘆く患者さんも少なくありません。しかし、適切な食事療法と運動療法を行ってさえいれば、何も特別なことをしなくても良いのです。
まずは、自分の適正体重を知ることからスタートしましょう。BMIと呼ばれる「体格指数」は、ひとつの目安になります。BMIは「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」という式で求められますが、最近の体組成計などでは自動的にデジタル表示されるようになっているため、自分で計算しなくても把握することは可能です。
また、スマホのアプリやネットでも体重と身長を入力するだけで、簡単に導き出してくれます。このような便利ツールを活用しながら、BMIが25未満になるよう体重をコントロールしていきましょう。
糖尿病の人が食事でダイエットを成功させる秘訣
糖尿病患者さんが食事でダイエットをする際には、基本的に医師や栄養士から指導された食事療法をそのまま実践していきます。
もちろん、指導された通りに全て完璧にできれば素晴らしいですが、カロリー計算や脂質・糖質量の計算に慣れないうちは、思うように食事のコントロールができないことも少なくありません。
その場合には、「1日あたり100kcalだけ減らしてみる」「食事量をこれまでの65~70%程度に減らす」など、簡単な方法でも構わないのでほんの少しの努力を積み重ねていくように心がけましょう。
なかなか体重が減らない糖尿病患者さんは、食事療法の実践方法が間違っている可能性もあります。まずは、自分が毎日摂取している総カロリーを把握してください。
実は、糖尿病で食事療法を行っている患者さんの中には、カロリー計算すらできていない人も少なくありません。
コンビニなどで販売している食品などは、パッケージにカロリーや糖質が表示されているため、計算しやすいかもしれません。しかし、さまざまな食材を使用して料理するメニューの場合には、各食材のカロリーや栄養素をいちいち計算するのが面倒に感じてしまう方も多いでしょう。
このようなときは、日本糖尿病学会から発行されている「糖尿病食事療法のための食品交換表」を活用してみてください。また、スマートフォンを利用されている方であれば、ダイエット用に開発されているアプリも便利です。
食べたものを入力していくだけで、カロリー計算はもちろんのこと、各種ビタミンやミネラル、脂質、食物繊維などの摂取量までグラフにして表示してくれます。
「どんなものを食べると脂質過剰になってしまうのか」「自分に足りていない栄養素は何なのか」が一目で確認できるため、おすすめです。
また、日本人は食物繊維が不足する傾向があります。食物繊維のひとつである「水溶性食物繊維」は、きのこ、野菜などに多く含まれており、血糖値の急上昇を抑制する効果があるといわれています。さらに、食前に食物繊維を含む食品をよく噛んで食べておくことで、食事の食べ過ぎを防止する効果も期待できるため、ダイエット中の糖尿病患者さんには積極的に摂取して欲しい食品のひとつです。
ダイエットコーラは糖尿病治療中でも飲んで良い?
糖尿病を治療している患者さんは、基本的に甘い炭酸飲料や清涼飲料水は避けるように指導されます。しかし、ときにはコーラのような甘い炭酸飲料を飲みたくなってしまうこともあるでしょう。
そのようなときには、ダイエットコーラを選ぶようにしてください。コカ・コーラから販売されている「コカ・コーラ ゼロ」や「コカ・コーラ ゼロカフェイン」などが代表的です。
ダイエットコーラの甘味料としては、スクラロースとアセスルファムKが使われており、血糖値を直接上昇させる砂糖やブドウ糖が含まれていないため、糖尿病患者さんでも安心して飲むことができるのが特徴です。
スクラロースは、砂糖を原料として作られる人工甘味料ですが、原子置換をすることによって血糖値に影響しない物質となっています。その甘味は、砂糖の600倍といわれており、ごく少量でも飲み物に甘味をつけることができるのです。
また、アセスルファムKは、酢酸由来のジケテンとスルファミン酸を合成反応させてから、三酸化硫黄と呼ばれる成分を反応させ、最終的に水酸化カリウムで中和した甘味料です。甘さは砂糖の200倍程度だといわれています。
スクラロースとアセスルファムKは、どちらも1gあたりのカロリーは0kcalのため、糖質制限はもちろんのこと、カロリー摂取量が気になる糖尿病患者さんでも問題なく飲めるといえるでしょう。
ただし、人間の脳は甘み成分を受けると「もっと甘いものが欲しい」といった信号を出すこともわかっています。そのため、いくらカロリーがゼロのコーラであっても、過剰摂取は良くありません。ダイエットコーラ自体が血糖値やカロリーに影響しなくても、「甘いものへの欲求」が高まってしまう恐れがあるといいます。
食事や間食など、全体の栄養バランスを整えたうえでダイエットコーラを上手に取り入れるようにしてください。
ダイエット効果がある糖尿病治療薬の危険性
糖尿病治療薬の中には、副作用として体重減少を招く恐れがある薬が存在します。それが、SGLT2阻害薬です。この副作用を「ダイエット効果がある」として、もっともらしく話す患者さんもいますが非常に危険なため注意が必要です。
SGLT2阻害薬は、毎日の炭水化物摂取量が40~55%の糖尿病患者さんであれば、血糖値の改善が証明されている飲み薬として広く知られています。しかし、炭水化物の摂取量が40%を下回ると「正常血糖糖尿病ケトアシドーシス(eDKA)」を引き起こすことが判明しました。
ケトアシドーシスになると、全身倦怠、吐き気、悪心をはじめ体重減少がみられるようになります。ほとんどの場合には、急性の高血糖が原因となり、血糖値を低下させるインスリンが不足すると、糖をエネルギーとして使えなくなるため、身体がエネルギー不足に陥ってしまいます。
生命を維持するためには、どうにかしてエネルギーを作り出さなければならないので、体内に蓄積された脂肪を分解してエネルギーに変換し始めます。
これだけ聞くと「勝手に脂肪が分解されるなんて、ダイエットになるから良いことでは?」と勘違いする患者さんも少なくありません。
しかし、ケトアシドーシスで脂肪を分解する際には、ケトン体と呼ばれる物質が血中に増えてしまい、血液が酸性に傾いて重篤な脱水症状を引き起こすのです。
最近では、糖尿病のダイエットや食事療法の一環として、「炭水化物制限食」が話題となっています。しかし、SGLT2阻害薬を使った薬物療法を行っている患者さんの場合には、自己判断での炭水化物制限は危険だということを覚えておいてください。
糖尿病の炭水化物制限ダイエットは死亡リスクを上昇させる?
前述した通り、SGLT2阻害薬を服用している糖尿病患者さんの場合には、炭水化物制限ダイエットは危険です。しかし、「炭水化物を抜けば糖尿病が良くなる」「主食を制限して、血糖値が改善された」といった情報を目にすることも多いでしょう。
もちろん、白米やパン、麺類などを減らす「炭水化物制限ダイエット」は、減量効果があります。特に、これまで過剰に炭水化物を摂取していた糖尿病患者さんの場合、目に見えた結果が数字として出るため、モチベーションも上がりやすいでしょう。
実際に、肥満や内臓脂肪がある糖尿病患者さんが、低炭水化物ダイエットを実践すると、体重はもちろんのこと、中性脂肪、コレステロール、血糖値が低下するといった調査結果も出ています。
しかし、これは1か月程度の「短期」の低炭水化物ダイエットでの結果です。
長期にわたる炭水化物制限ダイエットでは、逆に患者の死亡リスクを高める恐れがあるといった見解を示す専門家も少なくありません。
欧州心臓学会では、「長期の炭水化物制限ダイエットは、安全性が確かめられていないだけでなく、脳血管疾患、心血管疾患、がんなどによる死亡リスクを上昇させる」との報告もされているほどです。
短期集中型のダイエットであれば、炭水化物制限食も悪くはありません。ただし、糖尿病は生涯にわたって上手に付き合っていかなければならない病気です。
「炭水化物をやめたら体重が減った」「主食を抜いたら血糖値が安定してきた」と喜ぶ糖尿病患者さんも多いですが、この食事法は一生続けられるものではありません。
基本の食事療法では、タンパク質、脂質、炭水化物をバランスよく摂取することが重要となってきます。特に、糖尿病で血糖値が高くなりやすい人は、心血管系の疾患に注意が必要です。
炭水化物制限ダイエットで、一時的に数値が良くなったとしても「特定の栄養素を極端に制限する」というのは、長期的にみて身体に必ず悪い影響を与えます。
もし、糖尿病患者さんが現時点で過体重の解消をするために「炭水化物制限ダイエット」をしようと考えているならば、必ずかかりつけの医師や栄養士に相談してから開始するようにしましょう。
糖尿病患者のダイエットには1日30分の有酸素運動が効果的
糖尿病を治療している患者さんの中には、「医師から指導された食事療法を正確に行っているにも関わらず、まったく体重が減らない」と悩んでいる方も多いでしょう。このような場合には、毎日の運動量や筋力が不足している可能性が高いです。
糖尿病治療やダイエットでは、食事管理と適度な運動は必ずセットとして考えるのが基本です。どちらか一方だけに力を入れていても、思うような結果は出ません。
カロリー制限や脂質制限などの食事療法を行ったうえで、ウォーキングなどの有酸素運動を毎日30分程度実践するように心がけましょう。
会社勤めをしている方や、子育てをしている方などは「忙しくて30分なんて時間をとれない」ということも多いかもしれません。その場合には、10分の運動を1日3回に分けて行うスタイルがおすすめです。
また、バス停を1つ前で降りて歩く、1駅分を歩く、エレベーターやエスカレーターのかわりに階段を使うなど、ちょっとした場面での工夫を取り入れるようにするのも良いでしょう。日常生活の中でも、身体を動かすチャンスはたくさんあります。
なにも、スポーツジムに通って本格的な筋トレをする必要はないのです。毎日のコツコツとした積み重ねが、ダイエット成功や血糖値改善にもつながるでしょう。
まとめ
糖尿病の改善には、肥満の解消、内臓脂肪の減少が欠かせません。ダイエットと聞くと「面倒くさい」「大変そう」と感じる患者さんも多いでしょう。栄養管理やカロリーコントロールも慣れるまでは大変かもしれません。
しかし、糖尿病が悪化していくと、さまざまな合併症が出てきます。
代表的なものであれば、失明の恐れがある「糖尿病網膜症」や、重症化して人工透析を受けなければならなくなる「糖尿病腎症」、足の切断を余儀なくされる「壊疽・壊死」など、ダイエットよりもずっと大変な状況に陥ってしまうのです。
自分の目で景色を楽しむことができ、自分の足で歩くことができるうちに、糖尿病の悪化を食い止めてください。それができるのは、他の誰でもないあなた自身だけなのです。