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糖尿病の基本的な検査方法と血糖値の基準
血糖値が高くても自覚症状はほとんど起こらないため、感覚に頼っていると問題が起こる可能性があります。血糖値を良い状態にコントロールするには、定期的に検査を受けることが重要です。
血糖値を把握するための検査方法は数多くあります。血糖をコントロールするため基本的な検査の方法、基準の数値を把握しておきましょう。
糖尿病を診断するための検査方法
糖尿病の診断では血糖値の数値を検査する必要がありますが、血糖値は食事やストレスなどの条件でも変動するため検査方法が複数存在しています。
基準値は検査方法や条件で変わります。正確な診断を下すためには検査を何通りが行い、絞り込んでいかなくてはなりません。
一般的な健康診断で行われるのは空腹時血糖検査だけです。食後高血糖などの異常を見つけることはできず、「検査でも異常なし」と診断されてしまいます。
年に1回空腹時血糖値検査を受けるだけでは、本当のリスクに気づくのが遅くなってしまう恐れがあるので注意しましょう。
血糖値は正常?糖尿病診断のための3大検査方法
血糖値は食事の影響をダイレクトに受けて変動するため、どんな胃袋の状態で検査を行ったのかが非常に重要なポイントです。
空腹時血糖検査、随時血糖検査、75gOGTTいずれかの検査で数値に問題があると糖尿病型と診断され、再検査を受けて再び血糖値の異常が見つかると糖尿病が確定します。
空腹時血糖検査(2008年に基準値変更)
空腹時血糖検査は、一般的な健康診断で行われる血糖値の検査方法です。健康診断を行う当日は朝食を摂らず空腹状態で採血を行います。
検査した男性の3~4人に1人、女性は8人に1人が100mg/dl以上の値です。(正常型は100mg/dl未満)
正常高値者の15人の1人、境界型の4人に1人は5年以内に糖尿病を発症しているデーターもあり、糖尿病型と診断されなくても安心することはできません。
空腹時血糖値検査では採血したその時の血糖値しか分からないので、食後高血糖などの異常を見つけることはできません。肥満や遺伝など心配要素がある場合、正常高値の段階でも違う検査で異常をあぶり出しておいた方が良さそうです。
空腹時血糖検査の基準値
- 正常型100mg/dl未満(※2008年110mgから100mgに引き下げ)
- 正常高値100~110 mg/dl未満
- 境界型110 mg/dL異常、125 mg/dl未満
- 糖尿病型126 mg/dl以上
随時血糖検査
随時血糖検査は、測定可能時間など特定の条件を設けず、自宅などで自由なタイミングで測定する検査です。明らかに空腹状態の時は除きます
自己測定器を使い、こまめに自分で血糖値を測る習慣をつけることも将来の自分の健康を守るためにも重要です。測定器があれば病院に予約を入れなくても好きなタイミングで数値を測定することができます。
「血糖値をこまめに測るだけで数値を改善する効果がある」とNHKの番組や雑誌でも特集が組まれ話題になりました。
番組放送後や関連雑誌「NHKガッテン!血糖値をラク~に下げる!化学の特攻ワザ」出版後に当社エイコンの血糖測定器にも注文が殺到しました。
随時血糖検査の基準値
- 糖尿病200 mg/dl以上
75gOGTT(75g経口糖負荷試験)
75gOGTTは食後高血糖の診断に有効な検査で、検査当日の朝まで10時間以上絶食した状態のまま空腹時の血糖値を測定します。
空腹の状態のまま病院で75gのブドウ糖を水に溶かしたものを飲用し、30分~1、2時間経過後、再度血糖値の数値を測定します。
健康な状態なら、食後2時間もすれば血糖値は空腹時の値に戻りますが。糖尿病リスクが高い方は下がりません。
食後高血糖を見つけるのに最適な検査ですが、自覚症状などから高血糖の疑いが濃厚な患者さんに対して行うとリスクが高い検査方法のため、医師の判断で行われないこともあります。
75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)基準値
- 正常型 空腹時血糖値110mg/dl未満 + 負荷後2時間血糖値 140mg/dl未満
- 糖尿病型 空腹時血糖値126mg/dl以上 + 負荷後2時間血糖値 200mg/dl以上
- 境界型 正常型にも糖尿病型にも属さないもの
血糖値の数値で手術が延期になることもある
気やケガで手術を行うことになった時も、血糖コントロールが必要です。高血糖の状態が続くと身体の抵抗力もダウンするので、手術中は細菌に感染しやすくなります。
ケガも化膿しやすくなるため、患部を治療するのと同時に血糖値を下げる対策が必要です。
既に糖尿病リスクがあることが分かっている場合、手術を行うかどうか判断する目安になるので、看護師さんやお医者さんにも血糖値の情報を伝えて下さい。
HbA1cの数値が5.8~6.5%(国際基準では6.2~6.9%)、空腹時血糖値110~130mg/dl未満、食後2時間血糖値140~180mg/dl未満でないと、血糖値の状態が良くなるまで手術を延期しなければならないこともあります。
大病、大怪我で本人が意識を失っている可能性もあるので、家族と情報を共有しておく必要があります。
万が一の事態が起きた時、病院側に血糖値の問題について伝えてもらうよう説明しておくことが大切です。
血糖値の基準より数値が高い!再検査で行う精密検査の方法
空腹時血糖検査など基本的な検査で異常が見つかったら、違う方法で再検査を行う必要があります。
普通の健康診断で受ける血糖検査では、採血した時点での瞬間的な数値しか分かりません。自宅でもこまめに血糖値を測定することが大事と言われるのはそのためです。
普段の変動を知るためには過去の血糖レベルをチェックできる検査を受けなければなりません。過去に遡り血糖値の異常を見つけるための検査方法は色々ありますが、それぞれ基準値が異なります。
いずれにしても、1つの検査方法で分かることは限られているので、複数の検査結果を照らし合わせ最終的に診断が下されることになります。
GAでは空腹時血糖値が低く食後に高いケースが判明
GA(グリコアルブミン)は血清中のタンパク質の一種で、アルブミンとブドウ糖が結合したものです。GAから検査前約1~2週間の血糖値の状況を探ることが可能です。
比較的短期間に起きた血糖の変動を知ることができるため、食事療法や運動療法の効果も実感しやすく、食後高血糖も見つけやすい検査方法です。
ネフローゼ症候群や甲状腺機能亢進症などの病気があると、本来の血糖コントロール状態より数値が低くなるので注意が必要ですが、空腹時血糖値や糖負荷2時間後血糖でも問題なかった患者さんの食後高血糖が判断できる貴重な検査です。
食後高血糖が続くと糖尿病を発病していないのに動脈硬化が進行することもあるので、動脈硬化の危険因子として考えられます。
GA血糖コントロールの目安
- 優 17.0%未満
- 良 17.0~20.0%未満
- 可 20.0~20.1%未満(不十分) 21.0~24.0%未満(不良)
- 不可 24.0%以上
1.5AGは尿糖の陽性が続くと数値が低下する検査
血液中の糖でブドウ糖の次に多く含まれる1.5AG(アンヒドログルシトール)を調べる検査です。
過去数日間の血糖値の動きを知ることができます。血糖値が高くなり尿酸が増加すると、尿に排泄する量も増え1.5AGは低下する傾向があります。
血糖値の検査は数値が高いほど糖尿病の疑いが濃厚になりますが、この検査だけは数値が低いほど良くないと判断することができます。
1.5AGの基準値
- 糖尿病型 男性:15μg/mL以下 女性:12μg/mL以下
- 正常型 男性:15~45μg/mL 女性:12~29μg/mL
1~2ヶ月間の血糖変動が判明するHbA1c
HbA1cとは血液中の赤血球成分、ヘモグロビンにブドウ糖が結合したもので、糖化してしまったヘモグロビン(糖化ヘモグロビン)は、赤血球の寿命が尽きるまで元に戻ることはありません。
高血糖であるほどヘモグロビンは糖化しやすくなり、HbA1cの数値は高くなり、低血糖であるほどHbA1cは低くなりますが、血糖値は正常なのにヘモグロビンa1cが高い場合もあります。
HbA1cの検査では1~2ヶ月間の血糖変動をチェックすることができ、検査の直前だけ食事制限などを頑張っても、普段不摂生をしていれば数値に反映されます。
過去の平均的な数値を知るのに最適ですが、血糖状態の急激な変化は把握することはできません。
また、食事療法や運動療法を行っていても、どの対策が数値に現れているのか直接的な因果関係は不明になります。
薬の効果もすぐに反映されません。腎不全やアルコールなど条件によって正確な結果が出ないことがあります。
常に6.5%まで下げるようコントロールし、合併症を予防することが重要です。理想は基準値である5.8%未満をキープすることです。
HbAlc血糖コントロールの目安
- 優 5.8%未満
- 良 5.8~6.5%未満
- 可 6.6~7.0%未満(不十分) 7.0~8.0%未満(不良)
- 不可 8.0%以上
尿糖検査だけでは判断できない
尿糖検査は尿に含まれる糖を調べる検査です。高血糖でも陰性が出ることもあり、血糖値に問題がないのに陽性が出ることもあります。
尿検査だけで正確な診断を下すことはできませんが、他の検査方法と併せ糖尿病を見つける参考材料の1つにします
尿糖検査の基準値
- 糖尿病型 陽性(血糖値が160~180mg/dlを超えると尿中に糖が出ます)
- 正常型 陰性
血糖値の数値が高いと言われてからでは遅い?
予備軍も含め糖尿病になってしまった患者さんは1.600万人以上いらっしゃいます。健康診断は既に発病している病気を見つける目的だけではなく、将来かかりやすい病気を発見し、発病リスクを回避するためにも受ける価値があります。
毎年健康診断を受けることはもちろん、血糖値の自己測定を習慣にする対策など、自分でも積極的に血糖値対策に取り組むことが大切です。発病する前ならサプリメントやお茶で血糖値をコントロールすることも可能で、薬を飲まずに済む方法もあります。
血糖値が正常でも油断大敵!血糖値が低いのに水面下で病気が進むことも
病院で毎年健康診断を受けている方で、血糖値の問題を一度も指摘されていない方も多いでしょう。
お医者さんから何も言われていないから大丈夫、と血糖値を測定する必要性を感じないにも無理はありません。
ただ、血糖値はかなりデリケートに変動するので、正常と異常を決めるのは簡単ではありません。血糖値の測り方は1つではなく、色々なシチュエーションで測定して初めて正確に診断することができます。
ところが、一般的な健康診断で測定するのは空腹時血糖値という血糖値が持つごく一面でしかないため、食後高血糖などの異常を見つけることはできません。
血糖値が低い、正常範囲と安心していても、実は糖尿病や他の合併症がかなり進行していることもあります。血糖値関連の病気は完治が難しく、一旦発病した以上、一生付き合わなければならない深刻な病が少なくありません。
厄介な病気を寄せつけないためにも、病院で血糖値が高いと言われる前に自分で血糖値を測定し、諸々の病気の発病リスクを把握しておくことが大切です。
高齢者や妊婦さんはリスクが高くなる
血糖値の数値が正常範囲内でも、条件によっては精密検査を自発的に行った方が良いケースもあります。
糖尿病リスクは、年齢が1歳加わる度に2%もが上昇します。高齢者ほど血糖値を意識する必要があります。
妊娠中も血糖値が上がりやすいので妊婦さんも要注意です。妊娠糖尿病を発症した女性、巨大児を出産した女性も将来糖尿病を発症するリスクが高くなります。
肥満や血圧などいくつかの条件が重なっている場合も、一気に数値が悪くなることがあるので油断することはできません。
その他、仕事の勤務時間や睡眠時間、ストレス、うつ病など精神的な病も糖尿病とは無関係ではありません。
~2型糖尿病リスクが上昇する要因~
- 遺伝要素(家族に糖尿病の方がいると2.0~2.7倍上昇)
- 年齢(歳をとるごとに2%上昇)
- 肥満指数(BMIが増えると17%も上昇)
- 高血圧(血圧が高いと1.3~1.8倍上昇)
- 喫煙(1日約1箱吸うと1.4~3.0倍上昇)
- 飲酒(1日1合以上飲むと1.3倍上昇)