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糖尿病治療と野菜の関係性とは

糖尿病と野菜に関する基礎知識

弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病に野菜がいいと言われている理由は何ですか?
A. 野菜に含まれる食物繊維が、糖の吸収を穏やかにするため「食後血糖値の急上昇」を抑制することが大きな理由です。

この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得している自然療法専門医。
スコッツ先生のプロフィール
https://gluco-help.com/media/lose-weight-diabetes27/

糖尿病治療に野菜が不可欠な理由とは

糖尿病の治療では、良好な血糖コントロールを行うことが何よりも重要です。
野菜に多く含まれる食物繊維には、体内に入った食べ物が胃から小腸へ移動する時間を遅らせたり、糖が消化・吸収されるのを妨げる作用があります。その結果、食後血糖値の急上昇を抑えることにつながるのです。

さらに、野菜などの食物繊維を多く含む食品を摂取すると、満腹感を長時間にわたって感じることができることもメリットのひとつです。

日本人の糖尿病患者の場合、軽度の肥満でも脂質異常症や高血圧、動脈硬化を併発しやすいといわれています。そのため、糖尿病の食事療法では「血糖コントロール」はもちろんのこと、肥満防止のためのカロリー管理も重要視されます。
体重をわずか3%減らしただけでも、さまざまなリスクを下げられるので「食事量のコントロール」は大きな意味を持つといえるでしょう。

また、野菜に含まれているビタミンB1の働きも見逃せません。
ビタミンB1は、血液中のブドウ糖を分解する際には欠かすことができない栄養素です。さらに、筋肉細胞でブドウ糖を燃焼させるときに働く「酵素」をサポートする役目を持っています。

糖質の多い食事を続けていると、体内のビタミンB1が不足します。すると、食事で摂取したブドウ糖をエネルギーに変換するのが難しくなり、血糖値が上昇しやすくなってしまうのです。
糖尿病を患っていると常に血糖値が高くなりがちなため、食事ではビタミンB1が豊富に含まれた野菜を積極的に食べることが大切です。

糖尿病に良い野菜はどれ?

糖尿病で食事療法を行っている方におすすめの野菜は、糖質量が少なくて食物繊維が豊富に含まれているものです。具体的には、枝豆、アスパラ、キャベツ、オクラ、小松菜、セロリ、ブロッコリー、ほうれん草、レタスなどがあげられます。
もちろん、どれかひとつだけの野菜に偏ることなく、バランスよく摂取するのが重要です。

特に、オクラに含まれているネバネバ成分は「ムチン」や「ペクチン」と呼ばれる食物繊維の一種です。このネバネバ成分は、腸で糖質を包み込んで吸収を穏やかにする作用があるといわれています。そのため、食後の血糖値が急上昇するのを抑制し、高血圧の予防にも効果的です。

オクラに含まれている亜鉛やマグネシウムといったミネラルは、糖尿病患者のインスリンの効きを良くする作用があるので、「糖尿病に良い野菜」といえるかもしれません。

また、玉ねぎも糖尿病患者さんにおすすめの野菜です。玉ねぎは比較的糖質が多い食べ物なのですが、硫黄化合物(メチルアリルトリスフィド)が含まれており、血液をサラサラにする効果が注目されています。さらに、糖尿病患者さんに多くみられる高血圧の予防も期待できるのは嬉しいポイントでしょう。
玉ねぎの硫黄化合物には、末梢の細い血管を拡張する働きもあるといわれているため、糖尿病足病変の防止目的としても積極的に摂取したい野菜です。

ちなみに、時々「野菜を食べていれば糖尿病が治る」と勘違いしている患者さんがいますが、糖尿病自体は現代医療では完治しない病気とされています。そのため「糖尿病に良い野菜=糖尿病が治る野菜」ではないことを、大前提として覚えておきましょう。
食事療法は、糖尿病をこれ以上悪化させないための治療のひとつです。良好な血糖コントロールを行うことを目的として、毎日の食事で野菜をバランスよく摂取していくように心がけてください。

糖尿病治療中に食べ過ぎない方がいい野菜は?

野菜は、果物やパン、ケーキなどと比較すると甘みをあまり感じないため、糖質は多く含まれていないイメージがあるでしょう。しかし、糖質の中には甘味がほとんどない種類も存在しており、野菜だからといって食べ過ぎると糖の過剰摂取につながることも少なくありません。

野菜の中で糖質量が多いのは、かぼちゃ、れんこん、とうもろこし、さつまいも、じゃがいも、ごぼう、玉ねぎなどがあげられます。特に、かぼちゃ100gあたりの糖質量は17.1g、れんこんは13.5gもあるため注意が必要です。

しかし、糖尿病治療中に食べてはいけない食品はありません。もちろん、かぼちゃやれんこんなどの野菜も食べて構わないのです。気を付けるべきなのは、「食べ過ぎ」と「調理方法」です。
これは、野菜に限らずさまざまな食品にもいえることですが、ひとつの食材だけに偏って摂取していると栄養バランスが乱れてしまいます。また、低糖質の食べ物でも砂糖たっぷりで調理すれば糖質が増加するのも当然でしょう。
メインのおかずには糖質が低い食品を選び、副菜としてイモやかぼちゃ、れんこんを薄味で調理したものを添えるようにするのがおすすめです。

野菜には豊富な食物繊維が含まれています。そのため、同量の白米を摂取した場合と比較すると糖の吸収スピードがかなり緩やかになり、血糖値の急激な上昇を抑えることがわかっています。
確かにかぼちゃなどは「野菜の中では糖質が多い」といえますが、おにぎりやパンを食べるよりは血糖値に大きく影響しないので、日々の食生活に上手に取り入れましょう。

野菜ジュースが糖尿病に悪いといわれるのは何故か

糖尿病の食事療法では、野菜を積極的に摂取することを推奨されていますが「毎日野菜を調理するのが面倒」といった理由から、野菜ジュースで代用する患者さんも少なくありません。しかし、野菜ジュースには糖質が凝縮されているため注意が必要です。

一般的な野菜ジュースの場合、200mlのパックには15~20gの糖質が含まれています。
前述した通り、野菜が良好な血糖コントロールの手助けをするのは、含有されている食物繊維の働きによるものです。
しかし、野菜ジュースは繊維質を取り除いた「液体」なので、小腸での糖吸収を妨げるものがなく血糖値を急激に上昇させてしまう恐れがあります。

また、加工時には野菜の栄養素が減少するため、野菜ジュースを野菜の代わりに飲むのはあまりおすすめできません。食事療法によって糖尿病の悪化を防止するためには、丸ごとの野菜をそのまま摂取するのがベストです。

糖尿病でも飲める野菜ジュースのおすすめは?

糖尿病治療中でも「どうしても野菜ジュースが飲みたい」という方には、糖質オフの野菜ジュースがおすすめです。特に、カゴメ株式会社から販売されている「野菜ジュース糖質オフ」は、200mlあたりのエネルギーは21kcal、糖質3.3gなので糖尿病の方でも安心して飲むことができます。

野菜ジュース糖質オフは、はくさい、トマト、アスパラガス、キャベツ、セロリをはじめとする15種類の低糖質野菜を原料として作られている野菜ジュースです。食物繊維も1.5g含まれているため、血糖コントロールが欠かせない糖尿病患者さんに最適でしょう。
ただし、カリウムが400mgも含まれていますので、糖尿病腎症と診断されている場合には注意してください。

先ほど、野菜ジュースには糖の消化・吸収を抑制する「食物繊維」が含まれていないため、糖尿病患者の食事療法には適さないというお話をしました。
しかし、野菜ジュース製造・販売大手のカゴメ株式会社が2016年に「食前に野菜ジュースを飲むと、食後血糖値の急上昇を抑えられる」という発表をしたのです。その効果は、食前に野菜サラダを食べたときと同等だというから驚きです。

これは25~50歳の男女を対象に行われたもので、白米と野菜サラダ、白米と野菜ジュース、白米と水という3パターンの組み合わせで調査されました。その結果、白米を食べる30分前に野菜サラダか野菜ジュースを飲むと、食後血糖値の上がり方が緩やかになったといいます。
野菜ジュースを飲んだ直後には、やはり若干の血糖値上昇が認められましたが、その後は食事をしても血糖値が大きく変化しなかったという調査内容でした。

血糖値の大幅な変動は、糖尿病患者の身体にさまざまな悪影響を及ぼします。食事30分前に、たった200mlの野菜ジュースを飲むだけで食後血糖値の急上昇を予防できるなんて、嬉しい情報ですね。
もちろん、糖尿病の段階や症状によっては効果が十分に感じられないこともあるかもしれませんが、医師と相談のうえ試してみる価値はあるでしょう。

糖尿病患者が1日に食べるべき野菜の量はどれくらい?

糖尿病で食事療法を行っている方には、毎日350g以上の野菜を摂取することが推奨されています。また、糖の吸収を穏やかにする作用がある食物繊維は、1日あたり20~25g摂るように心がけましょう。
食物繊維は、血糖値コントロールに良いだけではなく、満腹感を長時間キープする作用や、コレステロールの上昇を抑制する効果もあるといわれています。

日本人の1日平均摂取量は292.3gと、少な目であることがわかっています。さらに、糖尿病治療中の患者さんは多くの方が野菜不足に陥っているのも事実です。野菜を使ったおかずやサラダを、意識的に増やすようにしてみてください。
目安としては、生野菜なら両手いっぱいに乗る程度の量、加熱調理した野菜なら片手くらいの量を1食分として取り入れると良いでしょう。
野菜は生で食べた方がビタミンCを壊さずに摂取できますが、「生野菜は食べにくい」と感じる方も少なくないでしょう。その場合には加熱すると、かさが減って量を食べやすくなります。
茹でても良いのですが、水溶性の栄養素が流れ出てしまうので蒸し野菜がおすすめです。
最近では、電子レンジで簡単に蒸し野菜を作ることができる「スチームケース」なども多く販売されていますので、ぜひ活用してみてください。

野菜から食べる食事療法で糖尿病悪化を予防

糖尿病の食事療法では、野菜から食べる「ベジファースト」が推奨されています。
野菜などに含まれる食物繊維を先に摂ることで、小腸から糖が吸収されるのを穏やかにし、食後血糖値の急激な上昇を抑える効果があります。
先に野菜を食べると、食物繊維がその他の食品に含まれる水分を吸収して膨らむので、「食べ過ぎ」や「肥満」を防ぐといった面でも有効です。
健康な方でも、ダイエットを行うときには「野菜から食べた方が良い」ともいわれています。

また、2012年に大阪府立大学地域保健学域の研究チームによって行われた、2型糖尿病患者を対象とした治験結果では、次のような結果が出ています。
通常の食事の際に、野菜サラダなどを全く摂取せずに白米から食べると、食後2時間経過した時点での血糖値平均が195mg/dLと高い数値が出ました。しかし、野菜から食べた場合には2時間経過後の血糖値平均は160mg/dLまで下がったのです。
これにより、野菜に含まれる食物繊維が小腸で糖の吸収を抑制して、食後の血糖値を急激に上げないような働きをみせることが証明されました。

糖尿病治療においては、良好な血糖コントロールが重要な意味を持ちます。
食事のたびに起こる血糖値の激しい変動は、血管へ大きなダメージを与えるためです。高血糖による血管内皮障害や炎症が進行すると、脳卒中や心筋梗塞、動脈硬化など、命に関わる重篤な問題が起きる可能性を高めてしまいます。

食事内容を毎回細かく検討するのは、困難だと感じる糖尿病患者さんも少なくありません。
しかし、「毎食必ず野菜を取り入れる」「食事をする際は野菜から食べ始める」という2つのルールを守るのは、決して難しいことではないでしょう。まずは、自分ができることから少しずつ始めてみてください。

糖尿病腎症なら野菜の調理方法にひと工夫

野菜には多くのミネラルや栄養素が含まれていますが、糖尿病腎症を治療している患者さんの場合には、カリウム制限が必要となる場合があります。一般的には、第3期の「顕性腎症期」から第4期の「腎不全期」で制限を指導されることがほとんどです。

本来であれば、食事で摂取したカリウムはその90%が尿と一緒に排出される仕組みです。しかし、腎臓機能が低下してしまうとカリウムをスムーズに排出することができなくなるため、「高カリウム血症」を起こす心配が出てきます。

しかし、栄養バランスを考慮した食事を摂ろうと思うと、カリウムを含んだ野菜を完全に排除することは困難です。その場合には、茹でたり水にさらしたりと工夫しながら調理することで、野菜のカリウム量を減少させることができます。
葉野菜を食べるときには、一度茹でてからお浸しや和え物にするなど、「ひと手間」を加えて上手に野菜と付き合っていきましょう。

糖尿病で高血糖状態が続くと、糖尿病三大合併症のひとつである「糖尿病腎症」を発症することは珍しくありません。糖尿病腎症は、いきなり透析が必要になるほど重症化するわけではなく、段階を経て少しずつ病状が進行していくのが特徴です。

初期のうちに早期発見をして、薬物療法や運動療法、そして食事療法によって厳格な血糖コントロールを行う必要がありますが、悪化すると腎不全を起こしてしまい、体内のさまざまな老廃物を排出できなくなります。
糖尿病腎症がステージ3~4と診断されている方は、人工透析治療を免れるためにも、野菜から摂取するカリウム量には十分注意するようにしましょう。

まとめ

糖尿病の治療では、食事療法と運動療法が大きな柱となります。しかし、毎日どんなにウォーキングなどの運動に励んでいても、肝心の食生活が乱れていては台無しです。
糖質や脂質が多く含まれている食品を減らしながら、栄養バランスの良い食事を摂るように心がけましょう。野菜を中心とした食事は、自然と低糖質・低脂質のメニューになるはずです。

また、野菜を調理する際には、砂糖や油の使い過ぎに注意するなど、調理方法にも気を配ることも忘れないようにしてください。
前述した通り、野菜に含まれる食物繊維は「食後血糖値」の急上昇を抑える働きがあります。食事をする際には、野菜から食べるようにすれば、より良好な血糖コントロールが行えるはずです。
枝豆、アスパラ、キャベツ、セロリ、ブロッコリー、ほうれん草、レタスなど、糖質が少な目で食物繊維が多く含まれる野菜を上手に取り入れて、糖尿病の悪化や糖尿病合併症を予防していきましょう。

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