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糖尿病患者の緑内障について

糖尿病と緑内障に関する基礎知識

弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病で緑内障になると完治しないって本当ですか?
A. 緑内障は、糖尿病の有無に関わらず手術をしても現代医療では完治しない疾患とされています。一度失った視神経は二度と元に戻らないため、これ以上進行しないよう治療を進めるのが一般的です。

この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得している自然療法専門医。
スコッツ先生のプロフィール
https://gluco-help.com/media/lose-weight-diabetes27/

糖尿病で発症する緑内障とは?

日本緑内障学会の調査では、40歳以上の日本人のうち20人に1人が緑内障であるというデータが報告されています。さらに、糖尿病治療中の患者さんの場合には、どんなに血糖コントロールを良好に行っていても緑内障にかかりやすいともいわれており、注意が必要です。

緑内障は一度発症すると、眼圧の調整が非常に困難であることから、完治が見込めないとされています。そのため、早期発見・早期治療を行うことが何よりも大切です。
糖尿病患者さんが気をつけたい合併症には、糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症などがありますが、このうちの「糖尿病網膜症」を悪化させてしまうと、血管新生緑内障と呼ばれる恐ろしい合併症を引き起こすのです。

糖尿病の高血糖状態が続くことで網膜の血管が詰まり、神経が酸欠状態となります。この酸欠状態が目の前方部分まで進行すると、新生血管といわれる特殊な血管が伸びはじめ、目の虹彩や毛様体に広がります。
次々と伸びる新生血管は、最終的に「隅角」と呼ばれる目の水分の出口を塞いでしまうため、眼球の水分がどんどん溜まってしまうのです。これにより、眼圧が上昇して緑内障を引き起すといわれています。

緑内障で眼圧が上がると「視神経」がその圧力に押されて死滅し始め、徐々に視野が欠けたり狭くなったりして、最終的には失明してしまいます。糖尿病の治療を行っている患者さんは、日々の血糖コントロールを良好に行い「網膜症」「神経障害」などの合併症を予防し、緑内障を発症するリスクを少しでも低下させるよう心がけましょう。

糖尿病緑内障の症状

糖尿病患者さんは緑内障にかかりやすいといわれているため、どのような症状が出るのか知っておきたいでしょう。しかし、緑内障には自覚できる初期症状がほとんどありません。
最初は視野の欠損が非常に少ないため、両目で見ている分には正常に感じることが多く、自分では気づかないうちに症状が進行しているケースも少なくないといいます。

緑内障は、視野の中心部分から始まるわけではなく、視野の上や鼻側あたりから少しずつ欠損が悪化していくので、発見が遅れがちです。
「歩行がしにくい」「暗い場所で見えにくさを感じる」「まぶしい」「視野が欠けている」「新聞や本が読みにくくなった」などの自覚症状が出始めた頃には、すでに中期程度の緑内障へと進行している段階といえるでしょう。

視野の半分以上が欠けて見えるようになると、緑内障末期になります。一度失った視神経は、どんな治療を施しても元には戻りません。そのまま放置していれば、最悪の場合には失明してしまいます。
そのため、定期的に眼科で検査をして早期発見・治療を行うことが重要です。

糖尿病緑内障の検査はどんな方法がある?

糖尿病患者さんが注意したい緑内障は、眼科で検査をすることができます。
必ず行われる緑内障検査には、「眼圧測定」があげられます。この眼圧測定は、角膜にセンサーや空気を当てて眼球の固さを調べるものです。通常であれば、10~21㎜Hgという値ですが、緑内障の場合にはこれより高い数値が出ることが多いといいます。

また、従来の眼圧測定、視野検査、隅角検査、眼底検査に加え、最近では「OCT検査」と呼ばれる新たな検査方法が普及し始めました。
OCTは「光干渉断層計」とも呼ばれ、近赤外線の光線を眼底に当てて「光の干渉」を利用しながら、網膜の状態を確認する検査です。これまでの検査方法より、かなり精密に視神経線維の欠損を見つけられるようになりました。

前述した通り、緑内障では初期の自覚症状がほとんどありませんが、OCT検査を用いることによって「ごく初期」の緑内障を見逃さずに発見可能で、早期治療の開始が期待できます。
一般的には、40歳以上の人は年に1回の検査が推奨されています。しかし、糖尿病を治療している患者さんの場合には、健康な方より緑内障を発症するリスクが高いため、眼科医とよく相談したうえで定期的な検査を受けるように心がけましょう。

緑内障と糖尿病網膜症はどちらが怖いのか?

緑内障も網膜症も、糖尿病患者さんに多くみられる合併症です。ときどき「緑内障と糖尿病網膜症はどちらが危険なのか」と疑問を抱く方がいますが、正直なところ「どちらも怖い」としかいえません。

ただし、緑内障は糖尿病患者さんに限らず、健康な人でもみられる目の病気です。通常は、緑内障を放置したからといって、糖尿病網膜症を発症することはありません。早期に発見して適切な治療を行えば、必要以上に怖がる必要はないでしょう。

一方、糖尿病網膜症は、血糖コントロールが悪いために起こる「糖尿病合併症」のひとつであり、そのまま悪化させると血管新生緑内障と呼ばれる新たな合併症を引き起こします。
「糖尿病網膜症が重篤な状態になると緑内障を併発する」という点をみれば、糖尿病治療中の患者さんは、網膜症予防に力を注いだ方が良いのかもしれません。
網膜症を防ぐための食事療法や運動療法は、あらゆる糖尿病合併症の予防にもつながります。毎日の血糖コントロールと、適切な検査を定期的に受けることが重要です。

糖尿病だと緑内障と白内障を併発しやすい?

緑内障と白内障は、その病名が非常に似ていることから「関連があるのでは?」と思われがちですが、全く異なる病気です。
しかし、糖尿病を治療している患者さんの場合は、健康な人と比べると緑内障も白内障も発症しやすいというデータが報告されています。そのため、両方の病気を併発することも珍しくありません。

一般的な白内障は、加齢による発症がほとんどですが、糖尿病白内障の場合には若い方でも現れることがあります。これは血糖コントロールが悪く、「高血糖状態」が長期間にわたって続くため起こるといわれていますが、詳しい原因については現在も研究が行われている状態です。

万が一、糖尿病治療中に緑内障と白内障を併発した場合には、「iStent」と呼ばれるインプラント手術が有効とされています。iStentは、緑内障による眼圧を下降させる効果は多少劣りますが、緑内障点眼薬を減らすことができ、白内障手術と同時に行える画期的な術法といえるでしょう。

糖尿病緑内障の予防方法

糖尿病患者さんが緑内障を予防するには、第一に良好な血糖コントロールを行うことが重要です。これは、緑内障の予防だけでなくあらゆる「糖尿病合併症」を防ぐために欠かすことができません。
糖尿病網膜症を悪化させると「血管新生緑内障」を引き起こすリスクも高まるため、日頃の血糖管理、食事療法、運動療法はもちろんのこと、必要に応じた薬物療法を適切に行い、定期的な眼科検査も受けるように心がけてください。

また、緑内障の原因には「視神経の血流障害」があげられます。そのため、この血流をスムーズにコントロールするために必要な「一酸化窒素」を豊富に含む食品を積極的に摂取することも、緑内障予防につながるといった研究報告があります。
これは、アメリカのハーバード大学医学部と、ブリガムアンドウンイメンズ病院が共同で行った研究で、約10万5,000人のデータを25年以上にわたって調査したものです。

一酸化窒素の前駆体である「硝酸」を多く含むホウレン草や小松菜などの青菜類を毎日食べているグループでは、緑内障にかかるリスクが低下したといいます。
もちろん、食品だけで緑内障を完全に予防することはできませんが、糖尿病治療においても「青菜類」などの野菜を食生活に多く取り入れることは、非常に大切です。
野菜には、血糖値の急激な上昇を抑える働きがある「食物繊維」も豊富に含まれています。良好な血糖コントロールと緑内障予防のためにも、全体の栄養バランスを考慮したうえで野菜を積極的に摂取するようにしましょう。

糖尿病患者の緑内障治療方法

糖尿病患者さんだけでなく、緑内障を発症した人の視神経は一度失われると、二度と元には戻りません。そのため、これ以上視野が欠損しないように「予防的治療」が選択されることが一般的です。
急性緑内障の場合には、そのまま放置していると失明の恐れがあるので早急に手術を行いますが、緑内障の多くは「慢性緑内障」といわれています。さほど視野が欠損していないのであれば、まずは点眼薬による眼圧低下治療が選択されるでしょう。

最近では、さまざまな種類の眼圧下降点眼薬が開発されており、視野異常の程度、眼圧レベル、緑内障のタイプによって使い分けられます。
視神経血流を促進する点眼薬や、眼圧下降作用に特化した点眼薬、視神経を保護する成分が含まれた点眼薬などを、患者さんの症状や状態を見ながら組み合わせて治療するのが主流です。

点眼治療を継続しても、なかなか眼圧が下がらなかったり、緑内障が悪化してしまう場合には外科手術やレーザー治療が行われます。

緑内障の手術には、「線維柱帯切開術」「水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術」「線維柱帯切除術」「レーザー虹彩切開術」などがあり、それぞれにメリットやデメリットの両面があるため、医師と相談しながら慎重に決定しましょう。

線維柱帯切開術は、後述する「線維柱帯切除術」と比べると眼圧降下効果はやや劣りますが、非常に安全性の高い緑内障手術だといわれています。
最近の線維柱帯切開術では、眼内から繊維柱体を切開する方法が考案されたため、合併症のリスクもかなり低下し、従来の線維柱帯切開術より眼圧降下効果も見込めるようになりました。
ただし、切開時には必ず出血するため術後1週間程度は「見えにくい」といった症状が続きます。日帰り手術が可能ですが、しばらくの間は自宅で安静に過ごすことをおすすめします。

水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術は、緑内障と白内障の治療を同時に行うことができる手術方法です。前述した「線維柱帯切開術」と比較すると出血も少ないため、早期の社会復帰が可能である点は大きなメリットでしょう。
内部が空洞になった「iStent」と呼ばれるインプラントを線維柱体に埋め込み、房水を流れやすくして眼圧を低下させるもので、わりと新しい緑内障手術となっています。

線維柱帯切除術は「濾過手術」ともいわれ、線維柱体を切除したうえで強膜にバイパスを形成し、房水を眼外に流出させる方法です。しかし、房水は涙として排出されるわけではなく、結膜の下に流す形をとります。そのため、結膜下に膨らみが発生するのが一般的といわれています。
眼圧降下効果は高いのですが、感染症に弱いことや、術後数年が経過すると癒着が起こってしまい、効果が継続しない点がデメリットとしてあげられるでしょう。
感染症や合併症の予防・管理が重要となるため、術後しばらくは頻繁に通院する必要があります。

レーザー虹彩切開術は、主に急性緑内障の患者さんに対して行われる手術方法です。
溜まった房水を排出するために、光彩にレーザーで穴をあけて眼圧を降下させます。また、慢性の隅角緑内障を持っている人が「急性緑内障」の発作を起こさないように、予防的に行うことも少なくありません。
デメリットとしては、角膜の透明性を保つ役割がある「角膜内皮細胞」が将来的に減少してしまう可能性があるといわれています。

糖尿病の緑内障は手術で完治する?

糖尿病も緑内障も、治療や手術を行ったからといって完治する疾患ではありません。治療の目的は、「これ以上悪化させないこと」「現在の状態を少しでもキープすること」にあります。一度失った視野は、二度と元に戻らないのです。
そのため、糖尿病患者さんが緑内障の手術を受けても、それで治療が終わるわけではありません。緑内障の治療は糖尿病と同様、一生継続していくべきものなのです。

点眼薬や手術によって眼圧自体が下がっても、適切な治療を続けなければ再び上昇してしまいます。これは、糖尿病患者さんの血糖値と似ているといえるかもしれません。
糖尿病の通院と並行して、眼科でも定期的な検査を受け、視神経や視野の異常が発生していないかを確認してもらうようにしましょう。

とはいえ、「緑内障で失明するかもしれない」と怯えながら毎日を過ごすのは大きなストレスです。正しい眼圧コントロールができていれば、失明リスクはそれほど心配する必要はありません。

医師の指示通りに点眼や薬の服用を行い、定期的な通院を欠かさないでください。

また、糖尿病合併症である網膜症を予防するためにも、日々の食事療法や運動療法をしっかり行い、血糖コントロールを良好に保つことも重要です。適度な運動は、血糖値を下げる効果とともに、眼圧を下げる効果も期待できるといわれています。

喫煙は、視神経乳頭の血液循環を悪くさせることが判明しており、血糖値管理の面も踏まえ、できるだけ控えるようにしましょう。
緑内障で「失明したらどうしよう」と怯えているのは、糖尿病で「足を切断することになったらどうしよう」と不安に感じることと似ています。
適切な血糖コントロールと眼圧コントロールを同時に行い、まずは「現状維持」ができるように日々心がけることが大切です。

まとめ

糖尿病を患っていると、網膜症や神経障害、腎症をはじめとした、さまざまな合併症リスクがつきまとうものです。視野が欠ける「緑内障」もそのうちのひとつといえるでしょう。
また、糖尿病網膜症を放置して悪化させると、重篤な目の病気である「血管新生緑内障」を発症して、失明リスクを高めてしまいます。

緑内障はもちろんのこと、網膜症などの合併症も早期発見、早期治療によって予後は大きく異なってくるため、少しでも「おかしいな」と感じることがあれば、すぐに医師へ相談してください。
自己判断で様子見をしていると、いつの間にか手遅れになってしまうケースも少なくないといいます。

最近では、緑内障で失われた視神経を再生させる研究も進められています。断言はできませんが、近い将来に「視神経回復手術」が実現されるかもしれません。
まずは、現在の状態を少しでも長く保てるように、適切な治療と検査を継続していきましょう。

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