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糖尿病の前兆はある?初期症状との違いと予防法

糖尿病の前兆に関する基礎知識

弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病の前兆はある?
A. 自覚できるものはほとんどありませんが、予防は可能です。

糖尿病の前兆はある?

糖尿病と同じような症状が現れて、気になっていませんか?ただでさえ糖尿病は、自覚症状があまりないといわれている病気です。もし、糖尿病になる前兆があるなら、事前に知っておきたいですよね。

糖尿病には発症する前の予備群の段階があります。しかし、そのときはさらに症状は現れづらく、ほとんどないといってもいいレベルです。発覚するのは健康診断を受けたときや、病院に行ったときにたまたまということが多いのです。

自覚症状があまりないため、自分では健康と思っていたのに突然糖尿病だといわれて、受け入れられずに治療をしないという人もいるほどです。それほど自覚症状の少ない病気ですから、もしその症状が出てしまったということは、すでに糖尿病になってしまっている可能性が高いといえます。

糖尿病の境界型は糖尿病の前兆

糖尿病になるまでの予備群の分け方として、境界型・糖尿病型というものがあります。境界型は、糖尿病型ほどではないものの、健康な人よりも少し血糖値が高い人が該当します。糖尿病の判断基準はいくつかありますが、ひとつの例として糖尿病型と2回診断されたら、糖尿病確定というものがあります。
では糖尿病型の判断基準はどうなっているのかというと、次のうちいずれかを満たしたときです。例えば、一回の検査で、空腹時血糖値または随時血糖値が基準値以上で、かつHbA1cが基準値を超えた場合は、糖尿病確定となります。

  • 空腹時血糖値が126mg/dL以上
  • 75g経口ブドウ糖負荷試験での随時血糖値が200mg/dL以上
  • HbA1cの値が6.5%以上

糖尿病型や境界型に属する人は糖尿病予備群ですので、糖尿病になる前兆だといってもいいでしょう。また、空腹時血糖値が109mg/dL以下の場合は正常型と呼ばれますが、100〜109mg/dLの範囲は正常高値といって、血糖値が通常より高い範囲にあります。このような人も、生活習慣などを正さないと、いずれ糖尿病になってしまう危険があり、前兆が現れているといえます。

糖尿病患者によく起こる動脈硬化は、境界型のときから起こりはじめています。境界型はまだ特に自覚症状がないため、糖尿病の可能性があることに気づけません。ですが、身体の中ではすでに変化が起きはじめているのです。

 

前兆と初期症状の違い

糖尿病になる前兆と、糖尿病の初期症状はよく混同されています。前兆は糖尿病になる前に現れる症状ですから、境界型や糖尿病型の人に起こる症状といえます。一方、初期症状はすでに糖尿病になっていることを意味しています。

ですが、どちらにも共通している症状もありますので、判断が難しいこともあります。その症状とは、以下のようなものです。特に境界型でも健康な正常型に近い場合と、糖尿病型に近い場合で起こる症状も違ってきます。

  • のどが頻繁に渇く
  • 頻尿、多尿になった
  • 疲れやすい
  • 体がだるい
  • 食べてもやせてしまう
  • 目が見えにくい
  • 検査で血糖値が高かったことがある

基本的には、糖尿病型に近いほど(血糖値の数値が大きいほど)このような症状が出やすくなってきます。糖尿病も予備群も、程度は違えど血糖値が高いことが共通していますので、症状も高血糖が原因で起こるものになります。

血糖値スパイクと反応性低血糖症は糖尿病の前兆

健康な状態だと、血糖値の変動の幅は、高いときと低いときでそこまで大きな差はありません。しかし、何らかの原因でこの波が急上昇したり、急降下したりして波が大きくなる場合があります。このような異常のことを血糖値スパイクといい、放置したままでいると糖尿病になる可能性が高くなったり、動脈硬化の進行を早めてしまいます。

また、血糖値スパイクにより、別の症状が出てくることもあります。血糖値が高いことを高血糖といいますが、反対に血糖値が低くなることを低血糖といいます。血糖値スパイクを何度も繰り返していると、すい臓の機能に異常が出はじめ、血糖値を正常の範囲よりも低く下げてしまうことがあります。

このように、食後2〜3時間後に血糖値が低くなり、倦怠感・めまい・悪寒・発汗などの症状を起こすことを、反応性低血糖症といいます。反応性低血糖症を放置していると、数年後に糖尿病になる可能性が高いとされています。

血糖値スパイクは、血液検査で空腹時血糖値を測定しても、そこまで異常な数値が出ません。したがって健康診断で発覚することが少なく、「隠れ糖尿病」と呼ばれる問題にもなっています。ですから、血糖値スパイクの可能性を考慮するなら、血液検査は食後に行うのがもっとも望ましいといえます。

具体的には、食事をはじめてから1〜2時間経った状態で測定するのがいいでしょう。できれば、自由なタイミングで測定できる「自己血糖測定器」を常備しておくと、異常をすぐに発見できるようになります。特に境界型といわれた人は、購入して定期的に測定することをおすすめします。

1型糖尿病の前兆について

糖尿病には2種類あり、1型糖尿病と2型糖尿病に分かれます。1型糖尿病患者は、2型に比べると数が少なく1割もいません。1型糖尿病は、ウイルス感染や自己免疫的な要因などですい臓に障害が現れ、インスリン分泌量が極端に少なくなったり、まったくつくれなかったりする病気です。

1型糖尿病の場合は、2型糖尿病に比べると突発的に発病し、ほとんど前兆を感じることができません。ですから、初期症状を感じたときにはもう発症していることになります。その点に関しては2型と同じです。1型の場合は、その突発性から血糖値を測って問題がなくても、1ヶ月後には高血糖になっている可能性があり、前兆をとらえるどころか早期の発見すら難しくなります。

妊娠糖尿病の前兆は?

妊娠糖尿病は妊婦であることが条件で起こる病気ですので、前兆とは少し違いますが、「妊娠したら妊娠糖尿病になる可能性がある」ということが判断材料のひとつになります。

妊娠糖尿病になる人は、糖代謝の異常を起こしやすい環境的な要因、あるいは遺伝的な要因を持っています。予防するという意味では、妊娠後は食生活や運動に気を使っていくと効果的です。家族に糖尿病になった人がいる場合は特に、そういう意識を持っておくことが大事です。

糖尿病になりやすい条件に気をつけることで予防に

糖尿病は前兆というものがなく、初期症状が起こったときにはもう発症しているため、事前に察知することが難しい病気です。ですが、前兆を知りたいというのは、結局病気になりたくないという不安の現れですので、予防をしていれば不安にならずに済みます。糖尿病の原因ははっきりとわかっていない部分もありますが、なりやすい条件はいくつかあります。

ですから、これらの条件を満たさないようにすることで、糖尿病を予防することができるのです。簡単にできることもありますので、今の生活習慣に少しアレンジを加えるだけでも、糖尿病になる可能性を減らすことができるでしょう。

適度な運動をすること

運動をすることで、さまざまな良い効果が期待でき、糖尿病の予防になります。糖尿病や予防に対して有効な運動は有酸素運動です。有酸素運動をすると、筋肉に対しての血流がよくなり、ブドウ糖を取り込める量が増えますので、インスリンの効果がアップします。この働きにより、血糖値を下げることができるのです。

運動は少しやって、やめてを繰り返すのではあまり効果がなく、少しでも継続的に行うほうが効果があるとされています。30分のウォーキングを週5日などが望ましいです。しかし、はじめたばかりのころは継続が難しいため、10分のウォーキングを週5日程度にしてみるなど工夫してみましょう。

10分のウォーキングだと、5分歩いた場所から引き返せば10分ですから、思ったよりもすぐ終わったと感じるでしょう。慣れたら少しずつ時間を増やしていけばいいのです。特に、食後すぐの運動は血糖値の上昇を抑える効果があります。糖尿病ではなくても血糖値が高めの人には有効な手段です。

体重を増やさないこと

肥満がさまざまな疾患を引き起こすことは知られており、実際糖尿病になりやすい人は太っている人が多いです。特に内臓脂肪が多い人はその傾向が強くなります。その理由は、インスリンに対して働きかける物質の分泌量が変わることにあります。

通常、脂肪細胞はインスリンの働きを助ける物質を分泌していますが、内臓脂肪が多いとその分泌量が減ってしまいます。また逆に、インスリンの働きを阻害する物質の分泌量が増えてしまいます。インスリンが正常に働かないと、血液中のブドウ糖が処理できず、血糖値がどんどん上がってしまいます。

そのため、内臓脂肪が多い人は糖尿病になりやすいというわけです。欧米人に比べると、日本人はインスリンの分泌量が少ないため、少し太ったぐらいでも糖尿病になりやすいと考えられています。

すでに太りすぎの人は、ダイエットをして標準体重にできるだけ近づけるように努力する必要があります。日本肥満学会の基準であるBMI18.5〜25が標準体重ですので、それを目指しましょう。運動不足の人はダイエットに運動を取り入れることで、条件のひとつである運動不足をなくすことができ、さらに減量することもできますので、一石二鳥です。

食事に気をつけること

何を食べるかはもちろんですが、食べる順番にも気を使う必要があります。食べるものに関しては、基本的なこととして主食・主菜・副菜を、栄養バランス良く摂るようにすることです。

そして食べすぎないように、できればカロリーの計算をして、適切な量を食べるようにしましょう。食べすぎはすい臓に負担をかけ、高血糖の原因になりますので、くれぐれも気をつけてください。

糖尿病の人の食事は、糖を含む糖質食材の摂取を少なくした糖質制限食が効果的だとされています。これには、糖の摂取を控えめにすることで、血糖値の上昇を抑える狙いがあります。今はさまざまな糖質制限の食品がありますので、それをそのまま取り入れてもいいでしょう。

ただし、糖は人の重要なエネルギー源のひとつですので、必要以上に減らさないように気をつけましょう。食べるものを決めるときに大事なことは、それを継続できるかというところです。極端な例を挙げるなら、糖質である米を一切食べないと決めたとして、これから先ずっと続けられるかということなのです。

それから、食べる順番ですが、効果的なのは最初に野菜を食べ、次に肉や魚などのタンパク質を食べ、最後にご飯などの糖質を食べることです。空腹の状態から一番最初に糖質を摂ってしまうと、血糖値の上がり方が急になります。

反対に、野菜やタンパク質など糖質以外のものから食べると、血糖値の上昇は緩やかになります。これは簡単にできて効果の高い方法ですので、すぐにでも試してみてください。また、1日3食ちゃんと食べることも大事で、1食抜くと次の食事のときに血糖値が上がりすぎてしまうのを防げます。間食や甘いものを食べ過ぎることにも注意しましょう。

十分な睡眠をとること

意外と思われるかもしれませんが、睡眠不足も糖尿病の原因となる可能性があります。睡眠が十分でないと、インスリンの効果が低下してしまうためです。また、夜中に何度も目が覚めたり、睡眠時無呼吸症候群だったりがすることが原因で、睡眠の質が低いことも問題になります。

ストレスをためないこと

ストレスはさまざまな病気の原因になりますので、糖尿病を発症する可能性も当然上がります。ストレスがたまってくると交感神経が活発になり、アドレナリンやグルカゴンなどのホルモンが働き、血糖値が上がってしまうのです。

ストレスをためないためには運動をしたり、楽しめる趣味を持ったり、しっかり休むことが大事です。自分が何に対してストレスを感じているかを自己分析してみて、どうすればそれに対処できるか考えてみましょう。

まとめー定期的な血液検査と生活習慣の改善を

この特集の要点をまとめてみましょう。

  • 糖尿病の前兆は外側、内側ともに現れる症状がほとんどなく、あっても感じられない
  • 前兆は糖尿病の前、初期症状はすでになっている
  • 境界型は糖尿病になる前兆といえる
  • 血糖値スパイクや反応性低血糖を放置すると糖尿病になる可能性が高い
  • 前兆がなくても予防をすることで対処できる

糖尿病に、見た目や身体に感じる前兆はほとんどないといっていいでしょう。血糖値が高くなるという症状は必ず現れますので、前兆は血糖値に現れるといっても過言ではありません。ですから、定期的な血液検査をすることで予防や早期発見につながります。

また、普段からしっかりと予防しておくことで、前兆などを気にせずに生活できます。できることからはじめてみましょう。

この記事の監修ドクター

自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得している自然療法専門医。
スコッツ先生のプロフィール
https://gluco-help.com/media/lose-weight-diabetes27/

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