メディア

糖尿病は筋トレで改善できるのか

糖尿病と筋トレに関する基礎知識

弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病は筋トレで完治するって本当ですか?
A. そもそも糖尿病は現代医療では「完治しない病」とされています。しかし、筋トレを運動療法に取り入れることで、インスリン抵抗性の改善や血糖値低下、代謝促進などの効果が期待できます。

この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得している自然療法専門医。
スコッツ先生のプロフィール
https://gluco-help.com/media/lose-weight-diabetes27/

 

糖尿病と筋トレの関係とは?

現在、糖尿病患者さんの人数は世界的にも激増しています。世界糖尿病連合の調査によると、2017年の糖尿病患者数は4億2,500人というから驚きです。
日本国内だけでも、すでに糖尿病を発症している人は1,000万人おり、境界型と呼ばれる「糖尿病予備軍」を含めると2,000万人にのぼるといわれています。
このように、糖尿病は現代を生きる私たちにとって、決して他人事ではない身近な病気です。

糖尿病を発症してしまった場合には、食事療法と運動療法、そして必要に応じて薬物療法を用いて治療を行うのが一般的です。なかでも、筋トレは最近の糖尿病運動療法においても注目が集まっています。

糖尿病になりやすい人の特徴として、肥満や内臓脂肪の増加、運動不足などがあげられますが、身体の筋肉量が減少すると糖の代謝がスムーズに行われなくなってしまう事実があります。
本来、筋肉は食事で摂った糖を吸収して取り込み、エネルギー代謝や血糖値の調整をする働きがあるといわれています。しかし、肥満や体脂肪率の増加によって筋肉自体の量が減少すると、糖を吸収・貯蔵する場所がなくなり、血糖値が上昇してしまうのです。

さらに、筋肉は基礎代謝にも大きく関わっています。筋肉量が多い人では、糖やエネルギーの代謝が活発に行われるため、余分な脂肪や糖を身体に溜めこみにくく、糖尿病の敵である「肥満」や「内臓脂肪」を解消する働きも期待できるといいます。

脂肪というと、皮下脂肪と内臓脂肪が有名ですが、ここ最近は「第三の脂肪」と呼ばれる異所性脂肪も注目されており、さまざまな研究や調査によって糖尿病との関連性が判明しました。
異所性脂肪とは、本来であれば脂肪が蓄積されないはずの筋肉や肝臓、膵臓などについた脂肪のことを指し、そのなかでも「筋肉」についた異所性脂肪は、筋内脂肪といわれ2型糖尿病のインスリン抵抗性を引き起こすこともわかっています。

これらの脂肪を減少させるためには、筋トレによって筋肉量を増やし、代謝を上昇させることが有効だといわれているのです。

また、適切な筋トレで筋肉量を増加させることができれば、基礎代謝量が上がるため、実際に運動していないときでも、より効率的なエネルギー消費が可能となります。
糖尿病治療においては、肥満や内臓脂肪を解消するために食事療法や運動療法でカロリー管理を行う必要がありますが、筋トレを取り入れることで摂取エネルギーの消費がスムーズに行われるような「体質改善効果」も期待できるため見逃せません。

筋トレで糖尿病対策・予防ができる理由

糖尿病の対策・予防をしたいと思ったときには、食事療法と運動療法を思い浮かべる人がほとんどでしょう。これまでの糖尿病運動療法では、ウォーキングなどの有酸素運動が主流でした。
しかし、前述した通り「筋トレ」を生活に組み込めば、筋肉量の増加に伴い「基礎代謝量のアップ」「インスリン抵抗性の改善」「肥満解消」が期待できます。
糖尿病と代謝には、深い関わりがあることをご存知でしょうか。

私たちの身体に備わっている「代謝機能」とは、食事から摂取したエネルギーや栄養素を、身体の回復・維持のために体内で分解して、必要な場所へ届けることをいいます。
糖尿病患者さんや境界型の人では、体内の代謝が上手くいっていないことが少なくありません。
本来であれば、食事を摂ると炭水化物がブドウ糖に分解されて、血中に流れ込みます。これにより血糖値が上昇してしまうため、膵臓からインスリンと呼ばれるホルモンが分泌され、ブドウ糖をエネルギーとして使えるように変換して血糖値を下げてくれます。

糖尿病を発症している患者さんの場合には、このインスリン分泌が正常に行われなかったり、インスリンの効きが悪くなったりしてしまうため、高血糖状態が続いてしまうのです。
この原因として、肝臓や膵臓に蓄積された内臓脂肪などがあげられますが、最近の研究では「低筋肉量」がインスリンの働きを悪くしていることが、新たにわかってきました。

体内の糖は、そのほとんどが筋肉で保管されます。さらに、血糖値の調整も筋肉で行われるため、加齢などによって低筋肉になると糖分の行き場がなくなり、血中の糖が増えて「高血糖」「糖尿病」を引き起こすといわれています。
40歳を過ぎると糖尿病リスクが急激に跳ね上がるのは、筋肉量の低下も原因といえるでしょう。
筋肉量は、30歳を過ぎたあたりから減少してくることがわかっています。筋トレなどを行っていない人では、10年ごとに3~5%程度の筋肉が減ってしまうのです。
意識的に筋肉を使うよう心がけ、糖やエネルギーの代謝を活性化することは、糖尿病予防や対策として欠かすことができません。

筋トレをすると糖尿病が完治するって本当?

最近では、糖尿病に関するさまざまな情報がネットに溢れています。そのなかで「筋トレをすると糖尿病が完治する」「ジム通いをして筋トレをしていたら糖尿病が治った」などのフレーズを目にすることもあるでしょう。
しかし、糖尿病は現在の医療では「完治しない病気」とされています。もちろん、筋トレを継続的に行うことで、検査結果が良くなったり症状が改善されたりする場合もありますが、それは糖尿病が完治したわけではありません。

筋トレ以外にも、食事療法や運動療法、薬物療法によって一時的に血糖値やヘモグロビンA1cの値が改善されるケースも珍しくありません。ただし、糖尿病を一度でも発症した人は元の生活習慣に戻れば、また数値も悪くなってしまいます。

糖尿病だと診断された患者さんは、「自分は血糖値が高くなりやすい体質である」ということを、しっかりと認識しなければならないのです。そして、生涯にわたって治療を続けていく必要があります。
筋トレを開始して、血糖値やヘモグロビンA1cの数値が良くなったからといって、「完治した」「治った」と油断してはいけません。勝手に治療を中止しないように注意してください。

境界型といわれる「糖尿病予備軍」の場合には、筋トレをすることによって糖尿病の発症を抑制できることも少なくありませんが、これは「糖尿病が治った」というわけではなく、糖尿病の予防につながったと考えるのが正しいでしょう。

糖尿病のインスリン抵抗性は筋トレで改善できる?

糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンが少なくなったり、インスリン自体の効きが悪くなったりすることで引き起こされます。このうち、インスリンの効きが悪くなることを「インスリン抵抗性」と呼びますが、最近の研究では筋トレを行うことで糖尿病患者さんのインスリン抵抗性を改善できると判明しました。

前述した通り、筋肉は糖の代謝と大きく関わっています。食事から摂取した糖を吸収して血糖値を下げたり、「グリコーゲン」といわれる物質に変換して貯蔵したりする働きがあります。
糖尿病を発症する患者さんの多くは、体脂肪や内臓脂肪が増加し「筋肉量」が低下している傾向がみられるといいます。筋肉が糖を十分に吸収できなくなり、インスリン抵抗性の原因になるのです。

筋トレとインスリン抵抗性の関連について調査する研究で、継続的な筋トレを行ったグループは結果的にインスリン感受性が増加し、インスリン抵抗性が改善されたといいます。
ただし、筋トレによるインスリン抵抗性の改善効果は3日程度しかもたず、1週間もするとその効果はほぼ消失してしまうこともわかりました。
筋トレなどの運動は、一時的に行うのではなく2日に1回や3日に1回ペースで継続的に行うことが大切です。

糖尿病の運動療法に筋トレを導入すると、少しずつですが身体の筋肉量が増加していきます。もちろん、糖尿病に限らず「筋トレ」は長期目線で行うものです。すぐに結果を求めてはいけません。
焦らずゆっくりとした気持ちで、半年後、1年後、5年後、10年後などの「将来の自分」のために、糖尿病治療に筋トレを加えてみてください。

糖尿病患者の筋トレはどんなメニューが良い?

筋トレと聞くと、トレーニングジムなどの器具を使用して本格的に行わなければならないイメージがありますが、それは誤解です。
糖尿病運動療法においての「筋トレ」は自宅で簡単に実践できるもので構いません。
運動療法での筋トレは「レジスタンス運動」とも呼ばれており、筋肉に一定の負荷をかけたトレーニングのことを指します。

糖尿病患者さんが筋トレを行う際は、このレジスタンス運動の中から「無理なくできるメニュー」を取り入れるのがベストです。
メニューには、腕立て伏せやスクワットなどの「自重」を利用したものから、チューブやダンベルなどを用いたトレーニング方法があります。

糖尿病の運動療法としては、何より「継続すること」が重要になってくるため、自宅で手軽に行える筋トレ(レジスタンス運動)が良いでしょう。

スクワットは、大腿四頭筋、大臀筋をはじめ、全身の筋肉を鍛えることができるため、おすすめです。もちろん、筋トレをするための特別な場所も必要としません。
足を肩幅程度に開いて立ち、お尻を後ろ側に突き出すようにしてかがみましょう。このとき、膝がつま先より前に出ないよう注意することが大切です。
膝を曲げることよりも、股関節を曲げることに意識して行ってください。手の位置は、前で組んでも頭の後ろで組んでも構いません。
まっすぐ前を見るようにしながら、10回~15回を1セットとして実践しましょう。

また、上半身の筋肉である上腕三頭筋や体幹を鍛えるためには、腕立て伏せを組み合わせると、効果的に筋トレができます。スクワットだけでは、どうしても下半身の筋肉トレーニングに偏ってしまうので、並行して取り入れてみてください。
床に膝をつき、肩より少し広めの位置で床に手をつきます。膝をつけなくても腕立て伏せができる方は、つま先を床につけるようにしてセットしましょう。
頭からつま先(または膝)が一直線になるような形をキープしたまま、腕を曲げて上半身を下します。このときに、腰が反ってしまうと腰痛の原因となることがあるため、十分注意してください。
腕を曲げて、床面に近づけるだけ下がったら、再び腕を伸ばして元の位置に戻ります。これを10回1セットとして行いましょう。

スクワットも腕立て伏せも、「何セット行うか」は患者さん自身の体力や身体の状態によって異なります。最初は1セットから無理なくスタートして、慣れてきたら徐々にセット数を増やしてみてください。
また、筋トレの前には必ずストレッチなどの準備運動を行い、筋トレ後には整理体操を取り入れるようにしましょう。これらをしっかり行うことで、ケガの予防はもちろんのこと、筋肉痛などの不快な症状を予防できます。

糖尿病でも筋トレ後にプロテインを飲んでもいい?

筋トレの効果を最大限に発揮するために、プロテインを飲んでいる人を多く見かけます。特に、スポーツジムなどに通う男性は、ほとんどの方がプロテインを携帯しているイメージがあるでしょう。
糖尿病の運動療法として、筋トレを開始した患者さんの中にも「せっかく筋トレをスタートするなら、効率よく筋肉をつけたい」と考える方も少なくないかもしれません。

しかし、糖尿病患者さんがプロテインを飲むことはあまりおすすめできないのです。その理由として、プロテインは人工的に加工されたタンパク質ということがあげられます。
パウダータイプの一般的なプロテインには、通常の食品とは比べ物にならないほどのタンパク質が含まれており、糖尿病患者さんの腎臓に大きな負担をかけてしまう可能性が否定できません。

糖尿病は、状態が悪化するとさまざまな合併症が出てきます。失明の恐れがある「糖尿病網膜症」や、手足のしびれや感覚麻痺などが起こる「糖尿病神経障害」をはじめ、進行すると人工透析を受けなければならなくなってしまう「糖尿病腎症」などがあります。
糖尿病腎症では、腎臓機能が低下してしまい腎不全に陥ることも珍しくありません。腎臓機能が正常に働かなくなると、タンパク質やカリウム、ナトリウム(塩分)などの代謝・排出がスムーズにできなくなってしまうのです。

プロテインに含まれている大量のタンパク質は、糖尿病患者さんの将来を考えると「危険物」と考える医師も存在するほどです。糖尿病で腎症になると、肉や大豆製品などのタンパク質摂取を控える必要が出てきます。
これは、タンパク質自体が腎臓に負担をかけるためですが、まだ腎症になっていない糖尿病患者さんでも、不必要なタンパク質摂取は控えるべきだといった考え方があります。
実際に、筋トレ後によく飲まれているプロテインを摂取したせいで、尿アルブミン値が一気に悪くなった人がいるというのです。

尿アルブミン値は、腎臓の状態をあらわす数値のひとつですが、一般的な会社の健康診断などでは検査されることがありません。そのため、腎臓機能の低下に気付くのが遅くなってしまうケースも多いといいます。

そもそも、糖尿病の運動療法で筋トレをする目的は、良好な血糖コントロール、肥満・内臓脂肪の予防、代謝の向上など、糖尿病と上手に付き合っていくことです。
糖尿病患者さんの筋トレは、あくまでも運動療法の一環として捉えて、健康的な食生活と並行する必要があります。
もちろん、筋肉量を増やすためには適度なタンパク質の摂取は不可欠ですが、人工的なプロテインではなく、魚や乳製品などから摂るように心がけるべきでしょう。

糖尿病でも筋トレをしてはいけない人がいる?

特に重篤な合併症がない糖尿病患者さんであれば、運動療法のなかに筋トレ(レジスタンス運動)を組み込むことは、良好な血糖コントロールの手助けとなるでしょう。
しかし、筋トレを行ってはいけない糖尿病患者さんもいるため注意してください。

糖尿病合併症がある場合や、低血糖を起こしやすい薬剤での治療を行っている患者さんは、運動量や運動強度の制限がかかることがあります。
また、心血管疾患がある糖尿病患者さんや高齢の方では、筋トレを行うことで血圧が急激に上昇し、血管や心臓に大きな負担をかけてしまう可能性も否定できません。

運動療法に筋トレを取り入れる際には、必ずかかりつけの医師に相談してから実践するようにしましょう。糖尿病足病変などで潰瘍や壊疽がある際は、足に体重がかからないような筋トレを選んで行うようにしてください。

まとめ

糖尿病の治療では、食事療法と運動療法が大きな柱となります。そのうちの運動療法では、ここ数年で筋トレ(レジスタンス運動)が注目されており、血糖コントロールやインスリン抵抗性の改善に役立つといわれています。
さらに、ウォーキングや水中運動などの有酸素運動と組み合わせて行うと、空腹時血糖値、ヘモグロビンA1c、血圧、中性脂肪などが揃って低下することがわかっています。

有酸素運動では、食後血糖値を下げるなど「即効性」のある効果が期待できますが、筋トレは継続することによって、筋肉量や筋力をアップさせてインスリン抵抗性が改善されていくといわれています。
「有酸素運動と筋トレは、どちらの方が糖尿病に効果的なのか」といった議論を時々見かけますが、実際には両方を上手に取り入れて、糖尿病の改善に努めるべきでしょう。

 

糖尿病でもさつまいもを食べても大丈夫?前のページ

境界型糖尿病と普通の糖尿病との違い次のページ

ピックアップ記事

  1. HbA1c【 ヘモグロビンA1c 】の数値を下げる実践的な方法とは
  2. 1型糖尿病は遺伝するのか?1型糖尿病について詳しく調べてみた
  3. 自己測定器での血糖値の測り方は意外と簡単です

関連記事

  1. メディア

    糖尿病患者のダイエットについて

    糖尿病とダイエットに関する基礎知識弊社の商品開発チームの医師監修…

  2. メディア

    糖尿病になると口臭がきつくなる?血糖と口臭の関係について解説します

    糖尿病と口臭に関する基礎知識弊社の商品開発チームの医師監修Q.…

  3. メディア

    糖尿病と頻尿について

    糖尿病と頻尿に関する基礎知識弊社の商品開発チームの医師監修…

  4. メディア

    尿糖が出たら糖尿病?診断基準と発見しにくい「かくれ糖尿病」とは

    糖尿病と尿糖に関する基礎知識弊社の商品開発チームの医師監修Q.…

  5. メディア

    糖尿病の検査値|診断のための検査方法や基準値は?

    糖尿病の検査値に関する基礎知識弊社の商品開発チームの医師監修Q…

  6. メディア

    血糖値を下げる薬の種類や飲み方と注意点

    血糖値を下げる薬(飲み薬)食事療法と運動療法で血糖値が下がらない場…

おすすめ記事

最近の記事

  1. ヘモグロビンA1cが7.2なのに急遽手術をしなくてはならない…
  2. 【医師監修】ドライマウス、歯周病、歯肉炎も糖尿病の合併症です…
  3. ヘモグロビンA1cとはいったい何のこと【 HBA1c】は【 …
  4. 糖尿病から狭心症を発症、心臓の手術後サプリメントと食事改善で…
  5. ヘモグロビンA1cを下げるには「食事終了後5分以内」の運動が…
  1. 特集ページ

    ヘモグロビンA1cとはいったい何のこと【 HBA1c】は【 糖尿病 】の重要な判…
  2. メディア

    糖尿病と動脈硬化の関係性とは
  3. 特集ページ

    HbA1c【 ヘモグロビンA1c 】の数値を下げる実践的な方法とは
  4. 特集ページ

    ストレスで血糖値が上昇し長期間の強いストレスは糖尿病発症のリスクを高める
  5. メディア

    多尿になると糖尿病?気になる症状と放置しておくことの危険性
PAGE TOP