目次
糖尿病の症状に関する基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病は自覚症状があまりないってホント?
A. 自覚症状はありませんが、早期発見や予防は可能です。
糖尿病は初期のうちは自覚症状があまりない
糖尿病は自覚症状があまりない病気です。正確にいうと、ないというよりは気づきにくく、病気になったと感じにくいといったほうがいいでしょう。特に初期のころはその傾向が強くなっています。
例えば、「だるい」「のどがすぐ渇く」といった症状は、病気でなくともなることがあるものですので、その段階では病気を疑う人は少ないでしょう。そうして糖尿病は進行していってしまうのです。早く発見するためには、糖尿病の正しい知識を持っておくことが重要です。
自覚症状がないと合併症を発症することも
糖尿病が原因で起こる合併症にはさまざまな種類があります。その中でも三大合併症と呼ばれるものは、特に発症する可能性が高い病気です。これらの病気はすべて細い血管での障害(細小血管障害)が原因となっています。
高血糖の特徴は、糖が増え血がドロドロになることです。そして、それが原因で血管の損傷や硬化が起こったり、血管内が狭くなったりします。このように血流がどんどん悪化していった結果、次第に障害が起こってくるのです。この障害は、糖尿病になってから10年ほどで発症すると考えられています。ここでは、代表的な3つの合併症を紹介します。
三大合併症の種類
糖尿病が原因で起こる合併症にはさまざまな種類があります。その中でも三大合併症と呼ばれるものは、特に発症する可能性が高い病気です。これらの病気はすべて細い血管での障害(細小血管障害)が原因となっています。
高血糖の特徴は、糖が増え血がドロドロになることです。そして、それが原因で血管の損傷や硬化が起こったり、血管内が狭くなったりします。このように血流がどんどん悪化していった結果、次第に障害が起こってくるのです。この障害は、糖尿病になってから10年ほどで発症すると考えられています。ここでは、代表的な3つの合併症を紹介します。
【腎症】
この病気が発症しても、最初のころは自覚症状がありません。これが厄介で、気づかないうちにどんどん進行していきます。病気だと気づいたときには、かなり病状が悪化していることも少なくありません。
腎臓は血液の中にある老廃物などをろ過し、きれいにします。そして、その老廃物は尿として排泄されます。ところが糖尿病が進行している人は、腎臓の細い血管が詰まり、血をきれいにすることができなくなるのです。腎症の進行度合いを表す種類は、腎臓の状態に応じて第1期〜第5期まであります。
第1期
第1期は腎症前期と呼ばれ、検査をしても特に異常が認められません。腎症を発見する際の目安となる尿アルブミン値も正常値の30mg/gCr未満の状態です。
第2期
第2期は早期腎症期で、腎臓で体内の老廃物をろ過する、糸球体の機能に問題が出はじめます。また、30〜299mg/gCrの微量アルブミン尿が検出されます。
第3期
顕性腎症期の第3期は、300mg/gCr以上の顕性アルブミン尿や、0.5g/gCr以上の持続性タンパク尿が検出されます。顕性腎症期はさらに、腎臓がまだ比較的機能している場合の「顕性腎症前期」と機能が衰えている「顕性腎症後期」に分かれます。
第4期
第4期は腎不全期です。この段階でようやく、むくみや疲労といった自覚症状が出てきます。アルブミン尿やタンパク尿はもはや考慮されず、腎臓の機能もかなり衰えてきます。
第5期
第5期の透析療法期は、その名のとおり腎臓がほとんど機能せず、透析が必要となります。場合によっては腎臓の移植も行われます。
このように、腎症が悪化してしまうと、機能がほとんどなくなり腎不全となって、透析治療を受けなければならなくなります。糖尿病が原因となって透析治療を受ける人は、年々増え続けていますが、こうならないためにも、しっかりと糖尿病の予防・治療をすることが大事なのです。
【網膜症】
この病気は目の網膜に異常が出てくるもので、初期の段階だと自覚があっても目がかすむ程度のことで、病気の前兆とは気づけません。この段階だと、まだ血糖値を改善することでよくなる可能性があります。もう少し進行すると、飛蚊症や視界に黒いもやのようなものがかかり、見えづらくなります。
さらに進行していくと、視力が著しく低下したり網膜剥離を起こしたりということが起こり、最終的には失明することもあります。自覚症状を感じにくく、気づいたときにはかなり進行していることもめずらしくありません。
網膜症は糖尿病患者の40%ほどに見られ、失明する原因の多くはこの病気が占めています。ある日突然、網膜剥離になるという状況を防ぐために、眼底検査を定期的に受ける必要があります。
【神経症】
神経症も糖尿病の人によく見られる合併症です。高血糖で血流が阻害され、神経に対してさまざまな悪影響が出てきます。神経症の種類は以下のようなものがあります。
- 両足の同じ場所に痛みやしびれが出る
- 感覚が鈍くなり、痛みや熱さを感じにくい
- 低血糖になっても気づきにくい
- 血圧に異常が現れ、めまいが起きる
- 膀胱の障害、ED
- 便秘や下痢がひどくなる
- 壊疽(えそ)
- 顔面麻痺
神経障害が起こっても、命に関わるほどの事態にはなりにくいです。ですが、低血糖に気づきにくくなるように、神経が鈍くなったことにより、ほかの合併症が進行していても気づかない恐れがあります。これにより間接的に命の危険が出てきますので、甘く見てはいけません。
また、アルコールの摂取や喫煙などは、神経症の発症率を高め進行を早めますので控えましょう。神経症は症状が幅広いため、比較的異常を感じやすいので、気づいたらすぐに検査をしてもらいましょう。
三大合併症以外でも、太い血管での障害(大血管障害)もあり、これが原因になると脳梗塞・狭心症・閉塞性動脈硬化症などが発症します。三大合併症に限らず、合併症は発症すると危険なものが多く、それゆえに糖尿病は恐ろしい病気だといわれているのです。
糖尿病の自覚症状の種類
糖尿病の自覚症状の種類は、どんなものがあるのでしょうか?下記にチェックリストをまとめました。該当するものが多いほど、糖尿病の疑いが出てきます。わかりやすい症状が少なく、気のせいと感じるものばかりですので、見逃してしまいがちです。気づいたものがあったらすぐに受診しましょう。
- すぐに疲れてしまう、だるい
- 手足のしびれ、痛みがある
- のどが異様に渇く
- 目が見えづらい、視力の低下
- 食欲がありすぎて食べすぎてしまう
- 食べても太らなくなった
- 立ちくらみ、めまいがある
- トイレの回数が増えた
- 尿の色、臭い、泡立ちに異常を感じる
- ケガをしても痛みを感じにくい
- 足のむくみがある
- 悪心
- 異常な倦怠感
この中では、尿に関する症状が比較的気づきやすいものです。次に紹介する方法で自宅でチェックができますので、気になったら試してみてください。
自宅でできる尿チェック方法
糖尿病の初期症状は人によっても違いますし、わかりにくいものでもあります。比較的わかりやすいものとして、尿検査があります。血糖値は170~180mg/dL付近になると、尿に糖が混ざりはじめます。ですから、尿をチェックすることで、糖尿病の疑いがないか確認できるのです。
尿検査は病院でしかできないものだと思っていませんか?実は病院に行かなくても自宅でできるのです。自宅でする方法は何かというと、尿検査薬を使うことです。尿検査薬は薬局やドラッグストアで買うこともできますし、ネットショップでも買えるところがあります。30枚入りで1,000円ほどで買えますので、定期的に検査するのに便利です。
検査薬といっても、pH試験紙と似ており、尿に紙を数秒浸すだけです。色の変わり具合で尿糖の濃さがわかりますので、簡単に調べることができます。
ただしこれは簡易的なものですので、少しでも疑いがある場合はすぐに病院で検査してもらいましょう。「もし本当に糖尿病だったらと考えると、行くのが怖い」という人もいるでしょう。ですが、糖尿病は早期発見できればそこまで怖いものではありません。
糖尿病予備群で済む場合もあり、これらの状態ならまだ食事療法と運動療法で改善できます。ですが、行かなければ手遅れになる可能性が高くなります。症状が悪化しないうちに早く受診しましょう。
糖尿病になりやすい人
糖尿病になりやすいといわれている人には特徴があります。糖尿病予防のためには、なりやすい人の特徴にあてはまらないように、生活していく必要があります。では、なりやすい人にはどんな特徴があるのでしょうか?
【肥満体】
日本肥満学会によると、BMIが25以上だと肥満とされています。BMIが27のとき糖尿病を発症するリスクは2倍になることがわかっています。肥満だと筋肉よりも脂肪の方が多くなり、それが原因でインスリン抵抗性が高くなるため、インスリンが効きにくくなります。
インスリンが効きにくいと、血糖値が下がりにくくなるため、高血糖となり糖尿病へとつながっていくのです。肥満体の人が糖尿病になったとき、まず痩せるようにいわれるのはこれが理由です。
【運動不足】
運動不足はあらゆる病気の原因であり、糖尿病も例外ではありません。世界保健機関(WHO)の発表では、日本人の3人に1人以上が運動不足とされています。そして、運動量が減っていることも病気の原因となっています。
では、どのくらいの運動量だと糖尿病の防止になるのでしょうか?糖尿病の運動療法では一般的に、30〜60分の有酸素運動を週に3〜5回するのがいいとされています。予防が目的ならもっと少なくてもよく、30分ほどの運動を週に3〜5回ほどするのでよいでしょう。ですが、会社勤めで残業が多い人などは時間がとれないことも多いでしょうから、できる範囲からはじめるのが続けるコツになります。
ウォーキングなどの有酸素運動にこだわらなくても、自分が楽しいと思えるスポーツをはじめるのも効果的です。楽しんでやることができれば、それだけ長く続けることができます。また、そこまで激しいものでなくても、簡単にできることはあります。エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を使う、近くのスーパーなら歩いて買い物に行くなど工夫してみましょう。
身体を動かすように意識するだけでも、何もしないよりは効果があります。確かにただ歩くよりは早歩きなどの少し激しめの運動のほうが効果も高くなりますが、続けられなければ意味がありません。簡単なものからはじめて、徐々に運動量を増やしていくと挫折しにくくなります。
【食生活の乱れ】
糖尿病には食生活の乱れも深く関わっています。食べすぎは肥満につながりますので、それだけで問題になり得ます。一般的に太る原因といわれている甘いものそうですが、野菜をあまり食べないなど、偏った栄養バランスも原因になります。また、食事を抜くことも血糖値を上げる原因になりますのでやめましょう。
現代人は忙しさにかまけて、食事をゆっくりできない人が増えています。これが原因で起こる早食いは、血糖値を急激に上昇させるため、糖尿病へとつながるリスクが高まります。これを防ぐためにはよく噛んで食べることが重要です。食生活を改善するためのポイントをまとめると以下のようになります。
- 食べすぎないこと
- 糖質や甘いものを控え野菜を摂ること
- 食事を抜かないこと
- よく噛み時間をかけて食べること
【40歳以上】
年齢は誰しもとっていくものなので対処のしようがありませんが、40歳を超えるとリスクが高くなることを覚えておくと少しは意識が変わってきます。40歳を超えたらそれまでよりも気をつけなければいけないということです。
自覚症状が出たときには手遅れ?
自覚症状がないと、糖尿病や合併症の発見が遅れ、命に危険がおよぶこともあります。では、どうやってそれを予防すればいいのでしょうか?それには、なんといっても定期的な健康診断を受けることです。
会社でも健康診断はありますが、多くの会社は1年に1回ですので、できればそれ以外にもプラスして1度は受けて、半年に1回程度の検診をしているとより安心です。高齢の人ほど検査回数を増やしたほうがいいでしょう。自覚症状がないからといって、検査にまったく行かないのはおすすめできません。
まとめー糖尿病は予防と定期健診が重要
糖尿病と自覚症状についてまとめてみましょう。
- 糖尿病は自覚症状を感じにくいため、発見が遅くなりやすい
- 糖尿病自体は危険度は低いが、合併症は危険
- 合併症になると、透析・失明・壊疽(えそ)などの危険がある
- 自宅でも簡易的に尿検査ができる
- 糖尿病の原因は肥満・運動不足・食生活の乱れ
- 早期発見のためには、定期的に健診を受ける
糖尿病に限らず、自覚症状があまりない病気を発見するためには、定期的な検査を受けるしかありません。糖尿病を予防するためには、運動や食事に気をつけて生活していく必要があります。日ごろからちゃんとした生活をしている人でも、念のために定期健診をかかさず受けましょう。