目次
フットケアに関する基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病だとなぜフットケアが必要なのですか?
A. 糖尿病患者さんの足は、「傷つきやすく治りにくい」状態にあります。そのため、小さな傷が足を切断しなければならないほどに悪化することがあるのです。このような事態を避けるため、フットケアによって足を守ることが必要です。
糖尿病とは?
糖尿病とは、インスリンがうまく働かないことによって血糖値が高くなる病気です。糖尿病で問題になるのは、血糖値が高いことそのものではなく、それによる合併症です。糖尿病の合併症には、急性合併症と慢性合併症があります。
急性合併症とは、急激に血糖値が上昇することによって起こります。激しい脱水や意識障害がみられ、場合によっては命にかかわる状態です。この場合には、速やかな入院治療が必要となります。
慢性合併症とは、高血糖状態が持続することによって起こる血管の障害で、大血管症と細小血管症があります。大血管症とは、太い血管の動脈硬化が促進されることによって脳梗塞、心筋梗塞、下肢の血流障害などが起こる状態です。細小血管症とは、細い血管が傷つくことによって網膜症、腎症、神経障害などが起こる状態です。これらの細小血管症が、視力の低下や失明、人工透析、足病変(足の感染や組織の破壊)につながります。
糖尿病患者におけるフットケア
フットケアとは、足の皮膚や爪を手入れすることです。一般的には、スキンケアやマッサージのような健康増進のためのものからペディキュアなどの美容的なものまで、幅広い意味をもちます。足には、血液を心臓に送り返すポンプであり第2の心臓と呼ばれるふくらはぎや、全身を支え内臓からの神経の集まる足裏など、ケアの対象として注目されている部位が多くあります。
糖尿病との関連で重要になってくるのは、足の健康を保つという意味合いでのフットケアです。糖尿病患者さんにとってのフットケアとは、「足病変を予防するためのケア」です。
糖尿病の人にとってフットケアが必要な理由
糖尿病の合併症として足病変が起こると、最悪の場合は指や足の切断が必要になります。指や足を切断した糖尿病患者は、将来的にそれより高い位置での再切断が必要になるケースも多く、足の切断を必要としない糖尿病患者に比べて寿命が短いといわれています。また、切断までには至らない場合でも、足病変によって歩行が障害されることは、生活の質を大きく低下させてしまいます。足病変は足にできた傷から始まります。ですので、足に傷ができないようにケアすることで、予防できるのです。
足病変は、神経障害と下肢の血流障害、易感染状態によって起こります。神経障害では、足の知覚が鈍くなったり指が変形したりします。これが、足に触れる異物や熱いものに気付かない、不自然な足の形のまま歩く、ということにつながり、足に傷や火傷ができやすくなります。また、下肢の血流障害があると、傷を治すために必要な栄養や酸素が患部まで届かなくなります。更に、高血糖の状態では免疫細胞の働きが弱くなるので、傷に感染を起こすことがあります。これらによって、糖尿病患者さんの足は「傷つきやすく治りにくい」状態になるのです。
長期間治らない傷は、やがて潰瘍(皮膚の組織が欠損して穴が開いた状態)や壊疽(皮膚の組織が死んで腐った状態)へと移行します。壊疽の範囲が大きく、その部分の菌が全身に回って敗血症になる可能性が高い場合には、命にかかわる恐れがあるため指や足の切断が検討されます。一方で、傷の状態が悪化する前であれば、様々な治療によって治癒を目指すことが可能です。ですので、傷を作らないことに加えて、早期発見・治療することがとても大切なのです。
糖尿病フットケアを担う看護師
糖尿病フットケアは、看護師が主体的に実施できる行為です。また、2008年の診療報酬改定で「糖尿病合併症管理料」として糖尿病フットケアについて算定が認められたことから、需要が高まっています。現在ではフットケア外来を有する医療機関も増えており、そこでは専任の看護師の配置が義務付けられています。専任の看護師として必要な資格は、糖尿病足病変患者の看護に従事した経験を5年以上有することと、下記の研修を受講していることです。
尿病フットケア看護師のための研修
- 慢性疾患看護専門看護師
- 糖尿病看護認定看護師
- 皮膚・排泄ケア認定看護師
- 日本糖尿病教育・看護学会による糖尿病重症化予防(フットケア)
その他に、診療報酬の算定はできないものの、糖尿病フットケアについて学会で認定を受けることもできます。これには、日本フットケア学会によるフットケア指導士と日本下肢救済・足病学会による学会認定師があります。ただ、糖尿病患者さんが増加の一途を辿っていることを考えると、資格の有無にかかわらず全ての看護師が足病変に対する正しい知識をもち、フットケアを実施できることが必要といえるでしょう。
糖尿病フットケアの方法
糖尿病フットケアは、医療者が行う特別なものではなく、患者さん自身が日常的に行うべきものです。糖尿病フットケアのポイントは、観察する、清潔にする、保護するの3点です。具体的には下記を行いましょう。
毎日足を観察しましょう
- 明るい場所で足を見て、傷や乾燥・指の変形などの異常がないか確認します。
- 見えにくい部分は鏡を使う、視力が低下している場合には家族に見てもらうなどして、くまなく確認します。
- 水虫(白癬)が足病変を悪化させることも多いので、皮膚の皮むけや爪の肥厚がないか確認します。
- 運動や長時間の歩行をした後は、特に念入りに観察しましょう。
足を清潔にしましょう
- 皮膚を傷つけないように、石鹸をよく泡立て、柔らかいタオルや手で優しく洗います。
- 指の間までしっかりと洗い、十分に石鹸を流します。
- 洗った後は擦らずにタオルで押さえるようにして、しっかりと水気を拭き取ります。
- 湿った皮膚は傷つきやすく、細菌が増殖しやすくなります。
- 乾燥した皮膚は刺激に対するバリア機能が低下するので、洗った後はクリームなどで保湿します。
足に合った靴を履きましょう
- 靴擦れを防ぐために、足にフィットしつま先に1cmほどゆとりのある靴を選びましょう。
- つま先が細かったり、ヒールが高すぎる靴は避けましょう。
- クッション性があり、内貼りが柔らかく、内側に縫い目のないものが最適です。
- 靴や靴下を履くときには、砂などの異物が入っていないことを確認しましょう。
靴下を着用しましょう
- 傷や水虫の予防のために、いつも靴下を着用しましょう。
- 蒸れないように、通気性がよい素材の靴下を選びます。
- 締め付けの強い靴下は、血行を妨げてしまうので避けます。
- 皮膚が傷つくのを防ぐため、縫い目が当たらないものを選びましょう。
爪は長めにまっすぐ切りましょう
- 深爪にならないようにするため、切りすぎないようにします。
- 爪の角が皮膚に食い込まないよう、まっすぐなるようにします。
火傷に注意しましょう
- 神経障害があると熱さを感じにくくなるため、入浴のときには、手でお湯の温度を確認してから浸かります。
- 湯たんぽやホットカーペットによる低温火傷を防ぐため、なるべく使用しないようにすると安心です。やむを得ず使用する場合には、設定温度を低くする、就寝時には外すなどの対策をとりましょう。
- バスや電車の足元にある温風吹き出し口に足が当たらないようにします。
- 炎天下のプールサイドや砂浜を素足で歩かないようにします。
もし足に何らかの異常を発見した場合には、速やかに医療機関に相談しましょう。対処が早いほど、治療の効果が高まります。また、タコや魚の目などの自己処理は非常に危険ですので、やめましょう。
糖尿病でやってはいけないフットケア
糖尿病フットケアでは、足を清潔に保つことが必要ですが、皮膚の乾燥と浸軟を招くような方法は避けましょう。
皮膚は、表面から表皮・真皮・皮下組織という3つの層でできています。このうちの表皮が、皮膚を様々な刺激から守るバリア機能を果たしています。表皮のバリア機能は、その表面が皮脂によって潤され弱酸性を保つことによって働きます。ですので、表皮が乾燥すると刺激に弱くなり、皮膚が傷つきやすくなります。また、皮脂によって弱酸性に保たれた表皮では病原体の増殖が抑制されるため、乾燥した皮膚は感染にも弱くなってしまいます。
糖尿病足病変をもつ患者さんでは、水虫などの感染症も併発している場合が多く、それらの病原体を殺すためには、ある程度洗浄力の高い石鹸を使用することが必要になります。ですが、それによって皮膚が乾燥してしまうと、感染予防という点では逆効果になってしまう場合もあるのです。また、足を清潔にしようとして強く擦り洗いすることも、皮膚を乾燥させることにつながりますし、それ自体が皮膚を傷つける可能性がありますので、よくありません。
乾燥と同様に皮膚のバリア機能を低下させるのは、浸軟です。浸軟とは、表皮が水分を過剰に含んで柔らかくなった状態で、いわゆる”ふやけ”です。浸軟した表皮はもろく、傷つきやすくなります。また、湿った環境では病原体が増殖しやすくなります。糖尿病足病変の要因には血流障害がありますが、これを改善しようと長時間足をお湯につける行為は、皮膚の浸軟につながるのでやめましょう。
おすすめの石鹸
糖尿病フットケアには、皮膚を乾燥させずに清潔にできる石鹸が適しています。この必要条件を叶えることができるのが、ドクターズチョイスのファンガソープEXです。
ファンガソープEXには、ティーツリーオイルが配合されています。このティーツリーオイルには、様々な病原体に対する殺菌効果が認められています。そのため、糖尿病足病変における感染をしっかりと防いでくれます。また、ティーツリーオイルは天然植物由来の成分なので、使用することによる副作用がありません。
「ドクターズチョイス ファンガソープEX」の更に優秀な点は、しっかりとした洗浄力を保ちながらも皮膚を乾燥させないというところです。「ドクターズチョイス ファンガソープEX」には高保湿成分のシアバターが配合されていますので、皮膚の乾燥によるバリア機能の低下を防いでくれます。
まとめ
糖尿病の合併症には、足病変(足の感染や組織の破壊)があります。この足病変は、神経障害と下肢の血流障害、易感染状態によって起こります。足病変が起こると、最悪の場合は指や足の切断が必要になり、患者さんの生活の質を大きく低下させます。また、足を切断した患者さんは、足を切断していない人に比べて寿命が短いといわれています。
足病変は、足にできた傷から始まります。足に傷ができないようにケアすることで、予防できるのです。また、足に傷ができても、状態が悪化する前に気付いて医療機関を受診すれば、治癒を目指すことが可能です。これが、糖尿病患者さんにフットケアが必要な理由です。
糖尿病フットケアは、2008年の診療報酬改定で「糖尿病合併症管理料」として糖尿病フットケアについて算定が認められたことから、注目が高まっています。現在ではフットケア外来を有する医療機関も増えており、そこでは専任の看護師を主体として糖尿病フットケアが行われています。
しかしながら、糖尿病フットケアとは、医療者が行う特別なものではなく、患者さん自身が日常的に行うべきものです。糖尿病フットケアの方法ですが、ポイントは観察する、清潔にする、保護するの3点です。毎日念入りに足を観察し、足を清潔に保ち、足に合った靴を履き、いつも靴下を着用し、爪は長めにまっすぐ切り、火傷に注意しましょう。もし足に何らかの異常を発見した場合には、自己判断せず、速やかに医療機関に相談することが必要です。
糖尿病フットケアで避けるべきことは、皮膚の乾燥と浸軟を招く行為です。皮膚では、一番外側にある表皮が、皮膚を様々な刺激から守るバリア機能を果たしています。このバリア機能は、皮膚が乾燥したりふやけたりすることで低下し、傷つきやすく感染にも弱くなってしまいます。そのため、足を清潔にしようと洗浄力の高い石鹸を使って強く擦り洗いすることや、血流障害を改善しようと長時間足をお湯につける行為はやめましょう。