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糖尿病で入院する目的と治療内容について

糖尿病の教育入院に関する基礎知識

弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病の教育入院では、どのような治療を行いますか?

A. 教育入院では、糖尿病治療において必要な知識をつけることを主な目的としています。栄養士による食事療法の指導、理学療法士による運動療法の指導などが行われます。

この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得している自然療法専門医。
スコッツ先生のプロフィール
https://gluco-help.com/media/lose-weight-diabetes27/

糖尿病入院の目的とは?

糖尿病は、現代において決して珍しくない病気のひとつです。日本国内では、約1,000万人の糖尿病患者がおり、予備軍も含めると2,000万人以上にものぼるといわれています。
40歳以上では、5人に1人が糖尿病を発症している計算です。

糖尿病の治療では、食事療法と運動療法を大きな柱として「良好な血糖コントロール」を行うことが中心となります。必要に応じて、血糖降下薬やインスリン注射などの薬物療法を併せて行います。

しかし、糖尿病の治療には他の一般的な疾患と大きく違う点がひとつあります。それは、「医師から処方された薬を飲んでいれば治るわけではない」という点です。
現在の医療では、糖尿病は完治しない病気とされています。そのため、「血糖値が上がりやすい体質である」ということを患者さん自身がしっかりと認識し、生活習慣の改善に努めなければなりません。

日本には、糖尿病治療の一環として「教育入院」と呼ばれるシステムが存在します。これは、患者さん自身やそのご家族に「糖尿病治療」の正しい知識や方法を身につけてもらうために行われることがほとんどです。
適切な食事療法や運動療法を学び、退院後にも自身で血糖コントロールを良好に管理できるようになることが大きな目的となります。

また、糖尿病は重篤なレベルになるまで自覚症状がほとんどありません。そのため、「糖尿病といわれたけれど、自分はまだ大丈夫だろう」と勝手に自己判断をして、食事療法や運動療法を指導された通りに実践しない人も多いのが現状です。

糖尿病入院中には、血液検査や尿検査をはじめとした各種精密検査が行われます。これにより、現在の自分の状態がどの程度なのかを患者さん自身がしっかりと把握し、これまでの生活を反省したり、改めるべき部分について考え直したりする「きっかけ作り」や「意識改革」も目的のひとつだといわれています。

糖尿病で入院する基準はあるのか?

糖尿病で入院になる基準はいくつかありますが、要入院とするレベルや数値の判断には病院差や個人差があるのも事実です。
重篤な感染症や合併症がある場合には、基本的に即入院となります。また、妊娠糖尿病や小児糖尿病も多くのケースで入院治療を行うのが一般的です。

また、糖尿病で緊急入院になる基準としては「血糖が600mg/dL以上あり、意識消失やケトーシスを起こしている場合」「意識はあっても血糖が500mg/dL前後で、尿にケトンが出ている場合」などがあげられます。
もちろん、これらの数値や基準を満たしていなくても、教育入院が必要となる糖尿病患者さんは大勢いるため、緊急性の高い入院目安として捉えてください。

特に、食事療法や運動療法が適切に行われず、長期間にわたって血糖コントロールが悪い患者さんでは、糖尿病の正しい知識を持っていないことが少なくありません。このような場合には、前述した数値や症状がなくても、教育入院を勧められることが多いでしょう。

糖尿病入院の期間はどれくらい?

糖尿病の治療入院や教育入院には、さまざまなコース期間があります。2泊3日という短い期間から、1週間、2週間程度の日程が一般的です。
現在の糖尿病の状態や合併症の有無、学びたい内容によって日程は異なりますが、教育入院の場合には患者さん自身が入院期間を選べることがほとんどです。

ちなみに、糖尿病で入院する患者さんの平均入院期間は、10.5日というデータが出ています。さらに、この中で「教育入院」を主な目的として入院した患者さんは、8.4日が平均入院期間です。
約60%以上もの人は、10日未満の入院といわれていますが、年齢が上がるごとに入院期間が長くなるといった傾向があります。これは、定年などによって「仕事を気にせず入院ができる」「定年退職をして時間に余裕ができた」などの理由があげられるでしょう。

入院期間は病院によっても方針が異なりますが、患者さんの事情や要望によって、治療内容や指導項目を変更し「入院期間」を短縮することも可能な場合があるため、医師や病院窓口へ気軽に相談してみてください。

糖尿病教育入院の治療内容は?

そもそも、糖尿病の教育入院では「治療自体」が目的ではありません。勘違いしている患者さんも多いのですが、糖尿病入院の場合には患者さん本人に「糖尿病の正しい知識」「糖尿病とうまく付き合っていく方法」を理解してもらうことが重視されています。

食事療法の正しい実践方法を栄養士から具体的に説明をしてもらうことや、理学療法士によって適切な運動療法を学ぶことなどが、入院中の治療内容の中心となります。
食事に関しては、実際の病院食をもとにして1日の摂取目安量、食べる順番、栄養バランス、主食(糖質)の計量法について指導されるのが一般的です。

また、入院中には、糖尿病の治療をしていく中でよく耳にする「専門用語」についても説明を受けます。
血糖値、ヘモグロビンA1cなどはもちろんのこと、糖尿病合併症である糖尿病腎症、糖尿病神経障害、糖尿病網膜症のメカニズムや危険性、高血糖が身体に及ぼす影響についても、医師や臨床検査技師などからわかりやすく解説してもらうことができます。

しかし、入院中に学んだ各種療法や知識は、退院後に取り組みを実践・継続してこそ意味があるものです。
「入院したのに糖尿病が治らなかった」「入院中にたいした治療をしてもらえなかった」などと話す患者さんもいます。しかし、これは糖尿病治療の本質を理解していない証拠ともいえるでしょう。
糖尿病は誰かに治してもらう病気ではなく、患者さん本人が強い意志を持って治療にあたるべき疾患です。どんな薬物療法を取り入れていたとしても、バランスの良い食事と適度な運動をおろそかにしていては、糖尿病を改善することはできません。
今後の生活をより良いものにしていくために、糖尿病の教育入院があるのです。

糖尿病で入院したくないなら自己管理が必須

医師から「糖尿病ですね」と言われても、入院だけはしたくないと考える人も多いでしょう。また、最近では仕事の関係上、どうしても長期休暇がとれず入院ができない患者さんも少なくありません。

糖尿病で入院したくない場合には、とにかく日頃からの自己管理が重要です。食事療法や運動療法を適切に行い、節度のある生活習慣を身につけなければなりません。また、糖尿病に関する正しい知識をつけることも大切です。
そもそも、患者さん自身が強い意志を持って糖尿病治療に向き合っていれば、教育入院は必要ありません。はっきり言ってしまうと「食事療法と運動療法が正しくできないから入院になる」といった患者さんは多いのです。

食事療法においては、規則正しく3食を摂ることや、栄養バランスに配慮した食事内容を心がけることが重要となります。特に、糖質、カロリー、脂質、塩分の摂取量には十分気をつけましょう。

しかし「栄養バランスが取れた食事」と言っても、具体的にはどのようにバランスを取っていけば良いのかわからない患者さんも多いでしょう。そんなときには、日本糖尿病学会が発行している「糖尿病食事療法のための食品交換表」を参考にしながら、毎食のメニューを組み立てていくのがおすすめです。
食品交換表は、ネットでも検索することができます。また、書店やAmazonなどでも購入が可能です。食品の1単位あたりの量を知ることから始めましょう。
最初は誰でも「栄養価やカロリーって、よくわからない」と感じるものです。しかし、毎日の習慣にしていると、いつの間にか身についてくるので安心してください。

糖質の多いお菓子やスイーツはもちろんのこと、お米やパンなどの炭水化物の過剰摂取にも注意が必要です。GI値が高い食品は、食後血糖値を急激に上昇させてしまい「糖尿病合併症」を発症しやすくなります。
また、お酒(アルコール)の摂取や喫煙も、血糖値を上げる要因となるため、できるだけ控えるようにしましょう。
ウォーキングなどの適度な運動も、最低でも週5日は行ってください。

これらの注意事項は、どんな医師からでも糖尿病関連のサイトでもいわれていることですが、知識として持っているだけでは意味がありません。実際に、強い意志を持って実践できる人だけが、糖尿病入院や合併症発症から免れることができるのです。

糖尿病入院の費用はいくらかかる?

糖尿病で入院をする際には、どれくらいの費用がかかるのか気になっている方も多いでしょう。入院日数や地域、医療機関によって入院費用は異なりますが、おおよその目安としては医療保険3割負担の患者さんで10万円前後かかると思っていてください。

自己負担分は、2泊3日で約35,000~50,000円、7泊8日で約70,000~90,000円、2週間の入院で約120,000~180,000円程度が一般的です。これらの費用の他に、ベッド代や食事代が加算されることが多いため、入院前には各医療機関で確認しておくようにしましょう。
また、追加検査や退院時のお薬処方などで、追加料金がかかることも少なくありません。

1週間や2週間の入院の場合、高額医療費制度の対象となる場合があります。高額医療費制度に関しては、各医療機関の担当窓口で相談するようにしましょう。

糖尿病の教育入院は、決して安い金額ではありません。そのため、「余計なお金がかかるのが嫌」「家計の負担になるから入院はしたくない」と考える方もいるのが現状です。
しかし、糖尿病は生涯にわたって付き合っていく病気であることを忘れてはいけません。早期段階に正しい糖尿病の知識と療法を身につけておけば、一生ものの財産となるでしょう。

糖尿病足病変による切断や網膜症による失明などの重篤な合併症が出てからでは、以前のような「健康な身体」をお金で買うことはできません。
しかし、まだ大きな自覚症状が現れていない段階であれば間に合います。教育入院へ費用を捻出することは「健康な人と同じような生活」を送るための第一歩となるでしょう。

糖尿病入院費には医療保険が使える?

前述した通り、糖尿病の入院では多額の費用がかかります。そのため、糖尿病で教育入院をする際には、「加入している医療保険が使えるのかどうか」「入院給付金が支払われるのか」といった点が気になる方も少なくないかもしれません。

基本的に、糖尿病の教育入院は医療保険が適用されます。また、加入している医療保険にもよりますが、「入院給付金」は治療を目的とした入院であれば、支払われるのが一般的です。
糖尿病の教育入院が、教育だけでなく血糖コントロールなどの治療も同時に行われるものだと判断されれば、給付の対象となります。

もちろん、「絶対に支払われる」とは言い切れません。保険に加入した時点で、すでに糖尿病と診断されていた場合には、申し込み時に「糖尿病である」と申告しておく必要があります。
これにより、保険会社によっては糖尿病に関わる治療への支払いが免責となることもあるため、注意が必要です。念のために、入院手続きを行う前には加入している保険会社に問い合わせをして、確認しておくことをおすすめします。

また、保険会社が入院給付金を支払う際には、医師が作成した診断書をもとに検討するケースが多いといわれています。保険会社だけでなく、医師や病院にもあらかじめ確認しておくと、安心して教育入院期間を過ごすことができるでしょう。

糖尿病の教育入院を繰り返す人にはどんな特徴がある?

糖尿病患者さんの中には、教育入院を繰り返す人がいます。せっかく入院をして、一時的に血糖コントロールが良くなっても、退院後に再び血糖値やヘモグロビンA1cの数値が悪化し、その度に入院を何度も繰り返すのです。
このような糖尿病患者さんには、どのような特徴があるのでしょうか。

まず、糖尿病治療への正しい認識ができていないことがあげられます。糖尿病は、現在の医療では完治しない病気とされており、生涯にわたって食事療法や運動療法、薬物療法によって良好な血糖コントロールを行っていかなければなりません。
食事や運動は、どんなに医師が細かく指導をしたところで、患者さん本人が正しく実践しなければ意味がないのです。しかし、糖尿病の教育入院を繰り返す人は「医者がなんとかしてくれる」といった甘い考えを持っている傾向があります。

また、入院をすることで症状や数値が一時的に改善されても、普段の生活に戻った途端に「我慢できないから仕方ない」「面倒くさいからできない」などと、さまざまな言い訳をして不健康な日々を送りはじめるのも大きな特徴です。
糖質たっぷりの丼ものやラーメンを食べ、間食にはポテトチップスなどのお菓子をつまんでいては、糖尿病が改善されるはずもありません。当然のごとく、悪化していきます。
このような言い方をすると腹を立てる患者さんもいるかもしれませんが、要は「自分にだけは甘い」といった精神的な弱さが、入院を繰り返す原因です。

教育入院では、糖尿病の治療そのものを行うのではなく、「食事療法や運動療法を自己管理して実践できるように」といった目的で、あらゆるプログラムが組まれています。
入院をすれば糖尿病が良くなるわけではありません。一時的に数値が良くなったとしても、それは病院食を用意してくれた栄養士さんや、運動療法をサポートしてくれた理学療法士さんのおかげだということを忘れてはいけません。決して、患者さん本人の力ではないのです。
糖尿病の教育入院を何度も繰り返す患者さんは、この辺りの認識を正さない限り、悪循環から抜け出すことはできないでしょう。

まとめ

糖尿病治療の主役は、患者さん自身だといわれています。糖尿病を患っているご本人が、正しい食事療法、運動療法を継続しなければ「血糖コントロール」は改善しないからです。
もちろん、糖尿病入院をはじめ、糖尿病治療では医師や看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士などさまざまな人たちが適切なサポートや指導をしてくれます。
しかし、これらのアドバイスをもとに、糖尿病を患っているご本人が実践しなければ全く意味はありません。

糖尿病入院は、患者さん自身の意識を改善したり、糖尿病への知識を深めてもらうことを目的として行われています。これにより、「このままではダメだ」「合併症を予防するためにも、本気で糖尿病治療に取り組もう」と悔い改めて、生活改善を行うきっかけとなれば、糖尿病の入院治療は大成功といっても過言ではないでしょう。

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