目次
糖尿病の診断に関する基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病って1回の検査で診断されるものなの?
A. 1回で診断される時もあれば、何度か検査が必要な場合があります。
糖尿病の診断方法は?
会社の健康診断で糖尿病予備軍と診断された!妊娠中に糖尿病と言われた!症状が何もなかっただけに、いきなりの診断に不安な気持ちでいっぱいになってしまいますよね。糖尿病と一言でいっても、完全に糖尿病になってしまっている場合や、糖尿病の一歩手前の状態などその状態もさまざまです。
では、糖尿病の診断にはどのような基準があるのでしょうか?今回詳しく解説していきます。
糖尿病と診断するためには大きく「問診」と「検査」の2つの手順で進められていきます。一つ一つ見ていきましょう。
問診
まず病院に行くと、ドクターからの問診から始まります。問診の主な内容は以下のような内容がメインです。問診票としてご自身で記入する場合もあります。
自覚症状が何かあるか?
- 喉が渇くようになった
- 最近ダイエットもしていないのに体重が減少している
- 疲れやすくなった
- めまいがするほどお腹が空く
- トイレが近くなった
環境について
- 食生活について
- 睡眠時間
- 飲酒の有無
- 太っているか、過去に太っていたか
- ストレスの有無など
遺伝子的な因子があるか
- 家族に糖尿病の人がいるか
- 家族に肥満の人がいるか
既往歴や出産歴について
- 妊娠中か出産の経験があるか
- 妊娠中に尿糖陽性、妊娠糖尿病はあったか
- 赤ちゃんは4,000g以上の巨大児や低体重児だったか
- すい臓病、肝臓病、内分泌の病気になったことがあるか
- 胃を切除したことはあるか
合併症の症状の有無について
- 手足のしびれがあるか
- 皮膚に触った時に異常な感じがあるか
- 目が見えにくいことがあるか
- 顔や手足にむくみはあるか
検査
問診が終わり、だいたいの情報をドクターに共有した後は血液検査を行います。検査はその時の血糖の状態や過去1~2か月前の血糖値を表すHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)という数値を血液から確認するために行われます。
糖尿病の診断基準について
糖尿病の診断方法は1つに限られるわけではなく、さまざまな要因を確認してから糖尿病と診断されることがほとんどです。具体的には、症状の有無や血液検査でわかる「血糖値」と「HbA1c」が基準値よりも高いかどうかで判断します。
血糖値は検査した時点の血液にある血糖の濃度を表し、HbA1cは過去1~2ヶ月前の血糖値を表します。
- 血糖値:検査した時点の血液中の血糖の濃度
- HbA1c:過去1~2か月前の血糖値
血糖値はその日に食事を抜いたりすれば下げることができますが、HbA1cは過去のデータになるのでその日の食事などに左右されることはありません。
また、糖尿病の検査としてブドウ糖液を飲み30分、1時間と2時間後に採血し、血糖値を測るという検査も診断の材料として使われることがあります。(75g経口ブドウ糖負荷試験)
以下が糖尿病の診断の基準になっている数値のガイドラインです。
糖尿病の診断基準
- 朝の空腹時血糖値 126mg/dL以上
- 75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値 200mg/dL以上
- 時間に関係なく測定した血糖値 200mg/dL以上
- HbA1c 6.5%以上
- 早朝空腹時血糖値110mg/dL未満
- 75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値140mg/dL未満
①から③までのどれかに当てはまり、さらに④にも当てはまる人は「糖尿病」とすぐに診断されます。①から④のいずれかだけが当てはまった場合には、確定ではない「糖尿病の疑い」として診断されます。
糖尿病になるまでの過程
糖尿病は、正常の基準値からだんだんと血糖が上がっていき最終的に糖尿病になっていきます。そのため、正常値からいきなり糖尿病になる!ということはまずありません。
まずは、なんの問題もない「正常値」から血糖が上がっていき、糖尿病になる手前の「境界型」、さらに進行して「糖尿病型」になり糖尿病型の数値が2回確認されると糖尿病と診断されることがほとんどです。
正常値→境界型→糖尿病型(糖尿病)
特に血液検査で採ったHbA1cのデータは糖尿病を診断する上で重要なデータになります。HbA1cの数値だけでも、だいたいの糖尿病の進行具合を確認することが出来ます。
【HbA1cの基準値(NGSP値)】
- HbA1c値 5.6%未満:正常範囲内
- HbA1c値 5.6-5.9%:時々血糖値が高めの人(境界型糖尿病)
- HbA1c値 6.0-6.4%:糖尿病予備軍(境界型糖尿病)
- HbA1c値 6.5%以上:糖尿病
ただ、糖尿病はHbA1cの数値のみで診断するわけではありません。だいたいは血糖値とHbA1cのどちらか一方だけが糖尿病型だった場合、再検査が必要になります。再検査でも糖尿病型だった場合は「糖尿病」と診断されます。→糖尿病
初回の検査でも再検査でも血糖は正常値でHbA1cだけが糖尿病型だった場合は、「糖尿病の疑い」として、その後は経過観察を行ないます。→はっきりとは糖尿病ではない
妊娠中の糖尿病
妊娠中は胎盤から分泌されるホルモンの影響で、インスリンが上手く働かない「インスリン抵抗性」が強くなり、普段は血糖が正常な方も高血糖になりやすいのが特徴です。高血糖の状態が続くと、赤ちゃんや母体に負担がかかるため、妊娠中に糖尿病と診断された方や元々糖尿病を患っている方は血糖をコントロールしていく必要があります。
妊娠中の糖尿病には、妊娠前から糖尿病がある方の「糖尿病合併妊娠」と、妊娠中に初めて高血糖が認められる状態の2種類があります。
妊娠中に初めて高血糖が認められた場合は、正常の基準値よりも血糖値が高いが糖尿病と診断するほどではないものを「妊娠糖尿病(GDM)」と、明らかに血糖値が高く妊娠中に判明した「糖尿病」の2つに分かれます。
- もともと糖尿病がある妊婦さん→糖尿病合併妊娠
- 妊娠中に高血糖が認めらた妊婦さん→糖尿病(完全な糖尿病)、妊娠糖尿病(糖尿病予備軍)
妊娠中の糖尿病の診断基準
<妊娠糖尿病型>
75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値が次の基準の1点以上を満たした場合に診断される。
- 空腹時血糖値≧92mg/dL
- 1時間値≧180mg/dL
- 2時間値≧153mg/dL
<妊娠中の糖尿病(確定)>
以下のいずれかを満たした場合に診断される。
- 空腹時血糖値≧126mg/dL
- HbA1c値≧6.5%
もともと糖尿病がある妊婦さんや、妊娠中に糖尿病になってしまった場合は安全な出産のために普段から血糖をコントロールする必要があります。食事療法で食生活を見直す以外にも、場合によってはインスリンでの治療が必要になります。現在、妊娠中でも安全に使えるインスリンがあるので妊婦の方はそちらのインスリンを使用していきます。
妊娠中に糖尿病になってしまっても、出産後はインスリンの働きを悪くするホルモンを出す胎盤が外にでるため血糖が安定することがほとんどですが、一定期間後に糖尿病を発症するリスクが高くなります。出産後も定期的な検査が必要になりますので、しっかりと主治医と話し合いながら通院するようにしましょう。
糖尿病にはどんな種類があるの?
■1型糖尿病
血糖を下げる働きをするインスリンという物質をつくる膵臓(すいぞう)の細胞が壊れてしまうためにインスリンが分泌出来ない、または少量しか作れないタイプの糖尿病です。
子供の糖尿病に多いですが、あらゆる年齢層でも発症する恐れがあります、1型糖尿病は突然発症することもあり、一度なってしまうと体外からのインスリンの補給(インスリン注射)が必要になります。
■2型糖尿病
インスリンを作ることはできるが働きが悪い、膵臓で作るインスリンの量が少ない場合と、こられの症状が合わさっているタイプの糖尿病が2型糖尿病です。
成人になってから糖尿病と診断される人の95%がこの2型糖尿病で、肥満や遺伝、食生活やストレス、喫煙や高血圧などさまざまな因子が関係します。
■妊娠糖尿病
妊娠後、血糖が高くなり診断されるのが妊娠糖尿病です。妊娠前から、糖尿病があった場合はこれに当てはまりません。
こんな症状でていませんか?糖尿病の三大合併症
糖尿病により高血糖が続くと細い血管が障害を受け、詰まったり血液が漏れてしまうようになります。そうすると、細い血管が張り巡らされている場所に上手く血流が巡らずに組織が障害をうけてしまいます。そのことにより起こる糖尿病の3大合併症がこちらです。
■糖尿病腎症
腎臓には毛細血管が張り巡らされています。高血糖が続き、血流が腎臓に巡らなくってしまうと血液をろ過する機能が衰え、最終的に腎不全になってしまいます。そうなると人工的に血液をろ過する「人工透析」が必要になります。人工透析の治療は週に何度も、何時間も受ける必要があるため生涯続けていかなくてはならない大変な治療です。
■糖尿病網膜症
目の網膜には毛細血管が張り巡らされています。糖尿病による高血糖状態が続くと毛細血管が詰まり、網膜へ栄養や酸素が行き渡らずに「糖尿病網膜症」をひき起こします。 糖尿病を治療しないままにしておくと高い確率でこの病気を発症し、進行すると失明に至ることもあります。
■神経障害
手足にも細い血管が手中しているため、高血糖状態になると血流が悪くなり手足のしびれや感覚のまひ等の症状が出始めます。進行すると壊疽(えそ)を起こし、最悪の場合は切断しなくてはいけなくなります。
糖尿病かも?自己チェックする方法
2型糖尿病は大人になってからの食生活や運動不足、生活習慣や遺伝などが大きく関わってきます。症状がでにくく、検査を受けないと気づくことが難しい病気なので、自分でセルフチェックを行いましょう。チェック項目に多く当てはまる方は一度血液検査など病院で検査してもらうことをおすすめします。
チェック内容
- 血糖が高いと言われたことがある
- 肥満気味
- 高血圧で薬を飲んでいる
- 糖尿病の親、兄弟・姉妹がいる
- 40歳以上である
- 外食が多い
- 野菜をあまり食べない
- 運動をあまりしない
- 車に乗る機会が多い
- 妊娠時に尿から糖が出たと言われた
糖尿病自己診断キットについて
糖尿病のセルフチェックとしておすすめなものが、糖尿病自己診断キットです。わざわざ病院に行かなくても薬局やオンラインで購入することができ、おおよその自分の血糖を調べることが出来ます。
【尿検査薬】
専用の試験紙に尿をかけ、反応した色の違いでチェックするものです。 尿糖、尿たんぱく、尿潜血などを調べることができます。
【血糖測定器】
専用の血糖測定器についている針を指先に指し、その血液から血糖値を測定するものです。とても細い針なのでほとんど痛みもなく使うことができます。さまざまな種類があるので自分に合ったものを選びましょう。
糖尿病と診断されたら?
治療方針を決める
糖尿病と診断されたら、どのような治療をしていくか、普段どんなことに注意したらいいのかドクターから詳しい説明があります。糖尿病の治療法は主に「食事療法」と「運動療法」、「薬物療法」です。その人の糖尿病の程度にあった治療方針が決められます。わからないことがあれば何でもドクターに質問し、不安を取り除きましょう。
障害年金の手続き
障害年金は公的年金制度の一種です。何かしらの疾病がある方で一定の基準を満たしている場合は、この障害年金を受給できます。糖尿病の方も受給できる可能性があるので、必ず申請するようにしましょう。障害年金が受給できるようになると、仕事時間を短縮でき、その分治療に専念することが出来ます。
障害年金を申請するには、必ず初診日がわかる証明書が必要になります。「受診状況証明書」などの書類や、お薬手帳、診察券などが該当しますので、なくさないように保管しておきましょう。初診日から長い期間をあけてしまうと証明書の紛失や病院がカルテを破棄してしまうなど、申請に手間がかかってしまいますので、診断されたら早めに申請するようにしましょう。
その他社会保障の手続き
障害保険の他にも、さまざまな社会保障があります。当てはまりそうなものあれば、ドクターやケースワーカーさんなどに相談してみましょう。
- 介護保険制度(65歳以上の方、40~64歳で特定疾病をお持ちの方)
- 高額療養費制度(外来や入院で高額な治療を行った方)
- 身体障害者手帳(眼・腎臓・肢体に障害がある方)
- 心身障害者等福祉手当(眼・腎臓・肢体の障害がある方)
- 難病医療費助成制度(指定難病に関連する糖尿病)
- 小児慢性特定疾患医療費助成制度(糖尿病と診断されている児童)
日常生活で気をつけること
糖尿病になると、治療の他にも日常生活で気を付けなければならないことがいくつかあります。低血糖になってしまった時の対処法や、糖尿病になってからの車の運転について、災害時の準備や対応方法など普段の生活で気をつけるべき点について理解しましょう。
糖尿病は早く見つけましょう
糖尿病は発見が早ければ早いほど、血糖コントロールもしやすくなり合併症を予防することができます。自分で怪しいなと思ったり、気になる点があれば早めに病院で検査をしてもらいましょう。
まとめ
糖尿病にはいくつかの診断基準があり、特に血糖値やHbA1cの数値で判断することがほとんどです。また、すぐに糖尿病と診断される場合もあれば、「糖尿病予備軍」といった糖尿病の1歩手前の状態である場合も多くあります。どちらにしても、普段の血糖コントロールをする必要があり、糖尿病に起こりやすい3大合併症を起こさないためにも治療が必要です。自分が糖尿病かわからない…、家族に糖尿の人がいるので自分もなりそう…など不安な方はセルフチェックをしてみて、怪しければ病院で詳しい検査をしてもらいましょう。