目次
糖尿病と体臭に関する基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病になると体臭が臭くなる?
A. 糖尿病になると「アンモニア臭」や甘酸っぱい「ケトン臭」を発することがあります。
糖尿病になると体臭が臭くなる?
この世界にはさまざまな病気が存在しますが、ペスト、がん、痛風など特定の病気になると臭いを発生させるものがあります。歯周病なんかも腐臭を発生させるものとして有名です。正確には病気というより胃、腎臓、肝臓などの内臓の機能に問題が発生することで起きることが多いです。
逆をいえば、どの病気がどんな臭いを発生させるかを知っておくことで、病気にかかってしまったかどうかのひとつの目安にもなります。ただし、糖尿病はさまざまな器官に障害が出てくる可能性のある病気ですので、その合併症が原因で臭いが発生する場合も考えられます。
糖尿病で発生する臭いと原因
糖尿病でよく知られているのは、果物の熟したような甘い臭いや甘酸っぱい臭いがするということです。これは実はケトン体というものが原因となっています。アセトンという成分もケトン体のひとつで、ケトン体と同一視されることもあります。ほかにはどんな臭いが発生するのか詳しくみていきましょう。
アンモニア臭
糖尿病が原因でアンモニア臭が発生することがあります。アンモニア臭はいわば尿の臭いということになりますので、自分からそんな臭いが出ているとなると、周りのことが常に気になってしまいます。尿に関係がある臓器は腎臓ですので、腎臓が悪くなっていることで発生するのですが、実は肝機能が低下することでも起こります。
肝臓がたんぱく質を分解する時に、アンモニアが発生します。アンモニアは有害な物質ですが、肝臓にあるオルニチンという成分と反応することで、無害な尿素へと変換することができます。ですが、何らかの原因で肝機能に問題がある時には、この回路が正常に働かず、アンモニアを完全に分解することができなくなります。
そうして分解されなかった血液中のアンモニアが臭いとともに汗となって体外に出てきてしまうというわけなんですね。
ケトン臭
ケトン体という言葉を聞いたことがある人も多いのではないのでしょうか?極端な糖質制限をすることで、ダイエットの効果を得る「ケトン体ダイエット(ケトジェニック・ダイエット)」というものがあり、それで目にする機会が増えてきました。
ですが、ケトン体は糖尿病とも大きなつながりがあります。糖尿病になった人は、このケトン体が尿に混じって排出されるのです。健康な人の血液にもケトン体は含まれていますが、そこまで多くはありません。ところが、糖尿病の人などインスリンがうまく機能していない人は、ブドウ糖をエネルギーに変えることができないため、ケトン体が増えます。
ケトン体が増えると脂肪をエネルギーに変えることができるようになるからです。糖尿病の人は、インスリンが不足気味ですので、常にケトン体が増えている状態になっています。この状態をケトーシスといいます。ケトン体は臭いがありますので、ケトーシスの状態では体臭や口臭が出てしまうのです。
ですから、ケトン体ダイエットではケトン臭がし始めたら、ケトン体が出ているので成功しているということになるのです。ケトーシスはある意味普通の状態ではありませんので、意図的にケトーシス状態をつくり出すケトン体ダイエットを疑問視する声もあります。
ケトーシスの症状として頭痛や吐き気を起こす場合もあり、また体臭や口臭を発生させますので、それに留意して行う必要があります。
アセトン臭
糖尿病のような高血糖の人は、アセトン臭がするといわれることもありますが、アセトンもケトン体のひとつですので、ケトン臭もアセトン臭も同じ甘かったり甘酸っぱい臭いです。アセトンという言葉は聞きなれないかもしれませんが、マニキュアの除光液にも使われている成分ですので、女性の方はそれを想像してもらえるとわかりやすいかと思います。
そんな臭いが体の中から臭うというのは普通ではない気がしますが、これは一体どういうことなのでしょうか?アセトンは揮発性が高い物質ですので、呼気と一緒に口から排出されます。逆をいえば、自分の口からアセトン臭がすると感じた場合は、ケトアシドーシスの可能性があるため病院の受診をした方がいいでしょう。
口臭がしたら糖尿病性ケトアシドーシスの可能性あり?
血液が酸性に傾いている状態でアシドーシスというものがあります。ケトン体は酸性であり、さらに水溶性のため、大量に増えたケトン体が血中に溶けるとアシドーシスになります。このようにケトン体が原因で起こるアシドーシスを、ケトアシドーシスといいます。
ケトアシドーシスの症状は、呼吸の乱れ、吐き気、腹痛などから、ひどいものだと昏睡や意識障害などを生じることもありますので、注意が必要です。糖尿病性ケトアシドーシスはおもに1型糖尿病の人が起こすといわれており、2型糖尿病の人が起こすことはほとんどありません。
起こる原因ですが大きく分けて2つあり、1型糖尿病を発症した時にインスリンをつくり出すβ(ベータ)細胞の破壊が急激に起こり、ケトアシドーシスを引き起こす場合があります。もうひとつはインスリンの注射をしていない時です。1型の糖尿病患者は毎日のインスリンの投与が必要ですので、これを怠ることでもケトアシドーシスを引き起こすことがあります。
しかし近年、2型糖尿病患者でも糖尿病性ケトアシドーシスになるケースが出てきています。その原因となっているのは、大量の糖分が含まれている清涼飲料水です。これを大量に飲むことで糖尿病性ケトアシドーシスを発症するケースもあるというのです。この場合はそこまで重症にはなりませんが、健康のためにも頻繁に摂取するのは控えたほうがいいでしょう。
糖尿病性ケトアシドーシスの初期症状として、呼気にアセトン臭やケトン臭を感じることがあります。これは、この臭いを感じたならケトアシドーシスになっている可能性があることを示唆しています。
体が臭う原因は?
糖尿病以外にも体臭が発生してしまう原因は、加齢臭やストレス臭、ダイエット臭などいろいろあります。
疲労やストレスが原因の体臭
仕事などでストレスや疲労を感じやすい30〜40歳の人に多いのが、「ストレス臭」と「疲労臭」です。聞きなれない言葉ですが、どういうことなのでしょうか?まず疲労臭ですが、体が過度に疲れてくると肝機能が低下することがあります。また、疲労していると体内にアンモニアが増加し、肝臓がアンモニアを処理しきれなくなり、それが汗になって臭いとして出てきます。
次にストレス臭ですが、ストレスを強く感じるとホルモンの働きにより皮脂が過剰に分泌されます。また、ストレスは活性酸素を増加させます。活性酸素はあらゆるものを酸化させますので、皮脂も酸化させて臭いを出します。このストレス臭は加齢臭と同じような臭いになりますので、他人にも不快な思いを感じさせることになります。
加齢臭の原因もさまざまですが、腸内環境が悪くなっていることもそのひとつです。腸内の悪玉菌が増えすぎてしまうことで、毒素が多く発生してしまいそれが血中に流れてきて、さらにそれが汗となって外に出てしまうことが原因になります。
これを予防するためには、プロバイオティクスやプレバイオティクスを積極的に摂取し、バランスの良い食事を心がけて腸内環境を正常に保つことが重要です。
ダイエット臭
ケトン体ダイエットのように、ダイエットが原因で臭いを発生させる場合もあります。極端な食事制限により、炭水化物やたんぱく質が不足してエネルギーがつくり出せずに飢餓状態になります。そういった状態では代謝が低下し、脂肪酸やケトン体などが分解されないまま血中に残り、それが汗となって体外に放出されてしまうということなのです。
体臭などの臭いが発生するメカニズム
自分から体臭が発生していると気づいた時、自分のためにも他人のためにも早めに対策をしたいものです。ですが、その発生源や種類によっては対策方法が変わってきます。ですからそのためには、体臭が発生するメカニズムをよく知っておくと、より効果的な対策ができます。
おもに臭いの原因となっているのは口臭と体臭ですが、体臭は汗や皮脂が原因となっています。汗や皮脂は分泌された時点では無臭なのですが、含まれるたんぱく質、脂質、アミノ酸などの成分が、皮膚に存在しているさまざまな菌に分解されることで臭いを発生させているのです。臭いの成分は100種類以上が確認されており、汗をかく場所によっても臭いが変わります。
汗が分泌される汗腺はアポクリン腺とエクリン腺の2種類があり、含まれている成分も違いがあります。アポクリン腺が性器周辺に分布しているのに対し、エクリン腺は足の裏や手のひらに多いですが、体中のほぼすべてに分布しており、運動したときや暑いときに分泌されます。
エクリン腺の主成分は99%が水で、ほかはカリウム、塩化ナトリウム、アミノ酸などです。アポクリン腺は水のほかに脂肪酸、コレステロール類、たんぱく質などを含みますので、エクリン腺の汗よりも臭いが強いといえます。
口臭については、歯周病や口の乾きなど歯や口に問題があって発生している場合、扁桃炎や蓄膿症などの喉や鼻に問題がある場合、胃腸の機能低下など内臓の機能に問題があって発生している場合などがあります。
体臭の予防方法や改善方法はある?
体臭への対策方法はいろいろありますが、自分の原因にあったものでなければあまり効果がないことがあります。例えば、内部から臭っている場合、消臭スプレーや消臭効果のあるボディーソープなどを使っても一時的に臭いが消えるだけで、効果的とはいえません。
まず口臭についてですが、病気が原因となって発生しているのであれば、当然ながらその病気を治療するのが先決です。一時的に口臭を減らしたりなくしたりする方法としては、マウスウォッシュ、口臭を抑えるガム、胃で溶けるタイプの口臭ケアアイテムなどを使用する方法があります。一時的ではありますが、すぐに使用できるものが多いため便利です。
また、消臭効果のあるサプリメントもあります。ポリフェノールやタンニンといった消臭成分が口臭を抑えてくれます。中にはマスキングという香りのあるものを長時間服用することで、徐々に消臭効果が出てくるものもあります。
次に体臭についてですが、ワキガなどの元々の体質で臭うものについては手術などで対策するしかありません。そして口臭と同じく病気が原因となっているものは、早急に病気の治療をすることが大切です。中には重症な病気である場合もありますので、放置はしないようにしましょう。それ以外の体臭を抑える方法は大きく分けて5つあります。
1.殺菌
皮膚に存在する雑菌を殺菌することで、汗をかいても臭いが発生しないようにする方法です。
2.制汗
汗の分泌自体を抑えて臭いを防ぐ方法です。
3.消臭
発生した臭いを消す方法です。
4.抗酸化
皮脂の酸化を防いで臭いの元を断つ方法です。
5.マスキング
発生した臭いをわかりにくくして防ぐ方法です。
体臭を抑えるタイプの石鹸や洗浄剤や、殺菌・消臭効果のあるデオドラント用品を使用することで対策しましょう。基本的には洗浄をして清潔にしておくことと、汗をかいたらこまめに拭き取ること、そして体臭の原因となっている生活習慣があるならやめることです。
体臭がしはじめたら進行している可能性も
糖尿病ケトアシドーシスもそうですが、糖尿病ははじめの頃は特に自覚症状は少なく、尿に甘酸っぱい臭いがするようになったら、すでに糖尿病になっている可能性が高いということになります。
ですから、気づいたときにはもう糖尿病になっているという状態で、なかったことにはできません。これを防ぐためには、特に身体に不調がなく健康だったとしても、普段から生活習慣に気をつけておくしかありません。暴飲暴食を控え、規則正しい生活を心がけましょう。
そして、臭いから糖尿病の疑いがあるとわかったら、すぐに病院で検査を受けましょう。自分が糖尿病だと認めたくはなくとも、早めに治療を開始しなければもっと取り返しのつかないことにもなりかねません。
まとめ
糖尿病は本当にさまざまな症状を引き起こします。臭いもその一例で、合併症により耐え難いようなひどい臭いを発することもあります。困るのは、臭いは意外と自分で気がつかないこともあることです。自分では清潔にしているつもりでも、他人からは臭うと思われているかもしれません。
こうなってしまうと、相手から臭いと思われているのではないかと、常に気にしていなければいけません。これは生活の質を下げることにもなりかねません。このようにさまざまなことが原因で、糖尿病の治療自体が億劫になってしまうこともあります。
時には精神的なダメージの方が病状より深刻なことにもなりかねません。悪化する前から知識を持っておき、しっかりと血糖コントロールをしていく必要があります。