目次
糖尿病と頭痛に関する基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病で頭痛が起こることはある?
A. 糖尿病治療中の低血糖で頭痛が起こることもありますが、糖尿病以外の原因も存在します!
糖尿病で頭痛が起きる原因は?
一度発症すると完治しないと言われているのが糖尿病。
通常であれば、人間の身体は、インスリンという体内のホルモンにより、血糖値を正常に保つ機能を持っています。 しかし、糖尿病になると自分の力でインスリン分泌量の調整が上手くできなくなり、食後から時間が経過しても血糖値が高い状態が続いてしまうのです。
頭痛に悩まされる糖尿病患者が少なくありません。その原因は、糖尿病の治療による「低血糖」です。
高血糖を外部からコントロールするために、薬やインスリン注射を使用して血糖値を下げる治療を行うのですが、投与する薬やインスリンの量が多すぎたり、効きすぎたりすることで「低血糖」の状態を引き起こす場合があります。次項でも詳しくご説明しますが、この低血糖は脳内の血管を急激に収縮させてしまい、頭痛を引き起こします。
糖尿病は「血糖値が高くなる病気」と広く認識されている反面、投薬などの治療によって低血糖の状態になってしまうこともあります。糖尿病によって起こる頭痛は、その「低血糖状態」から引き起こされているのです。
糖尿病による低血糖頭痛の症状
糖尿病患者の低血糖による頭痛の症状は通常の頭痛とは若干異なります。
糖尿病の治療中に低血糖を起こすと、体内では緊急事態として捉えられ、多くのアドレナリンが分泌されます。アドレナリンには血糖値を上昇させる作用があるのですが、同時に血管収縮作用も持ち合わせています。
そのため、アドレナリンが脳内の血管を急激に収縮させてしまい、頭痛が発生することがあります。
低血糖が起こっているときの頭痛は、「ズキズキ」「ガンガン」といった感覚の痛みが特徴的です。心臓の鼓動や、脈を打つテンポに合わせたようなタイミングで「頭の痛み」を感じる場合には、まず低血糖を疑いましょう。
特に、糖尿病を患っている人の場合には、食事の回数や量が少なく空腹感があるときや、アルコールの過剰摂取、ハードな運動をしたときに低血糖になりやすいので、注意が必要です。
糖尿病で頭痛と肩こりが酷くなるって本当?
糖尿病の方には、「頭痛と同時に肩こりが酷くなった」と訴える人も少なくありません。
前述した通り、糖尿病になるとインスリンの分泌能力が落ちるため、血糖値が上昇してしまいます。 実は、血糖値の上がった血液はスムーズに流れにくくなるため、血行不良につながることがあるのです。
血行が悪くなると、当然「肩こり」が悪化してしまいます。特に、血糖値が高くなっているときには肩だけでなく、背中や首まで強い張りを感じることも多いです。
手や脚を中心に全身がむくみやすくなる「糖尿病特有の症状」も、高血糖が引き起こす血液循環の停滞によるものが大きいといわれています。
ただし、頭痛と肩こりが酷くなったからといって必ずしも糖尿病とは限りません。
慢性疲労やストレスによる片頭痛や肩こりの可能性もありますので、素人判断で必要以上に慌てないように注意しましょう。
もしも不安な点があれば、必ず医師に相談することをおすすめします。
糖尿病で頭痛とめまいが出ることはある?
血糖値が激しく上下することで、脳の血管に負担がかかり、頭痛とめまいが起きるケースも実際にみられます。
糖尿病になると、高血糖になるだけでなく「血糖値」自体のコントロールが上手にできなくなります。そのせいで、食事や入浴、運動などをきっかけとして高血糖と低血糖が乱高下するような不安定な状態になることも珍しくありません。
また、薬やインスリン注射が効きすぎてしまった際に、血糖値が50mg/dL程度まで下がると「中枢神経」がブドウ糖欠乏を起こし、神経症状としてめまいや頭痛が発生する場合もあります。
しかし、まだ医師から糖尿病の診断が出ていないのにも関わらず「頭痛とめまいがあるから糖尿病を疑う」という人が時々見られます。低血圧や高血圧などの「血圧異常」をはじめ、貧血によって頭痛やめまいを起こすことも少なくありませんので、自己判断をする前に必ず医師の診察を受けるようにしてください。
糖尿病で頭痛と眠気が食後に起きる?それって「食後低血圧」かも
糖尿病を患っていると、食事によって血糖値が不安定になることがありますが、食後に頭痛と眠気が襲ってくる場合には、「食後低血圧」が疑われます。
食後低血圧は、自律神経の働きが弱っている方に多くみられ、その中には糖尿病患者も含まれるので注意が必要です。
食事をすると、摂取した食べ物を消化吸収するために、体内の血液が胃腸を中心とした「消化器官」に集まります。しかし、心臓の血液量が減ってしまうと生命維持に問題が出てきてしまいます。それを防ぐため血管を収縮したり心拍を速くしたりして「正常血圧」を維持するような機能が、自律神経の働きとして本来人間の身体には備わっています。
しかし、糖尿病をはじめ、高齢者やパーキンソン病などを発症している方の場合には、この神経機能が正しく働かないことがあるのです。
これにより、血圧がしっかり上がりきらず、脳への血流が不足するために「頭痛」や「眠気」として自覚症状を訴えるのが、食後低血圧の大きな特徴です。
食後低血圧は、健康な人でも起こりうる症状のひとつですが、糖尿病を患っている方の場合にはさらに注意が必要となります。
頭痛があるからといって糖尿病とも限らない
糖尿病を恐れるあまり、身体のちょっとした異変を拾い上げ「頭痛があるから糖尿病かもしれない」「食後に頭痛がするのは糖尿病の前兆ではないか」と過剰な心配をする人が多くみられます。
しかし、頭痛は糖尿病以外でもさまざまな要因によって引き起こされる可能性のある症状です。
むやみに不安を増幅させたり、自分自身で勝手に決めつけることのないよう、まずは医療機関で正しい検査を受けることが何よりも大切となります。
確かに、糖尿病の初期段階でも「頭痛」を自覚する場合も珍しくありません。糖尿病は早期発見が治療のカギとなり、進行を遅らせることも可能な病気です。不安な症状があれば、早めに医師へ相談することが一番の解決方法です。
糖尿病の食後頭痛はなぜ起きる?
実際に糖尿病と診断された方の中でも、食後に頭痛を訴える人は少なくありません。
「血糖値スパイク」という言葉を、あなたは耳にしたことがありますか?
これは、食後に起こる過血糖のことを指します。
血糖値スパイクは「グルコーススパイク」とも呼ばれ、食後に血糖値が急上昇したのち、急降下する現象のことです。このような血糖値の激しい変動は、脳の血管にも大きな負担となり「頭痛」を引き起こします。
血糖値は、運動やストレスなどさまざまな要因で変動しますが、1日の活動の中でも最も「血糖値」に影響を及ぼすのは、食事です。口から入った食べ物が消化され「ブドウ糖」が作られると、主に腸管から吸収されて血液中に合流し、その結果「血糖値」が高くなります。
健康体であれば、インスリンというホルモンが膵臓から分泌されて、食後の血糖値を正常値まで下げてくれる機能があります。
しかし糖尿病患者の場合にはインスリンを作り出す力が弱まっており、血糖値をコントロールする機能が低下しているため、食事をした後の血糖値が上昇したままになってしまうのです。
個人差はありますが、血糖値が高いままの状態が続くと「頭痛」を感じる人は多くなります。特に「血糖値スパイク」が起こってしまうと、血管や脳からしてみれば予想外の乱高下に見舞われることとなり、頭痛が起きやすくなります。
糖尿病で頭痛が続くとき
糖尿病と診断されている方の中には、「頭痛が続いているのが気になる」という人もいるかもしれません。しかし、続く頭痛は「糖尿病」とは直接関係が無いものであることが少なくないのです。
糖尿病と診断されたことへの精神的なストレスや、治療や今後についての心配・不安などが蓄積し、「緊張型頭痛」を発症している可能性も大いに考えられます。
緊張型頭痛は、日本人の約5人に1人は悩まされているという、“よくある頭痛”です。主に頭や首、背中や肩の筋肉が過緊張することで起こるといわれ、「頭が締め付けられる感じの痛み」「重苦しい痛み」とも表現されるのが特徴的です。
緊張型頭痛には、大きく分けて2つのタイプがあります。
1つ目は「反復性緊張型頭痛」という短時間で痛みが治るもの。
2つ目は「慢性緊張型頭痛」と呼ばれており、痛みが何日も続く頭痛です。酷くなると「何年も頭痛が治らない」なんてことも珍しくありません。
自分が糖尿病になってしまったことへのショックや、この先ずっと治療を継続していかなければならない事実に対して大きなストレスを感じていると、慢性緊張型頭痛を発症してしまうケースが目立ちます。
糖尿病で頭痛と吐き気があるときは合併症の進行に注意
糖尿病と診断されている方は、頭痛と吐き気を感じた場合には合併症が進行している可能性があります。
糖尿病の合併症として、「糖尿病網膜症」という目の病気があります。「糖尿病になると失明の恐れがある」と、多くの糖尿病患者の恐怖心をあおる正体はこの網膜症のことです。
初期には自覚症状がほとんど無いため、そのまま放置してしまう人も少なくありません。しかし、頭痛や吐き気を感じる場合には、網膜症が進行していることが考えられます。
このときに注意してほしいのは、次なる合併症として「血管新生緑内障」が発生することもあるということです。
血管新生緑内障は、網膜の異常により新生血管が作り出され、それが眼球の「光彩」などへ伸びることで眼圧が高くなってしまうものです。
急激な眼圧の上昇は、目の痛みや「かすみ」をはじめ、頭痛や吐き気を起こします。
そのまま進行させてしまうと、失明の恐れもありますので厳重な血糖値コントロールを中心とした治療を行う必要があります。
糖尿病で頭痛が出たら市販の薬を飲んでもいい?
糖尿病を治療している方の多くは、血糖値コントロールの服薬や「インスリン注射」を日常的に行っている状態です。
頭痛が出たときに、痛み止めや鎮痛剤といった市販の薬を飲んでも良いものか、悩んでしまいますよね。やはり怖いのは飲み合わせによる副作用です。
市販の痛み止め・鎮痛剤・解熱鎮痛剤によく含まれているアスピリンは、膵臓から放出されるインスリンの分泌を促進する作用があります。
また、鼻炎薬に含まれる「プソイドエフェドリン」は交感神経を刺激して血糖値を上昇させてしまう場合がありますので、あわせて注意してください。
糖尿病の方が市販の薬を飲む際には、あらかじめ医師や薬剤師に確認をしておくと安心でしょう。日常的に頭痛で悩まされている方は、かかりつけの医師に相談をして、痛み止めの薬を処方してもらうのがベストです。
糖尿病頭痛の予防方法
糖尿病による頭痛で一番多いのは、血糖降下剤などの薬やインスリン注射が効きすぎたときに起きる「低血糖」によるものです。
これを予防するためには、食事の間隔や食事量を一定に保つことや、薬を飲む前には激しい運動をできるだけしないこと、そしてアルコール摂取を極力避けることなどがあげられます。
また、薬によっても低血糖が出やすい場合がありますので、医師と相談の上、薬の変更や見直しを定期的に行うことも大切です。特に、「スルホニル尿素(SU)薬」はインスリンの分泌を直接促す作用があるため、血糖値が下がりやすい傾向にあります。
インスリン抵抗性改善薬やα-グルコシダーゼ阻害薬、「ビグアナイド(BG)薬」を単体で服用しているのであれば、低血糖による頭痛を起こすことは極めて稀ですが、SU薬を併用している場合には注意しましょう。
糖尿病頭痛の治療方法
糖尿病の治療薬による低血糖状態で頭痛症状が出てしまった場合には、さらなる低血糖を防ぐためにもブドウ糖を5~10gすぐに摂取しましょう。砂糖10~20gでも構いません。
ブドウ糖や砂糖が手元にない場合には、コンビニや自動販売機で購入できる「清涼飲料水」を200ml程度飲んでください。多くの清涼飲料水には、ブドウ糖が含まれていますので代用できます。
ブドウ糖を摂取した後には、おおよそ20分ほどで症状が改善されてくるはずです。ブドウ糖で急激に上昇させた血糖値は、その後再び降下する場合もありますので、低血糖頭痛の症状が治まった後は血糖値の揺り戻しを防ぐためにも、すぐに食事を摂るようにしてください。
砂糖の吸収を遅らせる作用があるお薬を使用している場合には注意が必要となります。特にα-グルコシダーゼ阻害薬を服用している方の場合には、いつもブドウ糖を持ち歩くように心がけましょう。
また、頭痛が起きた際の状況や対処法については、必ず主治医に報告・相談しておくようにしましょう。
まとめ
今回の記事では、糖尿病で頭痛が起こる原因と対処法についてご紹介してきました。
糖尿病はインスリンの分泌異常により血糖値をスムーズに下げることができなくなる病気です。高血糖が主な症状となりますが、薬の服用やインスリン注射の効きすぎなどが原因で「低血糖」を起こす場合もあります。
低血糖が起きると、脳内の血管が収縮して激しい頭痛を伴うことも少なくありません。
また、糖尿病と診断されたことによるストレスや、今後の治療に対する不安が原因となって緊張性頭痛を引き起こす場合もあります。
薬やインスリン注射での血糖値コントロールはもちろんのこと、過度な不安やストレスを抱え込まないようにしながら、糖尿病治療を行っていくことも大切です。