目次
糖尿病と熱に関する基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病と熱にはどんな関係がある?
A. 糖尿病を患うことで足に熱を感じたり、感染症から熱が出ることがあります。また、夏は熱中症にも注意しましょう。
糖尿病患者で起こりえる熱の症状
糖尿病を発症すると、ふとしたときに異変を感じることが増えます。トイレの回数が多くなった、疲れやすくなったといったよくある症状とともに、「熱」に悩まされる糖尿病患者も一定数いることをご存知でしょうか。
糖尿病患者にありがちな熱の症状には、下記の3つがあります。
① 足の裏の熱
② シックデイ
③ 熱中症
本稿では、これらの熱の症状の原因や対策方法を説明していきます。
足の裏の熱とその原因
糖尿病患者において足の裏でもいつもと違う違和感を感じることがあります。「足の裏が熱くなる」と表現されることも多いですが、足の裏でこのような熱さや火照りを感じるとき、糖尿病による神経障害が起きている可能性が高いです。
神経障害は糖尿病を発症してから10~15年ほど経過した頃に現れやすいという特徴があり、三大合併症の1つとされています。長くにわたって高血糖の状態が続くと動脈硬化が進行し、血行不良が生じます。足は血行不良によって不調を感じやすい部位であり、熱さの他に冷えや痺れなどを感じることもあるのです。
「バーニングフィート症候群」と呼ばれ、血行不良が原因で熱を持つようになります。睡眠時に悪化しやすい傾向にあるため、眠っているときに足に熱さを感じるという人は、バーニングフィート症候群を発症しているかもしれません。
糖尿病性神経障害は、症状に気づいてからだと進行しているケースが多く、痛覚や温覚、触覚などに異常をきたし、足に熱さなどを感じる場合があります。
糖尿病と足の関係といえば、怖いのは壊疽です。最悪、足を切断しなければならない壊疽は本当に恐ろしい状態です。糖尿病を患っている人は、毎日足に異変が起きていないか確認をしておきましょう。
足に感じる熱さは、夜間の睡眠を妨害したり、食欲不振やうつ状態を招く恐れもあります。気になる不調を感じたら、すぐに相談できる医師を見つけておくことも重要です。
足の裏の熱への対策方法
糖尿病による神経障害が起きているとき、足の裏や足全体などで熱を持ったような熱さを感じることがあります。感覚が麻痺している証拠であり、糖尿病が進行しているサインとも言えます。では、足の熱を取り除くにはどんな対策を取れば良いのでしょうか?
適切な血糖コントロールを図ることが重要
糖尿病が進行することで徐々に感じ始める足の異変。冷えや熱さ、痺れなどを感じると驚くでしょう。少しでも足の不快を軽減するためにも、適切な血糖コントロールを引き続き行ないましょう。糖尿病と診断されてから、長くにわたって血糖コントロールを行なっている人は多いです。その血糖コントロールについて今一度見直し、正しい方法で継続することが大切です。食事療法に運動療法、薬物療法のバランスを考えながら、血糖値を安定させていきましょう。
足の血行を促進しよう
足は冷えやすい部位です。簡単なストレッチを行ったり、半身浴をしたりして、足の血行を促進していきましょう。足の裏には「足底筋群」と呼ばれる筋肉が集まっているため、この部分をしっかり伸ばして血行を促進していくと良いです。
日常生活での身体の動かし方にも気を付けよう
血糖コントロールや生活習慣の改善を図ることで、神経障害によって生じている足の熱さも徐々に良くなっていきます。神経障害を悪化させないためには、日々の過ごし方も意識してみましょう。ゆっくりと身体を動かすようにする、1回の食事量を減らして回数を増やすなど、身体の負担にならないような生活を心がけたいです。いきなり激しく身体を動かすことは避けましょう。
症状が気になるときは病院へ
足で感じる熱が長引いている、夜も眠れないといった状態で悩んでいるときは、早めに医師に相談しましょう。糖尿病の治療を受けている病院で診察を受けると、安心でしょう。糖尿病の定期検診を受けながら、足も健康体かどうか診てもらいましょう。
糖尿病を患っていると、感染症にかかりやすくなったり、傷ができやすくなったりします。糖尿病患者が感染症によって、発熱、下痢、嘔吐などの症状を伴って食事ができない状態のことを「シックデイ」と呼びます。なんだか体調がすぐれない、そんなときをシックデイと呼び、血糖値の確認が欠かせません。
風邪やインフルエンザにかかった、気分がすぐれなくて嘔吐してしまったというときは、シックデイに陥る可能性が高いです。血糖値の測定や薬物療法の状況を確認し、不調を感じた時点で医師に相談すると安心でしょう。
シックデイへの対策方法
ちょっとした体調不良から引き起こされるシックデイですが、上手に対応して早く回復していきたいものです。シックデイになったとき、家庭で対処できる方法をシックデイルールといいます。下記のポイントを押さえながら、シックデイの対処を行ないましょう。
1 安静と保温に努める
2 常温または温かいもので水分を補給する
3 炭水化物を摂取する場合は、お粥やうどんなど身体に優しいものを選ぶ
4 飲み薬を利用している場合、飲む量の調節が必要なときがある
5 こまめに血糖値の測定を行ない、糖尿病の状態を把握する
シックデイになるのが初めてで、どのように対処したらいいか不安というときは主治医に相談すると良いです。特に下記の場合は、すぐに医師の診察を受けましょう。
・38度以上の高熱が続いている
・嘔吐や下痢が止まらない
・1日にわたって食事が取れない、ほとんど食べられない
・血糖値が350mg/dL以上と高い状態が続く
・意識の状態に異常が見られる
糖尿病を患っていると、いつシックデイになるかわかりません。いつでもリスクがあるということを念頭に置き、対処法を確認しておきましょう。自身で対応できるものもあれば、人の助けが必要なものもあります。家族や知人にも理解してもらっていると、もしものときに協力してくれるでしょう。不調を感じたら早めに休む、無理をせず様子を見るといった方法を取って症状が悪化しないように努めましょう。
熱中症とその原因
糖尿病患者では熱中症にかかるリスクが高いことをご存知でしょうか。また熱中症のリスクが高い夏場は血糖コントロールも難しくなるため、悪循環となります。そのため夏場は特に注意が必要です。
血糖コントロールがきちんとできていないとき、喉が渇く関係で水分の摂取量が増加します。水分の摂取量が増えると、自然とトイレの回数も増え、多飲多尿の状態に陥ってしまいます。猛暑によって血糖コントロールが難しくなるのも事実で、夏はより真剣に糖尿病と向き合っていく必要があるのです。
夏は暑さからじっとしている時間が長くなり、運動が思うようにできなくなるでしょう。食事においても簡単なものや冷たいものを食べたくなります。その結果血糖コントロールが困難になり、糖尿病を悪化させてしまうことにつながるのです。
また、糖尿病を患っていると体温が上昇しているのに汗をかかないという自律神経の乱れが生じることもあるため、エアコンの設定温度が適切でないと室内であっても熱中症のリスクが高まります。エアコンを効かせすぎるのもよくありませんが、弱すぎるのも問題になりえるのです。
上記の理由から分かるように、糖尿病患者では、健康な人に比べてほんの少し気温が上昇することで熱中症のリスクが高まってしまいます。ただし糖尿病であっても、血糖コントロールが順調にできていると熱中症のリスクを下げることができます。糖尿病患者は熱中症のリスクが非常に高いこと、より血糖コントロールが重要になることを理解し対策をとりましょう。
こんな症状を感じたら熱中症かも
熱中症は、気づいたときには症状がかなり進行しているというケースもあります。そこで、症状が悪化しないように、自身の身体をしっかりチェックしておきましょう。こんな症状を感じたら、熱中症になっているかもしれません。
軽症の場合
めまいや筋肉痛、大量の発汗、失神、こむら返りなどの症状が現れます。暑いところにしばらくいた場合、このような症状が現れていないか確認してみましょう。いつもと違う異変を感じたら、すぐに涼しいところで安静にする必要があります。
中等症の場合
頭痛や吐き気、嘔吐などの症状が現れます。身体に力が入らず、ぐったりしてしまうこともあるでしょう。身体が熱を持って、だるさを感じる場合もあります。このような症状が現れたら、すぐに病院へ向かいましょう。1人で行動できない場合は、周りの人に助けてもらう必要があります。
重症の場合
重症の熱中症になると、けいれんを起こしたり、歩けなくなってしまいます。意識を失ってしまうこともあるため、一刻も早く病院へ向かわなければいけません。熱射病といって、高体温の状態が続く場合もあります。重症になると、自身の意識が朦朧となることも多いため、周りの人の手助けが欠かせません。
熱中症への対策方法
熱中症対策は日頃から念入りに行ないましょう。特に糖尿病を患っている場合は熱中症のリスクが高くなるため下記の点に注意しながらお過ごしください。
分補給はこまめに
熱中症対策を行ううえで、こまめな水分補給は欠かせません。暑い場所にいても、冷房の効いた部屋にいても、水分補給は欠かさないようにしましょう。水分を摂取する際、冷たいものよりも常温の方がおすすめです。身体を冷やしすぎることなく、身体に必要な水分を摂取できるからです。
スポーツドリンクには要注意
スポーツドリンクには、多くの糖分が含まれています。糖質を含まないスポーツドリンクであれば安心ですが、飲みすぎには注意が必要です。
アルコールは避ける
夏に飲むよく冷えたビールは美味しいですが、アルコールが熱中症を招く恐れもあります。アルコールは水分補給には含まれず、運動中や運動前に飲むと脱水症状を引き起こすこともあるほどです。アルコールを飲むと、水分を摂取しているようでも、体内の水分は失われていっているため気をつけましょう。
まとめ
糖尿病を患っている場合、熱に関する不調やトラブルを引き起こしやすくなります。
神経障害によって足に熱を持ったように感じたり、シックデイといって熱や嘔吐、下痢などの不調を感じたりすることもあります。
また、糖尿病患者では熱中症のリスクが高いため、夏場は熱中症対策もしっかり行いましょう。水分の摂り方や飲み物の種類に気をつけて、少しでも疲れを感じたら無理をせず休む必要があります。
熱に関するトラブルを見逃さず、日頃から血糖コントロールを適切に行なっていきましょう。