目次
糖尿病のメカニズムに関する基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病はどのような仕組みで発症するの?
A. インスリンの分泌低下により生じる病気であり、日々の生活習慣が影響している場合も多いです。
糖尿病のメカニズムとは?
現代人の多くが発症している糖尿病、そのメカニズムを知ることで予防法や対策が見えてきます。糖尿病を悪化させないためにも、メカニズムを知っておきましょう。
1型糖尿病の場合
糖尿病には1型と2型の2種類があり、そのうちの1型糖尿病は膵臓のインスリンを分泌するβ細胞が破壊されてしまう病気です。その結果、β細胞からインスリンがほとんど分泌されなくなってしまうのです。1型糖尿病では、インスリンの分泌を促すため、インスリンを投与していきます。1型糖尿病を発症する人は2型と比べて少なく、若い人の間で多い病気です。
インスリンの働きが鈍くなることで血糖値が上昇してしまい、糖尿病による症状があらわれます。β細胞が破壊される原因はまだ明らかになっておらず、免疫力が関係しているのではと考えられています。
2型糖尿病の場合
2型糖尿病は多くの人が発症しており、原因は毎日の生活習慣と言われています。不規則な生活や暴飲暴食、アルコールにタバコなど乱れた生活を送ることは、2型糖尿病を引き起こします。
インスリンの分泌に障害が起きたり、インスリン抵抗性といって効き目が弱くなることが起きたりして、血糖値のコントロールが難しくなるのです。糖尿病において鍵を握るインスリンは治療を行なって調整していくことが重要です。飲み薬やインスリン注射を行ないながら、運動療法や食事療法などを実施していきます。
酸化ストレスが糖尿病を招くこともある
糖尿病は、酸化ストレスが原因で発症することもあります。脳に酸化ストレスが溜まると、全身の代謝を調節する際に必要な神経細胞数が減少し、インスリンの作用が弱まってしまいます。一方、脳の酸化ストレスを抑制することで、肥満や糖尿病を防ぐことが可能であるとわかりました。
肥満の状態が続くと、酸化ストレスは溜まっていきやすくなります。糖尿病では肥満の人が多いとされていますが、酸化ストレスが影響して病状を進行させることもありえるのです。酸化ストレスが蓄積される原因は、やはり生活習慣にあります。食べ過ぎや運動不足といった生活を続けていると肥満になりやすくなり、結果的に糖尿病を招いてしまうのです。
糖尿病の際に重要となるインスリン分泌のメカニズムもチェック
私たちの身体は、食事を摂ると小腸からインクレチンというホルモンを分泌します。このインクレチンというホルモンは、インスリンを分泌する上で欠かせないホルモンです。食事から栄養素を吸収するとインクレチンが働き出し膵臓にサインを送り、サインを受けた膵臓にグルコースが入ってくると、インスリンが分泌されます。どれだけインスリンが分泌されるかは、グルコースの濃度によって異なります。
インスリンがしっかり分泌されると血糖値の上昇が緩やかになり、食後徐々に落ち着いてくるという仕組みです。しかし、インスリンの分泌がうまくいかないと、血糖値の高い状態が続き身体に負担をかけてしまいます。
こんな症状を感じたら糖尿病を疑ってみよう
糖尿病は、普段何気なく過ごしている中のふとしたときに症状を感じることがあります。また、人によっては病気が進行するまで症状を感じない場合もあるようです。そこで、どんなに小さな異変も見落とさないように、自身の体調と向き合ってみましょう。以下のような症状が現れたら、早めに医師に相談してみると良いでしょう。
- 身体が疲れやすい
- 喉がよく渇く
- トイレの回数が増えた
- 根気がなくなった
- 体重が増えた
- 料理の味が薄いと物足りなく感じる
- 視力の低下が気になる
- 足にしびれやむくみを感じることがある
- 急に痩せた
- 歯周病になった
日常生活でさほど気にせず過ごしている可能性が高い症状が多くなっていますが、上記に紹介した症状はどれも糖尿病と関係しています。今まで以上に気になる症状があったら、早めに医師に相談してみましょう。
糖尿病で現れる様々な症状、そのメカニズムとは?
糖尿病を発症すると、様々な症状に悩まされるようになります。様々な症状は、どのようなメカニズムで起きているのでしょうか?ここでは、症状ごとのメカニズムについて解説します。
喉が渇く仕組み
糖尿病の代表的症状とも言える喉の渇きは、脱水症状が起きることで感じる症状です。腎臓からブドウ糖と一緒にたくさんの水分が排出される関係で、多尿になります。尿から多くの水分が排出されると、体内の水分が失われていくため喉の渇きを感じるようになるのです。
喉の渇きを今まで以上に感じることがあったら、体内でブドウ糖の濃度が高くなっている、つまりは高血糖な状態に陥っていることがわかります。喉の渇きは、糖尿病において感じやすい症状です。早めに気づいて病院を受診することで、改善を図れるでしょう。
高血圧になる仕組み
2型糖尿病を患っている人の多くが、高血圧でも悩んでいます。糖尿病患者のおよそ半数が高血圧も併発しているという結果も出ています。インスリンの効きが悪くなることから身体はインスリンをしっかり分泌しようとしますが、インスリンは腎臓からナトリウムが排泄されるのを減少させてしまうため、血圧が高くなっていくのです。このように、糖尿病と高血圧は密接に関係しています。
高血圧は心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めるため、日頃から血糖値と同様血圧もコントロールしていく必要があります。
足指などで関節が硬くなる仕組み
糖尿病では、足や指などの関節に異常を感じることもあります。こむら返りや痺れなどの症状を感じることがあり、足の血管が細くなっていき、足の感覚が低下するという神経障害を引き起こします。
血管が細くなり血流が悪化し、足や指などで関節が硬くなるという症状が起こるのです。関節が硬くなることで身体を動かしにくくなり、不自由さを感じることもあるでしょう。また、糖尿病を発症すると徐々に感覚が鈍くなっていくため、足で傷ができていても気づかず悪化させてしまう恐れもあります。足病変といって、細菌が入った部分が壊疽を起こすこともあるため注意が必要です。足病変が悪化すると、足の切断を余儀なくされることもあります。
自分の足をいつまでも大切にするために、日頃からこまめに観察し、関節の状況などを確認しておきましょう。
アルツハイマー病リスクが高まる仕組み
糖尿病で恐れられているものといえば、三大合併症でしょう。三大合併症とは網膜症、神経障害、腎症の三つで、併発すると様々な症状を感じるようになります。この三大合併症と合わせて注意が必要なのが、アルツハイマー病です。糖尿病からアルツハイマー病になるリスクは健康な人と比べるとおよそ2倍にもなり、特に高齢者で糖尿病を発症している人に注意が必要です。
アルツハイマー病は、アミロイドβというタンパク質が脳内に溜まることで、神経細胞が死滅していく病気です。アミロイドβを取り除くためには、血管の正常な機能や脂質代謝が欠かせません。しかし、糖尿病では血管の流れが悪くなり、うまく機能しなくなります。その結果、糖尿病ではアルツハイマー病になりやすくなるのです。血糖コントロールをしっかり行なっていくことが大切です。
糖尿病の中でも、2型糖尿病に関しては低血糖やうつの状態からアルツハイマー病を招くこともあります。アルツハイマー病を予防していくためには、糖尿病の根本的治療を行ないながら、ストレスを溜めないことが大切です。
糖尿病から合併症になるメカニズムについて
糖尿病において恐ろしいとされている三大合併症について、その予防と改善を考えるため、それぞれのメカニズムを紹介しましょう。
網膜症の場合
ものを見る際に重要な役割を持つ網膜に発症する病気であり、糖尿病患者で患う人も多いです。網膜には光や色を感じる神経細胞がたくさん存在し、たくさんの血管が張りめぐらされています。
しかし、糖尿病で高血糖の状態が続くと、網膜にある細い血管が少しずつ傷つけられ、変形してしまうのです。網膜の血管で詰まりが起きると、酸素が行き渡らなくなり酸欠状態に陥ります。新しい血管を増やして、酸素不足を補おうとしますが、新しくできる血管は非常に脆いため、出血しやすいです。これを網膜症といいます。
網膜症により網膜にかさぶたのような膜ができると、これが原因で網膜剥離を引き起こすこともあるため注意が必要です。糖尿病を発症してからおよそ10年ほどで起きることが多い網膜症、病気が進行するまで症状に気づかないことが多いため、危険な病気です。早めの診察や治療を受けることで、失明のリスクも下げることができます。
網膜症にもいくつか種類があるため、病気についての知識を深めながら、糖尿病の改善を図っていきましょう。
腎症の場合
徐々に症状が進行する腎症は、早期発見と適切な治療が不可欠な合併症です。糖尿病によって高血糖の状態が続くと、全身の動脈硬化が進行し始めます。毛細血管の塊である腎症では血管が壊れていき、破損や詰まりを起こしてしまいます。その結果、老廃物をろ過することができなくなり、腎症を引き起こすとされています。しかし、未だにはっきりとした原因はわかっていません。
段階によって、現れる症状や治療法は異なります。初期の頃は尿検査をしないと腎症かどうかを判断することができず、その後段階を経ていく中でむくみや息切れ、食欲不振などの症状を感じるようになります。定期的に検査を受けて腎症になっていないかの確認を行ないながら、糖尿病の治療を続けていくことが重要です。病気が進行すると、進行を遅らせることができても良い状態に戻すことは難しいため、悪化しないようにしましょう。
神経障害の場合
糖尿病の合併症において最も多いとされているのが、神経障害です。糖尿病によって高血糖の状態が続くと、末梢神経の代謝に異常が生じます。すると、老廃物が溜まったり、血管が傷ついたりして血流悪化を招いてしまいます。このような流れにより、神経にも障害が起きるのです。
神経障害には、感覚異常や胃腸の異常、発汗、心臓や血圧にもトラブルが生じやすくなります。神経障害によって全身に様々なトラブルが起こりうることを把握し、日々の血糖コントロールを図っていきましょう。
身体の感覚が鈍くなり、傷ができていても気づかず症状が悪化することもあるため気をつけましょう。両足や手の先で痺れを感じる、便秘や下痢に悩まされている、下半身の筋肉の衰えを感じるといった不調を発見したら、早めに医師に相談しましょう。神経障害を発症しているかどうか判断し、適切な治療法を提案してくれます。特に足の傷については、敏感になっておきましょう。足病変といって、足の傷が悪化し切断しなければならないことがあります。様々なリスクがあることを知り、糖尿病の血糖コントロールをしっかり行なっていきましょう。
まとめ
糖尿病は、現代における生活習慣病の代表的存在でもあります。高齢者だけでなく若い世代でも発症する人が増えており、糖尿病からくる合併症にも注意が必要です。三大合併症と合わせて、アルツハイマー病のリスクも高まります。
糖尿病を発症するメカニズムを知り、その症状や注意点などを把握しておきましょう。早期発見によって、症状の進行を遅らせることができる病気です。気になる症状が見つかったら、気軽に医師に相談してみましょう。糖尿病について深く知ることで、日々予防と改善を図ることができるでしょう。