目次
糖尿病と飲み物に関する基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病・高血糖予防になる飲み物はなんですか?
A. 緑茶やコーヒー、ルイボスティーなどの飲み物は、糖尿病・高血糖予防に効果的だという研究結果があります。
糖尿病患者が飲み物に注意するべき理由とは
糖尿病治療のうえで一番大切なことは、血糖値コントロールです。食事療法においても、血糖値が上昇しやすい食品・飲み物は避けるように指導されるのが一般的でしょう。
しかし、コンビニや自動販売機で購入できる清涼飲料水などのジュースには、多くのブドウ糖が含まれています。食品とは違い、清涼飲料水には脂質やたんぱく質、食物繊維などの「糖の吸収を遅らせる成分」がほとんど入っていません。
そのため、糖尿病患者が清涼飲料水を飲み過ぎると、急激な血糖値の上昇に身体の機能がついていかず、昏睡状態に陥ってしまうこともあるので注意が必要です。
特に、糖尿病患者自身が喉の渇きを強く感じているときには、すでに高血糖状態になっている可能性があります。
そんなときに清涼飲料水などのジュースを摂取すると、水分によって一時的な喉の渇きは解消されますが、飲み物に含まれているブドウ糖がさらに血糖値を高くして「再び喉が渇く」という恐ろしい悪循環を招いてしまうのです。
これを繰り返して血糖値をどんどん上昇させていくと、血液中のケトン体が増えすぎて脱水症状や意識の低下につながることも少なくありません。
清涼飲料水は、糖尿病薬物療法の副作用である「低血糖症状」から回復させるためにも、利用するほど糖分が多い飲み物です。
日常的に血糖値が高くなりやすい糖尿病患者の場合には、食事だけでなく飲み物にも注意して、適切な血糖コントロールを行う必要があります。
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喉が渇くのは糖尿病の症状?
中学生や高校生が運動系の部活を終えた後、「やたら喉が渇くのですが、これは糖尿病ですか?」といった質問をしているのを時々見かけます。
糖尿病による高血糖状態で、異常に喉が渇く症状が出るのは確かです。
しかし、喉が渇くからといって必ずしも糖尿病であるとは限りません。
特に、部活などの激しい運動をした後や真夏の炎天下での活動時には、多くの汗をかくため、体内の水分が不足します。その結果として、脱水状態を防ぐために喉が渇くのは当然の身体の仕組みです。
糖尿病の症状でも多尿や口渇(喉の渇き)といった症状が出ますが、このときに体内で起こっている現象は、健康な人の脱水とは全く異なります。
糖尿病患者の場合、インスリンが正常に分泌されなかったり、インスリンの働きが弱まることによって血液中のブドウ糖が増えて「高血糖」になります。
血糖値が高くなりすぎると生命を維持するのが困難となるため、腎臓がブドウ糖を排出するためにせっせと働きはじめて「多尿」が起こるのです。
高血糖状態を改善するために尿をたくさん出すには、体内の水分も多く使われます。その結果「脱水」が起きて、喉の異常な渇きを感じるようになるメカニズムです。
コーヒーは糖尿病にいい飲み物って本当?
コーヒーはカフェインを多く含むため、飲み過ぎは身体に悪いといった話を聞くこともあります。
しかし、実はコーヒーには2型糖尿病の発症リスクを低下させるという研究結果が発表されているのです。
コーヒーに含まれている「クロロゲン酸」などのポリフェノールには、血糖値の急上昇を抑えて糖尿病を予防する働きがあることがわかっています。
1日あたり7杯以上のコーヒーを飲む人は、1日2杯以下の人と比較すると糖尿病の発症リスクが半分まで抑えられるという驚きの研究結果です。とはいっても、「さすがに1日7杯も飲まないよ」という人も少なくないでしょう。
もちろん、1日3~4杯でも糖尿病予防や高血糖抑制の効果は期待できるので安心してください。
2009年に、当時の国立国際医療研究センターが発表した研究結果によると、40~69歳の日本人5万人以上を対象とした「JPHC研究」では、ほとんどコーヒーを飲まない人に比べて「1日3~4杯程度飲む」と答えた人の糖尿病発症リスクが、男性で18%下がり、女性では38%も低下することが明らかとなりました。
しかし、不整脈持ちの方やカフェインが苦手な体質の方も多いでしょう。最近では、ノンカフェインのコーヒーも多く販売されるようになっています。
もちろん、ノンカフェインでもコーヒーに含まれるポリフェノールの含有量は変わらないため、血糖値の急上昇を抑える作用や、2型糖尿病を予防する効果が得らます。
また、コーヒーのポリフェノールは抗酸化作用が高いので、老化や病気の原因になる「活性酸素」を取り除く効果も期待できるのです。
高血糖抑制はもちろんのこと、肝臓がんや肝硬変、パーキンソン病の予防、心筋梗塞の生存率上昇にも効果的だといわれています。
糖尿病患者の場合には、砂糖を入れずにブラックで飲むのがベストですが、どうしても飲みにくいときには少量の砂糖やミルクを足しても構いません。
研究結果によると、1日3~5杯のコーヒーが推奨されていますが、苦手な方は1日1杯でも良いので、ぜひ生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
糖尿病患者が牛乳を飲むのは良くないのか
牛乳には脂肪分が含まれているため、糖尿病患者の飲み物としては適していないという情報を目にすることがあるでしょう。
しかし、牛乳は低GI値の代表格ともいわれているので、糖尿病の食事療法では積極的に摂取したい飲み物のひとつです。
GI値はグリセミック指数とも呼ばれ、炭水化物が分解されて糖に変わるまでのスピードを表した数字のことです。牛乳をはじめとした低GI値の食品や飲み物は、血糖値が急激に上昇するのを抑制してくれるため、糖尿病患者にとっては見逃せません。
特に、朝の食事を摂る際に牛乳を一緒に飲むと、パンやご飯の炭水化物による血糖値の急上昇を抑える効果があることがわかっています。
牛乳に含まれているたんぱく質は、主に「カゼイン」と「ホエイプロテイン」です。これらのたんぱく質は機能性成分で、炭水化物の吸収を穏やかにする効果が期待できるといわれています。
また、乳清たんぱく質(ホエイプロテイン)には、インスリン分泌を高めるGLP-1と呼ばれる消化管ホルモンの産生を促す作用もあると考えられているため、糖尿病治療中の方は朝食時にコップ1杯(200~250ml)の牛乳を摂取することをおすすめします。
カロリーゼロや糖分ゼロの飲み物は糖尿病でも飲んでいい?
ゼロカロリーのコーラや糖分ゼロの飲み物には、アスパルテームやソルビトール、スクラローなどの人工甘味料が使用されていることがほとんどです。
人工甘味料は、通常の砂糖やブドウ糖とは異なり「血糖値」に直接影響を与えません。
そのため、カロリーゼロや糖分ゼロと表示されている飲み物については、糖尿病患者が飲んでも問題がないといえるでしょう。
糖尿病治療中でも、どうしても甘いものが飲みたくなるときがあるものですが、そんなときには人工甘味料で甘味をつけたジュースや炭酸飲料を選ぶようにすると安心です。
しかし、ゼロカロリー・ゼロシュガーだからといって飲み過ぎには注意しましょう。
食品や飲み物には、人工甘味料の他にもさまざまな成分が含まれています。
たんぱく質や脂質、塩分などの過剰摂取にならないよう、栄養管理に気をつけながら適量を楽しむのが正しい飲み方です。
野菜ジュースや果物ジュースは糖尿病を悪化させる?
糖尿病の食事療法を行っている中で、野菜不足や果物不足をジュースで補おうとする患者さんは多いものです。
しかし、野菜ジュースや果物ジュースには多くの糖質が含まれているものがあり、糖尿病を悪化させてしまう可能性も否定できません。
特にフルーツジュースは果物の糖質を濃縮した飲み物だといっても過言ではないでしょう。
濃縮還元のオレンジジュースの場合、よく見る200ml紙パックのものでは1パックあたり糖質を20gも摂取することになってしまうので、糖尿病の方は注意が必要です。20gの糖質は、おにぎりを約半分程度食べたときに摂取する糖質量と同等です。
サラサラとした果物ジュースは「おにぎり」とは異なり、一気に飲み干してしまうことも珍しくありません。
そのため、急激な血糖値上昇につながる可能性が非常に高くなり、糖尿病患者にとっては危険な飲み物のひとつといわれています。
また、野菜ジュースではかぼちゃ、にんじん、とうもろこしを使用しているものは糖質が多い傾向があるため気をつけましょう。
ジュースただし、200ml程度の野菜ジュースを食前の飲み物として取り入れることで、食後血糖値の上昇を抑える効果が得られるという研究結果も報告されています。
糖尿病の食事療法では、ご飯などの炭水化物を食べる前に野菜サラダを摂取するのが推奨されていますが、カゴメ株式会社は「野菜ジュースには、食前の野菜摂取と同様の高血糖抑制効果があることを確認した」と発表したのです。
野菜ジュースを食後高血糖予防のために飲む場合は、コップ1杯(200ml)の野菜ジュースを食事の30分程度前に摂取するのがおすすめです。
しかし、野菜ジュースや果物ジュースは濃縮や加熱などのさまざまな加工がされているため、食品が本来持っている栄養素を全て摂れるわけではありません。
ジュースを飲んだからといって、野菜や果物を食べた気になってはいけないのです。
特に、糖尿病の食事療法においては、糖の吸収を穏やかにする作用がある「食物繊維」の摂取が重視されています。
バランスの良い食生活を基本として、サポート役として野菜ジュースを取り入れる程度にとどめておきましょう。
糖尿病患者の水分補給にはお茶がおすすめ
糖尿病患者の水分補給には、やはり水かお茶が一番でしょう。一口にお茶といってもさまざまな種類がありますが、中でも特におすすめなのは緑茶です。
緑茶には、カテキンと呼ばれるタンニンの一種が含まれています。カテキンは、お茶の渋みや苦みを生み出す成分で、抗酸化作用、抗血栓作用、抗炎症作用など「血管を守る効果」があるとされています。
実際に、糖尿病患者が高濃度の茶カテキンを長期摂取したところ、血糖値やHbA1cの低下が認められました。高濃度茶カテキンは、いわゆる「トクホ(特定保健用食品)」として販売されている緑茶が該当します。
しかし、通常の緑茶にもカテキンは含まれているため、継続的に飲み続けることで血糖コントロールの手助けとなるでしょう。
トクホの飲み物の中には、糖尿病治療で服用している薬によって「相互作用」で血糖値が下がりすぎてしまうことがあるため注意が必要です。
特に、大豆を麹で発酵させた「豆鼓エキス」、グァバ茶から抽出される「グァバポリフェノール」を含んだ飲み物は、α-グルコシダーゼ阻害薬と同様の作用があります。
α-グルコシダーゼ阻害薬を飲んでいる方は、必ず医師に相談してからトクホ飲料を取り入れるようにしましょう。
糖尿病患者が豆乳を飲むとどんな効果がある?
豆乳を食事の際に一緒に飲むと、糖尿病の食後高血糖を抑制する効果があるといわれています。
また、豆乳をはじめとした豆類の食品や飲料には、「セカンドミール効果」も期待されています。
セカンドミール効果は、GI値の提唱者であるトロント大学のジェンキンス博士が1982年に発表した概念です。最初の食事(ファーストミール)で血糖値の上昇を抑えると、次に摂る食事(セカンドミール)にも影響を及ぼすという考え方をセカンドミール効果と定義しています。
朝食時に豆乳を飲んだ場合、飲まなかったときと比較して食後30分の血糖値が低くなり、昼食後の血糖値抑制にもつながったという実験結果も発表されています。
ただし、セカンドミール効果については現在も研究中で、全ての糖尿病患者に効果があるとはいえないのが現状です。
牛乳と豆乳を比較すると、たんぱく質や脂質の量はさほど変わりません。
しかし、豆乳にはビタミンKや鉄分、マグネシウム、ビタミンB6などが多く含まれているため、栄養バランスを整える意味でも食生活に取り入れる価値はあるでしょう。
ルイボスティーで糖尿病を予防できる?
糖尿病や高血糖を予防する飲み物は、前述した緑茶、牛乳、豆乳はもちろんのこと、その他にはルイボスティーがあげられます。
ルイボスティーは、ノンカフェインで身体にも優しく、美容や健康にも良いことで知られていますが、実は糖尿病予防にも効果的だといわれているのです。
ルイボスティールイボスティーに含まれる「アスパラチン」と呼ばれる成分は、強い抗酸化作用を持っています。
糖尿病は、高カロリーの食事や運動不足、遺伝などが原因とされていますが、活性酸素が糖尿病のリスクを高めているという考え方もあり、注目されています。
特に、発酵処理をしていないグリーンルイボスティーは、アスパラチンが多く含まれているのでおすすめです。
食事の際の飲み物として取り入れると、抗酸化作用によって血糖値の上昇を抑えてくれます。
また、ルイボスティーにはインスリンの分泌に欠かすことができない「亜鉛」も多く含まれているため、糖尿病予防のために選ぶ飲み物としては最適でしょう。
飲み物を正しく選択して糖尿病を治療しよう
糖尿病は、食事療法、運動療法、薬物療法を上手く組み合わせて治療に取り組むのが基本です。医師や看護師、薬剤師の指示のもと適切な糖尿病治療を行えば、合併症などのリスクを低下させることも十分可能です。
しかし、糖尿病で高血糖状態が続くと、ブドウ糖排出のために多尿になってしまう傾向があります。体内の水分が尿として使われるため、異常に喉が渇くことも多いでしょう。
缶やペットボトルの清涼飲料水は、自動販売機やコンビニで手軽に購入できる時代ですが、甘いジュースには多くの糖分(ブドウ糖)が含まれています。
どんなに厳しい食事療法を行っていても、たった1本の清涼飲料水だけで血糖コントロールが乱されてしまうことも少なくありません。
糖尿病治療を行っている方が水分補給をする際には、水かお茶を基本としましょう。
どうしても甘みのある飲み物が欲しくなってしまった場合は、人工甘味料を使用したカロリー・糖類ゼロの飲み物を選ぶようにしてください。
また、最近よく見かけるようになった「フレーバーウォーター」と呼ばれる飲み物にも糖類が多く含まれています。フレーバーウォーターとは、見た目は透明の水なのに、みかん味やヨーグルト味が楽しめるお水のことです。
糖尿病患者が水分補給のためにフレーバーウォーターを飲み続けていると、血糖値が上昇して症状を悪化させる可能性もありますので、十分注意しましょう。
まとめ
糖尿病患者が治療を行う際に重視すべきなのは、血糖コントロールです。
良好な血糖コントロールのために、食事療法や運動療法、薬物療法が行われます。しかし、どんなに食事管理や運動を一生懸命に頑張っても、喉が渇いたときに選ぶ飲み物を間違えると、せっかくの治療が水の泡になってしまうこともあるのです。
糖尿病患者や糖尿病を予防したいと考えている方の場合には、水やお茶を水分補給のベースとして、糖分が多く含まれる清涼飲料水をできるだけ飲まないように心がけましょう。