目次
糖尿病性昏睡に関する基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病性昏睡とは?
A. いきなり発症することが多い状態で、早めの治療が必要です。原因や症状を知り、日頃から予防していきましょう。
糖尿病性昏睡とは?
糖尿病は、症状が進行するにつれて昏睡のリスクも高まります。糖尿病性昏睡には主に2つあり、1型糖尿病か2型糖尿病かによって起こりやすい種類があります。さっそく、それぞれの特徴について見てみましょう。
糖尿病ケトアシドーシス
高血糖な状態が続き急性代謝失調を起こすことで、極度にインスリンが減ってしまう状態です。インスリンの分泌を抑えようとするアドレナリンやコルチゾールなどが増えて、ある日突然発症するという特徴があります。
インスリンが不足すると、体内ではブドウ糖をきちんと代謝できなくなります。高血糖が続くと、このような状況が続いてしまいます。このとき身体は、脂肪を分解してエネルギーを作ろうとするのです。
このエネルギーを作り出すときに、副産物として生成されるのがケトン体です。血液中にケトン体が増えると血液は酸欠状態になり、身体にも異常があらわれます。
糖尿病ケトアシドーシスは、1型糖尿病で発症するケースが多く、ペットボトル症候群と呼ばれることもあります。若い人の間で発症することが多く、高血糖以外に嘔吐や腹痛などの症状を感じやすいです。グルコースが尿の中に多く排出され、浸透圧利尿という状態を招く恐れもあります。脱水状態を引き起こす恐れがあるため、注意が必要です。
糖尿病ケトアシドーシスを発症していると、吐いた息が果物のような香りを放ち、まれに脳浮腫を起こすこともあります。糖尿病ケトアシドーシスの症状があらわれていたら、すぐに病院に行きましょう。
非ケトン性高浸透圧性昏睡
非ケトン性高浸透圧性昏睡は、2型糖尿病の人に発症しやすいという特徴があります。高血糖から脱水状態を引き起こし、危険な合併症を招く恐れのある状態です。
昏睡になるまで気づかないというケースは少なくなり、早めの治療が受けられるようになりました。非ケトン性高浸透圧性昏睡になると、意識障害やけいれんなどの症状を感じます。
非ケトン性高浸透圧性昏睡は、高齢者に多いという特徴もあります。高齢になると、水分の摂取量が減るからです。喉の渇きを感じにくくなるため、自然と水分補給の量も減ってしまいます。
さらに、糖尿病による神経障害も生じていると、水分を摂取する機会がますます減り、体内は水分不足に陥るのです。
糖尿病性昏睡の症状
糖尿病性昏睡には、糖尿病ケトアシドーシスと非ケトン性高浸透圧性昏睡の2種類がありました。
ここでは、それぞれの昏睡に関して、より詳しく症状を紹介しましょう。どのような症状が現れるか知っておくことで、早く治療に取り掛かることができます。
糖尿病ケトアシドーシスの症状一覧
糖尿病ケトアシドーシスにより感じる症状は、いくつか存在します。順に確認して、同じような症状を自身の身体で感じたら、かかりつけ医に相談すると良いでしょう。
- 腹痛
- 喉の渇きをよく感じ、たくさん水分を摂取してしまう
- ひどく疲れやすい
- 吐き気や嘔吐
- 腹痛
- トイレの回数が増える
- 体重が減る
- 呼吸困難や意識障害(かなり症状が進んだ場合)
糖尿病でよく言われる症状と重なっている部分も多々あり、悪化すると呼吸困難や意識消失障害を引き起こす場合もあるので注意しましょう。上記のような症状が自身の身体であらわれていないか、日頃から観察しておくことが大切です。
非ケトン性高浸透圧性昏睡の症状一覧
非ケトン性高浸透圧性昏睡では、どのような症状が現れるのでしょうか?細かい部分もチェックして、症状が悪化しないようにしましょう。以下の症状を参考に、非ケトン性高浸透圧性昏睡になっていないか確認してみましょう。
- 意識障害
- けいれん
- 皮膚、粘膜の乾燥
- 頻脈
- 尿の量が減る
- 血圧の低下
糖尿病性昏睡の原因について
2種類ある糖尿病性昏睡、なぜ発症するのかという原因についても確認しておきましょう。原因を知っておくことで、発症を防ぐことができます。糖尿病と上手に付き合っていくためにも、昏睡状態に陥らないようにしましょう。
糖尿病ケトアシドーシス
インスリンをほとんど分泌することができない状態の1型糖尿病の人に起こりやすい糖尿病ケトアシドーシス、その原因は「インスリンの使用の中止」と「病気によって身体へかかっているストレス」が挙げられます。
糖尿病を発症して最初の頃に現れることが多いのが、糖尿病ケトアシドーシスです。糖尿病になると、身体はいつも以上にエネルギーを必要とします。
たくさんのブドウ糖を全身に送り込むため、インスリンも多く必要となるのです。インスリンが不足することで発症するリスクが高まってしまいます。
糖尿病ケトアシドーシスを招くきっかけとなる病気も、いくつかあります。
- 感染症
- 膵炎
- 脳卒中
- 心臓発作
普段何気なく過ごしている中で、発症する可能性のある病気も多いです。糖尿病から他の病気を招かないためにも、日頃から自身の体調の変化には敏感になっておきましょう。
糖尿病ケトアシドーシスであるかどうかは、血液検査を行なうことによってわかります。血液検査の際に、ケトン体と酸の値を測定し、血糖値以外の点も確認します。
その他に、感染症の有無や尿検査、心電図検査、胸部X線検査などを行なって、詳しく調べていく場合が多いです。
非ケトン性高浸透圧性昏睡
非ケトン性高浸透圧性昏睡は、様々なことが原因して発症します。原因の詳細は、以下を参考にしてみてください。
- ウイルスや細菌などに感染している
- 脳卒中など、脳の血管に疾患がある
- 利尿剤など、高血糖になりやすい薬を処方している
- 手術の後である
- 心臓に疾患が起きている
糖尿病を患っているすべての人に発症リスクがある非ケトン性高浸透圧性昏睡ですが、高齢になるとかかる確率はさらに高まります。糖尿病を患っている高齢者で、上記のような症状を感じている人は非ケトン性高浸透圧性昏睡の可能性があります。では、なぜ高齢者に発症することが多いのでしょうか?
高齢者の中でも2型糖尿病を患っている人に多い非ケトン性高浸透圧性昏睡、その原因としてはいかが挙げられます。
2型糖尿病の高齢者が非ケトン性高浸透圧性昏睡を発症しやすい原因
- 加齢により水分の摂取量が減る
- 身体機能の低下によって高血糖が続く
非ケトン性高浸透圧性昏睡は高齢者で発症する人が多いですが、日々の生活の中で気をつけて観察しておくことが大切です。早期に発見できると、そのまま治療に入ることができます。少しでも身体への負担を和らげ、安心して生活するためにも、日々のチェックは怠らないようにしましょう。
昏睡の治療法とは?
糖尿病において昏睡状態を招くようなリスクが生じたとき、具体的にはどのような治療が行なわれるのでしょうか?ここでは、昏睡の治療法について解説します。糖尿病ケトアシドーシスと非ケトン性高浸透圧性昏睡の2つに分けて、治療法を紹介しましょう。
糖尿病ケトアシドーシスの治療法とは
糖尿病ケトアシドーシスを発症している場合、すぐに病院での治療を受ける必要があります。入院して、点滴とインスリン注射を行ないます。生命の危険を伴う合併症ともされているため、症状を感じたらすぐに病院に行くことが重要です。
その他にも、具体的には以下の治療法が用いられます。
- 低カリウム血症が生じている場合は、その治療
- まれに炭酸水素ナトリウムの注射
状況に応じてどの治療が最適かを医師が見極め、それに沿って進めていきます。
非ケトン性高浸透圧性昏睡の治療法とは
状態がかなり進行した脱水症状から引き起こされる非ケトン性高浸透圧性昏睡の場合、治療は点滴によって水分を補うことから始めます。
非ケトン性高浸透圧性昏睡を発症して脱水が進むと、高血糖状態に陥りやすくなります。そのため、水分の補給と合わせて血糖値のコントロールも必要となります。
また、高齢者の場合は、糖尿病以外の持病を抱えていることもあるため、より慎重な治療が求められます。
点滴から脱水症状を改善することができたら、徐々に身体は回復していくでしょう。この治療の経過に関しても、高齢者は注意が必要です。
脱水によって血流が悪くなることで、合併症を引き起こすリスクが高まるからです。脳卒中や心筋梗塞といった合併症にかかりやすくなります。
非ケトン性高浸透圧性昏睡の症状が改善されても、合併症になっていないかはしっかりと様子を見ておくことが大切です。
糖尿病性昏睡を予防するためにできること
糖尿病性昏睡は、糖尿病を患っている人すべてにおいてリスクのある状態です。今では、昏睡状態になってしまったという最終段階になる前に、治療に入れるようになりました。
しかし、できる限りの早期発見につなげるためにも、どのような理由で昏睡になるのかを知り、対策を取っていきましょう。
ここでは、糖尿病性昏睡を予防するためにできることをご紹介します。
インスリンをしっかり補うこと
糖尿病は、インスリンの分泌がうまくできなくなることで発症する病気です。このインスリンが極端に不足すると昏睡を招きます。
そこで、日々インスリンはしっかり補うようにしましょう。うっかり忘れてしまっただけで、糖尿病性昏睡を招いてしまう恐れもあります。インスリン注射を忘れないようにし、血糖値の状況もチェックしておくと安心でしょう。
血糖コントロールを適切に行なう
糖尿病性昏睡を予防するためには、日々の血糖コントロールも欠かせません。血糖値を安定させる治療薬の服用、食事療法や運動療法で改善を図っていきましょう。血糖値を、毎日決まった時間に計測することも大切です。
食事療法においては、急な血糖値上昇を予防するようにしましょう。低血糖によって昏睡状態を招く場合もあるため、血糖値を正常にコントロールすることが大切です。
治療を続けながら定期的に病院を受診しよう
糖尿病性昏睡を防ぐためには、日々の糖尿病対策が必要です。ひとりひとりの状況に合った治療法を行ないながら、定期的に病院を受診するよう心がけましょう。信頼できる、かかりつけ医を見つけておくと安心です。
最近では、糖尿病内科といった糖尿病を専門に診てくれる病院も増えており、効率よく治療を進められるでしょう。医師のアドバイスを聞きながら、自身にできることを始めてみましょう。
意識して身体を動かし、肥満を防ごう
糖尿病は、肥満体型の人がかかりやすい病気です。糖尿病対策において重要な運動療法、昏睡を予防するためにも日頃から身体を動かしておきましょう。日常生活の中で、少し意識して動くようにするだけでも血糖値は変わります。
エレベーターではなく階段を使う、駐車場では遠くに止めて歩くようにする、ひと駅先まで歩いてみるなど、生活の中で身体を動かすようにすると続けやすいです。身体を動かすと、気分もすっきりするのでストレス発散にもおすすめです。ストレスも糖尿病を悪化させる要因になるため、対策をしていく中で適度に発散しておきましょう。
糖尿病性昏睡を予防するためには、基本的な糖尿病治療に加え、日々の生活の中で意識することが大切です。
まとめ
糖尿病性昏睡は、糖尿病ケトアシドーシスと非ケトン性高浸透圧性昏睡の2種類があります。
1型糖尿病でかかりやすいのが糖尿病ケトアシドーシス、2型糖尿病でかかりやすいのが非ケトン性高浸透圧性昏睡です。
最初のうちは症状にあまり気づかないというケースもありますが、血糖値の様子を確認し、定期的に病院を受診しておくことが大切です。
原因についても把握しておくと、なぜ不調が生じたかを検討することができるでしょう。主な治療法としては、水分補給とインスリンの注射が挙げられます。
昏睡状態になってしまわないよう、日々体調に気をつけながら糖尿病の対策を行ないましょう。コツコツと血糖値のコントロールを続けることは、糖尿病性昏睡の予防にもつながります。
糖尿病から様々な病気を招かないよう、日々の生活に気をつけて過ごしてみましょう。