目次
糖尿病と玄米に関する基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病には玄米が良いと聞きますが、その理由はなんですか?
A. 玄米には、精製された白米と比較してもかなり多くの食物繊維が含まれています。そのため、糖の吸収を穏やかにして食後血糖値の急激な上昇を抑制する効果が期待されています。また、外皮や内皮、胚芽がしっかりと残っているので、ビタミンB群やミネラルを効率よく摂取できるのも嬉しいポイントでしょう。
糖尿病に玄米ご飯が良い理由
糖尿病治療では、食事療法や運動療法を取り入れながら、良好な血糖コントロールを保つことが何よりも大切です。特に、日本人の多くが主食としている白米(ご飯)は、食後血糖値を大きく上昇させる高GI値食品のため、糖尿病患者さんの場合には摂取量や食べ方に注意が必要だといわれています。
これに対し、精製されていない玄米は白米よりGI値が低く、食後の血糖値が急激に上昇しにくいことから「糖尿病に良い主食」として注目されているのです。
玄米が糖尿病患者さんに良い理由は、その食物繊維の含有量にあります。食物繊維には、糖の吸収を抑制して血糖上昇を穏やかにする働きがあり、糖尿病予防や血糖コントロールの観点からも積極的に摂取することが推奨されています。
精製された白米の場合には、本来お米についている外皮や内皮、胚芽といった食物繊維が多く含まれる部位が取り除かれており、糖質と食物繊維のバランスが非常に悪くなっているのです。さらに、精米される過程でビタミンやミネラルなども減少し、栄養価が低くなってしまうことも否定できません。
玄米の場合には、外皮や内皮、胚芽がそのまま摂取できるため、食物繊維をはじめ、ビタミンB群、マグネシウム、ミネラルを効率よく体内に摂り入れることが可能です。
食物繊維を豊富に含む玄米は、白米より食後の血糖上昇が穏やかになり、糖尿病患者さんの高血糖を防ぐ効果が期待されています。
糖尿病だからといって、炭水化物(糖質)を含む主食を完全にカットするのは、精神的にも肉体的にも大きなストレスがかかります。少しでも血糖上昇を抑える食品を選び、上手に献立に組み込むことが、無理なく糖尿病食事療法を継続する秘訣となるでしょう。
また、玄米に含まれる「ガンマ(γ)-オリザノール」という成分には、膵臓のβ細胞の減少を抑えてインスリン分泌を促進し、血糖値を下げる効果があるといった研究結果も発表されています。
この研究は、日本の琉球大学大学院医学研究科が、徳島大学、大阪大学と共同で行ったもので、玄米の血糖値低下効果、体重減少効果、血管壁の改善などが明らかとなりました。
糖尿病患者さんの主食を、白米から玄米に変えることによって良好な血糖コントロールを実現し、インスリン抵抗性に大きく関わっている肥満や内臓脂肪の改善にもつながるといいます。また、玄米に含まれているガンマ(γ)-オリザノールが血管の健康を維持し、糖尿病合併症のひとつである動脈硬化の予防にも役立つといった点も、玄米が注目されているポイントのひとつでしょう。
玄米なら糖尿病でも量をたくさん食べて良いの?
「血糖値を上げにくい玄米なら、糖尿病でもおかわりしても良い」「玄米は身体に良いから、量をたくさん食べても構わない」と思っている患者さんも多いでしょう。
しかし、これは大きな間違いです。実は、玄米でも精白米でも、糖質量やカロリーには大差がありません。玄米だからといって、たくさん食べて良いわけではないのです。
お茶碗1杯分(150g)で換算すると、玄米では248kcal、糖質は51.3gとなっています。それに対し、白米は252kcal、糖質は55.2gです。比較してみると、若干玄米の方が低カロリーで低糖質ですが、ほとんど変わらないことがわかるでしょう。
糖尿病患者さんが食事療法を行う際には、炭水化物(糖質)を多く含む「主食」の摂取量をしっかりとコントロールすることが大切です。日本糖尿病学会が発行している「糖尿病食事療法のための食品交換表」では、白米・玄米ともに「ご飯(炭水化物)」に分類されます。
1日の摂取目安カロリーが1600kcalの患者さんの場合、1食あたりのご飯(炭水化物)は3単位までです。白米や玄米なら50g(80kcal)が1単位となるため、150gを目安に摂取しましょう。150gのご飯は、お茶碗1杯分程度です。
玄米は、食物繊維を豊富に含むため食後血糖値の急激な上昇を抑えることができるのは事実です。しかし、血糖値の上昇を穏やかにする食品だからと油断して食べ過ぎてしまうと、糖質の過剰摂取やカロリーオーバーにつながってしまうので注意してください。
白米と玄米を半々で食べても糖尿病に効果はある?
糖尿病患者さんのなかには、「玄米を食べるべき」とわかっていても、その口あたりや食感、味に抵抗がある方も少なくないでしょう。
玄米には独特の香りや外皮の硬さがあるため、これまで白米を食べ慣れていた人にとってはあまり美味しく感じられないことも多いといいます。特に、ご飯を完全に白米から玄米に切り替えると、なかなか慣れないものです。
その場合には、白米と玄米の割合を半分ずつにすることをおすすめします。もちろん、玄米100%のご飯と比較すれば食物繊維量や栄養価は落ちてしまいますが、精白米だけを食べたときより食後血糖値の上昇を抑制することは可能です。
アメリカで行われた研究調査によると、1日の炭水化物摂取量の3分の1に相当する白米を、同じ量の玄米に変更するだけでも糖尿病発症リスクや合併症リスクを16%ほど低下させることができるといいます。
また、玄米に含まれる「ガンマ(γ)-オリザノール」には、前述した通り、膵臓からのインスリン分泌を促して血糖値を下げる効果が期待されています。
さらに、この成分が脳の満腹中枢に作用して食欲を抑える作用があることも判明しているのです。
糖尿病患者さんの多くは、「食べることが好き」「こってりした食べ物を好む」といった傾向があり、肥満や内臓脂肪の蓄積によってインスリン抵抗性が悪化しているケースも少なくありません。
このような人でも玄米を食生活に取り入れると、玄米中のガンマ(γ)-オリザノールが脳中枢に働きかけ、食の好みに変化を与えて食べ過ぎを予防してくれます。
急に白米をすべて玄米に切り替えるのは困難かもしれませんが、割合を少しずつ増やしながら玄米ご飯を楽しんでみてはいかがでしょうか。
糖尿病治療に玄米フレークは良い?悪い?
糖尿病患者さんの血糖コントロールに玄米が良いといったお話をしてきましたが、もっと手軽に玄米を摂取する方法があります。それが、シリアル類の玄米フレークです。
最近では一般的なスーパーでも取り扱っており、簡単に入手することができるでしょう。お米のように炊飯する手間がかからないため、忙しい朝の朝食や糖質制限ダイエットの主食としても人気が高まっています。
玄米フレークは1食分が約40gで、カロリーは150kcal、糖質は33.7gです。お茶碗1杯分(150g)の玄米ご飯の場合にはカロリーが248kcal、糖質は51.3gとなっているため、かなり低カロリー・低糖質に感じるでしょう。
もちろん、糖尿病患者さんが玄米フレークを食べても問題はありません。しかし、ひとつだけ落とし穴があるのです。それは、1食分40gでは満足感を得られず、思わず食べ過ぎてしまうことです。
特に、「朝は忙しいから」と早食いをすると、かなりの物足りなさを感じます。どちらかといえば、食事というよりお菓子を食べているような感覚かもしれません。
うっかり倍量の80gを摂取してしまうと、カロリーはそれだけで300kcal、糖質は67.4gにもなります。せっかく身体のことを考えて玄米フレークを食生活に取り入れても、食べ過ぎては意味がありません。
玄米フレークには食物繊維が多く含まれているので、その歯ごたえを楽しみながらゆっくりと時間をかけて噛むようにしましょう。こうすることで、少量でもお腹がしっかりと膨れるはずです。
玄米茶は糖尿病にどんな効果がある?
糖尿病治療においては、患者さん自身の良好な血糖コントロールが非常に重要です。高血糖状態が続くと、網膜症や神経障害、腎症などのあらゆる糖尿病合併症を引き起こす恐れがあります。
そんな糖尿病患者さんの血糖値対策として、テレビ番組やネットでも注目されているのが「玄米茶」です。玄米は、主食として摂取しても食後血糖値の急激な上昇を抑える効果がありますが、お茶を飲むことでもガンマ(γ)-オリザノールを摂ることが可能です。
前述した通り、ガンマ(γ)-オリザノールには膵臓からのインスリン分泌を促進して、血糖値を下げる作用が確認されています。
さらに、玄米茶の多くは緑茶と玄米をブレンドして作られているため、緑茶のカテキンも一緒に摂取できるのが嬉しいポイントです。緑茶に含まれるカテキンには強い抗酸化作用があり、インスリン抵抗性の改善につながるといった報告もあがっています。
糖尿病患者さんが玄米茶を飲む際には、食前のタイミングがおすすめです。ガンマ(γ)-オリザノールの作用によって、食後の血糖上昇を抑制し、食べ過ぎを予防する効果が期待できるでしょう。
糖尿病には玄米と発芽玄米どちらが良いか?
糖尿病患者さんの主食には、精製された白米より玄米が適しているといわれていますが、さらに栄養価が高いお米として「発芽玄米」があります。
発芽玄米は、玄米を水に浸けて少しだけ発芽させたお米のことです。発芽することによって、玄米内の酵素が活性化し、新芽の発育に必要な栄養素が増えるといった特徴があります。抗酸化成分やアミノ酪酸(GABA)が、白米や通常の玄米と比較するとかなり豊富に含まれているのもポイントです。
これらの成分は、糖尿病患者さんの脳にも働きかけて認知症や脳梗塞、脳卒中などのリスクを下げる可能性があると判明しました。
また、発芽玄米は糖尿病患者さんの神経障害や腎症を予防する効果が期待されており、現在も研究や調査が活発に行われています。
実際に、糖尿病の入院食として発芽玄米を取り入れたところ、血糖コントロールが明らかに改善し、インスリン注射の単位数を減らすことにもつながった例も少なくありません。
発芽玄米は、一度水に浸けてあるため通常の玄米より柔らかく、高齢者でも食べやすいのも嬉しい点です。白米と同様に炊飯することも可能なので、いつものご飯にブレンドしてみてはいかがでしょうか。
玄米が苦手な糖尿病患者には「もち米玄米」がおすすめ
糖尿病患者さんの健康維持に貢献してくれる玄米ですが、実際にはあまり好んで摂取する人は少ないといいます。これは、玄米の食感(硬さ)や独特な匂い、えぐみが原因です。
もちろん、「玄米のプチプチとした食感と香りが大好き」という人も存在します。しかし、多くの人は食べ慣れた白米を選ぶ傾向にあるようです。
そんな方におすすめしたいのが「もち米玄米」です。もち米玄米は、その名の通りもち米の玄米のことで、赤飯やおこわ、お餅などに使われる粘り気のあるお米です。
通常の玄米ともち米の長所を兼ね備えており、多くの人が苦手意識を持っている玄米特有のえぐみや匂いがほとんどありません。また、玄米のプチプチとした食感を楽しみながらも、中はもっちりしているため食べ応えもあるでしょう。
また、聖マリアンナ医科大学代謝・内分泌内科が行った研究調査では、もち米玄米が糖尿病患者さんの血糖コントロールを改善するといった報告もされています。
この研究は、2型糖尿病患者37人を対象に行われ、「もち米玄米」を8週間にわたって摂取してもらったといいます。その結果、24時間の平均血糖値が改善されることがわかりました。
白米を摂取するグループでは、平均血糖値が144.2mg/dLだったのに対し、もち米玄米を摂取したグループでは126mg/dLまで低下したのです。
さらに、白米と玄米、もち米玄米の3種類のうち「一番おいしいご飯はどれですか」といった調査を行ったところ、もち米玄米がトップとなりました。
「糖尿病には玄米が良いことはわかっているが、ちょっと食べにくい」と感じていた患者さんは、ぜひもち米玄米を取り入れてみてください。その美味しさに、無理なく健康食を続けることができるはずですよ。
白米を玄米へ置き換えすることで糖尿病リスクを低下
精製された白米を主食とする日本人には、糖尿病が年々増加しています。現在では、約1000万人が糖尿病と診断され、境界型と呼ばれる糖尿病予備軍も含めると約2000万人が糖尿病で悩まされていることになるのです。
成人の4人に1人は糖尿病になるといわれている現代において、糖尿病は決して他人事ではありません。健康なうちから、少しでも発症リスクを低下させることが大切です。
玄米は、糖尿病で治療を行っている患者さんに良いといったお話をしてきましたが、「まだ糖尿病を発症していない人のリスクを大幅に低下させる」といった面でも注目されています。
普段の食事の主食である白米のうち、3割程度を玄米に置き換えすることで2型糖尿病のリスクが16%も減少するとの研究結果を、アメリカのハーバード公衆衛生大学院が発表しました。
この研究では、女性およそ16万人と男性4万人を対象に、白米と玄米の摂取と2型糖尿病発症の関連を追跡調査したのです。その結果、玄米をよく食べるグループでは糖尿病の発症リスクが大きく低下していることがわかったといいます。
さらに、その他の食事でも全粒粉入りのパンやシリアルを摂取するようにすると、2型糖尿病になる危険性は36%も下がると判明しました。
玄米に含まれている食物繊維や抗酸化成分によって、インスリン分泌を正常化したり、肥満や内臓脂肪の改善、血管壁のダメージを抑えることで糖尿病の発症リスクを大幅に低下できたのだと考えられています。
まとめ
玄米は糖尿病の悪化予防や血糖コントロールのためだけでなく、糖尿病自体の予防にも効果的な炭水化物です。いまや糖尿病は、日本人の4人に1人は発症するといわれているメジャーな病気であり、決して他人事ではありません。
「日本人なら、やっぱり白米だよね」と主張する人も多いですが、精製された白米は食後の血糖値を急激に上昇させる食べ物のひとつです。特に、1日3食必ずご飯を食べている人の場合には、インスリンを分泌する膵臓へ大きな負担をかけてしまう恐れがあります。
すでに糖尿病だと診断されている患者さんもそうでない方も、この先も健康的に暮らしていくために、食生活へ玄米を取り入れてみてはいかがでしょうか。