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糖尿病とめまいの意外な関係とは

糖尿病とめまいに関する基礎知識

弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病とめまいの意外な関係とは?
A. そのめまいは単なるめまい?いえ、糖尿病が原因かもしれません。

この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得している自然療法専門医。
スコッツ先生のプロフィール
https://gluco-help.com/media/lose-weight-diabetes27/

糖尿病とめまい

めまいに苦しむ人は少なくありません。
めまいには吐き気や嘔吐が伴う場合も少なくなく、そんな人にとってめまいは、とても不快で深刻な症状の1つです。
めまいの経験はないという人でも、立ちくらみを経験したことのある人は多いと思います。
一瞬とはいえ、なんともいえない不快感がありますよね。

ところが、医学界ではめまいはあまり重要視されず、めまいを克服するための積極的な研究や対策もほとんど行われてきませんでした。
その理由の1つとして、めまいは耳の病気だから放っておいても命を落とすことはないと、多くの医師が軽く考えてきたことが挙げられるようです。
皆さんの中にも、一瞬めまいがしても「あ、三半規管が…」なんていってやり過ごす人もいるのではないでしょうか。

しかし、めまいは命に関わる深刻な病気と密接に関係している場合があります。
ここではその1つ、糖尿病との関係についてお話しします。

めまいの種類

めまいには、大きく分けて以下の2つのタイプがあります。

回転性めまい

自分自身がグルグル回っているように感じるタイプです。
大半の人は水平方向に回転しているように感じますが、中にはスーッと下がって行くように感じる人もいて、これは垂直方向への回転性めまいと考えられています。

非回転性めまい

フラフラする、グラグラするといったタイプです。

専門的にはこれら2つのタイプのめまいの内、回転性めまいを「めまい」、非回転性めまいを「めまい感」と呼んで区別しています。

表1は2つのタイプのめまいの特徴をまとめたものです。

表1 めまいのタイプ別特徴

起こり方 持続期間
回転性めまい 突発性 一定期間だけ
非回転性めまい 突発性 一定期間だけ
慢性 持続性

参考_国立循環器病センター循環器病情報サービス[めまいと循環器病]

どちらのめまいにも、吐き気や嘔吐が伴うことが少なくありません。
むしろ、吐き気や嘔吐はめまいにはつきものだといえます。

糖尿病によるめまいの原因

突然めまいを訴えて緊急入院する患者さんの大半は、耳鼻科の病気が原因です。
めまいと同時に耳鳴りが起きて耳が聞こえにくくなるタイプは、突発性難聴やメニエール症候群などが代表的な病気ですし、聴力には異常がなくめまいだけのタイプは、良性発作性頭位性めまいや前庭神経炎などが代表的な病気です。

耳鼻科の病気によるめまいのほとんどは、早ければ1日以内、長くても1~2か月くらいで症状が消えてしまいます。

しかし更に詳しい検査の結果、耳性めまいの患者さんについて以下のことが判明したという報告があります。

高血圧症・・・66%
糖尿病・・・27%
高脂血症・・・50%
心臓病・・・39%

これらの結果を飲酒歴や喫煙歴とあわせてまとめたものが、図1です。
図1 耳性めまいの背景因子

引用元_国立循環器病センター循環器病情報サービス[めまいと循環器病]

また、上記の患者さんの内32%が過去に脳梗塞や脳出血を起こしていたこと、更にそれらの患者さんを1~3年間追跡調査した結果、12%が脳梗塞を起こしたという報告もあります。
めまいの原因が耳の病気にあり、従って早くにめまいが消えたとしても、決して安心できないことがお分かりいただけると思います。

では、糖尿病がめまいにどのように影響するのかということですが、それには以下の2つがあります。

一過性脳虚血発作

脳に行く血液がごく短時間だけ途絶えてしまうことです。
脳には内頚動脈と椎骨動脈という大きな動脈が左右合わせて4本あります。
この内、内頚動脈の血液が途絶えることで起こるのが手足の麻痺や言葉が出ないといった症状です。
一方、椎骨動脈の血液が絶えることで起こるのがめまいやふらつきで、もっとひどい場合には失神発作や全身けいれんを起こします。
一過性脳虚血発作が起こる原因として、糖尿病によって動脈硬化が生じている可能性が考えられます。

起立性低血圧

俗に言う立ちくらみです。
通常、横になった時と立った時とでは血圧にほとんど差がありません。
ところが、立った時に血圧が著しく低下して脳の血流量が低下してしまうことがあります。
これが起立性低血圧で、自律神経障害の症状の1つです。

起立性低血圧は、パーキンソン病などの神経を障害する病気で起こることもありますが、2次的に自律神経を障害する病気によって起こることもあります。
この2次的に自律神経を障害する原因となる病気に腎不全やアルコール性神経障害の他、糖尿病があります。糖尿病は自律神経を障害する原因の約50%を占めます。

糖尿病によって障害が起こる神経は、自律神経だけではありません。
感覚神経や運動神経にも、糖尿病によって障害が起こります。
次章では、糖尿病による神経障害についてご説明します。

神経障害とは?

神経障害は糖尿病の3大合併症の1つで、糖尿病の患者さんに最も多く、しかも最も早期から起こるものです。
他の2つは、糖尿病網膜症、糖尿病腎症です。

高血糖の状態が続くと、しびれや痛みを感じたり、反対に感覚がなくなるといった障害が起こります。これはすべて糖尿病によって神経障害という合併症が起こり、その結果現れる症状です。
私達の感覚や運動、命の営みに関連している神経は、以下のとおりです。

  • 感覚神経・・・物を触って感じる
  • 運動神経・・・手足を動かす
  • 自律神経・・・血圧の調整や消化管を動かす

神経障害の原因はまだはっきりとは分かっていません。
しかし一説には、高血糖の状態が続くことで末梢神経の代謝に異常をきたし、ソルビドールという障害を起こす原因物質が神経細胞にたまったり、神経に栄養を与える血管が傷ついて血流が低下したりすることで起こる、と考えられています。

神経障害はそれ自体が命に関わるものではありませんが、神経障害があることで合併症に気付くのが遅れ、重い病気に進展する場合があります。
痛みやしびれなどの自覚症状のある人は約15%程度と言われており、これは自覚症状はないけれど神経障害を起こしていると考えられる人の半数にも満たない数字です。

神経障害によって起こる症状にはさまざまなものがあります。次章ではそれらを詳しく説明します。

他の症状と神経障害の関係

糖尿病の合併症の1つである神経障害によって起きる症状には、以下のものがあります。

しびれや痛み

感覚神経の障害で、両足の足先から、しびれや痛みを感じる症状です。
「ピリピリする」「じんじんする」といった感覚は初期段階の症状です。
初期には手指にこの症状は見られませんが、進行すると手指にもしびれるような痛みが現われます。

足先の冷感

感覚神経の障害です。
しびれや痛み以外に、両足の足先から冷感を感じる症状です。

ケガをしていても気付かない

感覚神経の障害です。
神経が働きを失うため皮膚の感覚が鈍くなり、物に触れても感じなくなるといった症状で、初期段階から進行した状態です。

その結果、画びょうやガラスの破片を踏んでケガをしているのに気付かないといったことも起こります。ストーブや湯たんぽによるやけどにも、要注意です。

しかも感覚が鈍っているせいで病院に行くのが遅れ、病院に行ったときには細菌に感染して細胞が壊死してしまっている、従って足を切断しなければならない、といったことも起こりえます。

糖尿病の患者さんにとって足の観察とケアが重要といわれるのは、このことを意味しています。

吐き気、食欲不振、消化不良

自律神経の障害で胃腸運動に異常が起こり、その結果起こる症状です。
胸焼けも症状の1つです。
こういった症状をまとめて胃不全麻痺といいます。

下痢や便秘

これらの症状も、自律神経の障害で起こる胃腸運動の異常です

息切れとむくみ

息切れとむくみがひどいため診察を受けた結果、心筋梗塞が判明したという患者さんの例があります。
心臓には感覚神経がありますが、ここに障害があると心筋梗塞による痛みを感じないことがあります。
これは無痛性心筋梗塞といわれます。

立ちくらみ

血圧の調整には自律神経が関わっています。
自律神経の障害により血圧の調節機能がうまく働かず、急に立ち上がった時に血圧が下がって起こる症状です。
これまでにも説明しましたが、この症状を起立性低血圧といいます。

頻脈や徐脈

糖尿病による神経障害が原因で、心臓の異常として現われる症状です。

筋力低下

四肢の運動神経の障害です。
太ももやお尻の筋肉の萎縮や筋力低下といった症状です。

足の変形

四肢の運動神経の障害です。
足の変形の他に、上肢や下肢の痛みやしびれといった症状もあります。

顔面神経麻痺

顔面の動きや感覚には脳神経が関与しています。
この神経の障害で起こる症状の1つが顔面神経麻痺です。
脳神経の障害による他の症状には、眼球運動の障害もあります。

尿意を感じない、尿の出が悪い

自律神経の障害で起こる膀胱の機能障害の症状です。残尿といった症状もあります。
また生殖器の異常として、勃起障害といったこともあります。

汗をかかなくなる

汗の分泌に関わる自律神経の障害で発汗障害が起こります。
その結果現われる症状です。

乾燥肌

汗の分泌に関わる自律神経の障害により、乾燥肌といった症状も起こります。

無自覚性低血糖

自律神経の障害で血糖コントロールに影響する異常が起こります。
低血糖の症状には、その程度によって、強い空腹感、だるさ、冷や汗、顔面蒼白、激しい動悸、頭痛、悪心(吐き気・胸のむかつき)、目のかすみなどがありますが、酷い低血糖になると、集中力の低下、意識障害、痙攣、昏睡といったことが起こります。
無自覚性低血糖とは、こういった症状が現れにくくなり、低血糖の症状を自覚しにくくなることです。

食後血糖の上昇

胃腸運動に関わる自律神経の異常で起こる症状です。
食べ物の消化スピードが変化して食後血糖値の上昇に影響が出るため、血糖を下げる薬の調節が必要になります。

糖尿病の予防方法

糖尿病を発症する原因には、遺伝的なものと環境的なものがあります。
遺伝的なものとは、血糖を下げるホルモンであるインスリンが遺伝的に分泌しにくいことです。
1型糖尿病の要因がこちらになります。

また環境的な要因とは、肥満や食べすぎ、運動不足などで、こうした生活習慣はインスリンが十分に効果を発揮するのを邪魔します。
それによって発症するのが、2型糖尿病です。
2型糖尿病の発症リスクを高める要因を調査した結果として、以下のようなデータがあります。

2型糖尿病の発症リスクを高める要因

年齢:1歳年を取るごとに男性・女性ともに2%上昇
肥満指数:BMIが1kg増えるごとに、男性・女性とも17%上昇
糖尿病の家族歴:家族歴があると、男性で2.0倍、女性で2.7倍上昇
高血圧:高血圧があると、男性で1.3倍、女性で1.8倍上昇
喫煙:1日20本以上吸う方は吸わない方と比べて、男性で1.4倍、女性で3.0倍上昇
飲酒:1日1合以上飲む方は、飲まない方と比べて、男性で1.3倍上昇

引用元_国立国際医療研究センター 糖尿病情報センタ-

また2型糖尿病予備軍では、以下を心がけることで糖尿病の発症リスクを減らすことができます。

2型糖尿病の発症リスクを下げる生活習慣

・食事は腹八分目でやめる
・野菜は積極的に摂取する
・散歩などの運動を少しずつでも始める
・体重を5〜10kg減らす
・禁煙する
・健康状態の確認のために健診を受ける
・ストレスと上手につきあう

引用元_国立国際医療研究センター 糖尿病情報センタ-

以上のことから、糖尿病の予防には食べすぎないこと、運動不足にならないこと、太らないことといった心がけが大切だといえます。その他に、煙草を吸わない、お酒を飲まないといったことも大切です。

糖尿病の治療方法

治療方法には、食事療法、運動療法、薬物療法があります。
まずは食事と運動が治療の基本です。
特に2型糖尿病では食事療法と運動療法を行い、必要に応じて飲み薬を使います。
それでも十分に血糖値コントロールができない場合には、インスリン注射によって外部からインスリンを摂取します。

一方1型糖尿病の患者さんは自分の身体でインスリンが作れないため、インスリン注射による薬物療法が必須です。
適切なインスリン治療を行えば、厳しい食事制限や運動制限は必要ありません。
糖尿病の治療の目的は、血糖値を良い値に保つことです。
血糖値が高いままでいると、様々な合併症を引き起こすからです。
しかし既に合併症のある人も、血糖値を適切な範囲に保つことで合併症の進行を遅らせることができますし、他の合併症を防ぐこともできます。

まとめ

医師の間でさえ、比較的軽く考えられてきためまい。
しかしその陰に大きな病気が潜んでいる場合があることが分かりました。
その1つが糖尿病による合併症です。

糖尿病は生活習慣に気を付けて予防することが大切です。仮に糖尿病を発症しても、糖尿病の治療は大変進歩しています。
治療によって血糖値を適切にコンロトールすれば合併症を防ぐことができますし、合併症が起こったとしても、その進行を遅らせたり、他の合併症を防いだりすることができます。

血糖値を適切な値に保ち、健康に過ごせるように心がけたいですね。

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