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糖尿病と血圧の関係とは?

糖尿病と血圧に関する基礎知識

弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病と血圧には関係があるのでしょうか?
A. 糖尿病になると高血圧になりやすく、同時に発症しているとさまざまな病気の進行を速めます。

この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得している自然療法専門医。
スコッツ先生のプロフィール
https://gluco-help.com/media/lose-weight-diabetes27/

糖尿病と血圧の関係

糖尿病の患者は年々増加していますが、高血圧の患者も同じように増えています。そして、糖尿病と高血圧を併発している人も多くいるのです。糖尿病だと血圧が高くなりやすいため、高血圧と同時に発症している人は全体の半数ほどにもなります。

恐ろしいのは、どちらも自覚症状がほとんどないということです。そうして気づかないうちに病気がどんどん進行していき、気づいたころにはかなり悪化しているという人も少なくありません。糖尿病と高血圧は、どちらもさまざまな病気を促進させてしまうため、両方とも発症している人は特に気をつけなければならないのです。

血圧とは?

そもそも血圧とはどんなものなのでしょうか?日常的によく聞く言葉ですが、具体的に説明できる人は少ないのではないのでしょうか。血圧とは、心臓から送り出された血液が、どのくらいの圧力で血管を押しているかを表した数値です。

心臓が収縮して血液を送り出す時に血圧は高くなり、心臓が拡張して血液の流れが激しくない時は、血圧は低くなります。その数値のもっとも高いものを最高血圧と呼び、もっとも低いものを最低血圧と呼びます。ではその血圧の強さを決めているのは、どんな要素なのでしょうか?

・心臓が血液を送り出す力が強いと(拍出量が増えると)血圧は高くなる
・血管の弾力性、動脈硬化が進むと上の血圧が高く、下の血圧は低くなる
・血液の流れに対する血管の抵抗力が大きくなると血圧は高くなる
・摂取している塩分の量が多いと血圧は高くなる

血圧は血糖値と同じように、1日のうちで一定の範囲で上下を繰り返しています。運動をした時には血圧が上昇することは広く知られていますし、睡眠や起床時でも変化があり、食事をすることでも変わってきます。精神的な状態によっても左右されることがあります。ですが、そうして上がった血圧も、安静にしておくことで自然と下がってきて正常の範囲におさまります。

ですから、このように一時的に血圧が上がった状態を高血圧とは呼びません。高血圧とは、安静時でも血圧の高い状態が続くことをいいます。

血圧を上げる要素は、以下のようなものがあります。
・塩分の摂り過ぎ
・食べ過ぎ
・タバコ、アルコールの摂取
・ストレス
・運動不足
・寒い時期

血圧を下げるためには、上記のことと逆のことをすると下がりやすくなります。すなわち、塩分を控えたバランスの良い食事を食べ過ぎないように摂り、タバコやアルコールを控え、適度な運動をして血行をよくすることです。

糖尿病と高血圧を併発すると手術のリスクが高くなる

糖尿病と高血圧を同時に発症していた場合、何かの手術をしなければならなくなったら大変です。高血圧の人は、血糖コントロールが悪いと手術で出血しやすいうえに、手術中の血圧の管理が大変になります。

また、糖尿病は傷の治りが普通の人と比べて遅いため、基本的に術後の回復に時間がかかります。そのため、体への負担が大きくなるため、通常よりもリスクが高いといわれています。高齢の人ほどそのリスクがさらに高まるため、手術が必要な状況にならないよう普段から血糖コントロールや高血圧を防ぐような生活習慣を送ることが重要になってきます。

糖尿病と高血圧に共通する動脈硬化

糖尿病と高血圧は、どちらも動脈硬化を促進させてしまうため、両方同時に発症していると片方だけ発症している人に比べて何倍もの速さで動脈硬化が進行していきます。また、脳卒中になる可能性も大幅に上がります。どちらも血管に関する病気ですが、具体的に何が原因となってそうなってしまうのでしょうか。

動脈硬化は、ある程度の高齢になってから進行がはじまるものだというイメージがあるかもしれません。ですが、実は生まれた時からはじまっているのです。生まれた時から主要な動脈に硬化の予兆が見られ、10歳ごろから急速に進行しはじめて、30歳ごろには動脈硬化が現れます。

血管日本では単に動脈硬化と呼ばれることが多いですが、その場合ほとんどが「アテローム性動脈硬化」のことを指しています。アテロームは粥状のドロドロした物質のことで、それが動脈の内膜にたまってゆき、硬化して血管の内部が次第に狭くなっていくことで心筋梗塞、大動脈瘤、狭心症、脳梗塞などの病気を引き起こします。
この硬化は数十年という長い年月をかけて進行していきます。その間、自覚症状はほとんどなく、急性心筋梗塞などの症状が現れることで、はじめて自覚できるようになります。つまり、症状があらわれた時はすでに何十年も前から硬化がはじまっていたということなのです。

糖尿病と高血圧は脳卒中とも関係が

脳卒中は以前は日本人の死因の1位でした。現在はその割合は大幅に減っていますが、昔はそれだけ高血圧の人が多かったということです。その原因は塩分の摂りすぎで、しょうゆやみそなどの調味料から、干物や漬物といったものばかりを摂取していたからです。また、その時代には高血圧に対しての効果的な薬がなかったためともいえます。

脳卒中は簡単に説明すると、血管が詰まったり破れたりして脳に血液が行き届かなくなったために脳の神経細胞に障害が起きる病気です。治療が遅くなると後遺症を残してしまうことがあり、とても危険です。脳卒中が起きる原因は大きく分けて4つで、「脳出血」「くも膜下出血」「脳梗塞」「一過性脳虚血発作」になります。

1.脳出血
脳出血は脳の血管が何らかの理由で破損し、脳の中で出血する病気です。出血した血液の塊が脳細胞を圧迫することにより、体の痺れ、頭痛、意識障害、言語障害などの症状が突然現れます。脳出血は特に重大な後遺症を残す可能性のある病気です。脳動脈の破裂で起こりますが、破裂するのは細い血管で脳全体に張り巡らされていますので、出血も脳全体におよびます。

2.くも膜下出血
くも膜下出血も脳出血と同様、脳動脈の破裂により起こりますが、細い血管ではなく主幹脳動脈という血管が破れ、脳動脈瘤という血管がこぶのように膨れた状態になります。その動脈瘤が破裂すると、くも膜下という脳の表面を覆う薄い膜の内側に出血します。くも膜下出血は脳卒中の中でも死亡率が極めて高いため、とても重い病気です。

3.脳梗塞
脳梗塞は脳卒中の中でも、4分の3以上の原因を占めているもっとも多い症状です。脳出血やくも膜下出血は、脳の血管が破裂するのに対し、脳の血管が詰まるのが脳梗塞で、それが原因で脳細胞の一部が死んでしまう病気です。脳梗塞になると、半身麻痺、意識障害、言語障害などの症状が現れます。

突然症状が現れ、重症になることが多い病気です。後遺症が残ったり、生活介助が必要になったり、死亡することもあります。

4.一過性脳虚血発作(TIA)
一過性脳虚血発作(TIA)は少し特殊で、脳梗塞の症状が出るのですが、一時的なものですぐに回復します。動脈が血栓で詰まって血液が流れなくなりますが、脳細胞に障害が出る前に血流が元に戻るため、脳細胞が正常に働くようになり何事もなかったかのようになります。ですが、一時的とはいえ血栓ができるような血液の状態は良いとはいえません。

そのため、その状態を放っておくといずれは脳梗塞になる可能性があります。一過性脳虚血発作は、脳梗塞が起こる前の前触れや警告と呼ばれています。ほかの症状はほとんど突然起こりますので、対処が遅れることが多いですが、一過性脳虚血発作は症状が起きたらすぐに病院に行って治療を始めれば、被害は比較的少なくて済みます。

脳はその部位ごとにさまざまな機能を持っています。そのため、血管障害がどの部位で発生したかによって症状もさまざまです。起こる症状として多いものは以下のようなものがあります。

・理解力に乏しくなる
・会話に問題が出る、ろれつが回らない
・体や顔の左右どちらか半分に麻痺や痺れが出る
・ものが2つに見えたり、目が見えない、見えにくい
・一時的に片目にカーテンがかかったようになる
・歩行や立ち上がるのが困難
・今までにないくらいひどい頭痛がする

上記のような症状はひとつだけ起きることもありますが、いくつかの症状が同時に起こることもあります。もっとひどい時には意識障害が起きることもあります。これらの症状が起きた時には速やかに病院を受診しましょう。

動脈硬化や脳卒中を予防するには?

動脈硬化に関しては、生まれた時からはじまっていることを考えると、防ぎようがないのではないかと思ってしまうかもしれません。ですが、すべての人が動脈硬化になっているわけではありませんので、予防は可能だということです。具体的には、欧米化した生活習慣を正し、3つの危険因子を遠ざけるようにすることで、改善していきます。

1.高脂血症
血液中の脂肪が増えていくと「高脂血症」と呼ばれる状態になります。脂肪のうち高トリグリセライド(中性脂肪)やLDLコレステロールなどの一部のものは動脈硬化を促進させます。高脂血症と判断される基準の数値は空腹時に採血したもので、以下の数値になります。

・総コレステロール220mg/dl以上
・LDLコレステロール140mg/dl以上
・HDLコレステロール40mg/dlより少ない
・トリグリセライド150mg/dl以上

高脂血症を防ぐにはこれらの数値以下になるように、日々の食事や運動に気をつけて改善していくことになるでしょう。

2.肥満
肥満は万病の元といわれるように、さまざまな病気を引き起こす原因になります。高血圧や糖尿病も発症しやすくなりますし、血中の脂肪が増えますので、前述の高脂血症にもなりやすいです。また、肥満であるだけで血圧が上昇しますので、ほかの病気を進行させやすくもなるのです。

肥満度はよくBMIで表されますが、病気にもっともなりにくいBMIは22だといわれています。肥満と呼ばれるのは26.4以上で、24.2からは体重が多めで肥満の予備軍になります。普段からBMIを調べるようにして肥満にならないように注意しましょう。

3.タバコ
肥満と同様、タバコもあらゆる病気を悪化させる原因になっています。タバコは肺や喉のがんばかりではなく、脳梗塞や動脈硬化になる原因でもあるのです。タバコを吸うと血が凝固しやすくなり、血栓症を起こす可能性が高くなります。また、血管が縮んで細くなるため、血流が悪くなります。禁煙なくしては、病気が改善していくことは難しいでしょう。

上記のような要素は動脈硬化を促進させます。これらに加えて、糖尿病や高血圧の治療も並行していくことで改善が期待できるでしょう。

脳卒中もほとんど動脈硬化と同じような原因で起こっていますので、同じような方法で改善していくことが可能です。加えて、不整脈なども原因になりますので、不整脈がある場合は病院を受診して血栓を防ぐ薬などで治療しましょう。

糖尿病と関連して起こる低血圧

血圧の病気について話題になる時は、高血圧ばかりが取り上げられることが多いですが、低血圧の問題も少なからずあります。例えば、立ち上がった時などにめまいが起きる起立性低血圧は、糖尿病ケトアシドーシスや脱水状態にある時に起こることがあります。

二次性低血圧(症候性低血圧)です。二次性低血圧とは、薬や病気が原因で起こる低血圧のことで、糖尿病の場合だと血糖コントロールがうまくいっていない場合に起こる、起立性低血圧が二次性低血圧(症候性低血圧)です。

また、糖尿病でかつ高血圧の人は、高血圧の薬(降圧剤)を服用している人もいます。この薬の効果により、必要以上に血圧が下がってしまい、起立性低血圧などの症状を起こすこともあります。そういう人は薬が合っていない可能性がありますので、そのことを担当医師に伝え、処方を見直してもらいましょう。

まとめ

糖尿病と高血圧はなんの関連性もないという人もいますが、この2つは相互に関係しており、ほかの合併症の進行を大幅に速める恐ろしい組み合わせです。しかも糖尿病と高血圧は併発しやすい病気ですので、日頃から注意しておかなければなりません。そして万が一動脈硬化や脳卒中の症状が起こったら、直ちに病院を受診することが重要です。

糖尿病はさまざまな病気に気をつけなければならず、治療を続けることに対して嫌になってしまうこともあるかもしれませんが、基本的なこととして正しい生活習慣を送ることでさまざまなことが改善していきます。健康のためにも生活習慣を見直して、少しずつでも正していけるようにしましょう。

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