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妊娠糖尿病になりやすい日本人
妊婦さん以外にはあまり知られていませんが、妊娠すると糖尿病の発症率が上昇します。妊娠糖尿病は流産や奇形など深刻なリスクを伴うため、早い時期から対策に取り組むことが大切です。
日本人は白人より妊娠糖尿病になりやすい傾向にあり、晩婚化、晩産化が進む現在、血糖値の問題で悩む妊婦さんは増加傾向にあります。
妊娠糖尿病とは
糖尿病には種類があり妊娠糖尿病と普通の糖尿病は同じではありません。発症してしまう原因や治療方法にも違いあるため区別されています。
妊娠糖尿病は普通の糖尿病とは違う
妊娠糖尿病は、妊娠中にはじめて発見された糖代謝異常を指し、検査で血糖値に問題が見つかると妊娠糖尿病と診断されます。
ただし妊娠糖尿病の場合、血糖値に問題があっても一般的な糖尿病ほど数値は高くありません。妊娠の影響で一時的に血糖値が高くなっている状態です。
妊娠中の糖尿病は全部で3種類
妊娠中の糖尿病は全部で3種類あります。妊娠糖尿病と診断されるのは、「妊娠中はじめて異常が見つかった」場合で、元々糖尿病を患っていた女性が妊娠した場合は「糖尿病合併妊娠」と呼ばれます。
また、糖尿病の診断基準に該当する場合は「妊娠中に診断された明らかな糖尿病」として妊娠糖尿病とは区別されます。
糖尿病合併妊娠、妊娠中に診断された明らかな糖尿病は、妊娠糖尿病よりも厳重な血糖管理、治療が必要です。妊娠糖尿病と同列に捉えることはできません。
妊娠糖尿病の原因
妊娠中は血糖値が上がりやすくなります。妊娠前には全く血糖値に問題がなかった妊婦さんでも、血糖値に異常が生じる可能性があることを認識しておく必要があります。
どうして妊娠中は血糖値が上がりやすいの
妊娠糖尿病の原因は様々ですが、ホルモンと酵素の影響が少なくありません。
血糖値は1日を通して変動し一定の数値ではありません。特に食後は血糖値が上がるのが自然な反応ですが、膵臓から出るインスリンというホルモンが血糖値を下げる働きをし、急激な変動を起こしません。
ところが、妊娠が進むにつれて、インスリンの働きを弱めるホルモンが数種類も胎盤から分泌されます。
同時にインスリンを壊す酵素も胎盤内で生成されます。妊娠後期になるほどインスリンが機能しにくくなり、血糖値が上がりやすくなります。特に妊娠20週以降は高血糖に気を付ける必要があります。
妊娠糖尿病になりやすいのは
妊娠により元々血糖値に問題がなかった方でも妊娠糖尿病を発症する可能性があります。特に発病しやすいリスクファクターがあれば、更に注意しておく必要があります。
35歳以上の高年妊娠もリスク要因のひとつです。近年妊娠糖尿病が増加傾向にある背景として晩婚、晩産化も指摘されています。
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- 肥満
- 妊娠中、体重が急増
- 家族が既に糖尿病を発病(特に1親等以内はハイリスク)
- 35歳以上の高年妊娠
- 尿糖の陽性が連続で出ている
- 以前の出産で巨大児を産んだことがある
- 原因がはっきり分からない早産、流産、死産を経験
- 羊水過多
- 妊娠高血圧症候群(既往歴も含む)
元々日本人は糖尿病になりやすい体質
日本人は白人と比べてもインスリンの分泌が悪いため、妊娠糖尿病になりやすいことが分かっています。妊娠糖尿病は誰にでも可能性があり特別なケースではありません。
今まであまり意識したことがなくても、妊娠したら血糖値の問題と隣り合わせになることを頭に入れておくことが重要です。
妊娠糖尿病が母子に与える影響は大きい
血糖値が高くなってもすぐ生死に関わるわけではありませんから、「そんなに神経質にならなくても…」と感じる妊婦さんもいらっしゃるかも知れません。
しかし、妊娠中糖尿病になると、ママはもちろん赤ちゃんにも大きな影響が及ぶ可能性があることを認識しておく必要があります。
妊娠中の糖尿病が母体に及ぼす影響
高血糖が続くと母体に深刻な問題が襲いかかってきます。合併症のリスクも上昇するので気が抜けない状態が続きます。
血糖値が高くなると血管がもろくなり、細い血管が集まっている臓器ほどダメージを受けやすくなります。胎盤もダイレクトに影響を受けるので、血糖の厳しい管理が必要です。
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- 流産
- 早産
- 糖尿病の合併症リスク上昇(網膜症や腎症など)
- 妊娠高血圧症候群
- 羊水過多など羊水量の異常
- 胎盤がもろくなる(赤ちゃんの発育不全を起こす可能性)
- 肩甲難産(赤ちゃんが大きすぎることで分娩しにくくなり、仮死や腕の神経麻痺リスクが上昇)
- 帝王切開の必要性が高まる
- 感染症を併発してしまう可能性が上昇(膀胱炎、腎盂炎など)
妊娠中の糖尿病が赤ちゃんに及ぼす影響
母体の血糖値が上がると胎盤を通じて赤ちゃんの血糖値も上昇します。ママはもちろん、赤ちゃんに及ぶ影響も軽視できないものばかりです。
妊婦無事に生まれてからも、将来的に肥満や糖尿病、メタボリック症候群の発症率が高くなります。
- 子宮内胎児死亡
- 先天奇形
- 巨大児
- 心臓の肥大
- 発育不全
- 新生児低血糖
- 呼吸障害
- 低カルシウム血症
- 電解質異常
- 多血症
- 黄疸
血糖値の影響で難産に
血糖値の問題は難産の原因のひとつです。難産になると、母子ともに様々なリスクが上昇します。陣痛が始まってから15~30時間以上経っているのに産まれない場合も、陣痛促進剤や鉗子、吸引器などで強引に分娩を促す必要があります。
出産時間が長引くと母体にも負担がかかります。母体だけでなく赤ちゃんも酸素不足で脳に障害が出る恐れもあります。心拍数が落ちそのまま死産になることもあります。
高血糖が続くと巨大児になることが多く、肩がひっかかって出産できない肩甲難産になる確率も上がります。無理に経膣分娩を進めると、頭蓋内出血や鎖骨骨折、腕の神経が麻痺するトラブルが起きる可能性も出てきます。
途中で帝王切開に切り替えざるを得ないことも珍しいことではありません。できるだけ安産で産むためにも、血糖値の管理は重要です。
妊娠糖尿病の検査方法
妊娠糖尿病になっても自覚症状はほとんど出ませんので、検査で血糖値を調べるしかありません。
検査で妊婦さんの7~9%は妊娠糖尿病が見つかります。決して他人事ではありません。
妊娠糖尿病の検査は最低2回
妊娠糖尿病のスクリーニング検査は、妊娠初期と中期の2回行われます。すべての妊婦さんが対象になっています。定期健診で自動的に血糖値の検査も受けることになります。
通常、1回目の初期検査は妊娠10週前後、2回目の中期検査は妊娠24~28週前後に実施されます。1回目の検査で異常が見つかると精密検査が追加されます。
妊娠が進むにつれてインスリンの効き悪くなるため、初期は問題がなくても、中期から後期にかけて血糖値が上昇するパターンも珍しくありません。つわりの影響で食事管理がうまくできないケースもあります。
妊娠周期を重ねるほど妊娠糖尿病の可能性は高くなるため、1回目の検査の結果に関わらず2回目の検査も必ず行われます。
妊娠初期から通院することが大切
妊娠初期に行う1回目の検査はまだ妊娠3ヶ月の時期になり、妊娠に気づかない妊婦さんも少なくありません。また、自治体の補助券は4ヶ月前後の時期から使えるものもあり、それまでの費用は完全自己負担となります。
自宅用妊娠検査キットを使って妊娠していることは分かっているものの、出費を抑えるために補助券が使える時期まで通院しない妊婦さんもいるようです。
その他、「産む病院で迷っている」、「まだ入籍していない」、「産むかどうか分からない」などの理由で受診が遅れるケースも考えられます。
もし妊娠によってインスリンが効きにくくなっているなら、早急に手を打たなくてはいけません。母体のためにも赤ちゃんのためにも妊娠初期からきちんと検査を受けて下さい。
妊娠糖尿病の検査方法
妊娠糖尿病の検査は3種類あり、どの検査も採血を行って血液を検査します。初期の検査で随時血糖を調べ、異常が見つかったら空腹時血糖やブドウ糖負荷検査などの検査で詳しく調べる流れになります。
初期の検査で問題がなくても、中期になると随時血糖検査やブドウ糖負荷検査で異常がないか調べます。
- 随時血糖:基本的な血糖値の検査方法。
- 空腹時血糖:食事を取らない絶食状態で行う血糖検査方法。
- ブドウ糖負荷検査:糖分が入っている検査用のジュース飲んでから血糖値を調べる検査方法。
妊娠糖尿病の治療方法
妊娠糖尿病になったら、血糖値の目標は食前100mg/dl未満、食後2時間120mg/dl未満です。血糖を管理するために食事、運動、薬の3本柱でがんばることになります。
妊娠糖尿病は入院が必要?
妊娠糖尿病と診断されると、高確率で入院するよう言い渡されます。早急に血糖値を安定させるため、そして1日の血糖値の変動を正確に把握するため、管理入院する必要があります。
一般的には最短で2泊3日の入院になるケースが多いようですが、血糖コントロールがうまくいかない場合や深刻な合併症が見つかった場合など、2週間近く自宅に帰れないこともあります。
妊娠糖尿病の食事療法
食事療法は血糖コントロールの基本です。ただし赤ちゃんに十分な栄養がいかなくなると害があるので、無計画な食事制限は避ける必要があります。母子ともに健康でいられるような栄養バランスに気をつけ必要なエネルギーを補充しましょう。
分食も効果的
妊娠糖尿病と診断されたら食べ過ぎに注意しなければなりません。ただし過剰なダイエットは禁物です。1回の食事量を減らし、食事回数を4~6回に増やす分食は少ないカロリーでも満足度が高くなり、ストレスも感じにくいのが特徴です。
また、妊娠中は空腹時の血糖値が低く、食後血糖値が上昇しやすくなります。分食は食べ終わったあと血糖値が急激に上がるのを防ぐ効果もあります。
血糖値が上がりやすい甘いものはダメ?
妊娠中はつわりなどで食欲をコントロールするのが難しい時期も多くなります。ストレスを溜め込まないためにもストイックになりすぎないことが大切です。
血糖値に異常が出ている以上、なるべく甘いものを避けるのが理想的ですが、分食の1回分としておやつを食べるのは問題ありません。分食は間食をうまく利用して血糖値を上がらないようコントロールする食事療法の1つです。
おやつもできるだけ血糖値が上がらない果物、低糖質食材を選ぶのがポイントです。最近はコンビニでも糖質0のゼリーやヨーグルトが売っているので活用しましょう。
特にローソン、ナチュラルローソンは健康志向を重視した低糖パン&お菓子シリーズを展開しているので、頼りになる存在になるはずです。
~ローソンの低糖質・低カロリーおやつ~
・ブランパン:1個分の糖質2.2g 67kcal
・ブランクリームサンド:4個分の糖質7.5g
・ブランとチアシードのクッキー:1袋分の糖質5.9g 160kcal
・こんにゃくチップスコンソメ風味:1袋分の糖質8.6g 63kcal
妊娠中の運動は賛否両論
妊娠中の運動の是非は専門家によって意見が違います。いずれにしても妊娠中は母子の安全が優先です。ハードな運動は避けるべきです。
肥満レベルによっては運動が制限されることもあります。医師に運動の目安を相談して下さい。許可が出れば、無理のない範囲でウォーキングなどの有酸素運動を頑張りましょう。
妊娠糖尿病の薬物療法はインスリン注射
食事療法を行っても血糖コントロールがうまくいかない場合、インスリン注射を打つことになります。
経口血糖降下薬は胎盤通過性があり、催奇形性に関して安全性は確立されていないため、妊娠中の服用は禁忌とされています。
一方、インスリンは胎盤を通過し胎児に移行する心配はありません。厳格に血糖をコントロールするため、妊婦さんには強化インスリン療法が行われます。
妊娠が進むにつれてインスリンの効きが弱くなるので、後期になるほど投与する量を増やします。血糖値の変化に応じて投与量を調節しなければならないため、自宅で血糖値の自己測定を行うよう指示されることになります。
また、インスリン治療を行う患者さんは産婦人科だけではなく、糖尿病の治療を専門に行う内分泌代謝内科も受診するのが理想的です。分娩の時も専門医がインスリン需要量を厳密に見極める必要があります。
産後の糖尿病発病率は7倍以上
妊娠糖尿病になっても出産後は血糖値が落ち着くことが大半です。しかし、糖尿病リスクがなくなったわけではありません。妊娠糖尿病になったら糖尿病になりやすいということでもあります。
妊娠糖尿病は完治する?
糖尿病は完治しないことを知っていると特に妊娠糖尿病は「治るの?」と心配になってしまいます。
妊娠糖尿病の場合、無事に出産したあとは血糖値の状態も落ち着くケースが大半です。インスリン治療を受けていた患者さんも、次第に打つ量が減るので安心して下さい。
妊娠糖尿病で2型糖尿病リスクが上昇
妊娠糖尿病になっても産後血糖値は落ち着きますが、まだまだ油断することはできません。妊娠糖尿病になる妊婦さんは血糖値に異常が出やすい体質なので、近い将来2型糖尿病になるリスクがあります。
血糖値が正常だった妊婦さんと比べると、発症率は7倍以上も高くなることが分かっています。引き続き食事療法や運動療法を行い、定期検査も受けましょう。産後半年以内の検査で5%以上に糖尿病が見つかり、25%もの割合で何らかの耐糖能異常が発見されています。
妊娠糖尿病にならないために
妊娠中は糖尿病になっても思うように運動もできません。つわりなどで食事療法も普段よりより難しくなってしまいます。妊活中から血糖値対策に励むのが理想的です。
妊娠してから血糖値対策を始めても遅い?
赤ちゃんの身体の大事な部分は、妊娠の初期に形成されます。大体妊娠8週までに基本的な部分ができますが、この時期に血糖値が高いと奇形の発生率が高くなります。
一般的な妊娠検査薬で陽性反応が出るのは、妊娠5週目以降です。血糖値対策は長期にわたり取り組まないと数値は下がりません。妊娠2~3ヶ月の時期にいきなり食事対策を頑張っても手遅れになりがちです。
また、妊娠初期はつわりの時期で普段では考えられないほど食欲のコントロールができません。甘いものが無性に食べたくなったり、何か食べていないと気持ち悪くなる食べづわりになるケースもあります。食事療法を計画的に進めるのは簡単ではありません。
妊娠前から葉酸を飲む必要があることはだいぶ浸透していますが、血糖値対策の必要性はあまり知られていません。
妊活中にできる妊娠糖尿病予防対策
まだ妊娠する前なら、運動対策も制限されません。食べるのを我慢するより身体を動かすのが好きな方も、運動対策メインでがんばりましょう。
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