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血糖値スパイク
20~30代の若者や痩せ型の女性の間でも増加傾向にある血糖値スパイクは、通常の健康診断では見つかりません。
食べたあとの眠気は、食後血糖値が急上昇する血糖値スパイクの代表的な症状です。よくあることと軽視せず、自分で「おかしいかも」と自覚することが大切です。
ここでは「あさイチ」や「ためしてガッテン」など、NHKの番組でも何度か特集が組まれている血糖値スパイクについてお伝えします。
食後の眠気は血糖値スパイク?
昼食後に強い眠気に襲われ、ウトウトしてしまったことはありませんか?
前日の夜ふかしが原因ならもちろん心配ありません。しかし、しっかり睡眠が充分取れているにも関わらず度々睡魔に襲われてしまうなら、血糖値スパイクの症状の可能性があります。
血糖値スパイクとは、治療は必要?
血糖値スパイクとは食後に血糖値が急上昇、急下降する症状です。元々血糖値は常に変動しており、健康な人でも一定ではありません。
正常な状態なら、血糖値の上がり方は緩やかで、いきなり高くなることはありません。下がる時も時間をかけて元に戻ります。
血糖値が激しく変動するのは異常な状態で、強烈な眠気の原因になります。くぎ(スパイク)のように尖ったグラフの線を描くため、血糖値スパイクと言われます。
血糖値スパイクが起こればすぐに治療が必要ということではありません。しかし、糖尿病を発症する一歩手前ですから対策が必要です。
血糖値スパイクの自覚症状
血糖値スパイクの自覚症状はどれも「よくあること」なので厄介です。食後の眠気に関しても、一般的に「食べたあと眠くなるのは当たり前」と認識されているため、眠気が強いだけで病院に行く人はまずいません。
眠気の他にも妙に疲れやすくなる、やる気が起きない、不安、動悸、だるさ、集中力が続かない…などが血糖値スパイクではよくある症状です。
食後の眠気が続いていたとしても、ほとんどの方は気にせず血糖値の異常とは感じていません。
血糖値の急上昇時 → 強い眠気、だるさ、無気力感、疲労感
血糖値の急降下時 → 異常な空腹感、イライラ感、集中力や判断力の低下
血糖値スパイクが心の不調と誤診されることも
血糖値スパイクではメンタルや神経の病と似ている症状も起こります。例えば無気力になる、不安感を強く感じことがあるため、精神科や心療内科を受診し、うつ病や自律神経失調症と誤診されてしまうケースがあります。
うつ病や自律神経失調症の薬を飲んでも症状は改善しません。中高年の場合、更年期障害と診断されてしまうケースもあります。
心療内科や精神科で処方される薬は副作用が強いものも多いので、誤診で症状を悪化させないよう、早い段階で気づくことが大切です。
血糖値スパイクを放置すると糖尿病リスクが上昇
眠気やだるさなどの症状が軽いと、あまり危機感を持ちにくいものです。しかし、血糖値スパイクは既に糖尿病の一歩手前の段階です。
糖尿病が発症してしまうと大変なので、発症を防ぐのに手遅れにならないよう気をつけなくてはなりません。
2型糖尿病になるリスクが上昇
血糖値スパイクの症状が起き始めたら、糖尿病発症までのカウントダウンが始まっていると自覚する必要があります。
糖尿病は発症原因によって4つに大別されますが、食事など普段の生活習慣が要因になるのが2型糖尿病です。2型糖尿病になってしまうと、基本的に完治は難しくなります。
糖尿病の治療は食事療法、運動療法、薬物療法の3本柱になります。「薬だけ飲んでいれば良い」というほど単純ではありません。
生涯に渡り血糖値のコントロールが必要になるため、ストイックに取り組み続けなくてはなりません。予備軍の方は糖尿病の発症しないよう、血糖値スパイクが起きていることを早く認識する必要があります。
血糖値スパイクが合併症の引き金に
既に2型糖尿病を発症している患者さんにとって、血糖値スパイクは合併症を起こす引き金にもなります。食後血糖値の急激な変動を予防する対策を行うことが重要です。
心筋梗塞、脳卒中、動脈硬化など死に繋がる深刻なリスクが高くなるため、糖尿病の最新治療の現場でも血糖値の変動が重視されています。
血糖値が急激に上昇すると、有害物質の活性酵素も大量に発生し、血管にダメージを与えます。
ボロボロになった血管を修復するため、血管の内側の壁が厚みを増して硬化します。その結果、血管に血栓が詰まりやすくなり、命に関わる疾患を招きやすくなります。
インスリンの過剰分泌は癌や認知症の発症率も上昇させます。血糖値スパイクによる悪影響は全身に及ぶため、軽く考えることはできません。
心筋梗塞~血糖値スパイクによってリスクが上昇する病~
- 2型糖尿病の発症、合併症(網膜症、腎症、神経障害、動脈硬化性疾患)の発症
- ガンの発症率が1.6倍に上昇(細胞を増やす働きによって、インスリンが増えるとガン細胞も増殖)
- 心筋梗塞の発症率が上昇(心臓に栄養を供給する血管がダメージを受け、発症)
- 脳梗塞の発症率が上昇(脳の血管が傷つき、発症)
- 認知症発症率が1.5倍に上昇(インスリンの過剰分泌によってアルツハイマー型認知症の原因物質、アミロイドβの蓄積を促す)
健康診断では正常値でも実は血糖値スパイク
食後眠くなるどころか死亡リスクも高くなると分かっても、「今まで血糖値で問題になったことはない」と安心している方もいらっしゃるでしょう。
ここが血糖値スパイクの怖いところです。健康診断では血糖値スパイクが起きているかどうか、知ることはできません。
健康な人ほど血糖値スパイクのリスクが高い
健康診断では何の異常も見つからなかった健康な人ほど、血糖値スパイクのリスクを伴うと指摘されています。
食後血糖値スパイクがどんなに激しく起こっていても、空腹時の血糖値はそれほど高いわけではありません。従って、一般的な健康診断で調べる血糖値の平均値HbA1cの値は正常な範囲内です。
数値に表れない以上、医師にも異常はわかりません。眠気やだるさで受診する人は少ないため、健康診断を毎年受けていても自覚できないケースが急増しています。
アメリカ、スタンフォード大学で行われた研究でも、普段の血糖値は正常なのに、食後血糖値が糖尿病レベル(200mg/dl)、糖尿病の前段階(140mg/dl)に到達する被験者が出ました。
研究に関わった教授も自分が糖尿病とは無縁だと思っている人の多くが、血糖値が激しく上下していることを自覚していないと指摘しています。
痩せ型の若い女性5人に1人が血糖値スパイク
2型糖尿病は太っている中高年の病気だと認識されることが多いものです。確かに2型糖尿病は食べすぎや飲みすぎによる生活習慣病のひとつで、40代以降発症率が高くなります。
ところが血糖値スパイクは肥満体型でなくても起きます。若い人で痩せていても血糖値スパイクが頻繁に起こっているケースが増えています。
気がつかないうちに糖尿病にならないよう、認識を改めることも大切です。痩せている20代の女性でも5人に1人は血糖値スパイクが起きています。
検診結果が正常でも血糖値スパイクかも?
血糖値スパイクは遺伝性も関係しているので、身内に糖尿病の方がいる場合も警戒しなければなりません。
- 40~50代の男性
- BMI値が25以上
- 家族(両親、兄弟姉妹、祖父母、おじ、おば)が糖尿病を発症している
- 痩せていても空腹時血糖値の数値が高い
- 早食いの習慣がある
- 食事は基本的に炭水化物がメイン
- 砂糖がついたお菓子をよく食べている
- 食生活が不規則(朝食抜き、あるいは1日1食など)
- 運動不足(週に3回未満)
- お腹いっぱいになるまで食べないと気がすまない
- 食後に強い眠気を感じる
- すぐにイライラ、ちょっとしたことで不機嫌になる
- お腹が空くと高カロリーのものが食べたくなり我慢ができない
- 週に3回以上コンビニ食や外食をする
- 慢性的な睡眠不足(6時間以下の睡眠が週に3回以上)
自分で行う血糖値スパイクのチェック
普通の健康診断では見つけるのが難しい血糖値スパイクに気づくにはどうすれば良いのでしょうか。
一般的な健康診断でも血糖値を調べる項目はありますが、通常は空腹時の血糖値を測定するだけで血糖値スパイクの可能性まではチェックしません。
血糖値スパイクが起きているかどうか調べるためには、食後の血糖自己測定(SMBG)が必要です。食べ始めてから大体1~2時間経ってから測定します。血糖値の変動の傾向、血糖トレンドを自分でチェックしておくことがとても重要です。
血糖値のセルフ測定機器や検査キットは通販で購入することもできます。食後血糖値の上昇を調べ血糖値スパイクの可能性も探りたい場合、付属品なども含めて安く入手できる自己血糖値測定器が役立ちます。
弊社で販売しているエイコン社の血糖値測定器は、本体は無料、消耗品のセンサー(試験紙)も業界最安値で提供させていただいています。病院に行かずに血糖値スパイクの有無を調べることができるので、忙しい方にも人気があります。
血糖値スパイク検査は自費診療
医療機関の専門検査を受ければ、血糖値スパイクを本格的に調べることができます。どの病院でも実施しているわけではありませんが、糖尿病治療の医療現場でも血糖トレンドを追う重要性が認識され、血糖値スパイク検診を受けることができる医療機関も増えています。
~血糖値スパイク検査の特徴~
- 通院回数は2~3回
- 24時間継続し、最長2週間持続的に血糖値を測定
- 糖尿病と診断されていない方が対象(糖尿病でも食事療法または内服のみなら対象)
- 費用は自費診療なので高額(1万円程度のクリニックから5万円近くするクリニックまであり)
血糖値スパイクは食事と運動で対策できる
血糖値スパイクかもと食後の異常な眠気やだるさを自覚しているなら、早い段階で食事対策と運動対策に取り組みましょう。
健康診断では正常値だからと油断することはできません。幸い、血糖値スパイクは対策次第で症状を抑え、2型糖尿病など生活習慣病の発症を予防することができます。
既に2型糖尿病を患っている方も、深刻な後遺障害や死亡リスクを伴う合併症を避けるために、血糖値スパイクの有無を調べ食事と運動の対策に力を入れることが大切です。
ベジファーストで血糖値の上昇がゆるやかになる
血糖値スパイクを予防するために、食事を食べる順番が重要な鍵を握っています。最初に炭水化物を食べず、野菜や海藻など食物繊維の多い食品から食べましょう。
食物繊維が糖質を膜のように覆い、小腸で栄養が即吸収されないようクッションの役割を果たしてくれます。
野菜の次に肉類、魚類を食べ、最後にご飯、パン、麺などの炭水化物に箸をつけて下さい。食べる順番を改善するだけでカロリーを大幅に減らす効果、食後血糖値の急上昇を予防する効果があります。
眠くならない食べ方が糖尿病も予防
血糖値スパイクの予防は、食べる量を減らせば良いということではありません。
朝食を抜くなど食事を抜くのも厳禁です。空腹感が長く続くと食後血糖値が急上昇する原因になるので、1日3食の食事を規則正しいタイミングでいただきましょう。少量ずつ小まめに食べる食事法も有効な対策のひとつです。
昼食後の睡魔に襲われないようになったら、食事対策の効果が出ています。血糖値スパイクを予防する食べ方は糖尿病を予防する食べ方、進行を食い止める食べ方です。
よく噛んで食べ過ぎ防止
いくら野菜を最初に食べるベジファーストを実践しても、丸呑みするように食べてしまっていては効果が半減します。
血糖値の急上昇を抑えるためには、よく噛んでゆっくり食べる習慣をつけましょう。早食いが原因で糖尿病や肥満になるケースも多く、噛む回数を増やすことは大事な血糖管理の手段に含まれます。
しっかり噛むことで満腹中枢も刺激され、少ない量でも満足しやすくなるメリットもあります。理想は1口30回噛むこととされていますが、いきなり咀嚼回数を増やすと食事を美味しくいただけなくなりかねません。5回ずつ徐々に増やしていきましょう。
食後の運動で血糖値上昇を抑える
いくら野菜を最初に食べるベジファーストを実践しても、丸呑みするように食べてしまっていては効果が半減します。
血糖値の急上昇を抑えるためには、よく噛んでゆっくり食べる習慣をつけましょう。早食いが原因で糖尿病や肥満になるケースも多く、噛む回数を増やすことは大事な血糖管理の手段に含まれます。
しっかり噛むことで満腹中枢も刺激され、少ない量でも満足しやすくなるメリットもあります。理想は1口30回噛むこととされていますが、いきなり咀嚼回数を増やすと食事を美味しくいただけなくなりかねません。5回ずつ徐々に増やしていきましょう。
食後の運動で血糖値上昇を抑える
一般的に食後の運動は消化に悪い、とされますが、食後の運動は血糖値の急激な上昇を抑える効果があります。
筋肉でブドウ糖を消費すれば血糖値も急上昇しにくくなります。食べてから15分前後、無理のない範囲で身体を動かしましょう。ハードな運動は長続きしないので、ストレスに感じない程度に取り組むのがポイントです。
基本的には運動なら何でもOK。有酸素運動のウォーキングも、筋肉に流れる血液の量を増やすことができます。
ブドウ糖をハイピッチで細胞の中に取り込み、インスリン効果を高めて血糖値を下げてくれる効果があるので、食後の散歩も血糖値対策になります。
その他、階段の上り下りもおすすめの運動対策です。全身の筋肉の約7割は足に集中しているため、階段を上り下りするだけで時間をかけず効率よく血糖値を下げることが可能です。
階段ならどこにでもあるので、お昼休みの時間が短く遠くまで歩けない時も気軽に取り組むことができます。