目次
糖尿病で起こるだるさの原因に関する基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病でだるいときには何が原因ですか?
A. 糖尿病で起こるだるさの原因は、高血糖や低血糖です。
糖尿病でだるいのは何が原因?
糖尿病は初期症状を感じることがほとんどない病気ですが、ある程度進行してくるとさまざまな自覚症状が出始めます。その症状のひとつとして、高血糖によるだるさや倦怠感が挙げられます。
高血糖状態というのは、身体中を流れている血液に余分な糖が多量に含まれた状態です。その状態では、倦怠感、肥満、高血圧や、体の細胞が酸化してしまう「酸化ストレス」、過剰な糖と体内のたんぱく質が結合する「糖化」など、さまざまな症状があらわれます。
また糖尿病を患っている場合、免疫力の低下によりさまざまな感染症にかかりやすくなります。糖尿病の人が感染症にかかり、発熱、嘔吐・下痢などで体調不良になった日のことをシックデイと呼び、シックデイのときもだるさを感じます。
だるさや眠気は低血糖の可能性も
血糖値が高くてもさまざま症状が起こりますが、低血糖状態も同じようにだるさを感じることがあります。血糖値が低くなるにつれて以下のような症状が起こり、低くなりすぎると昏睡になるなど危険な状態になることもありますので、注意が必要です。
血糖値60mg/dL…だるい、異常な空腹感、動悸、冷や汗、ふるえ、悪心、不安感
血糖値45mg/dL…強い脱力感、疲労感、眠気、めまい、混乱、視力低下、意識の混乱
血糖値30mg/dL…けいれん、異常行動、意識朦朧、昏睡
低血糖になる原因の多くは、インスリンの注射量や回数が不適切だったとき、食事の量が少なかったり時間が遅れたりしたとき、空腹時に激しい運動をしたり運動量が多すぎたりしたときの3つです。血糖値が下がっているときにインスリン薬が効きすぎたなどの理由で、血糖値が大幅に下がってしまい低血糖が起こります。
低血糖の症状を見ると、恐ろしいものだと感じてしまう人もいるかもしれませんが、あらかじめ対処法を学んでおき、すぐに対処すれば改善する場合がほとんどです。対処法は、ブドウ糖や砂糖などを摂取することです。砂糖よりはブドウ糖のほうが吸収がよいため、常に携帯しておきましょう。
普通は10分ほどで症状がだんだんよくなってきますが、よくならない場合は再度同じものを摂取します。また、家族や周りの人にも低血糖が起こる可能性があることを伝えておくと、自分が万が一対処できなかったときでも、対処してもらえますので安心です。
だるいときは糖尿病の可能性あり?日常的に起こるだるさ
だるさや倦怠感は、エネルギーや栄養不足などが原因で起こる場合もありますし、体や精神を酷使しすぎたときなどの疲労からくる場合や、さまざまな病気の初期症状としてあらわれる場合もあります。具体的には病気以外の理由で起こるだるさは、大きく分けて以下のようなものがあります。
仕事や家事による疲労や不規則な生活
過度な残業や激務など、仕事のしすぎや家事・育児による忙しさから、精神的・肉体的に疲労が溜まってくることで、だるさが起こることがあります。それだけではなく、不規則な生活を続けることによっても起こりますので、仕事が残業続きなどで生活のリズムが狂ってくると、だるさを感じる可能性は高くなります。
ストレスによるだるさ
ストレスはあらゆる体の不調を引き起こしますし、さまざまな病気の原因にもなります。冠婚葬祭などの重要な予定は人に大きなストレスを与えますし、仕事でのプレッシャーや人間関係などで長期的にストレスを感じてしまうと、肉体を酷使したときと同じようなだるさを感じることがあります。
ストレスは基本的に精神に影響を与えるものですので、ストレスの影響がひどくなると、心身症、不安障害、うつ病などの精神的な疾患を引き起こすこともあります。十分に注意しましょう。
食生活の乱れによる栄養バランスの問題
人間の体は多くの種類の栄養素を必要とします。毎日同じものを食べたり、ファーストフードなどの健康的でない食生活を続けたりしていると、栄養不足が引き起こされ、だるさや倦怠感につながります。
糖質や脂質などのエネルギーになる栄養素もそうですが、そういった栄養素をエネルギーに変える働きのあるビタミンB群などは不足しやすいため、マルチビタミンやマルチミネラルなどのサプリメントで、意識的に補っていくのもひとつの方法です。
もしだるさなどの症状を筆頭に、糖尿病の疑いがあるようなら、早急に糖尿病の検査を受けることが大事です。糖尿病は放置しておいても改善しないばかりか、どんどん悪化していきます。治療を受けて血糖コントロールをしていくことで、健康な人と同じような生活を送ることも可能ですので、早めに受診しましょう。
だるさと関係のある病気にはどんなものがある?
糖尿病もだるさと関係がありますが、だるさを引き起こすのは数多くの病気が考えられ、ただだるいだけで病気を判断することは困難です。では、だるさを感じるとき、ほかにはどんな病気が起こっている可能性があるのでしょうか。一例を見ていきましょう。
かぜによるだるさ
かぜを引くと熱が出て体もだるくなります。体内に侵入したウィルスを撃退しようと、免疫機能が働くためです。東洋医学的には、体がだるい状態を「気虚(ききょ)」といい、エネルギーが不足している状態をあらわしています。要するに疲労により体力や免疫が落ちてきて、かぜを引き起こしたというわけです。
貧血
比較的女性に多い貧血も、体のだるさを感じさせる症状のひとつです。貧血は、酸素を供給するはたらきを持った赤血球やヘモグロビンの減少により、酸素不足になることで起こります。体のすみずみに酸素が行き渡らなくなると、だるさや倦怠感をはじめ、頭痛、動悸、息切れなどを生じさせる原因となるのです。
更年期障害
女性が閉経する前後10年間は更年期と呼ばれますが、その間に女性ホルモンのバランスが激しく変化すると、精神面と身体面の両方にさまざまな障害が起こります。これが更年期障害です。更年期障害で起こる症状はだるさのほかに、不眠、肩こり、ほてり、イライラ、のぼせ、気分の落ち込みなどが挙げられます。
更年期障害は従来、女性にしか起こらない症状だとされていましたが、最近は男性にも同じような症状がみられる男性更年期障害(LOH症候群)というものもあり、安心はできません。これはテストステロンという男性ホルモンが、急激に低下することにより引き起こされるとされています。
うつ病
更年期障害と似ていますが、うつ病もだるさを感じる疾患のひとつです。うつ病はおもに精神的なストレスを継続的に感じることにより、かかります。うつ病になると一時的ではなく、長い間疲労やだるさ、落ち込み、気力の低下など精神的にネガティブな状態が続きます。身体面においても、イライラ、集中力低下、食欲の低下、睡眠障害などの疾患が起こります。
急性肝炎
肝炎はおもにウィルスによって感染するもので、日本では話は聞くもののそこまで馴染みのないものです。A型肝炎は衛生面が整備されていない発展途上国でよく起こるため、出張や旅行などで東南アジアなどの地域に行った場合に、食事などで感染することがあります。
B型肝炎はおもに性行為による感染が原因です。どちらにも、初期症状としてかぜのような症状が起こり、だるさや倦怠感、吐き気、下痢、頭痛、高熱などの症状があらわれます。
慢性疲労症候群
だるさや疲労感などが6ヶ月以上続いている場合、慢性疲労症候群の可能性があります。これは、特に病気などを患っていないにもかかわらず、強い疲労感が長期に渡って続く病気です。
強い疲労とは、身体的にも精神的にも激しい疲労を感じ、日常生活に支障が出るレベルの疲労で、発熱、思考力低下、睡眠障害、関節障害などが起こります。症状は更年期障害やうつ病に似ており、誤ってそう診断されることもあります。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)は、睡眠中に呼吸をしていない状態を何度も繰り返してしまう病気です。無呼吸とは、10秒以上気道の空気の流れが止まった状態を指し、7時間の睡眠中に30回以上の無呼吸、あるいは1時間あたり5回以上ある場合は、睡眠時無呼吸との診断になります。
寝ている間に起きるため自覚症状がなく、自分が睡眠時無呼吸症候群だと気づいていない人も多くいると考えられています。気づかないうちに日常生活にさまざまなリスクを生じてくる可能性のある、恐ろしい病気です。
ビタミンB1欠乏症
ビタミンB1欠乏症はその名のとおり、ビタミンB1が不足することにより起こる病気です。大きく分けると、ウェルニッケ・コルサコフ症候群と脚気の2種類になります。ウェルニッケ・コルサコフ症候群は中枢神経が侵され、アルコール依存症の人に多くみられる症状です。中枢神経が侵されると、歩行や眼球運動に異常があらわれたり、記憶力低下や健忘症といった症状があらわれたりします。
脚気は末梢神経に障害が起こり、ビタミンB1のない白米ばかりを食べていた昔の人によく起こっていた病気です。現在では治療法がありますが、昔は原因がわからず死亡者も多くいました。症状としては、脚気心(かっけしん)という心不全、筋力低下、手足のむくみや痺れ、だるさ、動悸などが起こります。治療は注射でビタミンB1を補うことで行います。
糖尿病でだるいのを解消するための対策は?
では、糖尿病でだるさを感じた場合はどうすればいいのでしょうか?まずは担当医師にだるさがあることを伝えて、指示を仰ぐことが先決です。慢性的なだるさが続いている場合は、高血糖が原因の可能性がありますので、血糖コントロールをしっかり行なっていく必要があります。
シックデイの疑いがある場合は、シックデイ・ルールに沿った対処をします。シックデイ・ルールとは、シックデイになったときに備えて、あらかじめどういう対応をするかを決めたものです。代表的なシックデイ・ルールをいくつか紹介します。
・早急に病院を受診すること
高熱や嘔吐・下痢、食欲不振、病状が改善しない場合などは、すぐに病院を受診しましょう。症状が軽い場合は様子をみても構いませんが、念のためにできれば病院にいくほうが無難です。
・自分の体を調べて状態を確認する
シックデイのときは倦怠感があるかもしれませんが、なるべく自分の状態がどうなのかを把握することが大切です。そのために体温の測定、脱水症状の確認のための体重測定、血糖値、尿糖、尿ケトン体などを定期的に測定しましょう。どの数値も、通常より異常な数値が出ている場合はすぐに受診するようにし、異常がなければ安静にしておきましょう。
・安静にして栄養と水分を補給
脱水症状が起こる可能性を考え、水分をこまめにとりましょう。特に下痢の症状が起きている場合は、脱水症状になりやすいため注意してください。それから、ケトーシスを防ぐために炭水化物を摂るようにしましょう。シックデイのときにはできるだけ消化のよいうどん、おかゆ、野菜スープ、みそ汁、経口補水液などがおすすめです。
・インスリン注射は止めない
何も食べていない場合は、インスリン注射をしないほうがいいと感じる人もいるかもしれません。しかし、インスリン注射は自己判断で中止してはいけません。
注射に限らず、経口薬も量を調整するなどの対処が必要になってきますので、これも必ず担当医師の指示に従うようにしましょう。場合によってはすぐに電話連絡をするなどして確認を取ることも大事です。
だるさによっては重度の場合も
糖尿病の初期の段階では、自覚症状がほとんどないことのほうが多く、だるさを感じることもあまりありません。逆にいえば、だるいにも程度がありますが、軽い疲労感ぐらいであればそこまで緊急を要するほどではありません。
しかし、動けないほどの尋常でない倦怠感や、水も飲めないほどの状態だと、かなり重度だといえますので、早急に病院を受診することが必要です。軽度であっても、そのままにせず担当医師にそのことを伝えて、今後の治療方針を検討していくほうがいいでしょう。
まとめ
まだ糖尿病になっていない人や糖尿病予備群の人は、だるさを感じたときに糖尿病になったのではないかと不安になることもあるでしょう。すでに糖尿病の人はさらに悪化してしまったのではないかと感じてしまうかもしれません。どちらの場合も、改善策としては日々の生活習慣を正すことです。これを機会に見直して、健康的な生活を送りましょう。