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糖尿病を発症すると、汗にも変化が現れます。

糖尿病と汗に関する基礎知識

弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病と汗には何か関係があるの?
A. はい、糖尿病による汗には特徴があり、その他の合併症を予防するためにもできるだけ早く改善していくことが大切です。

この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得している自然療法専門医。
スコッツ先生のプロフィール
https://gluco-help.com/media/lose-weight-diabetes27/

 

糖尿病と汗、その関係や原因とは

糖尿病を発症すると、汗にも変化が現れます。その関係や原因にはどんな点が挙げられるのでしょうか?

・高血糖によって自律神経に影響が及ぶから
糖尿病になると、高血糖の状態が続きます。血糖値を安定させるために、薬や注射、運動療法や食事療法などが用いられ、日常生活で注意すべき点がたくさん出てくるのです。
糖尿病においては3大合併症が恐れられており、その一つに挙げられるのが神経障害です。神経障害は末梢神経だけでなく自律神経にも影響を及ぼし、交感神経がうまく機能しなくなることで、立ちくらみやめまい、急な発汗、胃腸の不調などを感じるようになります。
自律神経は、日々の生活で蓄積されるストレスや疲れなどによって乱されます。ストレスフルな現代において、自律神経失調症の人が増えているのも頷けます。(略)糖尿と汗は、血糖値によって大きな影響が及ぼされるため、日頃からコントロールすることが大切です。

・多飲、多尿によって汗の量が増える
糖尿病を発症すると、喉の渇きを感じることが多くなります。今まで以上に飲み物を摂取するようになるので、結果として汗をかきやすくなるのです。
特に夏場であれば、暑さの影響でますます喉が渇きます。汗の量も増える傾向にあるため、服に染みができる、タオルや着替えが欠かせないなどといった変化も見られるでしょう。

糖尿病時に気になる汗の特徴や症状

糖尿病の影響によって汗をかく場合、臭いやべたつきなどに特徴が見られます。普通の汗とは違う点もあるため、汗が気になるときはチェックしてみましょう。

・甘酸っぱい臭いになる
本来無臭とされる汗は、汗と皮膚にある皮脂や細菌などと混ざり合って臭い物質が生まれると、くさくなります。酸っぱい、ぞうきんのような臭いとも表現される汗は、夏場の暑いときなどにかく一般的な汗の種類になるでしょう。
一方、糖尿病になると、汗は甘酸っぱくなります。体内に入った糖質はブドウ糖へと変わり、インスリンによって全身に取り込まれエネルギーとして使用されます。しかし、インスリンの働きが悪く、しっかり分泌できない状態に陥るとエネルギー源が不足してしまいます。
エネルギーが足りないと感じた身体は、肝臓で中性脂肪を分解し脂肪酸を生成、この脂肪酸からケトン体と呼ばれる物質が生まれるのです。甘酸っぱいまたは果物が腐ったような臭いと表現されるケトン体は、汗にも悪影響を与えます。体内のケトン体が多くなればなるほど、汗も臭いやすくなります。
汗において今までと違う甘酸っぱい臭いを感じたら、糖尿病かもしれない、もしくは糖尿病が進行しているかもと疑い、早めに医師の診察を受けましょう。

・汗がべたつくようになる
糖尿病時は、汗の臭いの変化とともに、べたつきを感じることも多くなります。べたつく汗は糖尿病をはじめ、汗腺機能の低下などによって引き起こされます。糖尿病の人は運動不足になっているケースも多く、そうしたことが原因で汗がべたつくこともあります。汗が甘酸っぱい臭いだったり、べたべたしていたりすると、周囲の目が気になりますよね。早めの対策を取って、汗をかきやすい季節を快適に過ごしましょう。

・糖が含まれる汗によって皮膚にかゆみが出る場合もある
糖尿病の際に出る汗から、皮膚にかゆみを感じることもあるので注意が必要です。汗の質が関係しているのと同時に、血糖値が不安定な状態が続くことで免疫機能が低下し、肌トラブルを起こしやすくなります。カサカサと乾燥してかゆみを感じるといった異変が生じやすいです。

・食事中に汗をかくことが増える
糖尿病では、汗をかくタイミングにも異変が見られます。熱いものや辛いものを食べて汗をかくのはごく自然なことですが、糖尿病の際には神経障害が影響していることが多いです。
神経障害によって自律神経に乱れが生じ、さまざまな不調を招きますが、食事中の汗もそのうちの一つです。特に、汗のかき方が異常な場合は、神経障害による影響であると考えてよいでしょう。

糖尿病による汗、治療法はある?

糖尿病による発汗は、血糖値を正常に保つことが対策になります。糖尿病治療では、血糖値の改善を大きな目的とし、薬物療法の他に食事療法、運動療法などが用いられます。日常生活において、常に血糖値を意識していくと改善が期待できるでしょう。ここでは、汗の不快感を取り除くため、根本となる糖尿病治療について解説します。

・薬物療法
糖尿病の薬物療法には、飲み薬、GLP-1受容体作動薬(注射)、インスリン療法(注射)の3種類があります。飲み薬についてはいくつか種類があり、ひとりひとりの症状に合わせて適したものを選びます。インスリンの分泌を促すもの、食後の血糖値を改善するものなど、目的に応じて使い分けて効果を期待します。
GLP-1受容体作動薬は現在注目されている糖尿病治療法の一つであり、インスリンの分泌を高めるホルモンを注射することで血糖値を下げようとします。非常に細い針を使用するため痛みを感じることなく、自宅で行なうことも可能です。
インスリン療法では、インスリンを皮下注射で補います。血糖値をコントロールするだけでなく、膵臓を守るという働きも持っています。
様々な薬物療法がある中で、症状に合ったもの、無理なく続けられるものを選ぶことが大切です。医師の診察を受けて治療法を決定すると、より安心して続けられるでしょう。

・食事療法
糖尿病の治療を行うにあたっては、薬物療法だけではなく食事療法も有効です。日々の食事で注意すべきことを守りながら、正常な血糖値を維持できるようにしましょう。食事療法では、以下の点に注意しながら食事を取ることが大切です。

  1. 腹八分目ではなく腹七分目に
  2. 糖質の摂り過ぎには要注意
  3. 食事の時間は規則正しく、1日3食にする
  4. 食物繊維を積極的に摂取する
  5. 栄養バランスに配慮した食事を心がける
  6. ゆっくり噛んで食べる

小さなことを意識して継続することで、徐々に血糖値も安定するようになるでしょう。

・運動療法
食事療法と同時に行ないたいのが、運動療法です。糖尿病治療における運動療法では、酸素を血液中に取り込んで糖や脂肪を燃焼する有酸素運動がおすすめです。有酸素運動には、運動が苦手な人にとっても続けやすい身近なものがたくさんあります。
ウォーキングや階段を使う、水中ウォーキングを行うなど、無理なく続けられるものが多いです。自分にとって続けやすいと感じられるものを選んで、実践してみましょう。

生活習慣を見直すことが重要

糖尿病の治療では、食事や運動の見直しも重要と説明してきました。しかし、生活習慣病の一つである糖尿病には、日々の生活を見直すことが何よりも大事です。そこで、上記に紹介した食事や運動以外に、どのような点に気をつけて過ごせば良いのか考えてみましょう。

・ストレスを溜めない生活を心がけよう
食事や運動の改善が何よりも大事と言える糖尿病ですが、実は気づかないうちに蓄積されているストレスも大きく関係しています。過剰なストレスは自律神経を刺激し、インスリンの分泌を抑制してしまうのです。現代は、ストレス社会とも呼ばれています。目に見えないストレスは、いつの間にか溜まっているものです。
リラックスして過ごせる時間を作り、たまには旅行や遠出をして気分をリフレッシュさせましょう。趣味を見つけておくのも、ストレス発散におすすめです。

・タバコはやめて、アルコールも適量を
タバコを吸っている人は糖尿病にかかりやすいという統計も出ているほど、その影響は顕著です。吸う本数に伴って、糖尿病になるリスクも高まるという結果も出ています。
タバコを吸うことで、交感神経が刺激され血糖値が上昇します。さらにタバコは体内のインスリンの働きを防いでしまうというデメリットも持っているため、まさしく「百害あって一利なし」と言えるのです。タバコは糖尿病以外の恐ろしい病気を招く要因にもなるため、早めにやめておくことをおすすめします。
タバコだけではなく、アルコールの摂取にも注意しましょう。アルコールにもさまざまな種類がありますが、度数が強いものやカロリーの高いものは避けましょう。アルコールが体内で代謝される際に、血糖値にも影響が及びます。適度な飲酒は糖尿病の予防によいといいますが、それでも休肝日を設けつつ、飲み過ぎないよう注意してください。日本酒であれば1合、ビールなら中瓶1本程度を目安に、1日のアルコール摂取量を調整することで、糖尿病の予防と改善が期待できます。

・定期的に健診を受けよう
糖尿病は、早期発見ができると悪化を予防できる病気なので、健診はしっかり受けましょう。また、糖尿病と診断され治療や生活習慣の改善を行なっていく中でも、定期的に健診を受けておくと安心です。健診の際に、血糖値の状態や中性脂肪の量、体重など細かい部分も確認できます。それを元に医師からアドバイスを受けることもできるため、年に一度などと決めて健診を受けておくことは大切です。
最近では、20代といった若い世代でも糖尿病を発症するケースが増えています。隠れ糖尿病と呼ばれるものも存在し、幅広い世代において注意すべき病気と言えるのです。信頼できる医師が揃う病院を見つけて、定期的に健診を受けに行きましょう。

 

合併症の悪化も招く恐れがあるので要注意

糖尿病で汗の症状が気になるとき、その他の合併症を招く恐れもあるため注意が必要です。ここでは、発症する恐れのある合併症を一部紹介します。

・脱水症状やペットボトル症候群
糖尿病によって起きる発汗に伴い、体内の水分は減っていきます。その結果引き起こされるのが、脱水症状です。喉が渇くという糖尿病ならではの症状を感じることでたくさん飲んでしまうというケースが多いですが、その分汗や尿から排出されてしまうと、身体は水分不足の状態に陥ります。
また、ペットボトル症候群にも気をつけましょう。喉が渇くからといって炭酸飲料や清涼飲料水をがぶがぶ飲んでいると、高血糖状態を招きます。高血糖な状態が続くペットボトル症候群と呼ばれる症状に陥る可能性もあるため、飲み物は慎重に選びましょう。おすすめは、水かお茶です。糖分を多く含むジュースはNGな飲み物です。

・高浸透圧高血糖症候群
高齢で糖尿病を発症している際に注意が必要なのが、高浸透圧高血糖症候群です。急に高血糖状態に陥るのが特徴的であり、極度の脱水症状によって意識障害を起こすこともあります。
肺炎や便の異常、脳梗塞や心筋梗塞など、糖尿病以外の病気が原因で発症することもあります。激しい脱水を起こしているときには点滴を行なう必要があり、インスリン注射で血糖値を下げることも治療として用いられることが多いです。

・神経障害によってさまざまな不調を感じるようになる
糖尿病の際にかく汗は、神経障害によって自律神経に乱れが生じていることが大きな原因です。その具体的な症状は一つに留まらず、日常生活の様々なシーンで不調を感じるようになります。

  1. 眠っているときに足がつる
  2. 手足に痺れや痛みを感じる
  3. 手足の先に冷えや火照りを感じる
  4. 小さな怪我に気づかないほど痛みに鈍くなる
  5. 下痢や便秘など胃腸の不調が起きる
  6. たちくらみやめまいが起きる

上記のように、ふとしたときに感じる不調も多く、糖尿病を発症した際には神経障害としっかり向き合っていかなければいけません。

まとめ

汗は、暑さや緊張を感じたときに出やすいものです。しかし、糖尿病を発症すると、神経障害が原因で自律神経に乱れが生じ、暑さや緊張など無関係に異常な汗をかくことがあります。糖尿病による汗は、甘酸っぱい臭いやべたつきなどが特徴です。
汗の悩みを改善していくためには、根本的な糖尿病の治療が有効です。治療を行いつつ、生活習慣を改善していきましょう。病気が進行するとさまざまな合併症を招くリスクが高まるため、定期的な健診を受け、生活改善を図ってください。

 

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