目次
糖尿病に関する基礎知識
弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病は自宅でチェックできますか?
A. 最終的には医師の診断が必要ですが、自宅でもチェックする方法はあります。
尿に異常がある人は糖尿病?
健康診断でも必ず実施されている尿検査は、成分を調べることでさまざまな病気を発見できます。それだけに、排尿時に尿の色・臭い・泡などが普段のものと違うと、「もしかして糖尿病になってしまったのかも…」と不安になってしまいますよね。確かに尿の色や臭いなども、病気になっているかどうかの判断材料になります。
ですが健康な状態でも、一時的に普段とは違う尿が出ることは珍しくありません。ですから、普通と違う尿が出たからといって、糖尿病になったとは一概には言えません。尿が異常だからと必要以上に心配する前に、正しい知識を身につける必要があります。
この記事では、自分が糖尿病なのではと不安を感じている人や、尿に異常を感じている人のために、糖尿病患者の尿の特徴・尿の異常でわかる病気・糖尿病の検査の仕方や、判断の基準などを紹介していきますので、しっかり理解して参考にしてください。
糖尿病になった人の尿の特徴
糖尿病の人の尿には、健康な人と比べて特徴があります。必ずしもすべて当てはまる訳ではありませんが、一つの指標になりますので、確認してみましょう。
尿の臭い
「糖尿病」という病名が示すとおり、糖尿病の人の尿には多量の糖分(ブドウ糖)が含まれています。ですから、尿の臭いが果実のように「甘いまたは甘酸っぱいような臭い」になります。この臭いは独特で、嗅いだことがある人にはすぐに糖尿病だと分かってしまうほどです。普通は尿に糖が混じることはあまりなく、あっても微量なので甘い臭いはしません。
ですが、尿の臭いは食べ物の影響も受けます。例えば、コーヒーを飲んだ後はコーヒーの臭いがします。ビタミン剤やエナジードリンクを飲んだ後はビタミンの臭いがします。経験がある人も多いのではないでしょうか。このように食べ物が影響している場合もあり、臭いだけでは病気と判断するのは難しいでしょう。
尿の色
健康的な人の尿の色は、普通だと淡黄色や淡黄褐色をしています。糖尿病になった人は、トイレに行く回数が増え、尿の色がほぼ透明になることがあります。ですが、大量に水分を摂った場合にも尿の色は薄くなりますので、その場合は糖尿病の可能性は低いでしょう。
また、濃い尿が出たから糖尿病を疑う人もいますが、濃い場合は糖尿病の可能性は低くなります。濃くなる原因は様々で、例えば激しい運動をした後などは汗をかきますので、体内の水分が減り尿が濃くなります。筋肉に大きな負担を与えるような運動の場合は、筋肉に含まれているミオグロビンという成分が尿に溶け出します。
この成分は筋肉の色でもわかるように赤い色をしているため、尿も赤くなります。したがって、激しい運動の後の濃い尿は、糖尿病とは関係ない可能性が高いです。ただし、肝臓病など糖尿病以外の病気の可能性はありますので、油断はできません。
尿の色も、臭いと同様に食べたものにも影響されますので、それだけで糖尿病と判断することはできません。
尿の泡立ち
糖尿病の人が排尿をしたとき、きめの細かい泡が立つといいます。尿が泡立つ原因は、尿に含まれているタンパク質です。糖尿病の人は腎臓の機能が低下している場合が多く、尿にタンパク質が多く混ざるタンパク尿が出ることがあります。その結果、尿が通常よりも泡立ってしまうのです。
ですが、健康な人でも、一時的に泡が出る場合がありますので、出たからといって糖尿病だとは言えません。また、タンパク尿が出ていない場合でも泡立つことは、よくあります。ただし、腎臓の機能が低下した人のタンパク尿は、健康な人と比べると違いがあります。その確認方法は、「どれくらい泡立っているか」と「泡がすぐに消えるかどうか」です。
尿中のタンパク質の量が多いと、健康な人と比べて泡立ちやすくなりますから、その差は一目瞭然です。また、タンパク質の泡はなかなか消えないという性質を持っています。同じタンパク質からできている卵白でメレンゲを作るとき、その泡がなかなか消えないことからもわかっていただけるでしょう。タンパクがなければ、尿の泡はすぐに消えます。
尿が出る頻度・量
糖尿病になると頻尿になり、さらに出る量も多くなり、体内の水分が不足します。そのため、のどが渇くのが早くなり、すぐ水分が欲しくなります。頻尿の定義は、1日に8回以上トイレに行く場合とされています。ですが、それより少ない場合でも、自分でトイレに行く回数が多いと思うなら、頻尿の可能性があります。
頻尿は「トイレに行っておかないと心配になる」といった心因性のものもありますので、これだけで糖尿病だと断定はできません。ですが、明らかに以前よりも回数が増えた場合は、糖尿病の初期症状である多尿を疑う必要が出てきます。
そして1度に排尿する量ですが、一般的には150〜200mlが正常とされています。自分で何ml出ているかというのは把握しづらいですが、これも以前の量と比べて多くなっていないかどうかで判断しましょう。
尿の異常でわかる糖尿病以外の病気
尿の検査は、糖尿病以外の病気も発見できます。主なものを紹介します。
- 腎臓病、腎不全・・・タンパク尿の多さで腎臓の機能が弱っている可能性
- 肝臓病・・・水分をちゃんと取っていて、運動後ではないのに尿の色が濃い場合
- 膀胱癌(ぼうこうがん)、腎癌、前立腺癌・・・血尿が出る場合
- 結石・・・タンパク尿が原因でなる
これらのものは一例で、まだいろいろな病気がありますが、多いのはやはり尿と関係の深い器官です。
糖尿病性腎症とは?
腎臓は尿と関係の深い器官ですので、尿の異常は糖尿病だけでなく、腎臓の異常である可能性があります。糖尿病が進行していくと、さまざまな合併症を引き起こします。そして、糖尿病はそもそも自覚症状が少ない病気ですから、診断された時にはすでにかなり進行している場合もあり、同時に合併症も見つかるというケースもあるのです。
糖尿病には3大合併症というものがあり、その1つに腎症というものがあります。腎症の症状として、タンパク尿が大量に出るというものがあります。単に糖尿病なだけであれば、尿にタンパク質が混ざっていることは多くはありません。ですから、タンパク尿が出た場合は、腎症も発症している可能性が高いのです。
腎症の症状
症状は第1期〜第5期まで分類され、第5期がもっとも悪い状態です。具体的には以下のようなものがあります。
第1期…自覚症状なし、医学的な異常も認められない。
第2期…自覚症状なし
第3期…うっ血性心不全、ネフローゼ症候群など
第4期…腎不全、倦怠感、尿毒症など
第5期…透析が必要になる
初期は自覚症状がほぼないことが発見を遅らせるため、定期的な検診が必要です。
食事療法
糖尿病のための食事療法は、血糖値を下げるために糖質を制限したものになります。一方、腎症の場合は、適切なエネルギーを摂取するために、腎臓の負担になるタンパク質を制限した食事になります。ただタンパク質を減らしただけではエネルギー不足になりますので、その分脂質や炭水化物を多く摂ることで対処します。
自分で糖尿病か判断できる?
【自宅でできる尿検査薬(尿試験紙)を使ったチェック方法】
尿検査は「尿検査薬(尿試験紙)」を使えば、自宅でも簡単にできます。尿検査薬は第2類医薬品に分類され、薬局やドラッグストアなどで売っていますので、手軽に手に入ります。健康診断などで見たことがあるかもしれませんが、使い方も簡単で、試験紙を尿に数秒浸すだけです。試験紙の色の変化で、尿糖や尿タンパクの量がわかります。
尿糖をチェックするものは、他に尿糖計があります。高価ですが電子式でわかりやすくなっています。好みに合わせて選びましょう。
【血糖自己測定(SMBG)によるチェック方法】
糖尿病になってしまった場合、自宅での自己管理が必要になってきます。そのため、病院に行かなくても、簡単に血糖値を調べることができる器具が開発されました。それが、自己血糖測定器です。
・購入方法
自己血糖測定器にはさまざまな種類があり、基本的な使用方法は同じです。誰でも直感的に今の状態がわかるように、色や大きい文字で見やすくなっています。測定器の本体はネット通販などでも購入することができますが、穿刺器具・穿刺針(ランセット)・測定用のチップを別途購入する必要があります。穿刺器具・穿刺針がセットになったものもあります。
測定用チップは、医療用医薬品でネット販売が禁止されているため、完全に別売りとなっています。測定用チップは、処方せん受付薬局で購入することができます。ネット通販は安いことが特徴ですが、糖尿病でインスリン治療をしている場合、自己血糖測定器は保険適用になりますので、こちらがおすすめです。
・使い方
使い方は、指先を穿刺針で刺して、出た血をセンサーに吸い取らせるだけです。結果はすぐに表示されます。穿刺針は感染症予防の観点から使い捨てになっており、安全です。詳しい測定方法や条件は、器具の説明書を参照して行いましょう。
ここでは自分でできる糖尿病のチェック方法をご紹介しました。これらのチェック方法で、糖尿病の可能性を判断できるとはいえ、あくまで可能性の範囲です。健康な人なら、尿糖が出ることはあまりありません。多量な糖分を摂取することで出ることもありますし、出ても糖尿病ではないこともあります。逆に糖尿病でも尿糖が出ないこともあるのです。
それから、糖尿病の特徴は高血糖であることですが、高血糖なら尿にも糖が混ざると思われるかもしれません。確かに普通は混ざるのですが、個人差があり、混ざらない人もそれなりにいます。要するに、血液や尿では判断できないこともあるということです。すべて自分で判断せず、病院を受診するかどうかの材料として利用しましょう。
糖尿病の検査
糖尿病かどうかを診断するための検査は、大きく分けて血液検査と尿検査の2つです。
血液検査
血液検査のやり方は基本的には採血ですが、いくつかの種類があります。
・空腹時血糖値を調べる検査
一番シンプルな血液検査の方法です。血糖値が上昇していない空腹時に採血し、血液中のブドウ糖の量を測定することで血糖値が正常かどうか判断します。また、インスリンの分泌状態や濃度も測定することができます。空腹時に測定する場合は、最後の食事から10時間以上経っている状態で行います。
・随時血糖値を調べる検査
基本的には、空腹時血糖値を調べる方法と同じですが、この方法は食事をした時間に関係なく採血します。そのぶん血糖値は高くなっていますので、糖尿病と診断される基準値も、空腹時血糖値よりも高くなっています。
病院での採血の他に、献血に行くとグリコアルブミンを調べることができます。グリコアルブミンとは、肝臓でつくられたアルブミンというタンパク質がグリコ(ブドウ糖)と結合したものです。血糖値が高ければ、グリコアルブミンの検出量も多くなりますので、糖尿病になっているかどうかの一つの指標になります。
・75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)
この検査も、最後の食事から10時間以上経っている状態で行います。空腹の状態で採血をし、その後75gのブドウ糖水溶液を飲み、意図的に高血糖の状態をつくります。その状態で一定時間経過後に再び採血し、血糖値を測るという検査です。
ただし、この方法は意図的に高血糖にする検査ですので、すでに高血糖の状態にあると思われる患者に対しては行うことができません。
尿検査
尿検査では、採った尿の尿糖やケトン体を調べることで、糖尿病かどうかを判断します。尿糖が出ているということは、血糖値が高くなっていることが考えられます。ケトン体とは、アミノ酸や脂肪酸からつくられるもので、エネルギーとなります。通常は、インスリンが糖を分解してエネルギーをつくっています。
ですが、糖尿病でインスリンの作用が不足すると、エネルギーがあまり作れなくなり、その代わりとしてケトン体が増えるのです。健康であれば、血中や尿中にはほとんど検出されないため、ケトン体が多いと糖尿病の疑いがあると判断できます。
【糖尿病と診断された場合は他の検査も】
もし糖尿病と診断された場合は、進行具合にもよりますが、合併症になっていないかの検査も必要になりますので、以下のような検査が行われる可能性があります。
- 眼底検査
- 歯周病検査
- 心電図
- レントゲン
- 神経障害(神経疾患)の検査
- 動脈硬化性疾患の検査
糖尿病だと判断される基準は?
糖尿病患者の多くは2型糖尿病であり、普通は時間をかけてゆっくり血糖値が増えていきます。そして、血糖値が糖尿病と診断されるまでには、「正常型」「境界型」「糖尿病型」の3つの段階があります。これらは血糖値で区別され、以下のようになっています。
空腹時血糖値が
109mg/dL以下…正常型
110〜125mg/dL…境界型
126mg/dL以上…糖尿病型
になります。血糖値が109以下でも、109に近いほど危険ということになりますので、予備群ということで注意しなければいけません。また、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が6.5%以上ある場合も、糖尿病型になります。
HbA1cとは、血糖値が高くなった時に、ヘモグロビンとブドウ糖が結合したものです。血糖値が高くなるにつれて、HbA1cも増えていきますので、高血糖を判断する際の材料になります。HbA1cの正常値は4.6〜6.2%で、それを超えるとだんだん糖尿病型に近づいていくと言えます。
糖尿病型はまだ完全には糖尿病になったとは言えない段階で、さらなる検査をとおして判断されます。糖尿病だと診断されるには、条件がいくつかあります。例えば、空腹時血糖値とHbA1cが両方とも正常値を超えていた場合は、糖尿病になります。
空腹時血糖値のみ(あるいはHbA1cのみ)が正常値を超えていた場合は、再検査をします。そして再度、糖尿病型に当てはまった場合は、糖尿病と診断されます。
尿以外にこんな症状が出たら病院へ
尿の異常以外にも、糖尿病は以下のような症状が出ます。尿の異常と以下の症状が両方当てはまる場合は、糖尿病の可能性が高くなりますので、必ず病院で検査してもらいましょう。
- 最近疲れやすい
- のどがすぐ乾く
- 皮膚が乾燥してかゆみがある
- 手足にしびれや、ピリピリした痛みがある
- 1日にトイレに何度も行きたくなる
- 視力が落ちた、目が見えづらい
- EDになった
- ケガが治りづらい
もし以上のような症状がなくても、気になったなら行ったほうがいいでしょう。糖尿病で怖いのは合併症で、発見が遅れると失明や壊疽(えそ)のような、取り返しのつかない状態まで進行する可能性もゼロではありません。自分が糖尿病だと発覚するのが嫌で、病院に行かない人もいますが、放っておいて治る病気はありません。むしろ悪化する場合がほとんどなのです。
まとめー糖尿病は自覚症状がないため早めに検査を
多くの病気は、早期発見できれば大事にはいたらず、逆に発見が遅れると手遅れになることもあります。特に糖尿病は初期の自覚症状があまりない病気ですので、気になったら早めに受診することが肝心です。糖尿病の検査は自宅でもできるものがありますので、そういったもので定期的に検査してみるのも有効です。
ですが、一番いいのは病気になるような生活をしないことです。どの病気でもその原因に共通しているのは、食生活の乱れや運動不足です。普段からこれらのことに気をつけるだけで、病気になるリスクを大幅に減らすことができるでしょう。