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そばは糖尿病によい食べ物なのか?

 

糖尿病とそばに関する基礎知識

弊社の商品開発チームの医師監修
Q. 糖尿病で食事療法を行っていますが、麺類を食べるときには「うどん」と「そば」は、どちらを選ぶべきですか?
A.うどんよりそばの方が糖質量は多いことがわかっています。しかし、血糖値の上がりやすさを示すGI値は、うどんが85、そばは54となっているため、そばの方がおすすめです。

そばは糖尿病に良い食べ物?

糖尿病と診断されて食事療法を行っている患者さんでも、「麺類が食べたい」と思うことはあるでしょう。
もちろん、糖尿病だからといって食べてはいけないものはありません。

しかし、うどんやラーメン、パスタなどの麺類は糖質が多い食品です。
食後の血糖値を急激に上昇させる恐れがあるため、食べる際には量や食べ方に注意する必要があります。

麺類のなかでも「そば」は糖質量が比較的少ないといわれており、糖尿病患者さんが麺類を選ぶときにはおすすめです。

ただし、あくまでも麺類のなかで糖質量が少ないだけであって、食品全体のなかでは血糖値を上げやすい食べ物であることを忘れてはいけません。

「そばは糖尿病に良い食べ物だ」と思い込んでいる方も少なくありませんが、そばを食べたからといって糖尿病が改善されるわけでもなく、そばの効果によって食後の血糖値が下がるわけでもありません。

そばにも多くの糖質が含まれているため、食べれば食べただけ当然ながら血糖値は上昇します。
ただし、精製された白米100gあたりの糖質量が36.8gに対して、そばの糖質量は100gあたり24.0g程度です。1日3食、必ず白米を食べている場合には、そのうちの1食をそばに変更したところで大きなデメリットはありません。食べ過ぎにさえ気をつけていれば、神経質になる必要はないでしょう。

そばを食べても血糖値が上がりにくいって本当?

糖尿病患者さんが麺類を食べるときには、「血糖値が異常に上がったらどうしよう」「怖くて血糖値の計測ができない」といったことも多いでしょう。
しかし、そばは麺類のなかでは低GI値食品に分類されており、そのGI値は54です。ちなみに、精製された白米のGI値は88とかなり高めです。

GI値が低いと、食品に含まれる糖質を分解する際に使うインスリンの量が少なくて済むため、食事をした後の血糖上昇スピードが比較的ゆるやかだといわれています。そばは、白米を食べたときと比較すれば、血糖値の急上昇を起こしにくいといえるでしょう。

また、そばにはビタミンB1やビタミンB2が多く含まれています。白米や小麦と比較すると、およそ2~3倍にもなるといわれており、普段からビタミンB群が不足しがちな糖尿病患者さんにはおすすめです。
その他にも、そばにはポリフェノールの一種である「ルチン」という成分が含まれていて、膵臓機能を活性化して血圧や血糖値の上昇を抑える働きがあるといいます。
毛細血管を強くしなやかにする作用もあるため、糖尿病の合併症に多いとされている動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などの予防に効果的です。

しかし、糖尿病を発症している患者さんの場合には、どんな食品を摂取しても食後血糖値はもれなく上昇するものです。いくら「そば」が麺類のなかで低GI食品に分類されていても、野菜やきのこ類、海藻類に比べるとGI値も糖質も高いことには変わりありません。
また、つるつると食べやすいそばは、思わず食べ過ぎてしまうことも多いでしょう。
「そばは糖尿病によさそうだから、お腹いっぱい食べてしまおう」といった考えは、カロリーの過剰摂取にもつながるため注意してください。

そばは「糖質ゼロ」の食べ物ではありません。そのため、糖尿病患者さんが一度にたくさんのそばを食べれば、当然血糖値も大きく上昇することを忘れないようにしましょう。

糖尿病なら「うどん」と「そば」どちらを選ぶべき?

糖尿病治療で食事療法を行っている患者さんのなかには、「うどんとそばなら、どちらを選ぶべきか」と迷ってしまう人も少なくないでしょう。
実際、うどんとそばに含まれる糖質量はさほど変わりません。100gあたりの糖質量を比較すると、うどんは20.8g、そばは24.0gで、実はそばの方が糖質量は多いという結果が出ています。

しかし、単純に糖質量だけでうどんを選ぶのは安易です。
血糖値の上がりやすさを表す「GI値」で比べてみると、うどんはGI値85、そばはGI値54です。これは、そばに含まれる食物繊維が大きく関わっていると考えられています。食物繊維は、腸内で糖が吸収されるのを抑制して、血糖値を急激に上昇させないように働いてくれるのです。
そのため、精製された小麦粉を主原料としているうどんより、蕎麦粉を使用して作られた「そば」の方が糖尿病患者さんの血糖コントロールには優しいといえるでしょう。

また、そばを選ぶ際には小麦粉の含有量にも注意しましょう。そばは、蕎麦粉と食塩、そして小麦粉がつなぎとして使われています。小麦粉が多く入っているものは、それだけGI値もうどんに近づいていくため、注意が必要です。
十割そばと呼ばれるものは、小麦粉が一切使われていません。そのため、蕎麦粉の食物繊維やミネラルなども豊富に含まれており、より血糖値の上昇を抑えてくれるので糖尿病患者さんにはおすすめです。

糖尿病患者がそばを食べるときの適正量と単位

糖尿病で治療をしている患者さんが麺類を選ぶときには、うどんより「そば」の方がよいといったお話をしてきました。しかし、そばも血糖値を上げやすい麺類の一種なので、食べ過ぎは禁物です。適正な摂取量と、その単位をしっかりと覚えておきましょう。

日本糖尿病学会が発行している「糖尿病食事療法のための食品交換表」によると、そばは乾燥20g、ゆで麺60gが1単位となっています。ちなみに、食品交換表での1単位は、80kcalです。
白米の場合には1単位80calが50gですが、1食に2~3単位(100~150g)を摂取している人が多いかもしれません。お茶碗に1杯よそうと、およそ120~150g程度だといわれています。

主食から摂取すべきカロリーは、身長、体重、年齢、活動量によっても異なります。まずは、ご自身の1日摂取目安カロリーを把握することから始めましょう。
普段から150gのご飯を食べている方では、3単位の主食を摂取していることになり、そばに置き換えると乾燥麺60gまたは、ゆで麺180gが適正量となります。

ただし、「いつもご飯は大盛りで4単位くらい食べているから、そばも240g食べていい」と考えるのは間違っています。一般的な男性の摂取目安カロリーは、1日あたり1600kcal前後であることが多く、その場合には1食の主食は3単位を目標にするべきです。
糖尿病患者さんが主食の単位数を決めるときには、普段の食生活を基準にするのではなく、身長と標準体重、活動量から算出した「適正エネルギー」をもとに、しっかりと計算してコントロールするようにしましょう。

糖尿病によいそばのレシピやメニューは?

糖尿病で食事療法をしていると、1日の摂取カロリー内で抑えるために「できるだけカロリーが低いメニューを選ぼう」と意識しがちです。そばを食べる際にも、具がたくさん乗っているそばよりシンプルな「かけそば」や「ざるそば」を選んだ方が、なんとなく糖尿病にもよい気がするかもしれません。

しかし、これは大きな勘違いです。糖尿病食事療法の落とし穴といっても過言ではないでしょう。
かけそば・ざるそばはカロリーこそ低いですが、麺類(炭水化物)を単品で摂取するため、食後の血糖値を上昇させやすくなってしまうのです。糖尿病に悪い「糖質過多食」をカロリー控えめに食べているだけとも表現できます。

わかりやすく言い換えれば、かけそば・ざるそばを単体で食べることは、おかずをまったく食べず、白米だけを摂取しているのと同じような状況です。
糖尿病治療をしているのに、食事で白米だけを食べる人はいないでしょう。糖の吸収を抑制する食物繊維やたんぱく質がないため、食後血糖値をみるみる上昇させてしまい、糖尿病の悪化にもつながります。

そばを食べるときには、メニューの選び方やレシピにひと工夫をするようにしてください。特に、わかめなどの海藻類や、山菜、ねぎ、ほうれん草などの野菜類のトッピングをたっぷり乗せるのがおすすめです。鶏肉や卵などのたんぱく質が豊富な食品をプラスするのもよいでしょう。
また、糖尿病には揚げ物がよくないといったイメージがありますが、そばを単品で食べるくらいなら「野菜のかき揚げ」や「海老の天ぷら」などが乗ったメニューを選んだ方が、血糖コントロールにはよいとされています。

外食の場合には、丼ものとそばのセットなど「炭水化物の重ね食い」は避けるようにしてください。ランチメニューでは、お得な料金で提供されていることが多く、ついつい選んでしまいたくなるものですが、糖尿病患者さんの血糖コントロールを大きく乱す恐れがあるので注意しましょう。

食後の蕎麦湯は糖尿病でも飲んでいいの?

外食で美味しいそばを食べた後には「蕎麦湯」が出てくることがありますが、糖尿病の治療をしている患者さんは「蕎麦湯を飲んでもいいのか」と悩むこともあるでしょう。
これについては、正直なところ賛否両論です。

蕎麦湯には、蕎麦粉が大量に溶け込んでいるため、ある専門家は「糖質たっぷりのお湯なので、糖尿病患者は飲むべきではない」と話します。
しかし、蕎麦湯には食物繊維やミネラルなど多くの栄養素が含まれているため、「血糖値や血圧を下げる効果がある」といった情報もあるので、混乱する患者さんも多いかもしれません。

そもそも蕎麦湯は、残ったつゆを最後まで美味しく飲むために活用され始めたといわれています。そばつゆには、醤油をはじめ、砂糖やみりん、鰹節などの出汁がたっぷり使われており、時間と手間暇をかけて作られます。
そのため、「こんなに美味しいつゆを捨てるなんてもったいない」と考えた客側が、濃いつゆを薄める目的で店に出してもらったのが、蕎麦湯の起源だとされています。

このように、そばつゆには多くの塩分と糖分が含まれています。糖尿病を患っている人は、高血圧や高血糖に注意しなければならないため、蕎麦湯で薄めてまで「残りのつゆ」を飲み干すのはおすすめできません。
もちろん、蕎麦湯にはさまざまな栄養素が溶け込んでいるのも事実です。しかし、そば自体にも同じ栄養素が含まれているので、わざわざ食後に蕎麦湯を飲む必要もないでしょう。

そばはGI値が低いから糖尿病でもたくさん食べてよい?

前述した通り、そばは麺類のなかでもGI値が低い部類に入ります。そのため、ラーメンやパスタを食べるくらいなら「そば」を選んだ方がよいといえるでしょう。

しかし、いくらGI値が低い食品だといっても食べ過ぎには注意が必要です。低GI値の代表格ともいえる野菜やきのこ類、海藻類と比較すれば、そばはGI値も糖質もかなり高い食品です。
「そばは糖尿病によい食べ物だ」と情報を捻じ曲げて受け止めている患者さんも少なくありませんが、食べれば食べるほど糖尿病が改善される食品は存在しません。

そばに限らず、一部の食品ばかりを偏って摂取していると栄養バランスが悪くなり、かえって糖尿病を悪化させてしまうことも珍しくありません。食べ過ぎによって、カロリー摂取量がオーバーし、肥満や内臓脂肪につながることもあります。

糖尿病患者さんには肥満体型が多いといわれていますが、実際のところ内臓脂肪が多く付いてしまっている患者さんは、血糖値を下げるホルモンである「インスリン」の効きが悪くなることがわかっています。これを、インスリン抵抗性と呼びます。

また、炭水化物(糖質)が多く含まれているそばを、食事の最初に口にすると血糖値が上がりやすくなります。そばを食べる際には、まずトッピングのわかめやサイドメニューの野菜やたんぱく質から摂取するようにしてください。

カップ焼きそばの食べ過ぎで糖尿病が悪化する?

そばは、麺類のなかでも血糖値を上げにくい食品だとお話をしてきましたが、「焼きそば」はまったくの別物なので注意してください。
特に、コンビニやスーパーでも手軽に購入できる「カップ焼きそば」は、糖質・脂質・塩分がとても多いため、糖尿病患者さんの食事療法には不向きです。

糖尿病と診断される患者さんには、このようなインスタント食品の摂り過ぎで肥満になり、インスリンの分泌や効きが悪くなっている方も少なくありません。ひどい方では、朝からカップ焼きそばを食べているというケースもありますが、血糖値を大きく上昇させてしまうため、糖尿病をどんどん悪化させてしまいます。

もちろん、1日の摂取カロリー内であれば月に何度か食べてしまっても問題はありません。しかし、カップ焼きそばをはじめとしたインスタント食品の場合には、高カロリーにも関わらず栄養価が低いものが多いのも事実です。

カップ焼きそばは、1個あたり500~700kcalもあるため、それだけで1食分のエネルギー量に達してしまいます。ところが、麺ばかりでほとんど具が入っていないカップ焼きそばは、ビタミンやミネラル、たんぱく質、食物繊維などの栄養素がほぼ含まれていません。

食後の血糖値を急上昇させないためには、毎食必ず食物繊維とたんぱく質の摂取をするよう推奨されていますが、カップ焼きそばにおかずを付けるとカロリーオーバーになる可能性が非常に高いことも大きな問題です。

「毎食カップ焼きそばを食べている」という方は論外ですが、もし「たまにはカップ焼きそばを食べたい」と思った場合は、パックの千切りキャベツでも構わないので、低カロリーの野菜サラダを必ず先に摂るようにしてください。
食物繊維をしっかり摂取しておくことで、糖や脂質の吸収を穏やかにして、食後血糖値の急上昇を抑制することにつながります。

まとめ

糖尿病の治療は、食事療法と運動療法が大きな柱となります。カロリーや糖質、脂質の摂り過ぎに注意しながら適度な運動を行うことで、良好な血糖コントロールを継続することも可能です。
しかし、糖尿病患者さんでも「麺類が食べたい」と思うことも少なくないでしょう。そんなときにおすすめなのが、そばです。

麺類は、基本的に糖質量が多くGI値も高い傾向がありますが、そのなかでも「そば」は血糖値を上昇させにくい食品だといわれています。
最近では、低糖質や糖質カットのそばも販売されるようになってきたので、これらの商品を上手に取り入れながら糖尿病の治療をストレスなく継続していくのもよいでしょう。

この記事の監修ドクター
自然療法医 ヴェロニカ・スコッツ先生
アメリカ、カナダ、ブラジルの3カ国で認定された国際免許を取得している自然療法専門医。
スコッツ先生のプロフィール
https://gluco-help.com/media/lose-weight-diabetes27/

 

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